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生活介護の送迎|運営基準に規定がない中で事業所が決めておくこと

利用者のご自宅の前に車を着けたものの、玄関の中まで職員が入ってよいのか迷う。ご家族から「うちの近くのバス停まで迎えに来てもらえませんか」と頼まれたが、断る理由を何と説明すればよいのか分からない。新しく入った職員から「送迎って、どこまでやらないといけないんですか」と聞かれて、先輩の経験則でしか答えられない。生活介護の現場では、こうした場面で手が止まります。

こういうとき、多くの管理者は「運営基準に決まりがあるはずだ」と考えて条文を探します。ところが、探しても見つかりません。生活介護を定めている指定基準の本則には、「送迎」という語が一度も出てこないからです。

この記事では、次の3点を条文に沿って整理します。

  • 指定障害福祉サービスの運営基準の本則に、「送迎」「移送」「送り迎え」といった語が何回出てくるのか。そして、その数え方が壊れていないことの確認
  • 条文に送迎の規定が無いとき、「どこまで送るか」「費用をどうするか」「何を記録するか」を支える条文は何か
  • 4つの書類(運営規程・重要事項を記した文書・契約書・送迎の記録)が同じ内容を指しているかを、事業所で一度だけ突き合わせる方法

なお、この記事は平成18年厚生労働省令第171号「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(以下「指定基準」)の本則だけを根拠にしています。送迎に関する報酬(加算)の話は、別の記事にまとめています。扱わない範囲は、最後の節に正直に書きました。

目次

まず結論:送迎を名指しする条は無く、決めて書面にするのは事業所

先に答えを示します。

  • 指定基準の本則(283条)を機械的に数えると、「送迎」は0回、「移送」「送り迎え」も0回
  • 同じ数え方で「生活介護」は174回、「居宅」は423回、「通所」は138回出てくる。数え方が壊れているわけではなく、本当に出てこない
  • 生活介護の節(第77条から第93条)にも、送迎を義務づける条も、送迎を禁じる条も見当たらない
  • では何が「どこまで送るか」の拠りどころになるのか。条文から読み取れるのは、運営規程に「通常の事業の実施地域」を定める義務(第89条第六号)と、運営規程の概要を記した文書を交付して説明し、同意を得る義務(第9条の準用)、運営規程の概要の掲示(第92条)
  • 費用は、第82条第3項の枠組みで考える。条文は送迎という費目を名指ししていないため、この記事は「取れる」「取れない」を断定しない。条文が確実に求めているのは、あらかじめ内容と費用を説明して同意を得ること(第6項)と、領収証の交付(第5項)
  • 記録は、提供の都度の記録と、利用者側の確認(第19条の準用)

つまり、送迎は「法令で一律に決まっているもの」ではなく、事業所が決めて書面に落とし、利用者に説明して同意を得る形で担保されているものだと整理できます。順に、条文で確認していきます。

指定基準の本則に「送迎」の語は一度も出てこない

本則全文で数えた結果

まず、事実から入ります。指定基準の本則(第1条から第283条。附則は除く)の全文で、関連する語の出現回数を機械的に数えた結果が次の表です。

語本則での出現回数
送迎0
移送0
送り迎え0
自動車0
車両0
運転0
乗降0
輸送0
バス0
最寄り0
交通1
便宜24
通所138
生活介護174
居宅423

「交通」は1回出ますが、送迎とは別の文脈の1回です。

ここで、「0件でした」とだけ書くと、「数え方が間違っているのでは」と疑われます。そこで、同じ数え方で確実に出てくるはずの語も数えています。「生活介護」が174回、「居宅」が423回、「通所」が138回。これだけ出てくる語を同じ方法で数えられているのですから、数え方そのものは効いています。そのうえで、「送迎」が0回です。「条文に書かれているのを見落としている」のではなく、「書かれていない」というのが、機械的に確かめた結果です。

なお、ここでいう「書かれていない」は、あくまでこの省令の本則の話です。報酬を定める告示や、解釈を示す通知、自治体の要綱には、別の定めがあるかもしれません。この記事では、そちらは確認していません。

