理事会が終わったあと、理事長と事務長のあいだで、こんな立ち話になることがあります。
「事業の一部を他の法人に引き継ぐ話が出ているが、そうなると、うちの法人は解散ということになるのかな」
「解散するなら、所轄庁の認可が要るはずです。ただ、合併のときも同じなのか、破産のときはどうなるのか、私も整理できていなくて」
「解散したら、清算というのをやるんだよね。そのときに、残った財産はどこへ行くんだったか」
社会福祉法人の解散は、多くの法人にとって一度も経験しないことです。だからこそ、いざ話が出たときに、法人本部に条文を説明できる人がいません。自治体が配っている手引きには、手続の順番と書類の一覧が載っています。けれども、それを読んでも「なぜその順番なのか」「どこで道が分かれるのか」は見えてきません。
この記事は、手続の一覧を作る記事ではありません。社会福祉法の解散と清算に関する条文を読み、「どこで判断が分かれるのか」を示す記事です。読み進めると、次のことが分かります。
- 解散事由は6つ並んでいるが、所轄庁の認可または認定が要るのはそのうち2つだけで、残りは別の経路を通ること
- 解散しても、必ず清算に進むわけではないこと(合併による解散は、清算の外側に置かれている)
- 清算に入った法人は、「清算が結了するまではなお存続するものとみなす」とされていること
- 残余財産が誰のものになるかは、解散を決めたあとではなく、ふだんの定款の書き方で決まっていること
- 解散と清算は、所轄庁だけでなく、裁判所の監督にも属していること
根拠にするのは、社会福祉法の条文の原文です。申請書の様式、添付書類の一覧、処理にかかる期間、自治体ごとの運用、費用の目安は、この記事で使った条文には書かれていません。そのため、書かずに最後の「この記事で書いていないこと」にまとめました。
まず結論:「解散」は1本道ではなく、入口で道が分かれる
先に全体像を示します。以降の章で、この順に条文を確認していきます。
- 社会福祉法第46条第1項は、解散事由を6つ並べている。評議員会の決議、定款に定めた解散事由の発生、目的たる事業の成功の不能、合併、破産手続開始の決定、所轄庁の解散命令である
- 第2項で「所轄庁の認可又は認定」が要るのは、第一号(評議員会の決議)と第三号(目的たる事業の成功の不能)だけである
- 第二号(定款に定めた解散事由の発生)と第五号(破産手続開始の決定)による解散は、第3項で、清算人が遅滞なく所轄庁に届け出る扱いになっている
- 第四号(合併)と第六号(所轄庁の解散命令)は、第2項にも第3項にも出てこない。「解散=所轄庁の認可」と一括りにはできない
- 解散した法人が清算をするのは第46条の3の定める場合で、合併による解散は清算の対象から除かれている。破産手続開始の決定による解散も、破産手続が終了していない場合は除かれている
- 清算に入った法人(清算法人)は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまで存続する(第46条の4)。解散は、法人の消滅そのものではない
- 清算法人には清算人を必ず置く(第46条の5第1項)。清算人になる者は第46条の6に定められている
- 残余財産は、所轄庁に対する清算結了の届出の時に、定款の定めるところにより、帰属すべき者に帰属する(第47条第1項)。処分されない財産は国庫に帰属する(同条第2項)
- 解散の登記だけでなく、清算人の就任や変更、清算の結了も登記が必要である(第29条第1項)
- 清算が結了したあとも、清算法人の帳簿資料には登記の時から10年間の保存義務がある(第47条の3第1項)
- 解散と清算は、裁判所の監督に属する(第47条の4第1項)
第46条を読む:解散事由は6つ、ただし経路は3つに分かれる
解散の出発点は、第46条です。第1項の柱書は、次のとおりです。
社会福祉法人は、次の事由によつて解散する。
続く6つの号を、条文の順に並べます。
| 号 | 解散事由(条文の書き方) |
|---|---|
| 第一号 | 評議員会の決議 |
| 第二号 | 定款に定めた解散事由の発生 |
| 第三号 | 目的たる事業の成功の不能 |
| 第四号 | 合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。) |
| 第五号 | 破産手続開始の決定 |
| 第六号 | 所轄庁の解散命令 |
6つが並ぶと、どれも同じ重さの「解散のきっかけ」に見えます。ところが、続く第2項と第3項を読むと、号によって扱いが違うことが分かります。
第2項:認可又は認定が要るのは、第一号と第三号
第2項は、次のように書かれています。
前項第一号又は第三号に掲げる事由による解散は、所轄庁の認可又は認定がなければ、その効力を生じない。
ここで押さえたい点は2つあります。
1つ目は、対象が第一号と第三号に限られていることです。評議員会が解散を決議した場合と、目的たる事業の成功の不能を理由に解散する場合に、所轄庁の認可または認定が要ります。そして、「その効力を生じない」と書かれているので、認可または認定が得られるまで、解散の効力は生じません。評議員会が解散を決議しても、決議しただけでは解散は成立しないということです。
2つ目は、「認可」と「認定」という2つの語が併記されていることです。同じ条文に、性質の違う2つの語が並んでいます。ただし、第一号と第三号のうちどちらがどちらに対応するのかは、条文には書き分けられていません。この記事で使っている条文からは、「認可又は認定」と併記されている、という事実までしか言えません。どちらの語がどの号に当たるのかを断定しないでください。実際に手続を進めるときは、所轄庁に確認することになります。
第一号の評議員会の決議には、特別な決議要件がかかっている
第一号の「評議員会の決議」には、決議の要件についても別の条文があります。評議員会の運営を定める第45条の9です。通常の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数で行います。しかし、一定の決議だけは、より重い要件が課されています。第7項は、次のとおりです。
次に掲げる評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合)以上に当たる多数をもつて行わなければならない。
その号の1つが、第四号です。
第四十六条第一項第一号の評議員会
つまり、解散を決める評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の三分の二以上の多数が必要です。定款でこれを上回る割合を定めていれば、その割合になります。「定款に別の割合が書いてあるか」は、解散の議案を出す前に確認したい点です。
第3項:第二号と第五号は、清算人が届け出る
第3項は、第2項とは別の経路を示しています。
清算人は、第一項第二号又は第五号に掲げる事由によつて解散した場合には、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければならない。
