職員から妊娠の報告を受けたとき、勤務表をどう組み直すかで迷うことはないでしょうか。「夜勤は外さなければならないのか」「移乗介助のある業務は続けさせてよいのか」「変形労働時間制で組んでいる勤務はそのままでよいのか」「管理者の立場の職員にも同じ決まりが及ぶのか」といった迷いです。
妊娠中・産後の女性の働き方に関する決まりは、労働基準法(以下「法」)の第64条の3、第65条、第66条にまとまっています。この3つの条文は、「請求がなくても就かせてはならない」ものと、「本人が請求した場合に使用者が応じなければならない」ものに分かれています。ここを取り違えると、勤務表の組み方も、本人との面談の進め方も変わります。
令和8年11月4日にe-Gov法令検索から取得した条文が根拠です。この記事では、法と女性労働基準規則(以下「女性則」)の条文だけを根拠に、次の3点を切り分けます。
- 「請求がなくても」適用される制限と、「請求があれば」適用される制限は、どの条文に書かれているか
- 夜勤・時間外労働・変形労働時間制・重量物の各場面で、条文の言葉から何が言えるか
- 管理監督者の職員や、人を介助する動作の扱いなど、条文からは決まらない点はどこか
条文から決まらない点は、「条文からは決まりません。所轄の労働基準監督署に確認してください」と書きます。通達や判例は今回の根拠に入れていません。
先に結論
- 法第64条の3第1項は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性を「妊産婦」と呼び、重量物を取り扱う業務などに就かせてはならないと定めています。この規定に、請求の要件は書かれていません。
- 就かせてはならない業務の範囲は、第64条の3第3項により厚生労働省令で定められ、女性則第2条が一覧にしています。重量物は第2条第1項第一号です。
- 第65条は、産前6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した場合の就業禁止、産後8週間を経過しない女性の就業禁止、妊娠中の女性が請求した場合の軽易業務への転換を定めています。
- 第66条は、妊産婦が請求した場合に、変形労働時間制でも法定の労働時間を超えて働かせないこと、時間外労働と休日労働をさせないこと、深夜業をさせないことを定めています。3つとも「請求した場合」の規定です。
- 第19条第1項は、産前産後の女性が第65条によって休業する期間とその後30日間の解雇を禁じています。ただし書があります。
- 第64条の3から第67条までは、罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)の対象に入っています(第119条第1号)。
- 管理監督者(第41条第1項第二号)に第66条が及ぶかどうかは、条文の言葉からは決まりません。
- 人を介助する動作が「重量物を取り扱う業務」に当たるかどうかは、条文には書かれていません。
請求が要るものと、要らないもの
この記事で最初に押さえたいのは、条文ごとの「請求」の有無です。条文の言葉を並べると、次の表になります。
| 条文 | 内容 | 請求の要件 |
|---|---|---|
| 第64条の3第1項 | 重量物などの業務に就かせてはならない | 書かれていない |
| 第65条第1項 | 産前の就業禁止 | 休業の請求が要る |
| 第65条第2項 | 産後8週間の就業禁止 | 書かれていない |
| 第65条第3項 | 軽易な業務への転換 | 請求が要る |
| 第66条第1項 | 変形労働時間制の場合の労働時間の上限 | 請求が要る |
| 第66条第2項 | 時間外労働・休日労働の禁止 | 請求が要る |
| 第66条第3項 | 深夜業の禁止 | 請求が要る |
「書かれていない」は、条文にその要件が出てこないという意味です。運用上、本人への確認が要るかどうかは別の話ですが、条文の構造としては、請求の有無で規定の性格が分かれています。
請求が要る規定について、請求の方法(口頭か書面か)や、期間をまたいで請求できるかどうかは、今回読んだ条文には書かれていません。
第64条の3:重量物などの業務に就かせてはならない
第64条の3第1項は、次のとおりです。
使用者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
読み取れることは次の4つです。
- 対象は、妊娠中の女性と、産後一年を経過しない女性(この2つをあわせて「妊産婦」)
- 就かせてはならない業務の例として、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務が挙げられている