生活介護の節を読んでも、送迎は出てこない

指定基準の生活介護の節は、第77条から第93条までです。語の数を数えるだけでなく、生活介護の中心になる条を実際に読んでみます。

第77条は、生活介護の事業が何をするものなのかを書いた条です。

利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、規則第二条の四に規定する者に対して、入浴、排せつ及び食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の便宜を適切かつ効果的に行うものでなければならない。

名指しされているのは「入浴、排せつ及び食事の介護」「創作的活動又は生産活動の機会の提供」です。その後ろに「その他の便宜」という言葉が付いています。送迎が「その他の便宜」に含まれるのかどうかは、条文の語だけでは言えません。送迎という語が出てこない以上、含まれるとも含まれないとも、この記事では断定しません。

次に第83条(介護)の第1項と第4項です。

介護は、利用者の心身の状況に応じ、利用者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう、適切な技術をもって行われなければならない。

指定生活介護事業者は、前三項に定めるほか、利用者に対し、離床、着替え及び整容その他日常生活上必要な支援を適切に行わなければならない。

第83条が挙げているのは、排せつの自立の援助、おむつの取り替え、離床、着替え及び整容、そして常時一人以上の従業者を介護に従事させることなどです。事業所の中での介護について、細かく書かれています。ところが、事業所に着くまでの道のりや、事業所に着いてから乗り物を降りる場面についての記述は見当たりません。

第84条(生産活動)は、機会の提供に当たって、地域の実情や需給状況を考慮することや、作業時間・作業量が過重な負担にならないよう配慮することなどを定めています。これも、生産活動の話であって、送迎の話ではありません。

整理すると、生活介護の節で人員・設備・運営について書かれている内容は、次のとおりです。

条内容送迎の語
第77条事業が行うべきこと(入浴、排せつ、食事の介護、創作的活動・生産活動の機会の提供その他の便宜)なし
第78条従業者の員数(医師、看護職員、生活支援員、サービス管理責任者など)なし
第81条設備(訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室)なし
第82条利用者負担額等の受領なし
第83条介護なし
第84条生産活動なし
第86条食事なし
第89条運営規程なし
第92条掲示なし

「規定が無い」の読み方で、間違えやすい点

ここで、読み違えやすい点を2つ整理しておきます。

1つ目は、「規定が無い」は「何もしなくてよい」という意味ではない、ということ。 条文が名指しで義務づけていないだけで、事業所が送迎を行っている実態があるなら、その運用は事業所が責任を持って決めることになります。この記事のここから先は、決める場所はどこかを条文から探す作業です。

2つ目は、「規定が無い」は「送迎をしてはいけない」という意味でもない、ということ。 送迎を名指しで禁じる条も、見当たりません。

つまり、送迎は、条文の側からは「やれ」とも「やるな」とも言われていない領域にあります。だからこそ、「どこまでやるのか」を、事業所自身が決めて、利用者に伝える必要が出てきます。

どこまで送るかは、何で決まるのか(1)運営規程の「通常の事業の実施地域」

運営規程に定める12項目

事業所が自分でルールを決めて書面にする、その入れ物になっているのが運営規程です。第89条の柱書は、次のとおりです。

指定生活介護事業者は、指定生活介護事業所ごとに、次の各号に掲げる事業の運営についての重要事項に関する運営規程(第九十二条第一項において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。

各号は12項目あります。

号事項
一事業の目的及び運営の方針
二従業者の職種、員数及び職務の内容
三営業日及び営業時間
四利用定員
五指定生活介護の内容並びに支給決定障害者から受領する費用の種類及びその額
六通常の事業の実施地域
七サービスの利用に当たっての留意事項
八緊急時等における対応方法
九非常災害対策
十事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
十一虐待の防止のための措置に関する事項
十二その他運営に関する重要事項

この12項目のなかにも、「送迎」という語はありません。送迎という欄が、運営規程に用意されているわけではないのです。

第六号が、「どこまで行くか」を書く手がかりになる

そのうえで、送迎の範囲を考えるときに目を向けたい項目が2つあります。1つは、第六号です。

六 通常の事業の実施地域

もう1つは、第五号です。

五 指定生活介護の内容並びに支給決定障害者から受領する費用の種類及びその額

第六号の「通常の事業の実施地域」は、事業所が自分で定める項目です。事業所がどの範囲を通常の実施地域とするのかを、事業所自身が決めて運営規程という書面に書くという作りになっています。送迎の範囲を考えるとき、この項目が手がかりの1つになる、というのがこの記事の読み方です。

