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空床利用|特養の空きベッドで行うショートステイの基準を条文で読む

「入所者が入院して空いたベッドを、ショートステイに使えないか」「空床利用と併設は、何が違うのか」。特別養護老人ホームを運営する法人の施設長や事務長のところには、こうした疑問が届くことがあります。現場では「空床型」「空床利用型」と呼ばれますが、実際の条文は、どう書いているのでしょうか。

この記事では、介護保険の指定短期入所生活介護について、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「基準」)の第120条、第121条、第123条、第124条、第137条、第138条を読みます。令和8年10月31日にe-Gov法令検索から取得した条文が根拠です。条文から決まることと、決まらないことは分けて書きます。

なお、障がい福祉サービスの短期入所は別の制度です。そちらは、障がい福祉の短期入所と個別支援計画|条文に作成の定めがない根拠と記録の義務で扱っています。この記事は、介護保険の短期入所生活介護だけを対象にします。

先に結論

  • 条文には「空床利用型」「空床型」という語はありません。該当するのは、基準第121条第2項の、特別養護老人ホームで、入所者に利用されていない居室を使って指定短期入所生活介護の事業を行うものです。
  • 併設事業所は、第121条第4項が定める別の形です。人員、利用定員、設備の扱いが、空床利用の特養とは違います。
  • 空床利用の特養では、人員は「利用者を入所者とみなして、特養として必要な数」を確保します。利用定員と専用居室の規定は適用されず、設備も特養として必要なもので足ります。運営規程に利用定員を定めることも、記載事項から除かれています。
  • そのかわり、定員の遵守は特養の入所定員と居室の定員が基準になります(第138条第1項第1号)。
  • 報酬の単位数、加算、併設との併用、入院中のベッドの扱い、指定の手続は、抜粋した条文からは決まりません。この記事では断定せず、確認先を書きます。

条文に「空床利用型」という語は無い

最初に、空床利用に当たる条文を確認します。基準第121条第2項は、特養が自分の空いた居室を使って短期入所生活介護を行う場合を、次のように示しています。

その全部又は一部が入所者に利用されていない居室を利用して指定短期入所生活介護の事業を行うもの

この部分は、特別養護老人ホームについての文の途中にあります。つまり、特養であって、居室の全部または一部が入所者に使われていない場合に、その居室で短期入所生活介護を行うもの、という意味です。基準は、このような特養を「空床利用型」とは呼びません。第123条、第124条第5項、第137条第1項第3号、第138条第1項第1号が、いずれも「第百二十一条第二項の適用を受ける特別養護老人ホーム」として参照しています。

一方、併設事業所は、第121条第4項に定義があります。

併設される指定短期入所生活介護事業所であって、当該特別養護老人ホーム等と一体的に運営が行われるもの

ここでいう特別養護老人ホーム等には、特養のほか、養護老人ホーム、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設などが含まれます。併設事業所は、これらの施設に併設され、一体的に運営される事業所です。

3つの形を、条文の根拠と人員の考え方で並べます。

形条文の根拠人員の考え方
空床利用の特養第121条第2項利用者を入所者とみなし、特養として必要な数を確保する
併設事業所第121条第4項本体の必要数に加えて、第1項の従業者を確保する
上記のどちらでもない事業所第121条第1項医師、生活相談員、機能訓練指導員など第1項各号の従業者を置く

3行目は、この記事での弊社の整理です。条文に「単独型」という語は無く、第2項にも第4項にも当たらない事業所には、第1項の原則が及ぶ、という読み方です。

人員:入所者とみなして、特養として必要な数を確保する

空床利用の特養の人員は、第121条第2項が次のように定めています。

これらの従業者について利用者を当該特別養護老人ホームの入所者とみなした場合における同法に規定する特別養護老人ホームとして必要とされる数が確保されるために必要な数以上とする。

ここでいう「これらの従業者」は、第1項各号に掲げる短期入所生活介護従業者です。文の頭には「同項の規定にかかわらず」とあるので、第1項の員数の定めが、この第2項の考え方に置き換わります。つまり、短期入所の利用者を入所者の数に含めたうえで、特養として必要な従業者の数が確保されていれば足ります。

