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第二種社会福祉事業|届出の時期は施設の有無と経営主体で変わる

理事会で新しい事業の構想が出て、法人本部に宿題が降りてくる。そんな場面で、こういう会話はないでしょうか。

「今度の事業は第二種社会福祉事業だから、届出だけでいいんだよね」

「ネットにはそう書いてあります。ただ、いつまでに出すのかが調べた記事によってまちまちで。開始前なのか、開始してからなのか」

「そもそも、うちは社会福祉法人だから、第一種でも許可じゃなくて届出だったよね。どこに書いてあったかな」

「…条文を確認します」

「第一種社会福祉事業は許可、第二種社会福祉事業は届出」という説明は、あちこちで目にします。間違いではありません。けれども、事業を実際に立ち上げる側にとっては、この一言では足りません。いつ出すのか(事前か、開始後一月以内か)、誰に出すのか、そして自分の法人は「許可」の側なのか「届出」の側なのか。この3つが分からなければ、届出の準備は始められないからです。

そこで、この記事では、社会福祉法の第62条から第69条までを実際に読みます。読んでみると、社会福祉法は手続を「第一種か第二種か」の1本の軸では決めていないことが分かります。実際に手続を分けているのは、(1)施設を設置するかどうか、(2)経営主体が国・地方公共団体・社会福祉法人なのか、それ以外なのか、という2つの軸です。 そのうえで、(3)事前に出すのか、開始後一月以内に出すのか、という時期まで変わります。

最初に、読者の法人にとって重要な点を1つだけ先に書いておきます。社会福祉法人が経営主体の場合、第一種社会福祉事業であっても、条文が定めているのは「許可」ではなく「届出」です。 許可を受ける側として条文に出てくるのは、国・都道府県・市町村・社会福祉法人のどれにも当たらない者です。この点は、後の章で条文を引用して確かめます。

なお、この記事は事業の種類を網羅して並べる記事ではありません。手続の入口を決める条文の構造を読み、判断が分かれる場所を示すことに絞っています。

目次

この記事で確かめること

  • 社会福祉法が、届出・許可の手続を「施設の有無」と「経営主体」の組み合わせで書き分けていること
  • 第一種で事前に出すもの、開始後一月以内に出すもの、第二種で事前に出すもの、開始後一月以内に出すものが、それぞれ条文のどこに書かれているか
  • 「第二種は届出」という説明が、実際には第69条という1つの条に対応していること
  • 始めたときだけでなく、変更したとき・やめたときにも届出が要ること。その期限が条ごとに違うこと
  • 届出をしたあとに、基準・調査・改善命令・許可の取消しといった規定がついてくること

一方で、次の点は扱いません。一次情報として使った社会福祉法の条文に書かれていないためです。

  • 都道府県ごとの様式、提出先の窓口名、処理にかかる日数
  • 都道府県の条例や厚生労働省令の具体的な中身
  • 個別の事業が第二種社会福祉事業に当たるかどうかの判断
  • 消費税の扱い(この点は社会福祉法人の消費税と特定収入の記事で整理しています)

具体的な様式や窓口は、事業を始める地の都道府県の案内で確認してください。

まず結論:手続を決めるのは「第一種か第二種か」ではなく2つの軸

先に全体像を示します。

  • 手続を分けているのは、「施設を設置するかどうか」と「経営主体」の2軸。第一種・第二種の区分は、この2軸の中で「どの条文に入るか」を決める役割をしている
  • 第一種で施設を設置するとき(第62条)、市町村・社会福祉法人は事業の開始前に届出。それ以外の者は事業の開始前に許可
  • 第一種で施設を必要としないとき(第67条)、市町村・社会福祉法人は事業開始の日から一月以内に届出。それ以外の者は事業の開始前に許可。同じ第一種でも、施設の有無で「事前」と「開始後一月以内」が入れ替わる
  • 第二種で住居の用に供するための施設を設置するとき(第68条の2)、市町村・社会福祉法人は事業開始の日から一月以内に届出。それ以外の者は事業の開始前に届出。第二種なのに「事前」が出てくる
  • 第二種で住居の用に供するための施設を必要としないとき(第69条)は、国及び都道府県以外の者が事業開始の日から一月以内に届出。世間でよく言われる「第二種は届出」は、この条のことを指していることが多い
  • 第一種を経営する主体は、第60条が「国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする」と書いている。「原則とする」であって、禁止とは書かれていない。だから第62条第2項・第67条第2項の許可の規定が置かれていると読める
  • 始めたときだけでなく、変えたとき、やめたときにも届出が要る。期限は「変更の日から一月以内」「廃止の日の一月前まで」「廃止の日から一月以内」など、条ごとに違う

以降、順に確認していきます。

一覧表:施設の有無 × 経営主体で、何を・いつ・誰に出すか

条文を読む前に、結論を1枚の表にします。社会福祉法の第62条、第67条、第68条の2、第69条を、「施設の有無」と「経営主体」で並べ直したものです。

場面経営主体出すものいつ誰に根拠条文
施設を設置して第一種を経営市町村・社会福祉法人届出事業の開始前施設を設置しようとする地の都道府県知事第62条第1項
施設を設置して第一種を経営国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者許可事業の開始前施設を設置しようとする地の都道府県知事第62条第2項
施設を必要としない第一種を経営市町村・社会福祉法人届出事業開始の日から一月以内事業経営地の都道府県知事第67条第1項
施設を必要としない第一種を経営国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者許可事業の開始前事業を経営しようとする地の都道府県知事第67条第2項
住居の用に供するための施設を設置して第二種を経営市町村・社会福祉法人届出事業開始の日から一月以内施設を設置した地の都道府県知事第68条の2第1項
住居の用に供するための施設を設置して第二種を経営国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者届出事業の開始前施設を設置しようとする地の都道府県知事第68条の2第2項
住居の用に供するための施設を必要としない第二種を経営国及び都道府県以外の者(市町村・社会福祉法人を含む)届出事業開始の日から一月以内事業経営地の都道府県知事第69条第1項