ただし、ここは丁寧に線を引いておきます。条文は、「通常の事業の実施地域」が送迎の範囲を指すとは書いていません。 この語が何を意味するのか、送迎の範囲とどう結びつけるのかは、条文の語だけでは決まりません。解釈を示す通知などがあるかどうかは、この記事では確認していません。したがって、自事業所の運営規程の第六号を送迎の範囲とどう対応づけるのかは、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)に確認するのが安全です。

第五号の「費用の種類及びその額」も、送迎に関係する可能性があります。利用者から何らかの費用を受け取る運用があるなら、その種類と額は運営規程に書くことになる、という位置づけです。この点は、後の「費用」の節で詳しく見ます。

送迎の記載場所は、条文からは決まらない

さらに、もう1つ押さえておきたいことがあります。送迎をどの号に書くのかは、条文からは決まりません。第六号の実施地域、第五号の費用、第三号の営業日及び営業時間、第七号のサービスの利用に当たっての留意事項、第十二号のその他運営に関する重要事項。送迎に関わる内容は、複数の号にまたがりうるからです。

どの号にどう書くかは、事業所が決めることです。決まった書き方が条文にない以上、「どこにも書いていない」状態だけは避けたいというのが、実務の考え方になります。送迎のルールが、運営規程にも、利用者に渡す文書にも書かれていないと、後から「どこまでやるのか」を説明する根拠が、職員の記憶しかなくなってしまうからです。

どこまで送るかは、何で決まるのか(2)利用者への説明と同意、そして掲示

第9条:運営規程の概要を記した文書を交付して説明する

運営規程に書いただけでは、ルールを決めたことになりません。利用者に伝わって初めて、運営の約束事になります。ここで効いてくるのが、第93条が準用している第9条(内容及び手続の説明及び同意)です。

まず、第93条が何を準用しているのかを確認します。第93条の第1文は、次のとおりです。

第九条から第十七条まで、第十九条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第二十八条、第三十三条の二、第三十五条の二から第四十一条まで、第五十七条から第六十条まで、第六十六条、第六十八条から第七十条まで、第七十四条及び第七十五条の規定は、指定生活介護の事業について準用する。

生活介護の節は、自分の節の中にすべてのルールを書いているわけではありません。居宅介護や療養介護などの章にある条のうち必要なものを、番号で指定して当てはめているのです。そのため、「生活介護の運営上の義務は何か」を調べるには、第77条から第92条までを読むだけでは足りず、第93条が指している条も開いて読む必要があります。

第9条の第1項は、次のとおりです。

指定居宅介護事業者は、支給決定障害者等が指定居宅介護の利用の申込みを行ったときは、当該利用申込者に係る障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、当該利用申込者に対し、第三十一条に規定する運営規程の概要、従業者の勤務体制、その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該指定居宅介護の提供の開始について当該利用申込者の同意を得なければならない。

条文は「指定居宅介護事業者」と書かれていますが、第93条により、生活介護に当てはめて読みます。第93条は、読み替えを次のように置いています。

第九条第一項中「第三十一条」とあるのは「第八十九条」と

つまり、第9条で説明の対象になる運営規程は、居宅介護の運営規程(第31条)ではなく、生活介護の運営規程(第89条)です。

この条文から読み取れる要素を整理します。

要素条文が書いていること
いつ利用の申込みを行ったとき
誰に利用申込者
何を運営規程の概要、従業者の勤務体制、その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書
どうする交付して説明を行い、提供の開始について同意を得る
配慮利用申込者に係る障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ

運営規程の概要が説明の対象です。そして、運営規程には第六号の「通常の事業の実施地域」と、第五号の「費用の種類及びその額」が書かれています。つまり、運営規程に書いた実施地域と費用の内容は、利用の開始に先立って、文書を交付して説明し、同意を得る対象に入ってくるという構造になっています。