- 例のほかに、「妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務」も対象
- この項には、請求があった場合に限るという言葉がない
「妊産婦」という言葉の中身は、この第1項の括弧書きで定義されています。第66条の「妊産婦」も同じ意味です。
業務の範囲については、第3項が次のように定めています。
前二項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。
つまり、「どの業務か」「どの範囲の者か」は法律本体ではなく、厚生労働省令で決まります。その省令が、女性則第2条です。
女性則第2条:妊娠中と産後で範囲が違う
女性則第2条第1項は、妊娠中の女性を就かせてはならない業務を、次のとおりとして一覧にしています。
法第六十四条の三第一項の規定により妊娠中の女性を就かせてはならない業務は、次のとおりとする。
一覧は第一号から第二十四号まであります。重量物は第一号です。
次の表の上欄に掲げる年齢の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務
この表には、年齢の区分ごとに、断続作業の場合と継続作業の場合の重量が書かれています。満十八歳以上の区分は、断続作業が30キログラム、継続作業が20キログラムです。満十六歳以上満十八歳未満は25キログラムと15キログラム、満十六歳未満は12キログラムと8キログラムです。
第一号のほかにも、ボイラーの取扱い、クレーンの運転、高さが五メートル以上の場所で墜落のおそれがある業務、有害物を発散する場所での業務、著しく暑熱な場所や著しく寒冷な場所における業務、身体に著しい振動を与える機械器具を用いる業務などが並んでいます。福祉施設の業務に関係しうるものを探すときは、一覧の全体を読んで、自分の事業所の業務に近いものがないかを見る必要があります。
産後は、申出が要るものと要らないものがある
産後一年を経過しない女性については、第2条第2項が別に定めています。
法第六十四条の三第一項の規定により産後一年を経過しない女性を就かせてはならない業務は、前項第一号から第十二号まで及び第十五号から第二十四号までに掲げる業務とする。ただし、同項第二号から第十二号まで、第十五号から第十七号まで及び第十九号から第二十三号までに掲げる業務については、産後一年を経過しない女性が当該業務に従事しない旨を使用者に申し出た場合に限る。
条文を読み分けると、次の表になります。
| 第1項の業務 | 妊娠中 | 産後一年を経過しない |
|---|---|---|
| 第一号(重量物) | 就かせてはならない | 就かせてはならない |
| 第二号から第十二号 | 就かせてはならない | 申出があった場合に限る |
| 第十三号・第十四号 | 就かせてはならない | 産後の一覧に入っていない |
| 第十五号から第十七号 | 就かせてはならない | 申出があった場合に限る |
| 第十八号(有害物) | 就かせてはならない | 就かせてはならない |
| 第十九号から第二十三号 | 就かせてはならない | 申出があった場合に限る |
| 第二十四号(振動) | 就かせてはならない | 就かせてはならない |
重量物(第一号)は、産後一年を経過しない女性についても、申出を条件としていません。ここは、実務で見落とされやすい点です。
第十三号・第十四号が産後の一覧に入っていないことは、条文の言葉から言えます。それ以上の趣旨は、今回の一次情報には書かれていません。
妊産婦以外の女性にも、重量物と有害物は及ぶ
第64条の3第2項は、妊産婦以外の女性について、一部の業務を準用できるとしています。女性則第3条は、これを次のように定めています。
法第六十四条の三第二項の規定により同条第一項の規定を準用する者は、妊娠中の女性及び産後一年を経過しない女性以外の女性とし、これらの者を就かせてはならない業務は、前条第一項第一号及び第十八号に掲げる業務とする。
妊産婦以外の女性にも、重量物(第一号)と有害物を発散する場所の業務(第十八号)は、就かせてはならない業務として及びます。この記事の中心は妊産婦ですが、勤務表を組むときは、妊娠していない女性職員にも重量物の上限があることを頭に置く必要があります。
移乗介助は「重量物を取り扱う業務」か
介護の現場で問われやすいのは、移乗介助や入浴介助のように、人の体を支える動作が重量物の取扱いに当たるかどうかです。
条文の言葉は「重量物を取り扱う業務」で、重量の基準は女性則第2条第1項第一号の表にあります。しかし、人を介助する動作が「重量物を取り扱う」ことに当たるか、介助される人の体重と表の重量をどう比べるかは、今回読んだ条文には書かれていません。
条文からは決まりません。介助動作を伴う業務に妊産婦を就かせるかどうかは、所轄の労働基準監督署に、業務の内容を具体的に説明したうえで確認してください。