この表から、3つのことが読み取れます。

  1. 「許可」が出てくるのは、第一種だけ(第62条第2項、第67条第2項)。しかも、許可を受ける側は、国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者です
  2. 「事前」か「開始後一月以内」かは、第一種・第二種の別では決まらない。 第一種にも開始後一月以内の届出(第67条第1項)があり、第二種にも事前の届出(第68条の2第2項)があります
  3. 社会福祉法人の行を縦に追うと、事業開始の「前」に出すと条文が書いているのは、施設を設置して第一種を経営しようとするとき(第62条第1項)だけです。残りの3つの場面は、開始後一月以内の届出です(第67条第1項、第68条の2第1項、第69条第1項)

ここで注意点を2つ書いておきます。

1つ目は、国・都道府県の扱いです。第62条・第67条・第68条の2には、国や都道府県が「届出をする側」としても「許可を受ける側」としても出てきません(許可を受ける側として出てくるのは「国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者」という書き方で、国と都道府県はそこから除かれています)。この場面での国・都道府県の手続は、この記事で使った条文には書かれていません。第69条は「国及び都道府県以外の者」と書いているため、国・都道府県が対象から外れていることだけが読み取れます。

2つ目は、この表が社会福祉法だけの話だということです。後で見るとおり、第74条は、他の法律で許可・認可・届出を要する施設や事業には、この手続の規定を適用しないと書いています。表を使う前に、第74条の確認が要ります。

「第一種は許可、第二種は届出」は、どこから来た説明か

この説明の出どころを、条文でたどります。

第一種の「許可」は、経営主体が限られているときの規定

第一種社会福祉事業の経営主体について、第60条は次のように書いています。

社会福祉事業のうち、第一種社会福祉事業は、国、地方公共団体又は社会福祉法人が経営することを原則とする。

ここで、文末の「原則とする」を丁寧に読みます。「原則とする」は、「それ以外の者が経営してはならない」とは書いていません。 禁止であれば、「経営することができるのは」「経営してはならない」といった書き方になるはずです。「原則」と書かれていることと、第62条第2項・第67条第2項が「それ以外の者」に許可の道を用意していることは、整合しています。つまり、第一種は、国・地方公共団体・社会福祉法人が経営するのが原則であり、それ以外の者が経営する場合は許可を受ける、という立て付けだと読めます。

この読み方に立つと、冒頭で触れたことが分かります。許可を受ける側として条文に登場するのは、国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者です。読者の法人(社会福祉法人)が第一種を経営する場合、条文が求めているのは許可ではなく、届出です。

第二種の「届出」は、第69条が代表している

では、第二種はどうでしょうか。世間で言われる「第二種は届出」は、条文のどこに対応しているのか。その中心にあるのが、第69条第1項です。

国及び都道府県以外の者は、住居の用に供するための施設を必要としない第二種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、事業経営地の都道府県知事に第六十七条第一項各号に掲げる事項を届け出なければならない。

この条文の条見出しは、「住居の用に供するための施設を必要としない第二種社会福祉事業の開始等」です。つまり、第69条は、第二種社会福祉事業のうち、住居の用に供するための施設を必要としないものに限った条文です。

第二種社会福祉事業でも、住居の用に供するための施設を設置する場合は、別の条文(第68条の2)が用意されています。この条文では、事前の届出が出てきます。「第二種は届出」の一言に、第68条の2の「事前」の話は含まれていません。

ここまでを整理すると、「第一種は許可、第二種は届出」という説明は、次の点で不正確です。

  • 第一種でも、市町村・社会福祉法人は届出である(第62条第1項、第67条第1項)
  • 第二種の届出にも、事前のもの(第68条の2第2項)と、開始後一月以内のもの(第68条の2第1項、第69条第1項)がある
  • 「許可か届出か」の前に、「施設を設置するのか」「経営主体は誰か」で、使う条文が決まる

第62条:施設を設置して第一種を経営する場合

では、条文を順に読んでいきます。最初は、施設を設置して第一種社会福祉事業を経営しようとする場合の第62条です。

第1項:市町村・社会福祉法人は「事業の開始前」に届出

市町村又は社会福祉法人は、施設を設置して、第一種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その施設(以下「社会福祉施設」という。)を設置しようとする地の都道府県知事に、次に掲げる事項を届け出なければならない。

この文には、確認しておきたい要素が4つあります。

  1. 「施設を設置して」:施設の設置が前提です。施設を必要としない第一種は、第67条に回ります
  2. 「経営しようとするときは」:まだ始めていない段階を指しています
  3. 「その事業の開始前に」:事前の届出です
  4. 「その施設を設置しようとする地の都道府県知事」:届出先は、施設を設置する地の都道府県知事です

