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補装具と用具の違い|日常生活用具は障害者総合支援法の本則に無い

利用者さんやご家族から「車椅子と、お風呂で使う用具は、同じ窓口で申請できますか」と聞かれて、少し迷った経験はないでしょうか。補装具と日常生活用具は、現場ではひとまとめに「福祉用具」のように話されることがあります。けれども、障害者総合支援法(以下「法」)の条文を読むと、この2つは「似た制度の呼び分け」ではなく、法律上まったく別の仕組みとして置かれています。

先に結論です。「補装具」は法律の言葉ですが、「日常生活用具」という言葉は、法の本則(附則を除く本文)に1回も出てきません。 本則を数えると、次のとおりです。

探した語法の本則に出てくる回数
補装具費11回
地域生活支援事業27回
移動支援5回
日常生活用具0回

では「日常生活用具」と呼ばれているものの根拠はどこにあるのか。それが、第77条(市町村の地域生活支援事業)第1項第六号にある「日常生活上の便宜を図るための用具」の給付又は貸与です。この記事では、2つの仕組みを条文で並べて確かめます。

なお、品目、基準額、耐用年数、自治体ごとの運用は、条文には書かれていません。 この記事でも扱いません(後ろの「この記事で書いていないこと」にまとめています)。

補装具は、第5条に定義がある法律の言葉

まず補装具です。法第5条には、この法律で使う言葉の定義が並んでいます。そのなかに、補装具の定義があります。

この法律において「補装具」とは、障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、長期間にわたり継続して使用されるものその他の主務省令で定める基準に該当するものとして、義肢、装具、車椅子その他の主務大臣が定めるものをいう。

読み取れることを分けます。

  • 身体機能を補完し、又は代替するものであること
  • 長期間にわたり継続して使用されるものであること
  • そのほか主務省令で定める基準に該当すること
  • 具体的な品目は「主務大臣が定めるもの」であり、条文は例として義肢、装具、車椅子を挙げているだけであること

つまり、法は補装具の性格(身体機能の補完・代替、長期の継続使用)までは自分で書き、どの品目かは主務大臣の定めに委ねています。ここで押さえたいのは、同じ第5条のなかに「日常生活用具」の定義はないことです。

補装具費は、第76条で「費用の支給」として組まれている

補装具を使うときの給付の仕組みは、第76条です。この条には条見出しが付いていません。見出しで探すと見つからないので、条番号で確かめてください。第1項の本文は次のとおりです。

市町村は、障害者又は障害児の保護者から申請があった場合において、当該申請に係る障害者等の障害の状態からみて、当該障害者等が補装具の購入、借受け又は修理(以下この条及び次条において「購入等」という。)を必要とする者であると認めるとき(補装具の借受けにあっては、補装具の借受けによることが適当である場合として主務省令で定める場合に限る。)は、当該障害者又は障害児の保護者(以下この条において「補装具費支給対象障害者等」という。)に対し、当該補装具の購入等に要した費用について、補装具費を支給する。

ここから分かる骨組みは次の4点です。

  1. 実施主体は市町村で、申請が出発点
  2. 対象は、障害の状態から見て補装具の購入、借受け又は修理(条文は「購入等」とまとめる)を必要とする人
  3. 借受けは「主務省令で定める場合に限る」。借受けによることが適当な場合だけが対象になる
  4. 支給するのは、購入等に要した費用についての「補装具費」。物を渡す形ではなく、費用に対する支給の形である

第1項にはただし書があり、申請に係る障害者等または世帯の他の世帯員のうち政令で定める者の所得が政令で定める基準以上のときは、支給されません。

自己負担の上限は、条文に「百分の十」と書かれている

補装具費の額は、第2項が決めています。

補装具費の額は、一月につき、同一の月に購入等をした補装具について、補装具の購入等に通常要する費用の額を勘案して主務大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該補装具の購入等に要した費用の額を超えるときは、当該現に補装具の購入等に要した費用の額。以下この項において「基準額」という。)を合計した額から、当該補装具費支給対象障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が基準額を合計した額の百分の十に相当する額を超えるときは、当該相当する額)を控除して得た額とする。

計算の形を、仮の数字で見てみます(条文の形を確かめるためのもので、実際の金額ではありません)。

項目条文の言い方仮の例
基準額の合計主務大臣が定める基準で算定した額(実費が下回るときは実費)を月ごとに合計10万円
控除する額家計の負担能力その他の事情を踏まえて政令で定める額。ただし基準額の合計の百分の十が上限上限は1万円
補装具費基準額の合計から控除する額を引いた額最大で9万円

