健康診断について調べると、項目や実施時期の解説はたくさん見つかります。ところが、受けさせた後に事業者が何をしなければならないのかを、条の順に条文で読んだものはあまり見当たりません。
この記事は、労働安全衛生法の第66条の3から第66条の7までの5条と、それを具体にする労働安全衛生規則の条文(第51条、第51条の2、第51条の4、第52条)を、条文のまま読みます。社会福祉法人の法人本部や事業所の管理者、事務担当の方が「うちの法人は、どこまでできていればよいのか」を整理する材料になるよう、義務の強さ、罰則の付き方、期限の書かれ方の3点に絞ります。健康診断の項目や二次健診などは扱いません。
なお、条文の見出しに「事後措置」という言葉はありません。この記事では、健診の結果が出た後に事業者に求められる一連の対応を、通称として「事後措置」と呼びます。
先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。
- 第66条の3から第66条の7は、記録、医師又は歯科医師からの意見聴取、実施後の措置、結果の通知、保健指導の5つを、この並びで定めている
- 文末は、第66条の3・第66条の4・第66条の5・第66条の6が「しなければならない」。第66条の7第1項だけが「努めなければならない」(努力義務)
- 罰則は非対称。第120条第1号の列挙に、第66条の3と第66条の6は入っている。第66条の4と第66条の5は入っていない
- 入っていないことは、やらなくてよいという意味ではない。 第66条の4は「聴かなければならない」、第66条の5は「講じなければならない」と、義務の語尾で書かれている
- 期限は規則に書かれている。意見聴取は健診が行われた日から三月以内、結果の通知は遅滞なく、健康診断個人票は五年間保存
- 規則第52条の健康診断結果報告は、常時五十人以上の労働者を使用する事業者が対象。数え方(法人単位か事業場単位か)は、読んだ条文からは決まらない
健診は「受けさせて終わり」ではありません。そして罰則の有無だけを見ると、法人の優先順位を間違えるおそれがあります。条文の構造を、順に見ていきます。
条文の地図:受けさせた後を定める5つの条
| 条 | 条見出し | 何を定めているか | 条文の文末 |
|---|---|---|---|
| 第66条の3 | 健康診断の結果の記録 | 健診の結果を記録しておく | 記録しておかなければならない |
| 第66条の4 | 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取 | 異常の所見がある労働者について、必要な措置を医師又は歯科医師に聴く | 意見を聴かなければならない |
| 第66条の5 | 健康診断実施後の措置 | 意見を勘案し、必要があると認めるときは措置を講ずる | 措置を講じなければならない |
| 第66条の6 | 健康診断の結果の通知 | 健診を受けた労働者に結果を通知する | 通知しなければならない |
| 第66条の7 | 保健指導等 | 特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に保健指導を行う | 行うように努めなければならない |
読みすぎないための注意が2つあります。
- 上の表は条の並びです。この順番で実施しなさいと、条文が書いているわけではありません。通知は、期限が規則に「遅滞なく」と書かれているだけで、意見聴取を済ませてから通知する、という書き方にはなっていません。実際の時系列は、法人で決めておく必要があります
- 同じ「しなければならない」でも条件の付き方が違います。第66条の3と第66条の6は条件なしです。第66条の4は異常の所見があると診断された労働者に係るものに限られ、第66条の5は意見の勘案と必要性の認定という条件が付いています
事後措置の条は、どの健康診断を指しているか
元になる第66条は、第1項が医師による健診、第2項が有害な業務で政令で定めるものに従事する労働者への特別の項目の健診、第3項が同じく歯科医師による健診、第4項が都道府県労働局長による臨時の健診の指示、第5項が労働者の受診義務です。第5項のただし書は、事業者の指定した医師などの健診を希望しない労働者が、他の医師などによる相当する健診を受けて結果を証明する書面を提出すれば、この限りでない、と定めます。第66条の2は、深夜業に従事する労働者が自ら受けた健診の結果の書面を事業者に提出できる、という条です。
事後措置の条が指す範囲は、条ごとに少しずつ違います。
| 条 | 対象になる健診(条文の書き方) |
|---|---|
| 第66条の3(記録) | 第66条第1項から第4項まで、第5項ただし書、第66条の2 |
| 第66条の4(意見聴取) | 同じ範囲。ただし異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る |
| 第66条の6(通知) | 第66条第1項から第4項までの規定により行う健診(第5項ただし書と第66条の2は条文に出てこない) |
