「特養は面積に関係なくスプリンクラーが要ると聞いたが、障がい者支援施設やデイサービスも同じなのか」「275平方メートルという数字はどの施設にかかるのか」。新築や改修、用途変更を考える段階で、施設長や法人本部の方からこうした質問をいただくことがあります。
結論から言うと、スプリンクラー設備の設置対象は、消防法施行令第12条第1項が号ごとに定めています。別表第一(六)項のうち、イとロの一部には、第1号に面積の条件がありません。275平方メートルという数字が出てくるのは、(六)項ロ(2)(4)(5)の一部だけです。(六)項ハは、第1号には入っておらず、階数や床面積を見る別の号でかかります。
この記事では、消防法施行令第12条、消防法施行規則第12条の2・第12条の3・第13条を、令和8年11月2日にe-Gov法令検索から取得した原文で読みます。条文から決まることと、決まらないことは分けて書きます。
先に結論
- スプリンクラー設備は、令第12条第1項の各号に掲げる防火対象物又はその部分に設置します。(六)項は、第1号のほか、第3号・第4号・第11号・第12号にも出てきます。
- 第1号イは(六)項イ(1)及び(2)、第1号ロは(六)項ロ(1)及び(3)です。この2つには、延べ面積の条件が書かれていません。
- 第1号ハは(六)項ロ(2)(4)(5)です。介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外は、延べ面積275平方メートル以上のものに限られます。
- 第1号は、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを対象にしていません。その構造は施行規則第12条の2が定めます。
- (六)項ハは、第1号に入っていません。第3号(地階を除く階数が十一以上)、第4号(床面積の合計)などでかかります。
- 設置の経過措置(既存の建物の扱い)は、この記事で確かめた条文には書かれていません。所轄の消防本部に確認します。
6項の区分は要点だけ
別表第一(六)項は、イ・ロ・ハ・ニに分かれています。福祉施設に関係するのはロとハで、条文での主な施設は次のとおりです。ロとハの見分け方の詳細は、防火対象物6項の記事で整理しています。
| 区分 | 条文に挙がる主な施設 | 令第12条第1項第1号 |
|---|---|---|
| (六)項イ(1)(2) | 特定診療科名のある病院、4人以上入院できる診療所 | イ |
| (六)項ロ(1)(3) | 特別養護老人ホーム、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設、乳児院など | ロ |
| (六)項ロ(2)(4)(5) | 救護施設、障害児入所施設、避難が困難な障害者等を主として入所させる障害者支援施設など | ハ |
| (六)項ハ | 老人デイサービスセンター、児童発達支援、生活介護、就労継続支援を行う施設など | 入っていない |
有料老人ホームや軽費老人ホームは、避難が困難な要介護者を主として入居させるものがロ(1)、そうでないものがハ(1)と条文で分かれています。認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設は、条文の語でロ(1)に挙がっています。個々の施設がどの区分に当たるかは、所轄の消防本部で確認してください。
スプリンクラー設備の設置対象は、令第12条第1項が号ごとに定める
令第12条第1項の柱書は、次のとおりです。
スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
この後に第1号から第12号までが並びます。(六)項の福祉施設を見るときは、第1号を入口にしつつ、第3号以降の号も合わせて確かめます。
第1号:(六)項イ・ロ・ハの3つに分かれる
第1号の柱書は、次のとおりです。
次に掲げる防火対象物(第三号及び第四号に掲げるものを除く。)で、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの
ここには、2つの除外の書き出しがあります。
- 「第三号及び第四号に掲げるものを除く」:階数が十一以上のもの(第3号)、床面積の合計が基準以上のもの(第4号)は、第1号ではなく第3号・第4号で扱います。
- 「総務省令で定める構造を有するもの以外のもの」:延焼を抑制する構造として総務省令で定める構造を有するものは、第1号の対象になりません。
なお、後者は条文では括弧書きではなく、「で、……有するもの以外のもの」という本文の続きです。構造の中身は、施行規則第12条の2を後の章で読みます。
イ:(六)項イ(1)及び(2)
別表第一(六)項イ(1)及び(2)に掲げる防火対象物
ロ:(六)項ロ(1)及び(3)
別表第一(六)項ロ(1)及び(3)に掲げる防火対象物
イとロの条文には、延べ面積の条件が書かれていません。特別養護老人ホームなどのロ(1)、乳児院のロ(3)は、第1号の書き方では、面積を理由に外れることはありません。
ハ:(六)項ロ(2)(4)(5)、275平方メートルの線引きはここだけ
別表第一(六)項ロ(2)、(4)及び(5)に掲げる防火対象物(介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外のものにあつては、延べ面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)
読み方は、次の2通りです。
| 入所者の主な区分 | 延べ面積の条件 | 条文の根拠 |