第92条:運営規程の概要の掲示

もう1つ、第92条(掲示)があります。第1項は、次のとおりです。

指定生活介護事業者は、指定生活介護事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、前条の協力医療機関その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を掲示しなければならない。

第2項は、掲示に代える方法を認めています。事項を記載した書面を事業所に備え付け、いつでも関係者に自由に閲覧させる方法です。

掲示も、書面の備え付けも、対象は「運営規程の概要」です。運営規程に送迎についての定めを書いていれば、その概要は、事業所の見やすい場所で、利用申込者の目に触れる形になります。

「法令が決めるのではなく、事業所が決めて、説明して、同意を得る」

ここまでの条文を並べると、構造が見えてきます。

  1. 運営規程に、事業の運営についての重要事項を定める(第89条)
  2. その中には「通常の事業の実施地域」と、「費用の種類及びその額」が入る(第六号・第五号)
  3. 利用の申込みを受けたら、運営規程の概要を記した文書を交付して説明し、同意を得る(第9条の準用)
  4. 運営規程の概要は、事業所の見やすい場所に掲示する(第92条)

送迎の範囲は、法令が一律に決めているのではありません。事業所が決めて、書面にして、説明して、同意を得る。そして掲示する。この一連の流れのなかで、利用者との間の約束として担保されている、と整理できます。

なお、第9条の「障害の特性に応じた適切な配慮」にも、一言添えておきます。送迎の範囲や乗降の場面は、利用者の障がいの特性によって、説明の仕方を変える必要が出やすい場面です。説明の方法をどうするかは、条文には書かれていません。この「配慮」の中身は、事業所が利用者ごとに考えることです。重要事項を記した文書に何を書くのかは、重要事項説明書の記事で整理しています。

費用は、どこまで受け取れるのか

第82条第3項の枠組み

「送迎に費用をかけてよいのか」という疑問は、現場でよく出ます。この問いに、条文は直接答えていません。ただし、費用の受け取りの枠組みは、第82条(利用者負担額等の受領)に書かれています。第3項の柱書は、次のとおりです。

指定生活介護事業者は、前二項の支払を受ける額のほか、指定生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、次の各号に掲げる費用の支払を支給決定障害者から受けることができる。

各号は、次の4つです。

号費用
一食事の提供に要する費用
二創作的活動に係る材料費
三日用品費
四前三号に掲げるもののほか、指定生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの

第一号から第三号は、費目が名指しされています。ここにも「送迎」はありません。第四号は、名指しの3つ以外を受けるための、包括的な書き方になっています。

四 前三号に掲げるもののほか、指定生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの

第四号には、読み取れる条件が3つあります。

  1. 指定生活介護において提供される便宜に要する費用であること
  2. 日常生活においても通常必要となるものに係る費用であること
  3. 支給決定障害者に負担させることが適当と認められるものであること

送迎費を「取れる」「取れない」は、条文だけでは言えない

ここで、はっきり書いておきます。条文は、送迎という費目を名指ししていません。 したがって、送迎に費用を設定できるのか、設定できるならどのような場合なのかは、第四号の3つの条件に照らして判断することになります。「送迎費は実費で取れる」とも「取れない」とも、この記事では断定しません。

第四号の「日常生活においても通常必要となるもの」「負担させることが適当と認められるもの」が、具体的にどのような費用を指すのか。その解釈を示す通知や自治体の運用がどうなっているのか。これらは、この記事の一次情報には含まれていません。費用を設定する場合も、設定しない場合も、運営規程の第五号に書く内容と一致させたうえで、指定権者に確認するのが確実です。

条文が確実に求めている2つの手続

費用の中身は断定できなくても、費用を受け取る場合の手続は、条文が明確に書いています。

第82条第6項は、あらかじめの説明と同意です。

指定生活介護事業者は、第三項の費用に係るサービスの提供に当たっては、あらかじめ、支給決定障害者に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、支給決定障害者の同意を得なければならない。

第5項は、領収証の交付です。

指定生活介護事業者は、第一項から第三項までの費用の額の支払を受けた場合は、当該費用に係る領収証を当該費用の額を支払った支給決定障害者に対し交付しなければならない。