併設事業所は、考え方が違います。第121条第4項の後半は、次のとおりです。

老人福祉法、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)又は法に規定する特別養護老人ホーム等として必要とされる数の従業者に加えて、第一項各号に掲げる短期入所生活介護従業者を確保するものとする。

本体の施設として必要な数に加えて、第1項各号の従業者を確保する形です。同じ特養に短期入所生活介護がつく場合でも、空床利用なら入所者とみなして特養として必要な数、併設なら本体の必要数に上乗せ、と読み分けます。

特養として必要な従業者の具体的な数は、老人福祉法側の基準に書かれており、この記事では確かめていません。

利用定員、設備、運営規程:空床利用の特養は別の扱い

次に、利用定員、居室、設備、運営規程の扱いを見ます。

利用定員と専用居室

指定短期入所生活介護事業所の原則は、第123条第1項に書かれています。

指定短期入所生活介護事業所は、その利用定員を二十人以上とし、指定短期入所生活介護の事業の専用の居室を設けるものとする。ただし、第百二十一条第二項の適用を受ける特別養護老人ホームの場合にあっては、この限りでない。

ただし書きにより、空床利用の特養には、利用定員20人以上と専用居室の規定が適用されません。専用の居室を前提にしない形だから、と読めます。併設事業所は、ただし書きではなく第123条第2項で、利用定員を20人未満とすることができる場合があります。

設備

設備は、第124条第5項が次のように定めています。

第百二十一条第二項の規定の適用を受ける特別養護老人ホームの場合にあっては、第三項及び第七項第一号の規定にかかわらず、老人福祉法に規定する特別養護老人ホームとして必要とされる設備を有することで足りるものとする。

第3項は設備の一覧、第7項第1号は廊下の幅の定めです。空床利用の特養は、これらにかかわらず、特養として必要な設備があれば足ります。併設事業所は、第124条第4項により、条件を満たせば本体の居室以外の設備を短期入所生活介護に使えます。

運営規程

運営規程の記載事項は、第137条第1項に並んでいます。その第3号は、次のとおりです。

利用定員(第百二十一条第二項の適用を受ける特別養護老人ホームである場合を除く。)

空床利用の特養は、運営規程の記載事項から、利用定員が除かれています。短期入所生活介護の利用定員を別に持たない形と、整合しています。

ここまでを、表にまとめます。

項目空床利用の特養その他の事業所
利用定員・専用居室(第123条)20人以上・専用居室の規定は適用しない利用定員20人以上、専用居室を設ける(併設は第2項の条件で20人未満も可)
設備(第124条)特養として必要な設備で足りる第3項の設備を設ける(併設は第4項で本体の設備を使える場合がある)
運営規程の利用定員(第137条)記載事項から除かれる記載事項に含まれる
定員の遵守(第138条第1項)特養の入所定員と居室の定員が基準利用定員と居室の定員が基準

定員の遵守:入所定員と居室の定員を超えない

空床利用の特養で、いちばん日々の運用に響くのは、定員の遵守です。第138条第1項の柱書は、次のとおりです。

指定短期入所生活介護事業者は、次に掲げる利用者数以上の利用者に対して同時に指定短期入所生活介護を行ってはならない。ただし、災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りでない。

そして、空床利用の特養については、第1号がこう定めています。

第百二十一条第二項の適用を受ける特別養護老人ホームである指定短期入所生活介護事業所にあっては、当該特別養護老人ホームの入所定員及び居室の定員を超えることとなる利用者数

基準になるのは、短期入所生活介護の「利用定員」ではなく、特養の入所定員と居室の定員です。「超えることとなる」という書き方から、入所者の数と短期入所の利用者の数を合わせて見ることになる、と読めます。これは弊社の読み方で、数え方の細部は、指定権者に確認してください。

その他の事業所は、第2号により、利用定員と居室の定員が基準になります。

緊急のときの例外

第138条第2項は、緊急の利用について、静養室を使った例外を設けています。

利用者の状況や利用者の家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護を受けることが必要と認めた者に対し、居宅サービス計画において位置付けられていない指定短期入所生活介護を提供する場合であって、当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がない場合にあっては、前項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる利用者数を超えて、静養室において指定短期入所生活介護を行うことができるものとする。