ここで言う「施設」を、条文は括弧書きで「社会福祉施設」と定義しています。以降の条文(第63条、第65条、第66条など)が使う「社会福祉施設」は、この括弧書きの定義を受けています。

届け出る事項は、次の7つです。

  • 施設の名称及び種類
  • 設置者の氏名又は名称、住所、経歴及び資産状況
  • 条例、定款その他の基本約款
  • 建物その他の設備の規模及び構造
  • 事業開始の予定年月日
  • 施設の管理者及び実務を担当する幹部職員の氏名及び経歴
  • 福祉サービスを必要とする者に対する処遇の方法

この中で、法人本部の目線で見ておきたいのは、「条例、定款その他の基本約款」が届出事項に入っていることです。事業を始める前に、定款が新しい事業を行える内容になっているかを確認する必要が出てきます。定款変更そのものの手続は、社会福祉法人の定款変更の手続の記事で整理していますので、あわせてご覧ください。

第2項:それ以外の者は「事業の開始前に」許可

次に、許可の規定です。

国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者は、社会福祉施設を設置して、第一種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その施設を設置しようとする地の都道府県知事の許可を受けなければならない。

第1項と第2項を並べると、構造がはっきりします。

比べる点第1項第2項
経営主体市町村又は社会福祉法人国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者
手続届出許可
時期事業の開始前事業の開始前
届出先・許可権者施設を設置しようとする地の都道府県知事同じ

時期はどちらも「事業の開始前」で同じです。違うのは、経営主体と、届出か許可かという手続の重さです。 第2項の許可を受けようとする者は、第1項の7つの事項に加えて、次の5つの事項を記載した申請書を提出します(第3項)。

  • 当該事業を経営するための財源の調達及びその管理の方法
  • 施設の管理者の資産状況
  • 建物その他の設備の使用の権限
  • 経理の方針
  • 事業の経営者又は施設の管理者に事故があるときの処置

第4項から第6項:許可には審査と条件がつく

許可には、審査の基準が書かれています。第4項は次のとおりです。

都道府県知事は、第二項の許可の申請があつたときは、第六十五条の規定により都道府県の条例で定める基準に適合するかどうかを審査するほか、次に掲げる基準によつて、その申請を審査しなければならない。

「次に掲げる基準」は5つあります。

  • 当該事業を経営するために必要な経済的基礎があること
  • 当該事業の経営者が社会的信望を有すること
  • 実務を担当する幹部職員が社会福祉事業に関する経験、熱意及び能力を有すること
  • 当該事業の経理が他の経理と分離できる等その性格が社会福祉法人に準ずるものであること
  • 脱税その他不正の目的で当該事業を経営しようとするものでないこと

第5項は、基準に適合していると認めるときは許可を与えなければならないとし、第6項は、事業の適正な運営を確保するために必要と認める条件を付することができるとしています。

ここで見ておきたいのは、審査の基準の4つ目が「その性格が社会福祉法人に準ずるものであること」と書いていることです。 第一種を社会福祉法人以外の者が経営する場合でも、条文が想定しているのは、社会福祉法人に準ずる性格の事業であるという姿です。これは、第60条の「原則とする」という書き方とつながっています。

読者の法人は第1項の届出の側ですので、この審査基準の5つは、自分の法人に課される条件ではありません。それでも、第一種という区分が何を前提にしているのかを理解する助けになります。

第67条:施設を必要としない第一種を経営する場合

次は、施設を必要としない第一種社会福祉事業です。ここで、冒頭に書いた「事前」と「開始後一月以内」の入れ替わりが起こります。

市町村又は社会福祉法人は、施設を必要としない第一種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、事業経営地の都道府県知事に次に掲げる事項を届け出なければならない。

第62条第1項と、文末の形を比べてみてください。

比べる点第62条第1項(施設あり)第67条第1項(施設なし)
条文の書き出し経営しようとするときは開始したときは
時期事業の開始前に事業開始の日から一月以内に
届出先施設を設置しようとする地の都道府県知事事業経営地の都道府県知事
届出事項7つ3つ

同じ「市町村又は社会福祉法人」が、同じ「第一種社会福祉事業」を経営するのに、施設を設置するかどうかで、届出が「事前」から「開始後一月以内」に入れ替わります。 条文の書き出しが、「経営しようとするときは」(未然)から「開始したときは」(既然)に変わっていることが、その違いを表しています。

第67条第1項の届出事項は、次の3つです。第62条第1項の7つと比べると、施設や管理者に関する事項がありません。

  • 経営者の名称及び主たる事務所の所在地
  • 事業の種類及び内容
  • 条例、定款その他の基本約款

第62条の7つの事項は、施設を前提にしたもの(施設の名称、建物の規模及び構造、管理者など)が中心です。施設を必要としない事業では、そもそもその事項がないため、届出事項が3つに絞られていると読めます。ここでも、「条例、定款その他の基本約款」が届出事項に残っていることに注目してください。

第2項から第5項:それ以外の者は事前に許可

第67条第2項は、それ以外の者について、事前の許可を定めています。

国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者は、施設を必要としない第一種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その事業を経営しようとする地の都道府県知事の許可を受けなければならない。

許可の審査には、第62条第4項各号の基準が使われ(第67条第4項)、第62条第5項・第6項(許可を与えること、条件を付すること)が準用されます(第67条第5項)。