第二号(定款に定めた解散事由の発生)と第五号(破産手続開始の決定)は、認可や認定を受けて効力が生じるのではなく、事由が生じたことで解散し、そのあと清算人が届け出るという構造です。
ここは、条文の位置を正確に読むのが大切です。第2項は「効力を生じない」と、効力の発生に所轄庁の関与が必要だと書いています。第3項は「届け出なければならない」と、解散が成立した後の義務を書いています。同じ解散でも、所轄庁が入口で関わるか、事後に届け出を受けるかが違うのです。
なお、第3項は届出の主体を「清算人」としています。清算人が誰になるのかは第46条の6に書かれていて、この記事の後半で扱います。
第四号と第六号:第2項にも第3項にも出てこない
では、残りの第四号(合併)と第六号(所轄庁の解散命令)はどうでしょうか。第2項は第一号と第三号だけを挙げ、第3項は第二号と第五号だけを挙げています。第四号と第六号は、この2つの項のどちらにも挙がっていません。
なぜそうなっているのかは、この記事で使っている条文には書かれていないので、推測では書きません。分かるのは、条文の構造として、6つの号が「認可・認定が要るもの」「清算人の届出によるもの」「そのどちらでもないもの」の3つに分かれている、という事実です。
合併は、第46条第1項で第四号として別建てに置かれています。合併の手続と日程は、社会福祉法人の合併の手続きと日程の記事で整理しています。この記事では、合併による解散が、第46条の3によって清算の対象から外されている点を後ほど確認します。
6つの号を、3つの経路に整理する
ここまでを表にまとめます。
| 号 | 解散事由 | 第2項(認可又は認定) | 第3項(清算人の届出) |
|---|---|---|---|
| 第一号 | 評議員会の決議 | 要る | 挙がっていない |
| 第二号 | 定款に定めた解散事由の発生 | 挙がっていない | 清算人が遅滞なく届け出る |
| 第三号 | 目的たる事業の成功の不能 | 要る | 挙がっていない |
| 第四号 | 合併 | 挙がっていない | 挙がっていない |
| 第五号 | 破産手続開始の決定 | 挙がっていない | 清算人が遅滞なく届け出る |
| 第六号 | 所轄庁の解散命令 | 挙がっていない | 挙がっていない |
「社会福祉法人の解散には所轄庁の認可が要る」という説明は、第一号と第三号については、そのとおりです。けれども、6つの号すべてに当てはまる説明ではありません。自分の法人が、どの号に当たる解散を考えているのか。これが、最初の分かれ目です。
破産による解散は、理事に申立ての義務がある
第五号の破産手続開始の決定については、第46条の2が定めています。
社会福祉法人がその債務につきその財産をもつて完済することができなくなつた場合には、裁判所は、理事若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定をする。
そして、第2項は、理事に義務を課しています。
前項に規定する場合には、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。
財産をもって債務を完済できなくなった場合、理事は「直ちに」申立てをしなければならないと書かれています。解散の議論をしているうちに、資金繰りの悪化が進んでいた、という場面で、この条文が効いてきます。財産で債務を完済できない状態かもしれないと感じたときは、評議員会の決議による解散を検討する前に、第46条の2に立ち返る必要があります。
解散したら必ず清算になるのか:第46条の3の読み方
第46条の3の柱書は、次のとおりです。
社会福祉法人は、次に掲げる場合には、この款の定めるところにより、清算をしなければならない。
清算をしなければならない場合は、2つ挙げられています。
解散した場合(第四十六条第一項第四号に掲げる事由によつて解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であつて当該破産手続が終了していない場合を除く。)
設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
第一号は、「解散した場合」が原則です。ただし、括弧書きで2つの場合が除かれています。この括弧書きが、この条文の読みどころです。
括弧書きが除いている2つの場合
- 第46条第1項第四号に掲げる事由によつて解散した場合(合併による解散)
- 破産手続開始の決定により解散した場合であつて、当該破産手続が終了していない場合
1つ目は、合併です。合併による解散は、清算をしなければならない場合から除かれています。なぜ除かれているのかは、この記事で使っている条文には書かれていないので、理由には踏み込まず、「除かれている」という事実だけを確認します。
2つ目は、破産です。ここは正確に読む必要があります。除かれているのは、破産手続が終了していない場合です。破産手続が続いている間は、この款の定める清算の対象になっていない、と読めます。破産手続が終了した後にどうなるのかは、この記事で使っている条文からは分かりません。「破産なら清算は関係ない」と一括りにせず、破産手続が終了していない場合に限って除かれている、という書き方のとおりに理解してください。
なお、破産で解散した場合の届出の主体は、第46条第3項で「清算人」とされています。破産手続が終了していない間に、清算人がどう位置づけられるのかは、この記事の条文の範囲では読み取れません。この点は所轄庁や専門家に確認する範囲です。
もう1つの清算の原因:設立の無効
第二号は、設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合です。解散とは別の入口で、清算が始まります。この場合は、後の第46条の6第3項で、清算人の選任の仕方も変わります。
解散と清算の関係を表にする
| 場面 | 第46条の3の扱い |
|---|---|
| 評議員会の決議、定款の定める事由の発生、目的たる事業の成功の不能、所轄庁の解散命令による解散 | 括弧書きの除外に挙がっていないので、第一号の「解散した場合」に当たる |
| 合併による解散 | 括弧書きで除かれている |
| 破産手続開始の決定による解散 | 破産手続が終了していない場合は除かれている |
| 設立の無効の判決が確定した場合 | 第二号により、清算をしなければならない |
「解散」と「清算」は、続けて語られることが多い言葉です。けれども、条文の上では別の概念で、解散した全部の法人が清算に入るわけではありません。
解散しても、法人は消えない:第46条の4
清算に入った法人の性格は、第46条の4が定めています。
前条の規定により清算をする社会福祉法人(以下「清算法人」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