| 第66条の7(保健指導) | 第66条第1項の健診、同条第5項ただし書の健診、第66条の2の健診(第2項から第4項は条文に出てこない) |
記録と意見聴取は、他の医師の健診の結果を提出した場合や、深夜業の労働者が自ら受けた健診の結果を提出した場合も対象に入っています。一方、通知は事業者が行う健診が対象で、その2つは条文に出てきません。範囲が違う理由は、条文には書かれていません。
第66条の3:結果の記録(規則で五年間保存)
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない。
記録の方法は規則が定めます。規則第51条の後半は次のとおりです。
健康診断個人票(様式第五号)を作成して、これを五年間保存しなければならない。
記録の形は健康診断個人票、保存は五年間です。深夜業の労働者が自ら受けた健診の結果も、個人票を作る対象に入っています。様式の中身と、五年間の数え始めの日は、条文からは分かりません。
第66条の4:医師又は歯科医師の意見を聴く(規則で三月以内)
事業者は、第六十六条第一項から第四項まで若しくは第五項ただし書又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師又は歯科医師の意見を聴かなければならない。
読み取れることは4つです。文末は「聴かなければならない」で義務の語尾。対象は異常の所見があると診断された労働者に係るものだけで、全員ではない。聴く内容は必要な措置について。聴く相手は「医師又は歯科医師」で、この条文に「産業医」という言葉は出てきません。
時期は規則第51条の2第1項に書かれています。
第四十三条等の健康診断が行われた日(法第六十六条第五項ただし書の場合にあつては、当該労働者が健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出した日)から三月以内に行うこと。
聴取した医師又は歯科医師の意見を健康診断個人票に記載すること。
「第四十三条等の健康診断」は、規則第51条が、雇入時や定期などの健診をまとめて呼ぶ言い方です。ここから読めるのは3点です。
- 起点は、健診が行われた日。結果が出た日や、受け取った日とは書かれていません
- 他の医師の健診の結果を提出した場合は、書面を提出した日が起点になります
- 聴いた意見は個人票に記載します。第66条の3の個人票が、意見の置き場所になっています
深夜業の労働者が自ら受けた健診の結果に基づく意見聴取は、第2項に別に書かれています。
当該健康診断の結果を証明する書面が事業者に提出された日から二月以内に行うこと。
この第2項は、聴く相手を「医師」とだけ書いており、期限も三月ではなく二月です。同じ第66条の4の意見聴取でも、元になる健診で期限と相手の書き方が違います。
第3項は、意見を聴かれる医師の側から求めがあったときの定めです。
事業者は、医師又は歯科医師から、前二項の意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかに、これを提供しなければならない。
医師は健診の結果だけでなく業務に関する情報を求めることがあり、求められたら事業者は速やかに提供しなければならない、と読めます。何を業務に関する情報とするかは、条文に書かれていません。
第66条の5:意見を勘案して、必要があれば措置を講ずる
第1項は長いので、前半部分を引用します。
事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、
後半は、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、医師又は歯科医師の意見の衛生委員会などへの報告その他の適切な措置を、講じなければならない、と続きます。
- 文末は「講じなければならない」。義務の語尾です
- ただし、その前に「意見を勘案し」「その必要があると認めるときは」「当該労働者の実情を考慮して」という条件が重なっています。必要があるかどうかを事業者が認める構造で、必要性の基準は条文に書かれていません
- 例に挙がる措置は、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少。「等」で終わるので例示です
- 作業環境測定の実施や、施設・設備の整備といった、人の配置を変えない措置も並んでいます
- 医師又は歯科医師の意見の、衛生委員会などへの報告も措置の1つです。衛生委員会そのものは、別の記事(衛生委員会)で扱っています
第2項は、厚生労働大臣が措置の適切かつ有効な実施を図るための指針を公表する、という定めです。第3項は次のとおりです。
厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。
罰金ではない形の関与として、指針に関する指導等の根拠が条文にあることは、あとの罰則の節で効いてきます。指針の中身は、この記事では確認していません。
第66条の6:結果は労働者本人に通知する(遅滞なく)
事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。