第65条:産前産後の休業と、軽易な業務への転換
第65条は3つの項で構成されています。
産前:休業の請求があれば就業させてはならない
第1項は次のとおりです。
使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
読み取れることは次の3つです。
- 産前の期間は、出産予定日までの6週間以内(多胎妊娠は14週間以内)
- 就業禁止になるのは、女性が休業を請求した場合
- 請求がなければ、この項の就業禁止は働かない
請求した場合、条文は「就業させてはならない」と書いています。使用者の側で「もう少し働いてほしい」と判断できる書き方ではありません。
産後:8週間は就業させてはならない
第2項は次のとおりです。
使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
読み取れることは次のとおりです。
- 産後8週間を経過しない女性は、就業させてはならない。ここに請求の要件は書かれていない
- 例外として、産後6週間を経過した女性が請求し、かつ医師が支障がないと認めた業務であれば、就かせて差し支えない
- 例外には、請求と医師の認定の両方が要る
「産後8週間」は産前の請求とは性格が違い、本人が働きたいと希望しても、条文の例外の要件を満たさない限り就業させられません。
妊娠中:請求があれば軽易な業務に転換させる
第3項は次のとおりです。
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
読み取れることは次の3つです。
- 対象は妊娠中の女性。産後の女性は、この項の対象に書かれていない
- 条件は請求
- 「転換させなければならない」とあり、請求があれば使用者に義務が生じる
何が「他の軽易な業務」に当たるか、転換先の業務がない場合にどうするかは、今回読んだ条文には書かれていません。条文からは決まりません。
第66条:変形労働時間制・時間外・深夜業は、請求があれば
第66条は、3つの項がそれぞれ別の規定を挙げています。いずれも、妊産婦が請求した場合の規定です。
第1項:変形労働時間制でも、法定の労働時間を超えさせない
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
この項が「かかわらず」とした3つの条文は、いずれも変形労働時間制や、1日の労働時間の延長を定めた規定です。
| 条文 | 制度 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 第32条の2第1項 | 1か月以内の期間の変形労働時間制 | 条文に「一箇月以内」とある |
| 第32条の4第1項 | 対象期間が1か月を超え1年以内の変形労働時間制 | 条文に「一箇月を超え一年以内」とある |
| 第32条の5第1項 | 1日について10時間まで | 条文に「一日について十時間まで」とある |
妊産婦が請求した場合は、これらの規定によって週や日の労働時間を延ばす取扱いは使えず、「一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間」が上限になります。
第32条第1項・第2項の具体的な数字は、今回の一次情報に第32条の条文自体を入れていないので、この記事では「第32条第1項の労働時間」「同条第2項の労働時間」と条文の言葉のままに書きます。変形労働時間制の仕組みそのものは、変形労働時間制の記事で整理しています。
変形労働時間制で夜勤を組んでいる事業所では、次の点が条文から言えます。
- 妊産婦が請求したら、第32条の2・第32条の4・第32条の5の規定によって、特定の日や週に労働時間を延ばすことはできなくなる
- 勤務表を組み直すときは、請求した職員について、その日の労働時間と週の労働時間を、第32条第1項・第2項の上限に収める必要がある
一方、請求をした職員だけを別の勤務パターンにしたときの、ほかの職員との勤務のやりくりは、条文には書かれていません。
第2項:時間外労働・休日労働をさせない
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
読み取れることは次のとおりです。
- 妊産婦が請求した場合は、時間外労働も休日労働もさせてはならない
- 第33条第1項・第3項と第36条第1項の規定があっても、この禁止が優先する(「にかかわらず」)
第33条と第36条の中身は、今回の一次情報に入っていません。そのため、この記事では、それぞれの規定の詳細には触れません。条文の言葉として言えるのは、第2項が「にかかわらず」と書いていることです。
第3項:深夜業をさせない