この条文から、3つのことが読み取れます。
- 清算をする社会福祉法人は、「清算法人」と呼ばれる
- 清算法人は、解散後もなお存続するものとみなされる。解散したから法人格がなくなる、という扱いではない
- 存続するのは「清算の目的の範囲内において」であり、清算が結了するまでである
清算法人の職務は、第46条の9のとおり、現務の結了、債権の取立てと債務の弁済、残余財産の引渡しです。条文は、そのための存続を「清算の目的の範囲内において」と区切っています。そして、その存続は「清算が結了するまで」です。
実務で意識したいのは、解散後も、法人本部の仕事は残るという点です。契約の当事者、財産の名義人、帳簿の保管者としての法人は、清算が結了するまで続きます。後ほど見るとおり、評議員会、監事、所轄庁への届出、登記、書類の保存といった、通常の法人と似た事務が、解散後にもあります。
清算人は必ず置く:第46条の5と第46条の6
清算法人の機関について、第46条の5は次のように定めています。
清算法人には、一人又は二人以上の清算人を置かなければならない。
清算人は、必ず置かなければならないと書かれています。第3項で見た「清算人が届け出る」という義務も、この清算人が前提です。
清算人会と監事は、定款で置くことができる
第2項は、任意の機関を定めています。
清算法人は、定款の定めによつて、清算人会又は監事を置くことができる。
清算人会を置く清算法人を「清算人会設置法人」と呼び、この場合の清算人の人数について、第46条の6第7項が次のように定めています。
清算人会設置法人(清算人会を置く清算法人をいう。以下同じ。)においては、清算人は、三人以上でなければならない。
清算人会を置く場合は、清算人は3人以上が必要です。
特定社会福祉法人だった清算法人は、監事を置かなければならない
第46条の5第3項は、監事について、置かなければならない場合を定めています。
第四十六条の三各号に掲げる場合に該当することとなつた時において特定社会福祉法人であつた清算法人は、監事を置かなければならない。
ここは、条文の言葉を丁寧に読む必要があります。基準になる時点は、「解散した時」と単純に書かれているのではなく、第46条の3の各号に掲げる場合に該当することとなった時です。つまり、清算をしなければならない場合(解散した場合、または設立の無効の判決が確定した場合)に該当した時点で、特定社会福祉法人であったかどうかで決まります。
「特定社会福祉法人」の定義は、この記事で使っている条文には含まれていません。したがって、自法人が特定社会福祉法人に当たるかどうかは、この記事では説明しません。清算の話が出た時点で、自法人が特定社会福祉法人に当たるのかどうかを、所轄庁に確認してください。
誰が清算人になるのか:第46条の6
第46条の6第1項は、清算人となる者を定めています。
次に掲げる者は、清算法人の清算人となる。
その3つの号は、次のとおりです。
理事(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
定款で定める者
評議員会の決議によつて選任された者
条文の構造は、次のとおりです。
| 号 | 清算人となる者 | 条文上の条件 |
|---|---|---|
| 第一号 | 理事 | 「次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く」 |
| 第二号 | 定款で定める者 | なし |
| 第三号 | 評議員会の決議によつて選任された者 | なし |
注意したいのは、第一号の括弧書きです。理事が清算人になるのは、第二号(定款で定める者)または第三号(評議員会の決議によつて選任された者)がいない場合です。何も定めなければ理事が清算人になりますが、定款で清算人を定めていたり、評議員会が清算人を選任したりすれば、その者が清算人になり、理事は清算人にならない、という構造です。
第二号と第三号が両方ある場合の優先関係は、この条文には書かれていません。そのため、順位があるとは言えません。「理事が自動的に清算人になる」という理解も、この括弧書きがあるので、そのままでは正確ではありません。
清算人がいない場合は、裁判所が選任する
第2項は、次のとおりです。
前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を選任する。
清算人となる者が誰もいないときは、裁判所が選任する道があります。第3項では、設立の無効の判決が確定した場合の清算法人について、裁判所が選任する扱いが定められています。
ここで、解散と清算が裁判所の監督に属する(第47条の4)という構造が、清算人の選任という具体的な場面で現れています。
清算人の届出と解任
清算人には、所轄庁への届出義務があります。第4項は、次のとおりです。
清算人は、その氏名及び住所を所轄庁に届け出なければならない。
第5項は、清算中に就職した清算人にも、同じ届出義務を課しています。
解任については、第46条の7が定めています。
清算人(前条第二項又は第三項の規定により裁判所が選任した者を除く。)が次のいずれかに該当するときは、評議員会の決議によつて、当該清算人を解任することができる。
その事由は、職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき(第一号)、心身の故障のため職務の執行に支障があり、またはこれに堪えないとき(第二号)です。裁判所が選任した清算人は、評議員会では解任できません。重要な事由があるときは、裁判所が解任できます。
重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立て若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができる。
清算人の選任・届出・解任の場面で、所轄庁、評議員会、裁判所のそれぞれが、違う役割で関わっていることが分かります。
清算人の仕事を条文で追う:職務、財産目録、債権者への公告
清算人が行う職務は、第46条の9に3つ書かれています。
清算人は、次に掲げる職務を行う。
その内容は、次のとおりです。
| 号 | 職務 |
|---|---|
| 第一号 | 現務の結了 |
| 第二号 | 債権の取立て及び債務の弁済 |
| 第三号 | 残余財産の引渡し |
以降の条文は、この3つの職務を、どの順番で、どんな制約のもとで進めるのかを細かく定めています。
最初の仕事:財産の現況を調べ、財産目録と貸借対照表を作る
第46条の22第1項は、清算人の最初の仕事を定めています。
清算人(清算人会設置法人にあつては、第四十六条の十七第七項各号に掲げる清算人)は、その就任後遅滞なく、清算法人の財産の現況を調査し、厚生労働省令で定めるところにより、第四十六条の三各号に掲げる場合に該当することとなつた日における財産目録及び貸借対照表(以下この条及び次条において「財産目録等」という。)を作成しなければならない。
ポイントは、次の3つです。