|---|---|---|
| 介助がなければ避難できない者を主として入所させる | 条件なし | 第1号ハの括弧書き |
| 上のもの以外 | 275平方メートル以上のものに限る | 第1号ハの括弧書き |
つまり、救護施設、障害児入所施設、避難が困難な障害者等を主として入所させる障害者支援施設などは、入所者の状況によって、面積の条件がかかるかどうかが分かれます。
なお、条文の「主として」が、入所者のどのくらいの割合を指すかは、この記事で確かめた条文には書かれていません。
「介助がなければ避難できない者」は施行規則第12条の3が定める
令第12条第1項第1号ハの「介助がなければ避難できない者」の中身は、施行規則第12条の3の柱書にあります。
令第十二条第一項第一号ハの介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者は、乳児、幼児並びに令別表第一(六)項ロ(2)、(4)及び(5)に規定する施設に入所する者(同表(六)項ロ(5)に規定する施設に入所する者にあつては、同表(六)項ロ(5)に規定する避難が困難な障害者等に限る。)のうち、次の各号のいずれかに該当する者とする。
各号のいずれかに当たる者が対象です。各号は、障害支援区分の認定調査項目で書かれています。条文は、認定調査項目を「障害支援区分に係る市町村審査会による審査及び判定の基準等に関する命令別表第一に掲げる項目」と説明しています。
| 号 | 認定調査項目 | 該当する者 |
|---|---|---|
| 第1号 | 三の群「移乗」 | 「支援が不要」「見守り等の支援が必要」に該当しない者 |
| 第2号 | 三の群「移動」 | 「支援が不要」「見守り等の支援が必要」に該当しない者 |
| 第3号 | 六の群「危険の認識」 | 「支援が不要」「部分的な支援が必要」に該当しない者 |
| 第4号 | 六の群「説明の理解」 | 「理解できる」に該当しない者 |
| 第5号 | 八の群「多動・行動停止」 | 「支援が不要」に該当しない者 |
| 第6号 | 八の群「不安定な行動」 | 「支援が不要」に該当しない者 |
どの入所者が各項目のどの選択肢に当たるかを、誰がどの時点で判定するのかは、この記事で確かめた条文には書かれていません。入所者の構成が変わる施設は、所轄の消防本部に判定の方法を確認してください。
延焼を抑制する構造は、施行規則第12条の2が定める
第1号の対象から外れる「総務省令で定める構造」は、施行規則第12条の2第1項の柱書が、区画を有することとして定めています。
令第十二条第一項第一号及び第九号の総務省令で定める構造は、次の各号に掲げる防火対象物又はその部分の区分に応じ、次の各号に定めるところにより、当該防火対象物又はその部分に設置される区画を有するものとする。
第1号・第2号は、令別表第一(六)項イ(1)及び(2)並びにロを含む区分を、基準面積で分けています。基準面積は、令第12条第2項第3号の2に規定する床面積の合計と条文で示されています。
| 基準面積 | 号 | 区画の要点 |
|---|---|---|
| 千平方メートル未満 | 第1号 | 居室を準耐火構造の壁及び床で区画。区画部分は百平方メートル以下ほか |
| 千平方メートル以上 | 第2号 | 居室を耐火構造の壁及び床で区画。区画部分は二百平方メートル以下ほか |
壁・天井の仕上げ、開口部の面積、防火戸などの要件も、各号に続けて書かれています。このほか、第2項は、入居者等の利用に供する居室が避難階のみにあり、延べ面積が百平方メートル未満の場合の別の構造を定めています。これらの細部は、この記事では確かめていません。
また、基準面積の計算で除かれる部分(令第12条第2項第3号の2の総務省令で定める部分)の中身は、この記事で確かめた条文には書かれていません。建物ごとに、設計者と所轄の消防本部で確認してください。
(六)項ハは第1号に入らず、第3号・第4号・第11号・第12号で見る
第1号イ・ロ・ハが挙げているのは、(六)項イ(1)(2)、ロ(1)(3)、ロ(2)(4)(5)です。(六)項ハは、第1号のどこにも挙がっていません。
(六)項ハ(デイサービスセンターなど)は、条文上は次の号で名前が出てきます。
| 号 | 条件の要点 | (六)項ハでの読み方 |
|---|---|---|
| 第3号 | 地階を除く階数が十一以上 | 「(六)項」に含まれる |
| 第4号 | 平屋建以外で、床面積の合計が六千平方メートル以上 | 「その他の防火対象物」の側 |
| 第11号 | 地階・無窓階は千平方メートル、四階以上十階以下は千五百平方メートル以上の階 | 「(六)項」に含まれる |
| 第12号 | 十一階以上の階 | 別表第一の防火対象物すべて |
第3号の書き出しは、次のとおりです。
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六)項イに掲げる防火対象物で、地階を除く階数が十一以上のもの(総務省令で定める部分を除く。)
第4号は、床面積の基準を、(六)項のイ・ハなどで分けています。
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)のうち、平屋建以外の防火対象物で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、同表(四)項及び(六)項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物にあつては三千平方メートル以上、その他の防火対象物にあつては六千平方メートル以上のもの