整理すると、第3項の費用を受け取る場合に条文が求めているのは、次のとおりです。

手続条文求めていること
運営規程への記載第89条第五号受領する費用の種類及びその額を運営規程に定める
事前の説明と同意第82条第6項あらかじめ、サービスの内容及び費用について説明し、同意を得る
領収証の交付第82条第5項支払を受けた費用に係る領収証を、支払った支給決定障害者に交付する

第20条も、あわせて確認しておく

第93条は、第20条(金銭の支払の範囲等)も準用しています。第1項は、次のとおりです。

指定居宅介護事業者が、指定居宅介護を提供する支給決定障害者等に対して金銭の支払を求めることができるのは、当該金銭の使途が直接利用者の便益を向上させるものであって、当該支給決定障害者等に支払を求めることが適当であるものに限るものとする。

第2項は、次のとおりです。

前項の規定により金銭の支払を求める際は、当該金銭の使途及び額並びに支給決定障害者等に金銭の支払を求める理由について書面によって明らかにするとともに、支給決定障害者等に対し説明を行い、その同意を得なければならない。

第2項には、続きにただし書きがあります。

ただし、次条第一項から第三項までに掲げる支払については、この限りでない。

第93条の読み替えで、第20条第2項中の「次条第一項」は、次のようになります。

第二十条第二項中「次条第一項」とあるのは「第八十二条第一項」と

読み替えをたどると、第82条第1項から第3項までの支払は、第20条第2項の書面の手続から外れていることになります。第82条第3項の費用は、第82条自身の手続(第5項の領収証、第6項の説明と同意)で扱われる、という整理です。

ただし、第20条と第82条第3項がどのように役割を分けているのか、送迎に関する費用がどちらの枠組みに当たりうるのかは、条文の語だけでは確定できません。この記事では、その解釈には踏み込みません。費用を受け取る運用がある場合は、どの条の枠組みで受け取っているのかを、事業所として説明できるように整理し、指定権者に確認してください。

記録は、何が求められているのか

第19条:提供の都度の記録と、利用者側の確認

次に、記録です。第93条は、第19条(サービスの提供の記録)を準用しています。第1項は、次のとおりです。

指定居宅介護事業者は、指定居宅介護を提供した際は、当該指定居宅介護の提供日、内容その他必要な事項を、指定居宅介護の提供の都度記録しなければならない。

第2項は、記録に際しての手続です。

指定居宅介護事業者は、前項の規定による記録に際しては、支給決定障害者等から指定居宅介護を提供したことについて確認を受けなければならない。

生活介護に当てはめると、記録の対象は「指定生活介護を提供した際」の提供日、内容その他必要な事項です。

要素条文が書いていること
いつ記録するか提供の都度
何を記録するか提供日、内容、その他必要な事項
誰の確認を受けるか支給決定障害者等
何について確認を受けるか指定居宅介護(生活介護)を提供したこと

送迎の記録は、条文が名指ししているわけではない

ここでも、線を引いておきます。第19条が記録を求めているのは、指定生活介護を提供したことについてです。送迎の記録を取れとは、条文は書いていません。

では、送迎の記録は不要なのでしょうか。条文は、「その他必要な事項」の中身を書いていません。何を記録として残すのかは、事業所の判断に委ねられた書きぶりです。送迎の実施の有無、乗降の場所、時刻などを残すかどうかは、条文からは決まりません。

ここで考えたいのは、次の2点です。

  • 運営規程や説明の文書で、送迎について何かを約束しているなら、その約束どおりに運用できたかを後から確認できる記録があると、説明がしやすい
  • 記録の確認の方法(署名、押印、確認欄など)は、条文には書かれていない。第19条第2項が求めているのは「確認を受けること」そのもので、方法は事業所の運用や自治体の指導で決まる部分

なお、送迎に関する加算を算定する場合に必要になる記録は、この記事の対象外です。算定に必要な記録は、報酬の告示や通知の領域になります(次の節を参照してください)。

第23条:給付費の額の通知と、サービス提供証明書

第93条は、第23条(介護給付費の額に係る通知等)も準用しています。第1項は、次のとおりです。

指定居宅介護事業者は、法定代理受領により市町村から指定居宅介護に係る介護給付費の支給を受けた場合は、支給決定障害者等に対し、当該支給決定障害者等に係る介護給付費の額を通知しなければならない。