- 就任後遅滞なく作成する
- 作成する財産目録と貸借対照表の基準日は、第46条の3の各号に掲げる場合に該当することとなった日(解散した日など)である
- 作成の方法は「厚生労働省令で定めるところ」によるとされており、様式や記載事項はこの記事の条文の範囲外である
つまり、解散の日の財産の状態が、清算の出発点になります。解散の日を境に、法人の財産を「事業を続ける財産」から「清算する財産」として見直すことになります。
作成した財産目録等は、評議員会の承認を受ける必要があります(第3項)。
清算人は、財産目録等(前項の規定の適用がある場合にあつては、同項の承認を受けたもの)を評議員会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない。
清算人会設置法人では、その前に清算人会の承認を受けます(第2項)。
通常の法人が作成する財産目録については、社会福祉法人の財産目録の記事で整理しています。清算の局面で作る「財産目録等」は、基準日が解散した日などになる点が特徴です。
清算事務年度ごとの貸借対照表と事務報告
第46条の24第1項は、各清算事務年度についての書類の作成を定めています。作成するのは、次のとおりです。
各清算事務年度(第四十六条の三各号に掲げる場合に該当することとなつた日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあつては、その前日)から始まる各一年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
「清算事務年度」は、法人の会計年度とは別の数え方です。清算に入る原因となった日の翌日から始まる各1年が、1つの清算事務年度です。これまで4月から3月で回していた会計年度とは、区切りが変わります。
作成した書類は、監事設置清算法人では監事の監査を受けます。
監事設置清算法人においては、前条第一項の貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
清算人会設置法人では、清算人会の承認も必要です(第46条の25第2項)。そして、定時評議員会への提出または提供のうえ、貸借対照表は承認を受け、事務報告は報告します(第46条の27)。
前項の規定により提出され、又は提供された貸借対照表は、定時評議員会の承認を受けなければならない。
清算人は、第一項の規定により提出され、又は提供された事務報告の内容を定時評議員会に報告しなければならない。
解散後も、定時評議員会が開かれ、貸借対照表の承認と事務報告の報告が行われるという構造です。通常の法人が毎年やっている決算の流れと、似た節目が残ります。ただし、清算期に作る書類は、貸借対照表と事務報告、およびこれらの附属明細書という組み合わせで書かれています。通常期の計算書類とは書類の名前が違う点に注意してください。
債権者への公告:期間は二月を下れない
清算の中で、外部に対する手続として重いのが、債権者への公告です。第46条の30第1項は、次のとおりです。
清算法人は、第四十六条の三各号に掲げる場合に該当することとなつた後、遅滞なく、当該清算法人の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、判明している債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二月を下ることができない。
条文から読み取れる点は、次のとおりです。
- 遅滞なく、官報に公告する
- 公告とは別に、判明している債権者には各別に催告する
- 債権を申し出るべき期間は、二月を下ることができない(2か月以上)
また、公告には、期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならないと、第2項に書かれています。
公告の期間中は、原則として弁済ができない
第46条の31第1項は、次のとおりです。
清算法人は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。
債権者に債権の申出を求めている期間は、債務を弁済できません。しかも、この場合、清算法人は債務の不履行によって生じた責任を免れることができないと、同じ項の後段に書かれています。ただし、例外が第2項に定められています。
清算法人は、前条第一項の期間内であつても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算法人の財産につき存する担保権によつて担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。
例外を使うには、裁判所の許可が要ります。ここでも、清算の実務が裁判所の関与のもとで進むことが分かります。清算人が2人以上いるときは、許可の申立ては全員の同意によってしなければならないと、同じ項に書かれています。
条件付きの債権などは、鑑定人の評価を経る
額が確定していない債権の扱いも、条文は細かく定めています。第46条の32第1項は、条件付債権、存続期間が不確定な債権その他その額が不確定な債権に係る債務を弁済できるとしたうえで、これらの債権を評価させるため、裁判所に対し、鑑定人の選任の申立てをしなければならないとしています。評価に従って弁済をしなければならず(第2項)、鑑定人の選任の手続に関する費用は清算法人の負担です(第3項)。
債務を弁済したあとでなければ、財産は引き渡せない
残余財産を引き渡す前の制限が、第46条の33です。
清算法人は、当該清算法人の債務を弁済した後でなければ、その財産の引渡しをすることができない。ただし、その存否又は額について争いのある債権に係る債務についてその弁済をするために必要と認められる財産を留保した場合は、この限りでない。
財産の引渡しは、債務の弁済のあとです。争いのある債権がある場合は、その弁済に必要と認められる財産を留保すれば、引渡しができます。
申し出なかった債権者は、清算から除斥される
債権の申出をしなかった債権者について、第46条の34は次のように定めています。
清算法人の債権者(判明している債権者を除く。)であつて第四十六条の三十第一項の期間内にその債権の申出をしなかつたものは、清算から除斥される。
前項の規定により清算から除斥された債権者は、引渡しがされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる。
判明している債権者は、公告の期間内に申し出なくても除斥されません。除斥されるのは、判明していない債権者で、期間内に申し出なかった者です。そして、除斥された債権者も、まだ引き渡されていない残余財産に対しては、弁済を請求できます。
ここまでを時間の順に並べると、清算の骨格は次のようになります。
| 段階 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 清算の開始 | 第46条の3 | 解散など、清算をしなければならない場合に該当 |