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。
読み取れることは次の2つです。
- 妊産婦が請求した場合は、深夜業をさせてはならない
- 第1項・第2項と違い、「にかかわらず」の言葉はない
夜勤を組む事業所では、この第3項が最も直接に関わります。次の点は、今回読んだ条文には書かれていません。
- 「深夜」の時間帯が何時から何時までか(今回の一次情報に入っていません)
- 夜勤の一部(たとえば日付をまたいだ後半だけ)が深夜にかかるとき、請求は深夜の部分だけに及ぶのか、勤務全体に及ぶのか
勤務の一部が深夜にかかる夜勤について請求があったときの扱いは、条文からは決まりません。所轄の労働基準監督署に確認してください。休憩時間の長さの考え方は、休憩時間の記事で整理しています。
管理監督者の職員には、第66条は及ぶのか
施設長や主任など、管理の立場にある職員が妊娠した場合に、第66条の請求が使えるかどうかは、問い合わせが多い点です。条文から言えることと言えないことを分けて整理します。
第41条第1項の柱書は、次のとおりです。
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
第二号には、次のように書かれています。
事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
ここから条文の言葉として言えることは、次の3つです。
- 第41条が適用を外すのは、「労働時間、休憩及び休日に関する規定」と書かれている
- 第41条の文言に、「深夜」や「妊産婦」の語は出てこない
- 「監督若しくは管理の地位にある者」の範囲は、第41条には書かれていない
そして、次の点は条文から決まりません。
- 第66条第1項・第2項(労働時間・時間外・休日)が、第41条の「労働時間、休憩及び休日に関する規定」に当たるか
- 第66条第3項(深夜業)が、第41条の適用除外の対象になるか
- 具体的な職員が「監督若しくは管理の地位にある者」に当たるか
今回の一次情報では、第66条がどの章に置かれているかも示されていません。管理の立場の職員から請求があったときは、そのまま断らず、所轄の労働基準監督署に確認してから対応を決めてください。
第19条:解雇制限は、産前産後の休業期間とその後30日
第19条第1項は、解雇制限を定めた規定です。産前産後に関する部分は、次のとおりです。
産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
読み取れることは次のとおりです。
- 解雇が禁じられるのは、第65条の規定によって休業する期間と、その後30日間
- 妊娠中でも、第65条によって休業していない期間は、この文言に当たらない
第19条第1項には、ただし書があります。打切補償を支払う場合や、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は、この限りでないとされています。後者の場合は、第2項により、行政官庁の認定が要ります。
ただし、妊娠・出産を理由にした不利益な取扱い一般について、今回読んだ条文には書かれていません。休業期間中の賃金の扱いも、書かれていません。これらは別の法令や通達の領域なので、この記事では扱いません。
罰則:第64条の3から第67条までが対象
第119条の柱書は、次のとおりです。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
第1号には、「第六十四条の三から第六十七条まで」の規定に違反した者が含まれています。第19条や第32条も同じ号に並んでいます。
この記事で扱った第64条の3、第65条、第66条は、いずれもこの範囲に入ります。第19条(解雇制限)も、同じ号に挙がっています。
次の点は、今回の一次情報に入っていないので、書きません。
- 法人に対する罰則(いわゆる両罰規定)があるか
- どのような場合に、誰が処罰の対象になるか
- 請求が必要な規定で、請求がないまま働かせた場合の扱い
罰則は条文の存在を示すもので、個別の運用が適法かどうかは、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
条文には書かれていないこと
実務で聞かれやすい点のうち、今回読んだ条文に書かれていないものを整理します。
| 論点 | 条文での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 介助動作が重量物か | 重量の基準だけで、人の介助は書かれていない | 労働基準監督署に確認 |
| 管理監督者への第66条 | 第41条の文言からは決まらない | 労働基準監督署に確認 |