つまり、第一種については、施設の有無にかかわらず、社会福祉法人以外の者が経営する場合は事前の許可、というところは共通しています。入れ替わるのは、市町村・社会福祉法人の届出の時期だけです。

第68条の2:住居の用に供するための施設を設置する第二種

ここからが第二種社会福祉事業です。第二種のうち、住居の用に供するための施設を設置するものは、第68条の2という独立した条文が定めています。

第1項:市町村・社会福祉法人は、開始後一月以内

市町村又は社会福祉法人は、住居の用に供するための施設を設置して、第二種社会福祉事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内に、その施設(以下「社会福祉住居施設」という。)を設置した地の都道府県知事に、次に掲げる事項を届け出なければならない。

ここで定義されている「社会福祉住居施設」は、第62条の「社会福祉施設」とは別の概念です。住居の用に供するための施設を設置して第二種社会福祉事業を経営するときに使う言葉で、以降の条文(第68条の3から第68条の5)が受けています。

届出事項は、7つの号が並んでいます。第62条第1項の7つとほぼ同じ内容ですが、一点、違いがあります。

  • 第62条第1項第五号:事業開始の予定年月日
  • 第68条の2第1項第五号:事業開始の年月日

第68条の2第1項の届出は事業を開始した後に出すものなので、「予定」の文字がありません。

第2項:それ以外の者は、第二種でも「事業の開始前」

国、都道府県、市町村及び社会福祉法人以外の者は、社会福祉住居施設を設置して、第二種社会福祉事業を経営しようとするときは、その事業の開始前に、その施設を設置しようとする地の都道府県知事に、前項各号に掲げる事項を届け出なければならない。

これが、「第二種は事後の届出で足りる」という理解が成り立たない条文です。 第二種社会福祉事業でも、住居の用に供するための施設を設置し、経営主体が国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者であるときは、事業の開始前に届け出るよう書かれています。

また、この第2項は、許可ではなく届出です。第一種の第62条第2項が許可を求めているのに対し、第68条の2には、抜粋した範囲に許可や審査基準の規定は書かれていません。同じ「事前」でも、第一種は許可、第二種は届出、という違いが、この2つの条文の比較から見えます。

第3項:届出がない疑いのある施設を市町村長が通知する

第68条の2には、第3項があります。

市及び福祉に関する事務所を設置する町村の長は、前項の規定による届出がされていない疑いがある社会福祉住居施設を発見したときは、遅滞なく、その旨を、当該社会福祉住居施設の所在地の都道府県知事に通知するよう努めるものとする。

これは、届出をする側の義務ではなく、市や福祉に関する事務所を設置する町村の長に向けた努力義務です。ただし、この規定は、事前の届出が必要な場面(第2項)で、届出がされていない施設を、行政の側が見つける仕組みが想定されていることを示しています。事前の届出が、実際に守られているかを行政が気にしている、ということです。

第69条:住居の用に供するための施設を必要としない第二種

続いて第69条です。冒頭で引用した第1項の構造を、あらためて整理します。

要素第69条第1項の書き方
対象となる者国及び都道府県以外の者
対象となる事業住居の用に供するための施設を必要としない第二種社会福祉事業
時期事業を開始したときは、事業開始の日から一月以内
届出先事業経営地の都道府県知事
届出事項第六十七条第一項各号に掲げる事項

ここで、3点に注意が要ります。

1点目。対象者は、「国及び都道府県以外の者」です。 市町村も社会福祉法人も、この「以外の者」に含まれます。第68条の2と違い、経営主体によって届出の時期が分かれる書き方にはなっていません。国・都道府県以外であれば、等しく開始後一月以内の届出です。

2点目。届出事項は、第67条第1項各号の3つです。 経営者の名称及び主たる事務所の所在地、事業の種類及び内容、条例・定款その他の基本約款です。第69条は、事項を自分で列挙せず、第67条第1項を引いています。

3点目。対象となる事業の範囲を決める言葉が「住居の用に供するための施設を必要としない」であること。 条文が分けているのは、「施設があるかないか」ではなく、「住居の用に供するための施設か」です。したがって、第二種社会福祉事業のうち、どの事業がこの第69条に当たり、どの事業が第68条の2に当たるかは、事業の中身と、住居の用に供するための施設かどうかによって決まります。個別の事業がどちらに当たるかは、この記事の一次情報から断定できません。 事業を所管する都道府県の窓口に、条文のどちらに当たるのかを確認するのが確実です。

社会福祉法人の目線で、もう一度整理する

ここまでの内容を、読者の法人(社会福祉法人)の立場から、表に組み替えます。

始めようとする事業条文が定める手続時期根拠
施設を設置して第一種を経営届出事業の開始前第62条第1項
施設を必要としない第一種を経営届出事業開始の日から一月以内第67条第1項
住居の用に供するための施設を設置して第二種を経営届出事業開始の日から一月以内第68条の2第1項
住居の用に供するための施設を必要としない第二種を経営届出事業開始の日から一月以内第69条第1項

社会福祉法人にとっては、4つの場面すべてが「届出」です。許可の出番はありません。時期だけを見ると、事業の開始前に出すのは、施設を設置して第一種を経営する場合の1つだけで、残りの3つは開始後一月以内です。

この表を見て、「開始後で良いなら、準備は後回しでよい」と考えるのは危険です。理由は2つあります。

1つ目は、開始後一月以内という期限が、事業開始の日から数えることです。事業開始の日が決まった時点で、期限が確定します。開始の準備が忙しい時期に、届出の期限が重なるわけです。開始日を決める段階で、届出の期限も同時に台帳に入れておく必要があります。