| 清算人の就任と届出 | 第46条の6 | 清算人が就任し、氏名と住所を所轄庁に届け出る |
| 財産の調査と目録の作成 | 第46条の22 | 就任後遅滞なく、財産目録と貸借対照表を作り、評議員会の承認を受ける |
| 債権者への公告と催告 | 第46条の30 | 官報に公告し、判明している債権者には各別に催告。期間は二月を下れない |
| 弁済 | 第46条の31〜第46条の33 | 公告の期間内は原則として弁済できない。弁済のあとに財産を引き渡す |
| 残余財産の帰属 | 第47条 | 清算結了の届出の時に帰属する |
| 決算報告 | 第47条の2 | 清算事務の終了後、決算報告を作成し、評議員会の承認を受ける |
| 清算結了の届出 | 第47条の5 | 清算人が所轄庁に届け出る |
この表は、条文の順を整理したものです。各段階の間で、現実にどれだけの期間がかかるのかは、この記事で使っている条文には書かれていません。
残余財産は誰のものになるのか:第47条と定款の関係
この記事で、最も強調したいのが、この章です。
弁済を終えて、なお残った財産が「残余財産」です。この残余財産の行き先を、第47条が定めています。
解散した社会福祉法人の残余財産は、合併(合併により当該社会福祉法人が消滅する場合に限る。)及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか、所轄庁に対する清算結了の届出の時において、定款の定めるところにより、その帰属すべき者に帰属する。
第2項は、次のとおりです。
前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する。
条文を3つの要素に分解する
第1項は長い1文ですが、分解すると、次の要素が見えてきます。
| 要素 | 条文の言葉 | 読み取れること |
|---|---|---|
| いつ | 所轄庁に対する清算結了の届出の時において | 解散した日ではなく、清算結了の届出の時に帰属する |
| どのように | 定款の定めるところにより | 定款に書かれた内容が、帰属先を決める |
| 誰に | その帰属すべき者に帰属する | 定款で帰属すべき者とされた者に帰属する |
| 例外 | 合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除くほか | 合併と破産手続開始の決定による解散の場合は、この規定の対象外 |
特に重要なのは、2つ目の「定款の定めるところにより」です。残余財産の行き先は、清算の中で理事や評議員会が自由に決めるのではなく、定款の定めによって決まると読めます。
定款の定めは、ふだんから効いている
では、その定款の定めは、いつ書かれるのでしょうか。社会福祉法第31条第1項は、定款の必要的記載事項を挙げています。
社会福祉法人を設立しようとする者は、定款をもつて少なくとも次に掲げる事項を定め、厚生労働省令で定める手続に従い、当該定款について所轄庁の認可を受けなければならない。
その事項の1つが、第十三号です。
解散に関する事項
つまり、「解散に関する事項」は、定款に必ず書く項目の1つです。そして、第6項は、その中に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合の条件を定めています。
第一項第十三号に掲げる事項中に、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようにしなければならない。
整理すると、次のようになります。
- 定款には「解散に関する事項」を書く(第31条第1項第十三号)
- その中に、残余財産の帰属すべき者を定める場合、その者は社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようにしなければならない(第31条第6項)
- 実際に残余財産が出たとき、その定款の定めによって、帰属先が決まる(第47条第1項)
ここに、この記事で最も伝えたいことがあります。残余財産の帰属先を決めているのは、解散の議論を始めたあとの話し合いではなく、いまの定款の条文です。 解散の話が出てから「財産をどこへ渡すか」を考え始めても、その行き先は、すでに定款に書かれているものによって決まる、という構造です。
「処分されない財産」は国庫に帰属する
第2項は、「前項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する」と書いています。「処分されない」が具体的にどのような場合を指すのかは、この記事で使っている条文には書かれていません。たとえば、定款に帰属先の定めがない場合や、定められた者に帰属しない場合が、これに当たるのかどうかは、条文の抜粋からは断定できません。
分かることは、次の2点です。
- 第1項は「定款の定めるところにより」帰属先を決めると書いている
- 第2項は、第1項の規定により処分されない財産が、最終的に国庫に帰属すると書いている
定款の中身がどのような場合に第2項に当たるのかは、所轄庁や専門家に確認すべき点です。ただ、少なくとも、「定款でどう書いてあるか」が、帰属の出発点であることは、条文から明らかです。
帰属するタイミングは「清算結了の届出の時」
もう1つ、見落としやすいのが、タイミングです。残余財産が帰属するのは、解散の時ではなく、所轄庁に対する清算結了の届出の時です。
清算結了の届出は、第47条の5が定めています。
清算が結了したときは、清算人は、その旨を所轄庁に届け出なければならない。
つまり、時間の流れは次のようになります。
- 解散する
- 清算人が、債権の取立てと債務の弁済を進める
- 残った財産が、残余財産になる
- 清算が結了し、清算人が所轄庁に届け出る
- その届出の時に、残余財産が、定款の定めるところにより帰属する
法人が解散してから届出までの間、財産は清算法人のものとして、清算人が管理します。帰属先に財産が移るのは、最後の最後です。
この章の実務的な示唆:定款を見直すなら「いま」
ここまでの条文を踏まえると、法人本部として、ふだんから確認しておきたい点が見えてきます。
- 自法人の定款に、「解散に関する事項」がどう書かれているか
- 残余財産の帰属すべき者について、定款に規定があるか。あるなら、第31条第6項の条件(社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようにする)に沿っているか
- 定款に定めた解散事由(第46条第1項第二号)があるか。あるなら、それは何か
最後の項目は、第二号の「定款に定めた解散事由の発生」です。この解散事由は、定款に書いてあるときにだけ存在します。書かれていなければ、第二号による解散は、そもそも成り立ちません。逆に、書いてあるなら、その事由が生じたとき、評議員会の決議や所轄庁の認可を経ることなく解散が生じ、第3項の清算人の届出の経路に入ります。自法人の定款に何が書かれているのかを、解散を考える前に確認しておくことは、法人のリスク管理でもあります。