「基準額の合計の百分の十」が上限になるのは、補装具費の話です。 後で見る日常生活用具の側の条文(第77条)には、この計算は書かれていません。

第76条のほかの項も、実務で見落としやすいところです。

  • 第3項:市町村は、必要があると認めるときは、身体障害者更生相談所その他主務省令で定める機関の意見を聴くことができる
  • 第4項:第19条第2項から第5項までの規定を、補装具費の支給に係る市町村の認定について準用する(必要な技術的読替えは政令で定める)
  • 第5項:主務大臣は、基準を適正なものとするため、必要な調査を行うことができる
  • 第6項:前各項に定めるもののほか、補装具費の支給に関し必要な事項は、主務省令で定める

補装具費は「自立支援給付」の側にある

法第6条は、自立支援給付に何が含まれるかを一続きで並べています。

自立支援給付は、介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費、特例訓練等給付費、特定障害者特別給付費、特例特定障害者特別給付費、地域相談支援給付費、特例地域相談支援給付費、計画相談支援給付費、特例計画相談支援給付費、自立支援医療費、療養介護医療費、基準該当療養介護医療費、補装具費及び高額障害福祉サービス等給付費の支給とする。

この並びのなかに「補装具費」が入っています。居宅介護などの障害福祉サービスの費用(介護給付費、訓練等給付費)、相談支援の費用、自立支援医療の費用と同じく、費用の支給という形でそろえられた給付の一員です。

障害福祉サービスの利用者負担の上限を事業所側で管理する仕組みは、別の記事(障害福祉サービスの上限額管理)で扱っています。補装具費の「百分の十」は第76条第2項の別の定めで、混同しないようにしてください。

「日常生活用具」にあたるものは、第77条第1項第六号にいる

では日常生活用具はどこにあるのか。第77条(市町村の地域生活支援事業)です。柱書は次のとおりです。

市町村は、主務省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする。

その第1項第六号が、用具を扱う号です。

聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、意思疎通支援(手話その他主務省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を支援することをいう。以下同じ。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって主務大臣が定めるものの給付又は貸与その他の主務省令で定める便宜を供与する事業

読みどころは3つあります。

  1. 条文の言葉は「日常生活上の便宜を図るための用具」で、「日常生活用具」ではない
  2. 仕組みは「給付又は貸与」。補装具の「費用の支給(補装具費)」とは組み立てが違う
  3. この号は意思疎通支援を行う者の派遣と同じ号に同居している。用具だけを独立して定めた号ではない

「どの用具が対象か」は、「主務大臣が定めるもの」とされており、条文には書かれていません。実務で「日常生活用具」と呼ばれているものが、この号の用具に当たると読めますが、品目と対応は告示や市町村の要綱で確かめることになります。この記事は条文の範囲で読むので、その確認までは行いません。

自己負担の定めは、第77条には書かれていない

ここは誤解が多いところなので、はっきり書きます。第77条の条文には、利用者に求める負担の割合や上限額を定めた文言がありません。 補装具費にある「百分の十」は第76条第2項の定めで、第77条にはありません。したがって、「日常生活用具の自己負担は原則1割」という説明を、法の条文から導くことはできません。 市町村がどのような負担を求めるかは、条文からは読めないので、お住まいの市町村の要綱で確認することになります。

同じ第77条のなかでも、言葉が条文にあるものと無いものが混在している

第77条第1項には9つの号が並び、すべて市町村が行う地域生活支援事業です。そのなかで、言葉がそのまま条文に載っているものと載っていないものを見比べると、第六号の特徴が分かります。

第八号は「移動支援事業」の1語だけで、その定義は第5条にあります。

この法律において「移動支援事業」とは、障害者等が円滑に外出することができるよう、障害者等の移動を支援する事業をいう。

事業条文での扱い
移動支援事業(第77条第1項第八号)言葉が第77条に載り、第5条に定義もある
用具の給付又は貸与(第77条第1項第六号)言葉は「日常生活上の便宜を図るための用具」。「日常生活用具」の語も定義も無い

「日常生活用具」は、法が自分の言葉として定義した語ではなく、条文の「用具」を実務で呼ぶ名前だ、と整理すると混乱が減ります。

2つの仕組みを、条文の言葉で並べる

ここまでを表にします。

 補装具日常生活用具にあたるもの
条文の言葉「補装具」(第5条に定義あり)法律に「日常生活用具」は無い。第77条第1項第六号の「日常生活上の便宜を図るための用具」
位置づけ自立支援給付(第6条・第76条)地域生活支援事業(第77条)
仕組み補装具費の支給用具の給付又は貸与
品目を決める人主務大臣が定める主務大臣が定める
自己負担基準額の合計の百分の十が上限(第76条第2項)条文に定めが無い