| 深夜の時間帯 | 今回の一次情報に入っていない | 労働基準監督署に確認 |
| 夜勤が深夜にまたがる場合 | 請求の及ぶ範囲が書かれていない | 労働基準監督署に確認 |
| 軽易業務の範囲 | 「他の軽易な業務」の定めがない | 労働基準監督署に確認 |
| 休業中の賃金 | 賃金の扱いが書かれていない | 社会保険労務士に確認 |
通達や判例、行政の解釈は、この記事では扱っていません。実際の運用では、そうした解釈が示されている場合があるので、個別の判断の前に、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
法人本部・事業所で整理しておくこと
条文の構造から、法人本部や管理者が手元でそろえておくとよい整理は次の5つです。条文から導いた弊社の整理で、個別の判断は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
- 請求が要る制限と要らない制限を、1枚の表で持つ。 第64条の3と第65条第2項は請求の要件が書かれていない規定、第65条第1項・第3項と第66条は請求が要る規定です。報告を受けたときに、どちらを先に確認するかが決まります
- 業務の一覧を、女性則第2条の一覧と突き合わせる。 重量物、有害物、暑熱・寒冷、振動など、自分の事業所の業務に近いものがないかを、一覧の全体で見ます。産後は申出が要るかどうかが号によって違います
- 勤務パターンごとに、請求があった場合の組み替えを決めておく。 夜勤、時間外、休日勤務、変形労働時間制の特定の日や週のそれぞれについて、第66条の請求があったらどう組み替えるかを、あらかじめ書き出しておきます
- 請求の受け方を決める。 条文には請求の方法が書かれていないため、事業所として、いつ・誰に・どう伝えてもらうかを決め、本人に伝えます
- 条文から決まらない点は、確認先と確認内容を残す。 管理監督者の職員の扱い、介助動作の扱い、夜勤が深夜にまたがる場合は、所轄の労働基準監督署に確認した日と回答を記録しておきます
この記事で書いていないこと
次のことは、今回確認した条文には書かれていません。この記事でも書きません。
- 介助動作が重量物の取扱いに当たるか:条文には書かれていません
- 管理監督者の職員に第66条が及ぶか:条文の言葉からは決まりません
- 深夜の時間帯:今回の一次情報に入っていません
- 第33条・第36条の規定の中身:今回の一次情報に入っていません
- 請求の方法・期限:条文には書かれていません
- 休業中の賃金、不利益取扱いの禁止:今回の一次情報に入っていません
- 法人に対する罰則:今回の一次情報に入っていません
- 通達・判例・行政解釈:今回の一次情報に入っていません
まとめ
- 妊娠中の女性と産後一年を経過しない女性が「妊産婦」。重量物などの業務に就かせてはならない(第64条の3第1項)。この項に請求の要件は書かれていない
- 就かせてはならない業務の範囲は省令で定められ、重量物は女性則第2条第1項第一号。産後は、号によって申出が要る場合と要らない場合がある(第2条第2項)
- 産前6週間(多胎は14週間)以内の休業は請求があれば、産後8週間は請求がなくても就業させてはならない。産後6週間後の例外には、請求と医師の認定が要る(第65条)
- 妊娠中の女性が請求したら、他の軽易な業務に転換させなければならない(第65条第3項)
- 妊産婦が請求したら、変形労働時間制でも法定の労働時間を超えさせず(第1項)、時間外・休日労働をさせず(第2項)、深夜業をさせない(第3項)
- 産前産後の休業期間とその後30日間は、解雇してはならない。ただし書がある(第19条)
- 第64条の3から第67条までは、罰則の対象に入っている(第119条第1号)
- 管理監督者の職員への第66条の適用、介助動作が重量物に当たるか、夜勤が深夜にまたがる場合は、条文からは決まらない。所轄の労働基準監督署に確認する
参考にした一次情報
- 労働基準法|e-Gov法令検索:第十九条、第三十二条の二、第三十二条の四、第三十二条の五、第四十一条、第六十四条の三、第六十五条、第六十六条、第百十九条
- 女性労働基準規則|e-Gov法令検索:第二条、第三条
いずれも2026年11月4日にe-Govから取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業所の勤務の組み方が適法かどうかを判断するものではありません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
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