定款の変更手続は、社会福祉法人の定款変更手続きの記事で整理しています。残余財産の帰属先の規定を変えたい場合など、定款の見直しを考えるときに参考にしてください。この記事は、見直しをすべきかどうかを判断する材料ではなく、条文の上で、その規定がどこに効いてくるのかを示すものです。
清算事務の終わり方:決算報告と清算結了の届出
清算事務が終わったら、清算法人は決算報告を作ります。第47条の2第1項は、次のとおりです。
清算法人は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、厚生労働省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない。
清算人会設置法人では、決算報告は清算人会の承認を受けます(第2項)。そして、評議員会の承認が必要です。
清算人は、決算報告(前項の規定の適用がある場合にあつては、同項の承認を受けたもの)を評議員会に提出し、又は提供し、その承認を受けなければならない。
承認には、清算人の責任を免除する効果がある
第4項は、この承認に重要な効果を与えています。
前項の承認があつたときは、任務を怠つたことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなす。ただし、清算人の職務の執行に関し不正の行為があつたときは、この限りでない。
決算報告について評議員会の承認があると、任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなされると書かれています。ただし、不正の行為があったときは、免除されません。
決算報告の承認は、単なる報告の了承ではなく、清算人の責任に関わる意思決定であることが分かります。評議員会は、決算報告の内容を確認したうえで承認することになります。
清算結了の届出
そして、清算が結了したとき、清算人は所轄庁へ届け出ます。先に引用した第47条の5のとおりです。この届出の時が、残余財産の帰属の時になります。
決算報告の承認と清算結了の届出の前後関係は、この記事で使っている条文には明示されていません。決算報告の作成は「清算事務が終了したとき」、届出は「清算が結了したとき」と、別の言葉で書かれています。実際の順序や書類は、所轄庁に確認してください。
登記は「解散」で終わらない:第29条
登記についても、見落としやすい点があります。第29条第1項は、次のとおりです。
社会福祉法人は、政令の定めるところにより、その設立、従たる事務所の新設、事務所の移転その他登記事項の変更、解散、合併、清算人の就任又はその変更及び清算の結了の各場合に、登記をしなければならない。
この条文には、解散にかかわる登記が、複数の場面で書かれています。
| 場面 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 解散したとき | 解散 |
| 合併したとき | 合併 |
| 清算人が就任したとき、変更があったとき | 清算人の就任又はその変更 |
| 清算が結了したとき | 清算の結了 |
「解散の登記」だけで済むわけではありません。清算人の就任やその変更のたびに、登記が必要です。清算人が途中で交代すれば、その変更も登記の対象になります。そして、清算が結了したときにも登記をします。
また、第2項は、登記の効力についても定めています。
前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
登記が必要な事項は、登記の後でなければ、第三者に対抗することができません。解散した事実や清算人の就任を、取引先などの第三者に主張する場面では、この登記が関わってきます。
登記の具体的な手続(登録免許税、添付書類、申請期間など)は、この記事で使っている条文には書かれていません。政令の定めるところによるとされているため、法務局や専門家に確認する範囲です。
清算結了のあとも続く:保存義務は2段階
清算が結了しても、法人本部の責任が完全に終わるわけではありません。保存義務が、2段階で定められています。
第1段階:清算結了の登記の時まで
財産目録等と、貸借対照表等には、清算結了の登記の時までの保存義務があります。
財産目録等について、第46条の22第4項は、次のとおりです。
清算法人は、財産目録等を作成した時からその主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該財産目録等を保存しなければならない。
貸借対照表とその附属明細書については、第46条の24第3項が定めています。
清算法人は、第一項の貸借対照表を作成した時からその主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時までの間、当該貸借対照表及びその附属明細書を保存しなければならない。
さらに、貸借対照表等は、主たる事務所に備え置くことも義務づけられています(第46条の26第1項)。備え置く期間は、定時評議員会の日の一週間前の日(一定の提案があった場合は、その提案があった日)から、主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時までです。そして、評議員と債権者は、清算法人の業務時間内はいつでも、閲覧などを請求できます(同条第2項)。債権者が謄本または抄本の交付などを請求するには、清算法人の定めた費用を支払う必要があります。
第2段階:清算結了の登記の時から10年間
そして、清算結了の登記が済んだあとも、保存義務は続きます。第47条の3第1項は、次のとおりです。
清算人(清算人会設置法人にあつては、第四十六条の十七第七項各号に掲げる清算人)は、清算法人の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時から十年間、清算法人の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(以下この条において「帳簿資料」という。)を保存しなければならない。
整理すると、次のようになります。
| 対象 | 保存の起点 | 保存の終点 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 財産目録等 | 作成した時 | 清算結了の登記の時 | 第46条の22第4項 |
| 貸借対照表とその附属明細書 | 作成した時 | 清算結了の登記の時 | 第46条の24第3項 |
| 帳簿資料(帳簿、事業と清算に関する重要な資料) | 清算結了の登記の時 | 登記の時から十年間 | 第47条の3第1項 |
起点が違うことに注意が必要です。帳簿資料の10年は、清算結了の登記の時から数えます。解散の日からでも、清算結了の届出の日からでもありません。