規則第51条の4は、期限の語を書いています。
事業者は、法第六十六条第四項又は第四十三条、第四十四条若しくは第四十五条から第四十八条までの健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。
期限の語は「遅滞なく」で、何日以内という数字は書かれていません。他の医師の健診の結果を提出した場合や、深夜業の労働者が自ら受けた健診は、法にも規則にも出てきません。通知の方法(書面か電子か、健診機関から直接でもよいか)も、条文には書かれていません。
第66条の7:保健指導は努力義務
事業者は、第六十六条第一項の規定による健康診断若しくは当該健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。
5つの条のなかで、ここだけが努力義務です。対象は「特に健康の保持に努める必要があると認める労働者」で、認める基準は条文に書かれていません。行うのは、医師又は保健師による保健指導です。
第2項は労働者の側の定めです。
労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。
労働者が健康の保持に努める材料として、条文は「前条の規定により通知された健康診断の結果」を挙げています。第66条の6の通知は、第66条の7第2項の労働者の努めの前提として、条文の中でつながっています。
罰則の付き方は、条ごとに違う
ここが、この記事でいちばん確かめたかった点です。罰則は、労働安全衛生法の第120条です。柱書は次のとおりです。
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第1号は、条番号を長く列挙する形です。この記事に関係する部分を引用します。
第六十六条第一項から第三項まで、第六十六条の三、第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項
第66条の8の2は、この記事では読んでいない条です。読んだ条文の第120条を、第1号から第6号まで条番号ごとに確かめた結果が、次の表です。
| 条 | 文末 | 第120条第1号の列挙 |
|---|---|---|
| 第66条第1項から第3項(健診を行う義務) | 行わなければならない | 入っている |
| 第66条の3(記録) | 記録しておかなければならない | 入っている |
| 第66条の4(意見聴取) | 聴かなければならない | 入っていない |
| 第66条の5(措置) | 講じなければならない | 入っていない |
| 第66条の6(通知) | 通知しなければならない | 入っている |
| 第66条の7第1項(保健指導) | 努めなければならない | 入っていない |
第66条の4と第66条の5は、第2号から第6号にも条番号として出てきません。第2号に出てくるのは、第66条第4項の指示に違反したときで、事後措置の条そのものではありません。
「罰則がないから、やらなくてよい」とは読めません
この非対称を見ると、意見聴取や措置は後回しでよいのでは、と思うかもしれません。条文は、そう読める書き方になっていません。
- 第66条の4は「聴かなければならない」、第66条の5は「講じなければならない」と、義務の語尾で書かれています。罰則の列挙に入っていないことと、義務ではないことは別の話です
- 第66条の5第3項には、指針に関し必要な指導等を行うことができると書かれています
- 規則第51条の2は、意見聴取を三月以内に行わなければならない、聴いた意見を個人票に記載しなければならないと、規則の側で義務の形に書いています
一方で、次のことは読んだ条文からは確認できません。第66条の4・第66条の5の違反に第120条以外の罰則や責任があるか。行政が指導などを実際にどう行うか。そして、第66条の4と第66条の5が第120条第1号の列挙に入っていない理由です。これらは「未確認」で、推測では書きません。法人としては、罰則の有無を優先順位の根拠にしないほうが安全です。これは条文の要求ではなく、私たちの提案です。
期限を、条文の語から読む
| 論点 | 条 | 期限・保存 | 条文の語 |
|---|---|---|---|
| 意見聴取(通常の健診) | 規則第51条の2第1項第1号 | 三月以内 | 健康診断が行われた日から |
| 意見聴取(他の医師の健診の結果を提出) | 同上 | 三月以内 | 書面を事業者に提出した日から |
| 意見聴取(深夜業の労働者が自ら受けた健診) | 同条第2項第1号 | 二月以内 | 書面が提出された日から |
| 業務情報の提供 | 同条第3項 | 速やかに | 求められたときは |
| 結果の通知 | 規則第51条の4 | 遅滞なく | 遅滞なく、当該健康診断の結果を通知 |
| 個人票の保存 | 規則第51条 | 五年間 | 五年間保存しなければならない |
| 実施後の措置 | 法第66条の5 | 期限の語なし | その必要があると認めるときは |
ここから、次の2点が条文の語から言えます。
- 意見聴取の三月は「健診が行われた日」から進みます。 健診機関から結果が届くまでに日数がかかれば、そのぶん意見聴取に使える期間は短くなります