2つ目は、届出事項に「条例、定款その他の基本約款」が入っていることです。届出の準備は、事業を始めた後ではなく、事業を始めるための定款の確認から始まっていると考えるほうが安全です。

届出の手前にある2つの関門

ここまでは、「事業を始めるとき、届出がどうなるか」の話でした。ただし、そもそもこの手続の対象になるのか、という手前の関門が2つあります。

関門1:第2条第4項(社会福祉事業に含まれない事業)

第2条第4項は、社会福祉事業に含まれない事業を列挙しています。柱書は次のとおりです。

この法律における「社会福祉事業」には、次に掲げる事業は、含まれないものとする。

列挙されているものの中に、次のような号があります。

  • 実施期間が六月を超えない事業(第二号。ただし、第3項第十三号の事業にあつては三月)
  • 社団又は組合の行う事業であつて、社員又は組合員のためにするもの(第三号)
  • 第2項各号及び第3項第一号から第九号までに掲げる事業であつて、常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものにあつては五人、その他のものにあつては二十人(政令で定めるものにあつては、十人)に満たないもの(第四号)

第四号は、規模の条件です。条文をそのまま引用します。

第二項各号及び前項第一号から第九号までに掲げる事業であつて、常時保護を受ける者が、入所させて保護を行うものにあつては五人、その他のものにあつては二十人(政令で定めるものにあつては、十人)に満たないもの

この号は、列挙された事業のうち一定の規模に満たないものを、そもそも社会福祉事業から外しています。社会福祉事業に当たらなければ、第62条から第69条の届出の対象にもなりません。 ただし、「政令で定めるもの」の中身は、この記事の一次情報に含まれていません。また、第3項のどの号がこの第四号の「第一号から第九号」に含まれるかは、枝番の号(第3項第一号の二など)の扱いを含めて、この記事では断定しません。事業の規模が小さいときは、所管の窓口に確認してください。

関門2:第74条(適用除外)

もう1つが、第74条です。

第六十二条から第七十一条まで並びに第七十二条第一項及び第三項の規定は、他の法律によつて、その設置又は開始につき、行政庁の許可、認可又は行政庁への届出を要するものとされている施設又は事業については、適用しない。

構造を分解します。

  1. 適用されないのは、第62条から第71条まで(届出・許可・変更・廃止・基準・調査・改善命令)と、第72条第1項・第3項
  2. 適用されない条件は、「他の法律によつて、その設置又は開始につき、行政庁の許可、認可又は行政庁への届出を要するものとされている」こと
  3. 対象は「施設又は事業」

つまり、他の法律が、設置や開始について許可・認可・届出を要求している施設や事業には、社会福祉法の第62条から第71条の規定は適用されません。 第2条の列挙は、児童福祉法、老人福祉法、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律といった、他の法律の名前を使って事業を書いています。したがって、その事業に、他の法律の側の手続があるのかどうかを先に確認する必要があります。

ただし、どの事業が第74条に当たるのかは、この記事で使った条文からは言えません。 他の法律の中身を渡されていないためです。実務では、事業を始めようとする事業について、社会福祉法の手続と、その事業を定めた個別の法律の手続の両方を、窓口に確認するのが安全です。個別の事業の側の手続の例として、指定の更新の記事があります。この記事で読んでいるのは、あくまで社会福祉法の条文に書かれた手続です。

第2条の列挙を見ると、第二種の広がりが分かる

手続の入口を整理したところで、第二種の事業が条文でどう書かれているかも、見ておきます。全部を並べることはしません。判断の分かれ目になりそうな箇所だけを取り上げます。

第2条第3項は、次の書き出しで第二種社会福祉事業を列挙しています。

次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。

その号の並びには、次のような特徴があります。

  • 第一号、第二号、第三号と進む途中に、「一の二」「二の二」「二の三」「四の二」といった枝番の号が挟まっている
  • 第七号は「削除」になっている
  • 第二号は1つの号の中に、児童福祉法に規定する事業が多数、読点でつながって列挙されており、その中に乳児等通園支援事業まで入っている

枝番の号の例として、第一号の二を引用します。

生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号)に規定する認定生活困窮者就労訓練事業

枝番の号が複数あることは、番号を振り直さずに号を挿入しながら、列挙が書き足されてきたことを示していると読めます。第二種社会福祉事業の列挙は、固定されたものではなく、広がってきた形跡が条文の体裁に残っています。 ただし、いつ追加されたのかは、この記事の一次情報には書かれていないため、ここでは扱いません。

この広がりが、実務に意味を持つのは、「うちの新規事業は、第二種社会福祉事業の列挙のどれかに当たるのか」を、番号まで確認する必要があるという点です。「昔の理解では第二種に当たらない」と思っていた事業が、列挙に入っている可能性があります。逆もまた、第二種の列挙に入っていても、第2条第4項で社会福祉事業から外れる可能性があります。事業の種類を確認するときは、第2条の条文を最新のものに当たることをお勧めします。

第一種の列挙(第2条第2項)も、第五号が「削除」になっています。そして、第一種の列挙は第一号から第七号まで、第二種の列挙より、ずっと数が少ない形で書かれています。第一種は、施設に入所させて生活を支える事業や、授産施設、資金の融通などが並ぶ構成です。