第2項は、法定代理受領を行わない場合の、サービス提供証明書の交付です。第93条の読み替えで、第23条第2項中の「第二十一条第二項」は「第八十二条第二項」とされています。

第23条は、送迎そのものを扱う条ではありません。ただ、利用者に渡す書面(給付費の額の通知、領収証、サービス提供証明書)が複数あることを考えると、送迎に関する費用がある場合に、それらの書面と運営規程の内容がずれていないかを確認する意味はあります。

送迎加算は、別の記事で整理している

送迎の話題で、現場が最もよく耳にするのは「送迎加算」です。この加算の算定要件や単位数は、指定基準(運営基準)ではなく、報酬を定める告示と、その解釈を示す通知の領域にあります。そのため、この記事では扱いません。

送迎加算の算定要件は、既存記事生活介護の加算一覧と算定要件にまとめています。加算の算定を考えている場合は、そちらをお読みください。

この記事で伝えたいのは、加算の有無にかかわらず、運営基準の側で事業所が決めておくべきことがあるという点です。加算を算定しない場合でも、送迎を行っているなら、運営規程・説明・費用・記録の整理は必要になります。

実務の打ち手:4つの書類が同じ内容を指しているかを、一度だけ突き合わせる

ここまでの条文の整理を踏まえて、事業所でできる確認を1つだけ提案します。この節は条文の読み取りに基づく運営の設計の考え方であり、条文に書かれていない事項を義務として示すものではありません。

突き合わせる4つの書類

送迎について、利用者との間の約束が書かれている可能性がある書類は、次の4つです。

書類条文上の位置づけ
運営規程第89条。第五号(費用)・第六号(通常の事業の実施地域)などに関わる
重要事項を記した文書第9条。運営規程の概要などを記した文書を交付して説明する
契約書条文には名指しされていない。事業所が契約書を取り交わしている場合の確認対象
送迎の記録第19条の提供の記録の一部として扱うかは、事業所の判断。条文に「送迎の記録」という語はない

条文が直接に求めているのは、運営規程と、運営規程の概要などを記した文書、そして提供の記録です。契約書や送迎の記録の様式は、条文には出てきません。事業所が持っている場合に、突き合わせの対象に加える、という位置づけです。

確認する項目

4つの書類を並べて、次の項目が、どれも同じ内容になっているかを見ます。

確認する項目関わる条文確認のポイント
送迎する範囲第89条第六号運営規程の「通常の事業の実施地域」と、実際の送迎の範囲、利用者に伝えている範囲が一致しているか
送迎する日と時間帯第89条第三号営業日及び営業時間と、送迎の運行日・時間帯が食い違っていないか
自宅以外への送迎の扱い条文に規定なし自宅以外の場所を認めるのか、認めるならどのような場合か。書面に書いてあるか
利用者に負担を求める費用第89条第五号・第82条第3項費用を求める場合、種類と額が運営規程に書かれ、あらかじめ説明して同意を得ているか
領収証第82条第5項費用を受け取る場合、領収証が交付されているか
説明の履歴第9条・第82条第6項いつ、誰に、どの文書で説明し、同意を得たかが分かるか
提供の記録第19条約束した内容を、後から確認できる記録になっているか

この表の「自宅以外への送迎の扱い」は、条文に規定が無い項目です。条文に書かれていないからこそ、事業所が決めて、書面に落としておく必要がある項目の代表です。自宅以外の場所を認めるかどうか、認める場合にどのような手続を取るかは、この記事では結論を出せません。その事業所のルールとして決めたうえで、指定権者の考え方を確認してください。

食い違いが見つかったときの考え方

突き合わせてみると、書類の間で食い違いが見つかることがあります。たとえば、運営規程には「実施地域」として市内の範囲が書かれているのに、重要事項を記した文書には何も書かれておらず、現場では口頭で範囲を伝えている、といった状態です。