- 健診が行われるたびに、その結果ごとに期限が走ります。 健診の回数が増えれば、管理する件数も増えます
措置(第66条の5)には、いつまでに講じるという数字は書かれていません。
健康診断結果報告(規則第52条):常時五十人以上の事業者
事後措置の周辺に、事務担当者が見落としやすい条がもう1つあります。規則第52条第1項の柱書です。
常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断(第四十四条又は第四十五条の健康診断であつて定期のものに限る。以下この項において同じ。)を行つたときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、次に掲げる事項を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
- 対象は常時五十人以上の労働者を使用する事業者。主語は「事業者」です
- 報告する健診は、第44条又は第45条の健診で定期のもの。雇入時の健診(第43条)は括弧書きに出てきません
- 報告事項には、事業場の名称・所在地、常時使用する労働者の数、健診を受けた労働者の数、異常所見があると診断された労働者の数及び医師による指示のあつた労働者の数、産業医の氏名などが入っています
異常所見の数は、意見聴取の対象を数える作業と重なります。事後措置の台帳から数が取れる形にしておくと、二度手間になりにくいはずです(条文の求めではなく、提案です)。第2項は第48条の定期の健診の報告で、第1項のような人数の条件は書かれていません。ただし第48条の中身は読んでいないため、福祉の現場に関係があるかは確認していません。
五十人の数え方は、読んだ条文からは決まりません
社会福祉法人は、1つの法人が特別養護老人ホーム、通所介護、グループホーム、法人本部など、複数の事業場を持つのが普通です。そのため「五十人」を法人全体で数えるのか、事業場ごとに数えるのかが、実務では気になるところです。
確かめられたのは、第52条第1項の主語が「事業者」であることと、報告事項に事業場の名称・所在地と常時使用する労働者の数が入っていることまでです。数え方そのものを書いた語も、「事業場」の定義も、読んだ条文にはありません。所轄の労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
福祉法人での運用:条文の構造から考える
ここからは、条文が書いていることではなく、構造から考えた運用の整理です。提案であることを、そのつど書きます。
夜勤のある職員の健診
第66条の2は、午後10時から午前5時までの間の業務を「深夜業」と定め、深夜業に従事する労働者で省令の要件に該当する者が、自ら受けた健診の結果の書面を事業者に提出できる、と書いています。提出された結果は、記録(第66条の3)、意見聴取(第66条の4)、保健指導(第66条の7)の条が名指ししています。通知(第66条の6)は名指ししていません。意見聴取の期限は三月ではなく二月です。
夜勤のある職員は、健診の機会が増える場合があり、そのぶん期限を管理する件数も増えます。夜勤のある職員の健診の回数や省令の要件は、この記事の条文には含めていません。別の記事(特定業務従事者の健康診断)で扱っています。
意見を聴く相手が見つからないとき
意見聴取でつまずきやすいのは、誰に聴くかです。第66条の4は聴く相手を「医師又は歯科医師」とだけ書き、産業医に限る、とは書いていません。産業医の選任は第13条第1項が「政令で定める規模の事業場ごとに」と書いていますが、規模の数字は条文に出てきません。産業医を選任していない事業場が、誰に頼むのが適切かは、条文だけでは分かりません。
条文の構造から、法人として準備しておけることはあります(提案です)。
- 意見聴取は健診が行われた日から三月以内。健診が終わってから頼み先を探すのでは間に合わないおそれがあるので、健診の予定が決まった段階で頼み先を決めておく
- 医師から求められたら業務に関する情報を速やかに提供しなければならない(規則第51条の2第3項)。夜勤の回数や、入浴・移乗の介助の多さなど、職員の業務の実態をすぐ説明できる資料を持っておく
措置は、シフトの組み替えになる
第66条の5が例に挙げる措置の語を、福祉の現場の言葉に置き換えてみます。次の表は一例で、どの措置が必要かは、医師の意見と労働者の実情によって変わります。
| 条文の語 | 現場の言葉に置き換えた一例(提案) |
|---|---|
| 就業場所の変更 | 配属する事業所やユニットの変更 |
| 作業の転換 | 夜勤や、入浴・移乗の介助が中心の持ち場から、別の業務の持ち場への配置換え |
| 労働時間の短縮 | 勤務時間を短くした勤務の設定 |
| 深夜業の回数の減少 | 夜勤の回数を減らした勤務の設定 |
| 施設又は設備の設置又は整備 | 人の配置を変えず、設備の側に手を入れる選択肢 |