始めたあとも、届出は終わらない:変更と廃止

ここまでは「始めるとき」の話でした。社会福祉法は、変更したとき・やめたときにも、届出を求めています。この期限が、条ごとに違うことを確認します。

変更・廃止の期限を、条ごとに並べる

最初の手続変更したとき廃止するとき・したとき根拠
第62条第1項の届出(施設あり・第一種・市町村又は社会福祉法人)変更の日から一月以内に届出廃止しようとするときは、廃止の日の一月前までに届出第63条第1項、第64条
第62条第2項の許可(施設あり・第一種・それ以外の者)第1項第四号、第五号、第七号と第3項第一号、第四号、第五号の事項を変更しようとするときは、許可廃止しようとするときは、廃止の日の一月前までに届出第63条第2項、第64条
第67条の届出・許可(施設なし・第一種)変更の日から一月以内に届出廃止したときも同様(一月以内に届出)第68条
第68条の2第1項の届出(第二種・住居施設・市町村又は社会福祉法人)変更の日から一月以内に届出廃止の日から一月以内に届出第68条の3第1項、第68条の4
第68条の2第2項の届出(第二種・住居施設・それ以外の者)第1項第四号、第五号、第七号の事項を変更しようとするときは、あらかじめ届出。第一号から第三号まで、第六号の事項を変更したときは、変更の日から一月以内に届出廃止の日から一月以内に届出第68条の3第2項・第3項、第68条の4
第69条第1項の届出(第二種・住居施設を必要としない)変更の日から一月以内に届出廃止したときも同様(一月以内に届出)第69条第2項

この表を見ると、気づく点が3つあります。

1つ目。廃止の届出が「一月前まで」と事前になっているのは、第62条の手続を経た事業(施設を設置する第一種)だけです。 ほかは、廃止した後に一月以内に届け出る形です。施設を設置して第一種を経営する事業は、やめる前に知事へ届け出る、という重い扱いになっています。

第64条の条文は次のとおりです。

第六十二条第一項の規定による届出をし、又は同条第二項の規定による許可を受けて、社会福祉事業を経営する者は、その事業を廃止しようとするときは、廃止の日の一月前までに、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

2つ目。「変更した」と「変更しようとする」を、条文は書き分けています。 第63条第2項(許可を受けた者)と第68条の3第2項(事前に届け出た者)は、「変更しようとするとき」と書いています。変更の前に手続を踏むわけです。これに対し、第63条第1項などの「変更を生じたときは、変更の日から一月以内に」は、変更の後の届出です。同じ「変更」でも、どの事項の変更か、どの経営主体か、で事前になるか事後になるかが変わるのです。

第68条の3第2項は、次のように書いています。

前条第二項の規定による届出をした者は、同条第一項第四号、第五号及び第七号に掲げる事項を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

ここで言う第四号、第五号、第七号は、建物その他の設備の規模及び構造、事業開始の年月日、福祉サービスを必要とする者に対する処遇の方法です。事前に届け出た日付が変わるときにも、あらかじめ届け出る必要があると読める条文です。

3つ目。第二種の廃止の届出は、第68条の4が「廃止したとき」と書いています。 第68条の2の第1項の届出をした者も、第2項の届出をした者も、同じです。

第六十八条の二第一項又は第二項の規定による届出をした者は、その事業を廃止したときは、廃止の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。

第69条第2項は、第69条第1項の届出をした者の変更と廃止を、まとめて定めています。

前項の規定による届出をした者は、その届け出た事項に変更を生じたときは、変更の日から一月以内に、その旨を当該都道府県知事に届け出なければならない。その事業を廃止したときも、同様とする。

起算点が「変更の日」「開始の日」「廃止の日」と別々である

上の表を、期限の「数え始めの日」で見直すと、3種類あります。

  • 事業開始の日:第67条第1項、第68条の2第1項、第69条第1項(開始後一月以内の届出)
  • 変更の日:第63条第1項、第68条、第68条の3第1項・第3項、第69条第2項
  • 廃止の日:第64条(廃止の日の一月前)、第68条の4(廃止の日から一月以内)

つまり、同じ「一月以内」でも、何の日から数えるのかが条によって異なります。 事業開始の日、変更の日、廃止の日の3つを、事業ごとに台帳へ記録しておかなければ、期限を管理できません。

なお、「変えたときの届出」という点では、障害福祉サービスの変更届の記事も参考になります。ただし、この記事で読んでいるのは社会福祉法の条文に書かれた変更の届出で、あちらは障害福祉サービスの事業所の変更届です。どの法律に基づく届出なのかを混同しないよう、台帳にも根拠の法律を書いておくとよいでしょう。

届出をしたあとに、ついてくる規定

届出が受理されたら、それで終わりではありません。社会福祉法には、届出をした後に適用される規定があります。

都道府県の条例で定める基準:第65条と第68条の5

第65条第1項は、都道府県が、社会福祉施設の設備の規模及び構造、福祉サービスの提供の方法、苦情への対応その他の運営について、条例で基準を定めなければならないとしています。第68条の5第1項は、社会福祉住居施設について、同じことを定めています。そして、どちらも、設置者はその基準を遵守しなければならないとしています(第65条第3項、第68条の5第3項)。