条件を分けると、次の4つがそろう場合です。

  • 利用者の状況や家族等の事情があること
  • 居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に必要と認めた者であること
  • 居宅サービス計画に位置付けられていない短期入所生活介護であること
  • 当該利用者と他の利用者の処遇に支障がないこと

この場合に限り、第1項各号の利用者数を超えて、静養室で行うことができます。空床利用の特養に、この例外に使える静養室があるのかどうかは、抜粋した条文からは決まりません。

空きベッドの把握が、日々の運用の中心になる

ここまでの条文を運用に置き換えると、空床利用の特養では、次の点が日々の管理になります。これは条文から導いた弊社の整理です。

  • 特養の入所定員と居室の定員があり、短期入所の利用者数を含めて、それを超えないようにする(第138条第1項第1号)。
  • 短期入所の利用者は、特養の入所者とみなして、人員を確保する(第121条第2項)。
  • 空いている居室を使うので、居室ごとに、いつ誰が使い、いつ空くかを、日ごとに把握しておく必要がある。

入所者の入退所、入院、短期入所の予約が重なると、紙や表計算の表では、定員を超えていないかを確かめるだけで時間がかかります。居室ごとの入所・短期入所の利用状況をカレンダーで管理できる「社福BOX」のベッド管理もご覧ください。ただし、数え方や運用のルールは、仕組みを選ぶ前に、上の条文と指定権者の案内で法人として確かめておくことが先です。

法人本部・施設で確認しておきたいこと

条文の読み方を踏まえて、確認したい点を整理します。これは弊社の整理で、実際の判断は、指定権者などの所管に確認してください。

  1. 自施設の短期入所生活介護が、第121条第2項(空床利用)、第4項(併設)、第1項(どちらでもない)のどれに当たるかを、指定の内容で確かめる。
  2. 空床利用なら、人員を「利用者を入所者とみなして、特養として必要な数」で確保できているかを確かめる。
  3. 運営規程に、利用定員が必要な形か、除かれる形かを確かめる。
  4. 特養の入所定員と居室の定員を、短期入所の利用者数を含めて超えない運用を、日ごとの把握で担保する。
  5. 緊急の利用で静養室を使う場合に、第138条第2項の4つの条件を、記録で残せるようにしておく。

この記事で書いていないこと

条文の抜粋に書かれていない論点は、断定しません。

論点書かなかった理由
報酬の単位数・加算抜粋に告示が無い
入院中の入所者のベッドを使えるか抜粋に定めが無い
併設と空床利用の併用の可否抜粋の条文では決まらない
自治体への指定の手続抜粋に手続の定めが無い
特養として必要な従業者の数老人福祉法側の基準で、抜粋の対象外
空床利用の利用者数の数え方第3項は第1項の利用者の数の定め
空床利用の特養の静養室の有無特養側の設備基準が抜粋に無い
居室の定員や面積の基準の及び方第124条第6項の扱いは条文から決まらない

報酬、併用、指定の手続は、指定権者の案内、告示、通知で確認してください。

まとめ

  • 条文に「空床利用型」の語は無く、基準第121条第2項の特養が該当します。併設事業所は第121条第4項で、別の形です。
  • 空床利用の特養の人員は、利用者を入所者とみなして、特養として必要な数を確保します。併設は、本体の必要数に加えて第1項の従業者を確保します。
  • 空床利用の特養には、利用定員20人以上と専用居室の規定が適用されず(第123条第1項ただし書)、設備は特養として必要なもので足り(第124条第5項)、運営規程から利用定員が除かれます(第137条第1項第3号)。
  • 定員の遵守は、特養の入所定員と居室の定員が基準です(第138条第1項第1号)。緊急の利用には、静養室を使った例外があります(同条第2項)。
  • 報酬、併設との併用、入院中のベッドの扱い、指定の手続は条文から決まらないので、指定権者に確認します。

参考にした一次情報


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阪本翔太

阪本翔太

奈良県の中小企業診断士 & ITストラテジスト。 公的機関や大学などで講師もしています。 地方でがんばる人をITで後押ししたい。

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