見落としやすいのは、これらの措置は本人の勤務を変えるだけでは終わらないことです。本人の夜勤の回数を減らせば、同じ勤務表のなかで、ほかの職員の勤務の組み方も変わります。措置を講ずることは、シフトの組み替えを伴います。人員配置の基準との兼ね合いが出る可能性はありますが、その条文はこの記事では読んでいません。意見の内容を、誰がどの範囲で勤務表を組む管理者に伝えるのかも、条文には書かれていないので、法人で決めておく必要があります。
複数の事業場を持つ法人の見方
管理する単位を、次の3つに分けておくと混ざりません(提案です)。
- 事業場ごと:健診の実施日、職員数、産業医の選任の有無(第13条は事業場ごとに書かれている)
- 事業者(法人)として:第52条の報告が要るか(主語は事業者)
- 職員1人ごと:個人票、意見聴取の期限、措置の内容、通知の日
なお、パートや非常勤の職員が、条文の「常時使用する労働者」に当たるかどうかは、読んだ条文からは決まりません。
台帳に持っておきたい項目
| 項目 | 条文が求めるか | 持っておく理由 |
|---|---|---|
| 健診の実施日 | 意見聴取の三月の起点(規則第51条の2第1項第1号) | 期限の起点を間違えない |
| 異常の所見の有無 | 意見聴取の対象を限る条件(法第66条の4) | 対象者を漏れなく拾う |
| 意見聴取の期限と実施日 | 三月以内(自ら受けた健診は二月以内) | 間に合ったかを追う |
| 講じた措置と実施日 | 措置の記録は条文にない(提案) | 講じなかった場合の判断の理由も残す |
| 結果の通知日 | 通知は求める。日付の記録は条文にない(提案) | 「遅滞なく」を守れたかを確かめる |
| 個人票の保存期限 | 五年間保存(規則第51条) | 期間内の誤廃棄を防ぐ |
この記事で書いていないこと
条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。
- 健診の項目、省略できる項目、有所見者の割合、二次健診、特定健診・特定保健指導との関係
- 産業医の選任の細目、選任が必要な規模の数字、産業保健を支援する機関:第13条は「政令で定める規模」と書くだけです
- 意見聴取の様式、個人票の書式、五年間の数え始めの日
- 第66条の4・第66条の5の違反に、第120条以外の罰則や責任があるか、行政の指導の実際、第66条の5の指針の中身:未確認です。両条が第120条第1号の列挙に入っていない理由も、条文に書かれていません
- 「事業場」の定義、第52条の「常時五十人以上」の数え方、パート・非常勤が「常時使用する労働者」に当たるか
- 夜勤のある職員の健診の回数、第66条の2の省令の要件、第45条・第48条の健診の中身
- 結果の通知の具体的な方法、措置を講ずる期限の数字、人員配置基準との兼ね合い、第66条の8以降(面接指導など)
- 改正の時期・経緯
個別の判断は、所轄の労働基準監督署や、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
まとめ
- 受けさせて終わりではない。 第66条の3から第66条の7は、記録、意見聴取、実施後の措置、結果の通知、保健指導の5つを、この並びで定めている(並びは実施の順序を指定するものではない)
- 義務の強さは条ごとに違う。 第66条の3・第66条の4・第66条の5・第66条の6は「しなければならない」。第66条の7第1項だけが努力義務
- 罰則の付き方は非対称。 第120条第1号の列挙に、記録(第66条の3)と通知(第66条の6)は入っている。意見聴取(第66条の4)と実施後の措置(第66条の5)は入っていない
- 入っていないことは、やらなくてよいという意味ではない。 義務の語尾で書かれている。第120条以外の責任や行政の対応は未確認
- 期限は規則に書かれている。 意見聴取は健診が行われた日から三月以内(深夜業の労働者が自ら受けた健診は二月以内)、通知は遅滞なく、個人票は五年間保存
- 意見の相手は「医師又は歯科医師」。 第66条の4に産業医という言葉は出てこない
- 措置は、福祉の現場ではシフトの組み替えになる。 本人の勤務だけでなく勤務表全体に響く
- 規則第52条の報告は、常時五十人以上の労働者を使用する事業者が対象。 数え方は、読んだ条文からは決まらない
参考にした一次情報
- 労働安全衛生法|厚生労働省 法令等データベース:第十三条、第六十六条、第六十六条の二から第六十六条の七、第百二十条
- 労働安全衛生規則|厚生労働省 法令等データベース:第四十三条、第四十四条、第五十一条、第五十一条の二、第五十一条の四、第五十二条
いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業場への適用や、行政の運用を示すものではありません。
健診の結果から措置までを、法人全体で1つの台帳に持てていますか
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。施設ごとの健診の実施日、意見聴取の期限、措置の内容、結果の通知日を、事業場をまたいで法人本部で1つの台帳にして追える状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。