食い違いが見つかったときは、次の順で考えると整理しやすくなります。

  1. 現場の運用が、事業所として「こうしたい」という形になっているかを確認する
  2. その形が、運営規程に書かれているかを確認する。書かれていなければ、運営規程の見直しを検討する
  3. 運営規程を変えたら、運営規程の概要を記した文書、掲示、契約書も一体で見直す
  4. 利用者への説明と同意の手続を、あらためて行う必要があるかを検討する(これは条文だけでは決まらないので、指定権者に確認する)

運営指導の全体像や、当日に向けた準備は、障害福祉サービスの運営指導の記事で整理しています。

条文に書いてあることと、書いていないことを分ける

この記事の読み方は、「条文に書いてあることと、書いていないことを分けて整理する」というものです。同じ読み方で整理した記事として、障がい福祉の短期入所と個別支援計画があります。短期入所の章に個別支援計画という語が一度も出てこないことを確認し、そのうえで、準用されている条から記録の義務を読み取る、という構成です。「規定が無い」ことを根拠に何かを断定するのではなく、「では、何が求められているのか」を準用の構造から探す点が、この記事と共通しています。

この記事で書いていないこと

一次情報の範囲を守るために、この記事では次の点を扱っていません。指定基準(平成18年厚生労働省令第171号)の本則の条文だけを根拠にしており、以下は確認していないためです。

  • 送迎に関する加算の算定要件・単位数(報酬の告示と通知の領域。生活介護の加算一覧と算定要件で整理しています)
  • 解釈を示す通知やQ&Aの内容
  • 「通常の事業の実施地域」の語が、送迎の範囲とどう結びつくのかについての解釈
  • 玄関の中まで入ってよいか、自宅以外の場所への送迎を認めてよいかの結論
  • 送迎に費用を設定できるかどうかの結論(第82条第3項第四号の解釈)
  • 第20条と第82条第3項の役割分担の解釈
  • 「その他必要な事項」(第19条第1項)の具体的な項目や、確認(同条第2項)の方法
  • 自動車の運行や運転者に関する、指定基準以外の法令の扱い
  • 介護保険のサービスの扱い
  • 自治体ごとの運用や様式、独自に求める書類

とくに、「送迎を名指しする条が本則に無い」というこの記事の整理は、指定基準の本則の範囲での話です。報酬の算定や自治体の指導の場面で、送迎に関して何かが求められているかどうかは、この記事では確認していません。実際の運用は、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)に確認してください。

まとめ

  • 指定基準の本則(283条)で、「送迎」「移送」「送り迎え」は0回。同じ数え方で「生活介護」は174回、「居宅」は423回、「通所」は138回出てくるので、数え方が壊れているのではなく、本当に出てこない
  • 生活介護の節(第77条から第93条)にも、送迎を名指しで義務づける条も、禁じる条も見当たらない。第77条の「その他の便宜」に送迎が含まれるかどうかは、条文の語だけでは言えない
  • 「どこまで送るか」の拠りどころは、運営規程に定める項目(第89条第六号の通常の事業の実施地域、第五号の費用の種類及びその額)。ただし、条文は実施地域が送迎の範囲を指すとは書いていない
  • 運営規程の概要を記した文書を交付して説明し、同意を得ることは第9条の準用で、運営規程の概要の掲示は第92条で求められている。事業所が決めて、書面にして、説明して、同意を得るという形で担保されている
  • 費用は、第82条第3項の枠組みで考える。条文は送迎という費目を名指ししていないため、取れる・取れないの断定はできない。確実に求められているのは、あらかじめの説明と同意(第6項)と、領収証の交付(第5項)
  • 記録は、提供の都度の記録と、利用者側の確認(第19条の準用)。送迎の記録を名指しで求める条はなく、「その他必要な事項」の中身は事業所の判断になる
  • 送迎加算は報酬告示と通知の領域。生活介護の加算一覧と算定要件で整理している
  • 実務では、運営規程・重要事項を記した文書・契約書・送迎の記録が、同じ内容を指しているかを一度だけ突き合わせる

「送迎はどこまでやらないといけないのか」という迷いは、条文に答えが無いからこそ生まれます。答えが無い部分を、事業所が決めて、書面に落として、説明して同意を得る。その形が整っていれば、現場の職員も、利用者やご家族への説明に迷いにくくなります。

参考(一次情報)


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