(六)項ハは、「その他の防火対象物」の側に入ります。第11号は、柱書で「前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の」と書き出し、第1号から第10号に当たらないものを対象にしています。
前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上十階以下の階(総務省令で定める部分を除く。)で、次に掲げるもの
イの床面積の基準は、次のとおりです。
別表第一(一)項、(三)項、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物の階で、その床面積が、地階又は無窓階にあつては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあつては千五百平方メートル以上のもの
第12号も、第1号から第11号に当たらない防火対象物の十一階以上の階を対象にしています。
前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)
つまり、(六)項ハのデイサービスなどは、275平方メートルで線を引く第1号ではなく、階数や階ごとの床面積で見る号が関係します。ただし、第4号と第11号の「総務省令で定める部分」の中身は、この記事では確かめていません。
設置しないことができる場合:第3項と第1項の除外
令第12条第3項は、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備を、それぞれの技術上の基準に従い、又はその例により設置したときは、その設備の有効範囲内の部分について、スプリンクラー設備を設置しないことができると定めています。ただし、福祉施設でこの規定がどう使われるかは、この記事では確かめていません。
また、第1号は、先に読んだとおり、規則第12条の2の構造を有するものを対象に含めていません。階数・面積の号(第3号・第4号など)には、同じ書き方はありません。
条文で決まっていないこと
実務で質問が多い点のうち、この記事で確かめた条文に書かれていないものを整理します。
| 論点 | 条文での扱い | 決め方 |
|---|---|---|
| 「主として」の割合 | 条文に数値が無い | 所轄の消防本部に確認 |
| 入所者の判定方法 | 判定の担当・時期が無い | 所轄の消防本部に確認 |
| 既存の建物の扱い | 経過措置は抜粋に無い | 所轄の消防本部に確認 |
| 基準面積から除く部分 | 総務省令の内容を確認していない | 設計者・消防本部に確認 |
| 設置後のヘッドの種類 | この記事の範囲外 | 設計者に確認 |
法人本部・施設で確認しておきたいこと
条文の読み方を踏まえて、確認したい点を整理します。これは条文から導いた弊社の整理で、実際の判断は所轄の消防本部に確認してください。
- 事業所ごとに、別表第一(六)項のイ・ロ・ハのどれに当たるかを確かめる。
- ロ(1)(3)に当たる事業所は、第1号ロで、面積の条件が書かれていないことを確かめる。
- ロ(2)(4)(5)に当たる事業所は、入所者の主な区分と延べ面積(275平方メートル)を確かめる。
- ハに当たる事業所は、階数と床面積を確かめ、第3号・第4号・第11号・第12号に当たるかを見る。
- 規則第12条の2の区画を有する建物かどうかを、設計図書で確かめる。
- 新築・改修・用途変更の前に、用途区分の変化で号が変わらないかを所轄の消防本部に相談する。
- 設置後の点検と報告は、消防用設備等の点検の記事で整理しています。
この記事で書いていないこと
条文の抜粋に書かれていない論点は、断定しません。
| 論点 | 書かなかった理由 |
|---|---|
| ヘッドの種類・設置の細部 | 令第12条第2項などの範囲外 |
| 工事費・補助金 | 条文に書かれていない |
| 経過措置(既存の建物) | 抜粋に無い |
| (十六)項の複合用途の扱い | 抜粋の範囲外 |
| 特定施設水道連結型の詳細 | 抜粋の範囲外 |
| 自治体の火災予防条例 | 抜粋の対象外 |
制度の細部は、条文の原文や所轄の消防本部の案内で確かめてください。
まとめ
- スプリンクラー設備の設置対象は、令第12条第1項が号ごとに定めます。(六)項は、第1号のほか、第3号・第4号・第11号・第12号にも出てきます。
- 第1号イ((六)項イ(1)(2))とロ((六)項ロ(1)(3))には、面積の条件が書かれていません。
- 275平方メートルの線引きは、第1号ハ((六)項ロ(2)(4)(5))で、介助がなければ避難できない者を主として入所させるもの以外に限ってかかります。
- 「介助がなければ避難できない者」は、施行規則第12条の3が、障害支援区分の認定調査項目で定めます。
- 第1号は、規則第12条の2の延焼を抑制する構造を有するものを対象にしません。
- (六)項ハは、第1号に入らず、階数や床面積の号(第3号・第4号・第11号・第12号)で見ます。
参考にした一次情報
- 消防法施行令|e-Gov法令検索:第12条、別表第一(六)項
- 消防法施行規則|e-Gov法令検索:第5条、第12条の2、第12条の3、第13条
事業所ごとの用途区分、延べ面積、階数を、法人本部で確かめられる形になっていますか?
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