「お薬カレンダーに薬をセットするのは、介護職員がやってよいのか」「PTPシートから薬を出して手渡すのは医療行為にならないのか」「湿布は貼ってよいのか」。看護職員や管理者の方から、現場の判断が分かれる場面としてよく聞くお話です。法人本部で複数の事業所を見ていると、事業所ごとに運用が違うことも気になります。
結論から言うと、介護職員が行える医薬品の使用の介助は、厚生労働省医政局長の通知3本で少しずつ広がってきました。平成17年の通知が出発点で、令和4年12月の「その2」で爪白癬への外用液、吸入薬、分包された液剤の内服が加わり、令和7年12月の「その3」でお薬カレンダーへのセット、服薬直前のPTPシートからの取り出し、いわゆる湿布の貼付が整理されました。ただし、どの通知も共通の前提を置いています。
この記事は、3本の通知の本文を令和8年11月2日に取得し、原文で確かめたものです。平成17年の通知の範囲は、すでに介護の誤薬対策の記事で整理しているので、ここでは要点にとどめ、その2とその3で何が増えたかを中心に読みます。通知に書かれていないことは、書かれていないと明記します。
先に結論
- 医行為かどうかは、個々の行為の態様に応じて個別具体的に判断する、と通知は書いています。通知が挙げるのは「原則として医行為ではないと考えられるもの」です。
- 平成17年通知の別紙5は、軟膏の塗布、湿布の貼付、点眼、一包化された内用薬の内服、坐薬の挿入、鼻腔粘膜への薬剤噴霧を挙げ、3つの条件を置いています。
- 令和4年のその2の別紙15は、爪白癬にり患した爪への外用液、吸入薬の吸入、分包された液剤の内服を加えました。
- 令和7年のその3の別紙1は、お薬カレンダーへのセット、服薬直前のPTPシートからの取り出し、専門的な管理が不要と確認された皮膚へのいわゆる湿布の貼付を挙げています。
- 3本に共通して、医師等の確認と本人・家族等への伝達、事前の具体的な依頼、処方と薬袋等での患者ごとの区分、薬剤師の服薬指導、看護職員の保健指導・助言が前提になっています。
- 福祉施設等では看護職員による実施が望ましいと、平成17年とその2に書かれています。事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別に判断される、とも書かれています。
前提:医行為かどうかは、行為ごとに個別に判断される
平成17年の通知は、医師等の免許がない人による医業が禁止されていることを述べたうえで、医業の意味を次のように説明しています。
当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことであると解している。
そのうえで、個々の行為については、次のように書いています。
ある行為が医行為であるか否かについては、個々の行為の態様に応じ個別具体的に判断する必要がある。
つまり、通知に載っている行為なら何でも常に許されるという書き方ではなく、「原則として医行為ではないと考えられるもの」を参考として列挙している、という位置づけです。
平成17年通知:別紙5と3つの条件(要点)
平成17年7月26日の医政発第0726005号の別紙5は、医薬品の使用の介助について、次のように書いています。
患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。
具体的な行為は、次のとおりです。
具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。
3つの条件は、次の3点です。
患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
平成17年の時点で、すでに湿布の貼付と一包化された内用薬の内服が入っていたことに注意してください。この記事の後半で読む令和7年の通知は、ゼロから湿布を認めたものではなく、定義と方法を整理し直したものです。
令和4年のその2:別紙15で加わった3つの行為
令和4年12月1日の医政発1201第4号(その2)は、平成17年通知に載っていない行為のうち、介護現場で実施されることが多いと考えられるものを整理した通知です。別紙には、インスリン関係や経管栄養関係など多くの行為が並び、服薬に関わるのは15番です。15番の前半は、平成17年とほぼ同じ手続の前提で、「本人又は家族等」と書かれています。行為は次のとおりです。
具体的には、水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏又は外用液の塗布(褥瘡の処置を除く。)、吸入薬の吸入及び分包された液剤の内服を介助すること。
平成17年と比べると、爪白癬にり患した爪への外用液の塗布、吸入薬の吸入、分包された液剤の内服が加わっています。
3条件も、15番に書かれています。①と②は平成17年と同じで、③は次のように書かれています。
内用薬については誤嚥の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと
平成17年の③にあった「坐薬については肛門からの出血の可能性」の部分は、その2の15番の③には出てきません。これは、その2の15番が坐薬を挙げていないことに対応した書き方と考えられますが、理由は通知に書かれていません。
令和7年のその3:別紙1で整理された服薬準備
令和7年12月26日の医政発1226第12号(その3)は、別紙の「服薬準備等関係」の1番で、いわゆる湿布の貼付とその他の医薬品の使用の介助を、次のように書いています。
事前の本人又は家族等の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守したいわゆる湿布の貼付又はその他の医薬品の使用の介助をすること。
この直前に、医師、歯科医師又は看護職員が、免許を持たない人による介助ができることを本人又は家族等に伝えている場合に、という条件が置かれています。具体的な行為は、次の3つです。
お薬カレンダーへ一包化された等の医薬品をセットすること
服薬の直前にPTPシートから薬剤を取り出すこと
専門的な管理が必要無いことを医師若しくは看護職員が確認した皮膚に、いわゆる湿布を貼付すること
PTPシートは、切り離さない
2つ目には※2が付いており、次のように書かれています。
PTPシートをハサミなどで1つずつに切り離さないよう留意すること。
お薬カレンダーに入れるときの作業とは別に、服薬の直前に取り出す行為として位置づけられていることが、文言から読み取れます。切り離さない理由は、通知には書かれていません。
湿布の定義(※1)
「いわゆる湿布」は、次のように定義されています。
鎮痛・消炎に係る効能・効果を有する貼付剤(麻薬若しくは向精神薬であるもの又はステロイド外用剤等専ら皮膚疾患に用いるものを除く。)
つまり、鎮痛・消炎の貼付剤が対象で、麻薬や向精神薬、皮膚疾患に使うステロイド外用剤などは、この定義から外れます。
その3の別紙1に出てこないもの
その3の別紙1の本文には、平成17年やその2にあった「3条件」の記載が出てきません。そのかわり、湿布の貼付については「専門的な管理が必要無いことを医師若しくは看護職員が確認した皮膚」という条件が付いています。平成17年やその2の3条件が、その3によって変わるのかどうかは、この記事で読んだ範囲では通知に書かれていません。運用は、看護職員や所轄の指導窓口と確かめてください。
3本の通知で加わった行為を整理すると、次のとおりです。
| 通知 | 加わった行為 | 別紙の位置 |
|---|---|---|
| 平成17年 | 軟膏・湿布・点眼・一包化内用薬・坐薬・鼻腔噴霧 | 別紙5 |
| 令和4年 その2 | 爪白癬の外用液・吸入薬・分包された液剤の内服 | 別紙15 |
| 令和7年 その3 | お薬カレンダーへのセット・PTPシートからの取り出し | 別紙1 |
その3は、そのほかに、いわゆる湿布の定義(※1)を置いています。
3本に共通する前提
3本を読み比べると、手続の前提がほぼ共通しています。
| 項目 | 通知の書き方 | 出典 |
|---|---|---|
| 確認と伝達 | 医師等が確認し、免許のない人による介助ができることを本人・家族等に伝える | 3本とも |
| 具体的な依頼 | 事前の本人又は家族等の具体的な依頼に基づく | 3本とも |
| 処方と区分 | 医師の処方を受け、薬袋等で患者ごとに区分された医薬品 | 3本とも |
| 指導と助言 | 薬剤師の服薬指導、看護職員の保健指導・助言を遵守 | 3本とも |
| 3つの条件 | 容態が安定、連続的な経過観察が不要、使用方法に専門的配慮が不要 | 別紙5・別紙15 |
平成17年では「本人又は家族」、その2とその3では「本人又は家族等」と書かれています。
薬の内容によっては、介助の範囲そのものを医療職が判断する必要もあります。その3の注2は、次のように書いています。
前記1に掲げる医薬品の使用の介助について、抗血栓薬といった特に安全管理が必要な医薬品等服薬の内容によっては、医師、看護師等の医療に関する免許を有しない者が当該行為を実施する際に注意すべきものや医師、歯科医師、薬剤師又は看護職員による専門的な管理を必要とするものもあるため、当該行為の実施に当たってはこれらの免許を有する者が判断し、服薬する医薬品の用法を遵守するとともに、その内容について確認すること。
湿布についても、その3の注1が、病状が不安定な場合の扱いを書いています。
病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。
つまり、通知に載っている行為でも、利用者の状態によっては医行為にあたる場合があります。通知は、サービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて医師、歯科医師、薬剤師又は看護職員に確認することが考えられる、としています。
福祉施設では、看護職員による実施が望ましい
特養、障がい者支援施設、グループホームなど、福祉施設等での実施については、平成17年の注5が次のように書いています。
上記5に掲げる医薬品の使用の介助が福祉施設等において行われる場合には、看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がある場合には、その指導の下で実施されるべきである。