保存する人がいなくなったら、裁判所が選任する
法人が消えたあと、誰が帳簿資料を保存するのか。この疑問に、第47条の3第2項が答えています。
裁判所は、利害関係人の申立てにより、前項の清算人に代わつて帳簿資料を保存する者を選任することができる。
清算人に代わって保存する者を、裁判所が選任することができます。選任された者も、清算結了の登記の時から10年間、帳簿資料を保存しなければなりません(第3項)。この場合は、第1項の清算人の義務は適用されません。選任の手続に関する費用は、清算法人の負担です(第4項)。
保存義務から見える、事務の考え方
この条文を、実務の観点から読むと、1つのことが見えてきます。清算が結了したあとも、10年間は、帳簿資料を保存し、必要なときに取り出せる状態にしておく必要があることです。
紙の帳簿や契約書、事業の記録を、どこに置き、誰が管理し、10年後にどう処分するのか。解散や清算の話が出てから考えると、現場は大きな負担になります。ふだんから、帳簿や重要な資料がどこにあるのかを把握しておくことが、解散時の負担を軽くします。
ここで述べたことは、条文の構造からの実務的な示唆であって、条文が要求している書類管理の方法ではありません。どんな資料が「事業及び清算に関する重要な資料」に当たるのか、保存の方法に決まりがあるのかは、この記事で使っている条文には書かれていません。
解散と清算は、所轄庁だけでなく裁判所の監督にも属する
ここまでの条文を読んでくると、各所に「裁判所」が出てきたことに気づきます。それは偶然ではなく、第47条の4第1項に根拠があります。
社会福祉法人の解散及び清算は、裁判所の監督に属する。
第2項は、裁判所の権限について、次のとおり書いています。
裁判所は、職権で、いつでも前項の監督に必要な検査をすることができる。
そして、第3項は、所轄庁との関係を定めています。
社会福祉法人の解散及び清算を監督する裁判所は、社会福祉法人の業務を監督する官庁に対し、意見を求め、又は調査を嘱託することができる。
第4項は、官庁側からも意見を述べられるとしています。
裁判所が出てくる場面を一覧にする
ここまでの章で出てきた、裁判所の関与を整理します。
| 場面 | 条文 | 裁判所の関与 |
|---|---|---|
| 破産手続の開始 | 第46条の2 | 理事もしくは債権者の申立てまたは職権で、破産手続開始の決定をする |
| 清算人の選任 | 第46条の6第2項・第3項 | 清算人となる者がないとき、または設立の無効の判決が確定した場合に選任する |
| 清算人の解任 | 第46条の7第2項 | 重要な事由があるときに解任できる |
| 財産目録等の提出命令 | 第46条の23 | 訴訟の当事者に提出を命ずることができる |
| 貸借対照表等の提出命令 | 第46条の28 | 訴訟の当事者に提出を命ずることができる |
| 公告期間内の弁済の許可 | 第46条の31第2項 | 少額の債権などについて許可する |
| 不確定な債権の評価 | 第46条の32第1項 | 鑑定人の選任の申立てを受ける |
| 帳簿資料の保存者の選任 | 第47条の3第2項 | 利害関係人の申立てにより選任できる |
| 解散・清算の監督全般 | 第47条の4 | 職権でいつでも必要な検査ができる |
法人の解散と清算は、所轄庁への手続だけで完結するものではありません。債権者を保護し、財産が適正に処理されるように、裁判所が全体を監督する仕組みになっています。所轄庁の担当者との調整だけでなく、裁判所との関係も見据えた進め方が必要になる、ということが、条文の構造から読み取れます。
解散を考え始めたときの、判断の分かれ目を表にする
ここまでの内容を、「どこで判断が分かれるか」の観点で整理します。
| 分かれ目 | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| どの解散事由か | 第一号〜第六号のどれに当たるのか | 第46条第1項 |
| 所轄庁の関与の形 | 認可または認定が要る(第一号・第三号)か、清算人の届出(第二号・第五号)か、どちらにも挙がっていない(第四号・第六号)か | 第46条第2項・第3項 |
| 評議員会の決議要件 | 第一号の場合、議決に加わることができる評議員の三分の二以上(定款でそれを上回る割合を定めていればその割合) | 第45条の9第7項 |
| 債務超過の有無 | 財産で債務を完済できないとき、理事は直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない | 第46条の2 |
| 清算に入るか | 合併による解散は清算の対象から除かれる。破産手続が終了していない場合も除かれる | 第46条の3 |
| 清算人は誰か | 理事(ただし、定款で定める者、評議員会の決議で選任された者がいない場合)、定款で定める者、評議員会が選任した者。いなければ裁判所が選任 | 第46条の6 |
| 監事は必要か | 清算に入る場合に該当することとなった時に特定社会福祉法人であった清算法人は、監事を置かなければならない | 第46条の5第3項 |
| 残余財産の帰属先 | 定款の定めるところによる。処分されない財産は国庫に帰属 | 第47条、第31条 |
| 帳簿資料の保存 | 清算結了の登記の時から10年間 | 第47条の3 |
この表の各行は、解散の話が出る前に、法人本部が自法人の状況に当てはめて確認できる項目です。
準備を軽くする打ち手:解散のときに慌てないために
ここまでは条文の話でした。最後に、条文の構造から導ける、ふだんの備えを整理します。これらは条文が義務づけているものではなく、条文を読んだうえでの実務的な示唆です。
1. 定款の「解散に関する事項」を、いちど通して読む
多くの法人では、定款は設立時に作られ、変更のたびに部分的に見直されてきたものです。解散に関する事項と、残余財産の帰属先の規定は、日常業務で参照する機会がほとんどありません。けれども、この記事で見てきたとおり、そこに書かれている内容は、解散事由の範囲(第二号)と、残余財産の行き先(第47条)に直結しています。
確認の観点は、次のとおりです。
- 解散事由が定款に書かれているか。書かれている場合、その内容は何か
- 残余財産の帰属すべき者が、定款に書かれているか
- 書かれている帰属先が、社会福祉法人その他社会福祉事業を行う者のうちから選定されるようになっているか(第31条第6項)
- 清算人を定款で定めているか。定めていなければ、理事が清算人になる(第46条の6第1項第一号)構造であることを、理事会で共有しているか
- 清算人会または監事を置く旨の定めがあるか(第46条の5第2項)
2. 「解散」と「合併」の話を、分けて整理する
事業を他の法人に引き継ぐ話が出たとき、「解散」と「合併」が混同されることがあります。この記事で見たとおり、第46条第1項は合併を第四号に独立して置き、第46条の3は合併による解散を清算の対象から除いています。合併は、解散の一種でありながら、清算の流れには入らないという位置づけです。