「品目を決める人」が同じ主務大臣なのは意外かもしれません。違うのは、決めた品目をどういう形で利用者に届けるか(費用の支給か、用具の給付又は貸与か)と、制度の置かれた場所(自立支援給付か、地域生活支援事業か)です。

誰が実施し、誰が支えるのか

実施主体にも違いがあります。

 補装具費(第76条)用具の給付又は貸与(第77条第1項第六号)
実施主体市町村市町村(柱書は「行うものとする」)
出発点申請(第1項)条文には書かれていない(主務省令に委ねる)
専門機関の意見市町村は必要があれば身体障害者更生相談所等の意見を聴くことができる(第3項)条文には書かれていない
都道府県の関わり条文には書かれていない第77条第2項で、市町村に代わって事業の一部を行える

都道府県は、第77条第2項により、市町村の実施体制や地域の実情を勘案し、関係市町村の意見を聴いて、市町村に代わって第1項各号の事業の一部を行うことができます。さらに第78条第1項は、都道府県が第77条第1項第三号、第六号及び第七号の事業のうち、特に専門性の高い意思疎通支援を行う者を養成したり派遣したりする事業などを行うと定めています。ただし、この規定が用具の給付又は貸与について何を求めているかは、条文からは読めません。

相談の現場で、台帳に残しておきたいこと

条文の構造を踏まえると、相談支援や事業所の窓口で、利用者ごとに整理しておきたい項目が見えてきます。以下は条文が求める項目ではなく、条文の違いから考えた台帳の項目の提案です。

  • どちらの制度の話か:補装具(第76条)か、用具の給付又は貸与(第77条)か。呼び名ではなく制度で区分する
  • 購入・借受け・修理のどれか:補装具は「購入等」とまとめられ、借受けは主務省令で定める場合に限られる。区分が違えば確認先も変わる
  • 申請した日と、結果の連絡を受けた日:いずれの制度も市町村が窓口になる
  • 意見を聴かれる場合があるか:補装具では身体障害者更生相談所等の意見が関わることがある(第76条第3項)
  • 所得による取扱い:補装具費には所得による支給の制限がある(第76条第1項ただし書)。基準の中身は政令で定まる
  • 自己負担の扱い:補装具費と用具の給付又は貸与で別に記録する。補装具費の百分の十の上限を、他の制度に当てはめない

複数の用具を同時に使っている利用者さんほど、「この車椅子は補装具で申請した」「入浴の用具は市町村の事業で給付を受けた」といった制度の違いが担当者の頭の中にしか無い状態になりがちです。引き継ぎのたびに確認し直すことになるので、制度区分を台帳に1列持つだけで、手戻りは減ります。

この記事で書いていないこと

条文を読んだ範囲では、次のことは書かれていません。この記事でも書きません。

  • 補装具の具体的な品目と基準額:主務大臣の定めで決まります(第5条、第76条第2項)
  • 日常生活用具の対象品目:第77条第1項第六号は「主務大臣が定めるもの」とするだけです
  • 用具の自己負担の割合・上限:第77条に定めがありません。市町村の要綱で確認します
  • 耐用年数や再支給の取扱い:条文にはありません
  • 所得の基準や、負担を求める世帯の範囲:第76条第1項ただし書は政令に委ねています
  • 借受けが適当な場合の中身:第76条第1項は主務省令に委ねています
  • 「日常生活用具」の通称と第六号の用具の対応関係:告示や要綱で確かめる必要があります
  • 個別の利用者がどちらの制度の対象になるかの判断:本記事は条文の構造の整理です

まとめ

  • 補装具は法律の言葉で、第5条に定義がある。「日常生活用具」は法の本則に0回で、定義もない
  • 補装具は自立支援給付(第6条)で、第76条が定める補装具費の支給。自己負担は基準額の合計の百分の十が上限(第76条第2項)
  • 日常生活用具にあたるものは、地域生活支援事業(第77条)の第1項第六号にある「日常生活上の便宜を図るための用具」の給付又は貸与。意思疎通支援を行う者の派遣と同じ号にある
  • 第77条には自己負担の定めが書かれていない。「原則1割」と条文から言うことはできない
  • 品目は両方とも主務大臣が定めるので、品目・基準額・耐用年数は告示と市町村の要綱で確認する

参考にした一次情報

いずれも本則の条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の利用者の支給や給付の可否を示すものではありません。品目、基準額、自己負担の実際は、厚生労働大臣の告示と、お住まいの市町村の要綱をご確認ください。


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