その2の注6にも、15番について同じ内容の文が書かれています。一方、その3の注6は、看護職員による実施計画がある場合の連携を書いていますが、お薬カレンダーのセットや湿布の貼付について「福祉施設等では看護職員による実施が望ましい」という文は、この記事で読んだ範囲では出てきません。看護職員が置かれている施設では、その3が出たあとも、看護職員の指導を前提に運用することになります。
責任は別に判断される
通知の整理は、法律の解釈に関するものです。その3の注7は、次のように書いています。
今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきものである。
平成17年の注4、その2の注5にも、同じ趣旨の文があります。通知に載っている行為だから事故があっても責任を問われない、という書き方ではありません。
服薬の情報共有・記録は、法人で決めておく
3本の通知は、介助の前提として、処方、薬袋等による区分、薬剤師の指導、看護職員の助言をそろえることを求めています。通知には、記録の様式や保存期間は書かれていません。どの利用者が、どの薬を、いつ、誰の確認のもとで介助してよいのかを、事業所と法人で決めておく必要があります。
服薬の内容が紙の表や個人のメモに分かれていると、交代時の確認が漏れやすくなります。服薬情報を一覧で共有できる「社福BOX」のような仕組みもあります。ただし、介助の範囲と手続は、仕組みを選ぶ前に、通知と看護職員の判断で法人として確かめておくことが先です。
法人本部・施設で確認しておきたいこと
通知の読み方を踏まえて、確認したい点を整理します。これは通知から導いた弊社の整理で、実際の判断は医師、薬剤師、看護職員と確かめてください。
- 利用者ごとに、医師等が「免許のない人による介助ができる」と確認し、本人・家族等に伝えた記録があるか。
- 本人・家族等の具体的な依頼が、事前に得られているか。
- 薬が、薬袋等で患者ごとに区分されているか。
- お薬カレンダーのセットや、PTPシートからの取り出しの手順に、切り離さないという注意が入っているか。
- 抗血栓薬など、特に安全管理が必要な薬の有無を、医療職が確認しているか。
- 病状が不安定な利用者について、サービス担当者会議などで医療職に確認する場があるか。
- 看護職員が置かれている施設は、看護職員の指導の下で実施する体制になっているか。
この記事で書いていないこと
通知に書かれていないことは、断定しません。
| 論点 | 書かなかった理由 |
|---|---|
| 研修の時間数・内容 | 研修が望ましいとの記載のみで、時間数はない |
| 記録の様式・保存期間 | 3本の通知には書かれていない |
| 加算や報酬の扱い | 通知の対象外 |
| 3条件のその3での扱い | 別紙1に出てこず、通知から判断できない |
| 他の別紙の行為 | インスリンなど服薬以外は対象外 |
| 自治体や指導窓口の運用 | 抜粋の対象外 |
制度の細部は、通知の原文と、所轄の指導窓口の案内で確かめてください。
まとめ
- 介護職員が行える医薬品の使用の介助は、平成17年、令和4年、令和7年の通知で、段階的に整理されてきました。
- 平成17年は軟膏・湿布・点眼・一包化された内用薬・坐薬・鼻腔噴霧、令和4年は爪白癬の外用液・吸入薬・分包された液剤の内服、令和7年はお薬カレンダーへのセット・PTPシートからの取り出し・いわゆる湿布の貼付を挙げています。
- 3本に共通する前提は、医師等の確認と伝達、事前の具体的な依頼、処方と薬袋等での区分、薬剤師の服薬指導、看護職員の保健指導・助言です。
- 抗血栓薬など特に安全管理が必要な薬は、医療職が判断します。福祉施設等では看護職員による実施が望ましいと、平成17年とその2に書かれています。
- 事故が起きた場合の刑事上・民事上の責任は別に判断されます。
参考にした一次情報
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)(平成17年7月26日 医政発第0726005号)|厚生労働省 法令等データベース:別紙5、注1から注6
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)(令和4年12月1日 医政発1201第4号)|静岡県掲載のPDF:別紙15、注2、注5、注6
- 医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その3)(令和7年12月26日 医政発1226第12号)|静岡県掲載のPDF:別紙1、注1、注2、注5、注6、注7
服薬の確認・情報共有を、事業所ごとの運用に頼らない形になっていますか?
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。利用者ごとの服薬内容、医療職の確認の記録、介助の手順を、事業所をまたいで法人本部で確かめられる形に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。