この2つの条の第2項を比べると、違いがあります。

事項第65条第2項(社会福祉施設)第68条の5第2項(社会福祉住居施設)
職員及びその員数厚生労働省令で定める基準に従い定める厚生労働省令で定める基準を標準として定める
居室の床面積同上(従い)同上(標準として)
運営に関する事項で、利用者の適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持に密接に関連するもの同上(従い)同上(標準として)
利用定員標準として定める標準として定める
その他の事項参酌する参酌する

第一種の施設(第65条)は、職員、居室の床面積、運営の重要事項について、厚生労働省令の基準に「従い」条例を定めるのに対し、第二種の住居施設(第68条の5)は、すべて「標準として」または「参酌」にとどまります。 都道府県が条例を定めるときの自由度が、第一種の施設より第二種の住居施設のほうが大きく書かれていると読めます。

ただし、都道府県の条例の具体的な中身や、厚生労働省令の基準は、この記事で扱った一次情報には含まれません。自分の法人が事業を行う都道府県の条例は、必ず確認してください。 第一種と第二種で、条例の基準の定め方が違うことは、条文から言えます。けれども、その地域で何が基準になっているかは、条例を見なければ分かりません。

管理者:第66条

第66条は短い条文です。

社会福祉施設には、専任の管理者を置かなければならない。

この条は、届出事項の「施設の管理者及び実務を担当する幹部職員の氏名及び経歴」(第62条第1項第六号)と対応しています。第62条の手続を踏む施設(施設を設置する第一種)には、専任の管理者を置くことが、条文で求められています。

調査、改善命令、許可の取消し:第70条から第72条

届出をした後にも、都道府県知事の権限が及びます。

第70条(調査)。 都道府県知事は、社会福祉事業を経営する者に対し、必要と認める事項の報告を求め、または職員に施設、帳簿、書類等を検査させ、その他事業経営の状況を調査させることができます。この規定は、「社会福祉事業を経営する者」と書いていて、届出をした者に限るとは書かれていません。

第71条(改善命令)。 基準に適合しなくなったときの命令です。

都道府県知事は、第六十二条第一項の規定による届出をし、若しくは同条第二項の規定による許可を受けて社会福祉事業を経営する者の施設又は第六十八条の二第一項若しくは第二項の規定による届出をして社会福祉事業を経営する者の施設が、第六十五条第一項又は第六十八条の五第一項の基準に適合しないと認められるに至つたときは、その事業を経営する者に対し、当該基準に適合するために必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。

この条文に出てくるのは、第62条の手続を踏んだ施設と、第68条の2の手続を踏んだ施設です。改善命令の対象に、第67条(施設を必要としない第一種)と第69条(住居施設を必要としない第二種)は出てきません。 基準が定められているのが施設に対してだからです。ここでも、施設の有無が条文の構造を決めていることが分かります。

第72条(許可の取消し等)。 都道府県知事は、届出をし、または許可を受けて社会福祉事業を経営する者が、条件に違反したとき、変更の届出に関する規定(第63条第1項・第2項、第68条、第68条の3、第69条第2項)に違反したとき、報告の求めに応じなかったとき、改善命令に違反したとき、不当に営利を図ったり利用者の処遇につき不当な行為をしたときなどに、社会福祉事業を経営することを制限し、その停止を命じ、または許可を取り消すことができるとされています(第1項)。

ここで注目したいのは、変更の届出に関する規定の違反が、列挙に入っていることです。始めるときだけでなく、変更するときの届出も、行政上の処分の根拠に結びついています。

また、第72条第3項は、第62条第1項・第2項、第67条第1項・第2項、第68条の2第1項・第2項、第69条第1項の規定に違反して社会福祉事業を経営する者が、不当に営利を図ったり、処遇につき不当の行為をしたときに、経営の制限や停止を命ずることができるとしています。

なお、届出をしなかったこと自体に対する罰則は、この記事の一次情報には含まれていません。そのため、この記事では扱いません。

法人本部で用意しておきたいもの:事業ごとの「届出の台帳」

条文の構造がつかめたところで、実務に落とします。ここまで見てきたとおり、社会福祉法の届出は、事業ごとに「根拠条文」「経営主体」「施設の有無」「期限の起算点」が違います。これを担当者の記憶や、その都度の調べ直しで回すと、担当者が代わったときに必ず迷いが生まれます。

おすすめは、事業ごとに1行の台帳を作ることです。項目は次のようなものが考えられます。

  • 事業の名称と、第2条のどの号に当たるか(第一種か第二種かを含む)
  • 施設を設置するか。住居の用に供するための施設かどうか
  • 経営主体(自法人であれば社会福祉法人)
  • 適用される条文(第62条、第67条、第68条の2、第69条のどれか)
  • 他の法律の手続の有無(第74条の確認結果)
  • 事業開始の日(または予定日)と、届出の期限
  • 届出日と、届出先の都道府県
  • 届出事項の控え(名称、所在地、事業の種類及び内容、定款の記載など)
  • 変更が生じた日と、変更の届出の期限・届出日
  • 廃止の予定と、廃止の届出の期限