合併の検討と、解散して清算する道の検討は、別々の手続です。理事会で議論するときは、どちらの道を想定しているのかを、最初に明確にするとよいでしょう。合併の手続と日程は、社会福祉法人の合併の手続きと日程で整理しています。
3. 帳簿と重要資料の置き場所を、台帳にしておく
清算が結了したあとも、帳簿資料は登記の時から10年間、保存する必要があります。保存の責任を負うのは清算人(または裁判所が選任した者)で、その時点では、法人の職員はすでにいないかもしれません。
解散や清算の話が出る前から、次のような情報を、一覧にしておくと役に立ちます。
- 主要な帳簿・契約書・事業の記録が、どこに保管されているか
- 紙で保管しているもの、電子データで保管しているものの区別
- 保管の責任者
- 電子データの場合、保存先のサービスと、アクセスできる人
これは、解散を前提にした作業ではありません。法人が通常に事業を続けている間にも、書類の所在が分かる状態にしておくことは、引継ぎや監査対応の負担を軽くします。
4. 解散後の機関運営を、あらかじめイメージしておく
解散は、法人の運営が終わる日ではなく、清算法人としての運営が始まる日でもあります。評議員会は、財産目録等の承認、貸借対照表の承認、決算報告の承認を行います。監事は、法人によっては必置です。清算人は、所轄庁へ氏名と住所を届け出ます。
これまで法人本部が担ってきた事務の多くは、形を変えて続きます。解散の議論の際には、誰が、いつまで、どの事務を担うのかを、あらかじめ想定しておくことが重要です。
5. 専門家との分担を決めておく
債権者への公告、裁判所への申立て、登記など、専門的な手続が多く含まれています。条文を読んだ法人本部が、全体の構造を把握したうえで、どの手続をどの専門家に依頼するのかを整理しておくと、相談がスムーズになります。この記事で読んだ条文の構造は、専門家に相談する際の、共通の地図になります。
この記事で書いていないこと
一次情報の範囲を守るために、次の点は扱っていません。この記事で使った社会福祉法の条文の抜粋に含まれていないためです。
- 申請書の様式番号、添付書類の一覧、提出先、提出の期限
- 解散から清算結了までの期間の目安や、費用の目安
- 自治体ごとの運用や、指導監査の手引きの内容
- 「目的たる事業の成功の不能」に当たる具体的な事情
- 「特定社会福祉法人」の定義と、自法人がそれに当たるかどうか
- 「認可」と「認定」が、第一号と第三号のどちらに対応するか
- 第46条第1項第六号(所轄庁の解散命令)が出される具体的な場合
- 破産手続が終了した後の取扱い
- 財産目録等、貸借対照表、決算報告の様式や記載事項(厚生労働省令の内容)
- 登記の具体的な手続(政令と法務局の取扱い)
- 清算人についての準用規定(第46条の6第6項)の中身
- 第47条第2項の「処分されない財産」に当たる具体的な場合
- 清算人会の運営や、清算人の職務の執行に関する詳細な規定
これらは、所轄庁、法務局、弁護士・司法書士などの専門家に確認してください。とくに、自法人の解散がどの号に当たり、どの経路をたどるかは、この記事の条文の読みだけで判断せず、必ず所轄庁に確認をお願いします。
まとめ
- 第46条第1項の解散事由は6つ。所轄庁の認可または認定が要るのは、第一号(評議員会の決議)と第三号(目的たる事業の成功の不能)だけ(第2項)
- 第二号(定款に定めた解散事由の発生)と第五号(破産手続開始の決定)は、清算人が遅滞なく所轄庁に届け出る(第3項)。第四号(合併)と第六号(所轄庁の解散命令)は、どちらの項にも挙がっていない
- 「認可」と「認定」は条文で併記されている。どちらがどの号に当たるのかは、条文上は書き分けられていない
- 解散した法人が清算をするのは第46条の3の場合で、合併による解散は除かれている。破産手続開始の決定による解散も、破産手続が終了していない場合は除かれている
- 清算法人は、清算の目的の範囲内で、清算が結了するまでなお存続するものとみなされる(第46条の4)
- 清算人は必ず置く(第46条の5第1項)。特定社会福祉法人であった清算法人は、監事を置かなければならない(同条第3項)
- 残余財産は、所轄庁に対する清算結了の届出の時に、定款の定めるところにより帰属する。処分されない財産は国庫に帰属する(第47条)。だからこそ、ふだんの定款の「解散に関する事項」(第31条第1項第十三号)が、解散のずっと前から効いている
- 登記は、解散だけでなく、清算人の就任・変更、清算の結了でも必要(第29条第1項)
- 帳簿資料は、清算結了の登記の時から10年間保存する(第47条の3)。財産目録等や貸借対照表は、清算結了の登記の時まで保存する
- 解散と清算は、裁判所の監督に属する(第47条の4)。清算が結了したら、清算人は所轄庁に届け出る(第47条の5)
解散は、多くの法人にとって経験のない出来事です。だからこそ、条文の構造を、ふだんの定款や書類の管理とつなげて理解しておくことが、いざというときの慌てを小さくします。
参考にした一次情報
- 社会福祉法 第29条(登記)
- 社会福祉法 第31条(定款の必要的記載事項。第1項第十三号、第6項)
- 社会福祉法 第45条の9(評議員会の運営。第7項第四号)
- 社会福祉法 第46条(解散事由)
- 社会福祉法 第46条の2(社会福祉法人についての破産手続の開始)
- 社会福祉法 第46条の3(清算の開始原因)
- 社会福祉法 第46条の4(清算法人の能力)
- 社会福祉法 第46条の5(清算法人における機関の設置)
- 社会福祉法 第46条の6(清算人の就任)、第46条の7(清算人の解任)
- 社会福祉法 第46条の9(清算人の職務)
- 社会福祉法 第46条の22(財産目録等の作成等)、第46条の23(財産目録等の提出命令)
- 社会福祉法 第46条の24〜第46条の28(貸借対照表等の作成、保存、監査、備置き、提出等)
- 社会福祉法 第46条の30〜第46条の34(債権者に対する公告等、債務の弁済、除斥)
- 社会福祉法 第47条(残余財産の帰属)
- 社会福祉法 第47条の2(清算事務の終了等)、第47条の3(帳簿資料の保存)
- 社会福祉法 第47条の4(裁判所による監督)、第47条の5(清算結了の届出)
- 社会福祉法|e-Gov法令検索
解散や清算を考える前の「書類の所在確認」を、軽くしたい法人様へ
解散や清算の話が出たとき、法人本部の負担が重くなる理由の多くは、条文の難しさよりも、定款、評議員会の議事録、帳簿、契約書といった書類が、どこにあるのか分からないことにあります。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。重要書類の保管場所の整理や、法人本部の記録の一元化など、ふだんの管理を軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。