この台帳の使い方を、事業を新しく始める場面で見てみましょう。

  1. 事業を決めた時点で、第2条の条文に当たる。 どの号に当たるのか、規模が第2条第4項の条件に引っかからないのかを確認する
  2. 施設を設置するか、住居の用に供するための施設かを確認する。 これで、第62条・第67条・第68条の2・第69条のどれに入るかが決まる
  3. 第74条を確認する。 他の法律の手続があるのかを、窓口に確認する
  4. 事前か、開始後一月以内かを確認する。 社会福祉法人であれば、事前に出すのは第62条第1項(施設を設置する第一種)の場合
  5. 届出事項に定款が入っている。 事業の目的が定款に含まれているかを確認する
  6. 期限を台帳に入れる。 事業開始の日が決まったら、すぐに期限を入力する

台帳は、表計算ソフトで十分です。大切なのは、「根拠条文」と「期限の起算点」を、必ず書くことです。同じ「一月以内」でも、起算点が事業開始の日なのか、変更の日なのか、廃止の日なのか。ここを記録しておけば、担当者が代わっても、条文に戻って確認できます。

事業が増えてくると、台帳の更新が追いつかなくなります。そうなったとき、事業の開始日、変更日、廃止日を入力すると、期限が自動で一覧になる仕組みがあれば、法人本部の負担はかなり軽くなります。複数の事業を持つ法人ほど、この一覧化の効果は大きくなります。

出したあとに調査が入ったとき

社会福祉法の第70条は、都道府県知事が社会福祉事業を経営する者に報告を求め、施設、帳簿、書類等を検査できると書いています。届出をした後も、事業の経営の状況は調査の対象になりうる、ということです。

法人の指導監査の全体像は、社会福祉法人の指導監査の記事で整理しています。この記事で読んだ届出の規定からは、たとえば、届け出た事項に変更が生じているのに変更の届出がされていない状態は、条文の上では「変更の日から一月以内」という期限を過ぎていることを意味する、と言えます。

だからこそ、変更の日と変更の届出日を、台帳で結びつけておくことが大切です。変更に気づくきっかけは、人事異動、建物の改修、事業内容の見直し、定款の変更などです。台帳に「変更の届出が要る事項か」という列を入れておくと、変更の都度、確認の習慣がつきます。

この記事で書いていないこと

一次情報の範囲を守るために、次の点は扱っていません。この記事で使った社会福祉法の条文の抜粋に含まれていないためです。

  • 都道府県ごとの届出様式、提出先の窓口名、処理にかかる日数
  • 都道府県の条例と、厚生労働省令の具体的な内容
  • 個別の事業が、第二種社会福祉事業に当たるか、第74条の適用除外に当たるかの判断
  • 第2条第4項第四号の「政令で定めるもの」の具体的な中身
  • 他の法律(児童福祉法、老人福祉法、障害者総合支援法など)の手続の中身
  • 市の区域内で行われる隣保事業の特例(第73条)
  • 届出をしなかった場合の罰則
  • 消費税の非課税との関係

これらは、事業を始める地の都道府県の案内と、所管の窓口でご確認ください。

まとめ

  • 社会福祉法の届出・許可の手続は、「第一種か第二種か」の1軸ではなく、「施設を設置するか」と「経営主体」の2軸で書き分けられている。そのうえで、事前か開始後一月以内かという時期も変わる
  • 「第一種は許可、第二種は届出」という説明は不正確。許可を受ける側として出てくるのは、国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者で、社会福祉法人は第一種でも届出である(第62条、第67条)
  • 社会福祉法人が事業の開始前に出すと条文が書いているのは、施設を設置して第一種を経営する場合(第62条第1項)だけ。施設を必要としない第一種(第67条第1項)、住居の用に供するための施設を設置する第二種(第68条の2第1項)、住居の用に供するための施設を必要としない第二種(第69条第1項)は、開始後一月以内の届出
  • 第二種にも事前の届出がある。社会福祉住居施設を設置する、国・都道府県・市町村・社会福祉法人以外の者は、事業の開始前に届け出る(第68条の2第2項)
  • 「第二種は届出」の説明は、実際には第69条という1つの条に対応していることが多い
  • 変更や廃止にも届出が要る。起算点は、事業開始の日・変更の日・廃止の日と条ごとに違い、施設を設置する第一種の廃止だけは「廃止の日の一月前まで」と事前になる(第64条)
  • 第74条は、他の法律で許可・認可・届出を要する施設や事業には、第62条から第71条の規定を適用しないと書いている。社会福祉法の手続と、個別の法律の手続の両方を確認する
  • 実務では、事業ごとに「根拠条文」「期限の起算点」を書いた台帳を作ると、担当者が代わっても確認ができる

新しい事業の相談が法人本部に届いたとき、最初に確認することは3つに絞れます。施設を設置するのか。住居の用に供するための施設なのか。そして、他の法律の手続はないのか。 この3つが決まれば、使う条文が決まり、事前か開始後一月以内かが決まります。

参考にした一次情報

  • 社会福祉法|e-Gov法令検索
    • 第2条(定義。第2項・第3項・第4項)
    • 第60条(経営主体)
    • 第62条(社会福祉施設の設置)、第63条(届出事項等の変更)、第64条(廃止)、第65条(施設の基準)、第66条(管理者)
    • 第67条(施設を必要としない第一種社会福祉事業の開始)、第68条(変更及び廃止)
    • 第68条の2(社会福祉住居施設の設置)、第68条の3(届出事項の変更)、第68条の4(廃止)、第68条の5(基準)
    • 第69条(住居の用に供するための施設を必要としない第二種社会福祉事業の開始等)
    • 第70条(調査)、第71条(改善命令)、第72条(許可の取消し等)、第74条(適用除外)

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