「利用者さんが就職したので、そのまま就労定着支援に移りたい」——就労移行支援や就労継続支援の事業所の方から、よくいただくご相談です。
ところが調べ始めると、ネット上の解説は利用する方に向けて書かれたものがほとんどで、「6か月経ってから」「最大3年」「月1回の面談が必要」といった説明が並びます。事業所として何をどこまでやる義務があるのかは、そこからは読み取れません。
この記事では、就労定着支援を事業所側の義務と記録の話として、条文に戻って整理します。とくに「6か月」がどこに書かれているのか、「月1回」がどういう強さの規定なのか、という2点は、多くの解説が曖昧にしたまま通り過ぎているところです。
まず「就労定着支援とは何か」を条文で押さえる
出発点は障害者総合支援法第5条第16項です。
この法律において「就労定着支援」とは、就労に向けた支援として主務省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者につき、主務省令で定める期間にわたり、当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主、障害福祉サービス事業を行う者、医療機関その他の者との連絡調整その他の主務省令で定める便宜を供与することをいう。
条文だけ読むと「主務省令で定める」が3回出てきて中身が分かりません。その3か所を施行規則で埋めると、制度の輪郭がはっきりします。
なお、就労選択支援が令和7年10月に施行されたことに伴って第5条の項番号がずれており、就労定着支援の定義は現在は第16項です。「第15項」と書かれた資料は施行前のものなので、条文を引くときはご注意ください。
前提となるサービスは4つに限定されている
1つめの「主務省令で定めるもの」=就労定着支援の前提になるサービスです。
法第五条第十六項に規定する主務省令で定めるものは、生活介護、自立訓練、就労移行支援及び就労継続支援とする。
(障害者総合支援法施行規則第6条の10の2)
生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援の4つだけです。令和7年10月に始まった就労選択支援は、この列挙に入っていません。就労選択支援のアセスメントを経て一般就労した方は、この条文だけを根拠に就労定着支援の対象とはできない、という読み方になります。
「3年」は法律ではなく省令に書かれている
2つめの「主務省令で定める期間」がこれです。
法第五条第十六項に規定する主務省令で定める期間は、三年間とする。
(障害者総合支援法施行規則第6条の10の3)
一行で終わりです。ここが「最大3年」の根拠になります。
「就労後6か月」は、就労定着支援の要件ではない
ここが実務でいちばん誤解されているところです。
「6か月」は就労定着支援の側の条文には出てきません。 出てくるのは、送り出した事業所の側の義務としてです。就労移行支援の基準を見てください。
指定就労移行支援事業者は、利用者の職場への定着を促進するため、障害者就業・生活支援センター等の関係機関と連携して、利用者が就職した日から六月以上、職業生活における相談等の支援を継続しなければならない。
(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準第182条第1項)
つまり制度の設計は、次の順番になっています。
- 就労移行支援等を利用していた方が一般就労する
- 送り出した事業所が、就職した日から6か月以上、相談等の支援を続ける
- その支援が終わった後に、引き続き支援が必要な方が就労定着支援に移る
だから「就労後6か月経ってから」なのであって、6か月の空白期間があるわけではありません。6か月間は、送り出した事業所が自分の義務として支援している期間です。
送り出し側の義務の強さはサービスによって違う
同じ「6か月以上の支援」でも、条文の語尾が違います。ここは自法人でどのサービスを運営しているかによって効いてくるので、確認しておく価値があります。
| 送り出すサービス | 6か月以上の支援 | 就労定着支援事業者との連絡調整 |
|---|---|---|
| 就労移行支援(第182条) | 継続しなければならない(義務) | 行わなければならない(義務) |
| 生活介護(第85条の2) | 継続に努めなければならない | 努めなければならない |
| 就労継続支援A型(第195条) | 継続に努めなければならない | 努めなければならない |
就労移行支援だけが義務、生活介護と就労継続支援A型は努力義務という構造です。就労移行支援事業所は、利用者が就労定着支援の利用を希望した場合、事業者との連絡調整まで義務として負っている点に注意してください。
なお、就労継続支援B型と自立訓練には、この「職場への定着のための支援等の実施」にあたる条文が置かれていません。前提サービスとしては認められている(施行規則第6条の10の2)一方で、送り出し側の6か月の支援は基準省令上の義務にも努力義務にもなっていない、という非対称があります。報酬告示の側では、就労定着支援サービス費の対象を「就労を継続している期間が6月に達した障害者」と定めているため、実際の運用としては前提サービスの種類にかかわらず6か月を待つことになります。
3年と1年ごとの更新は、別々の条文から来ている
「最大3年、1年ごとに更新」とよく説明されますが、この2つは根拠が違います。
- 3年:施行規則第6条の10の3(上で引用したとおり)
- 1年ごと:施行規則第15条第1号。就労定着支援の支給決定の有効期間は「一月間から十二月間までの範囲内で月を単位として市町村が定める期間」とされています
有効期間の上限が12か月だから、3年使うには更新が最大2回必要になる、という帰結です。運用上の慣習ではなく、省令からそうなっています。
事業所側の実務としては、「3年後の終了日」だけでなく直近の有効期間の満了日を管理対象に入れておく必要があります。更新が抜けると、3年の残りがあっても請求できません。
月1回の対面と企業訪問は「努力義務」
支援の中身を定めているのが第206条の8です。第1項が支援の内容、第2項が頻度と方法を定めています。
指定就労定着支援事業者は、利用者に対して前項の支援を提供するに当たっては、一月に一回以上、当該利用者との対面又はテレビ電話装置等を用いる方法その他の対面に相当する方法により行うとともに、一月に一回以上、当該利用者を雇用した通常の事業所の事業主を訪問することにより当該利用者の職場での状況を把握するよう努めなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第206条の8第2項)
読み落としやすい点が2つあります。
1つめは語尾です。「努めなければならない」=努力義務であって、「しなければならない」ではありません。「月1回の対面が義務」と書いている解説は少なくありませんが、条文上はそう書かれていません。
2つめは方法です。「対面又はテレビ電話装置等を用いる方法その他の対面に相当する方法」と明記されています。オンラインでの面談が条文上認められており、「必ず会いに行かなければならない」わけではありません。
ただし——ここを「やらなくてよい」と読むのは早計です。報酬の算定側には、これとは別にその月の支援内容を記載した報告書の提供を1回以上行わなかった場合は就労定着支援サービス費を算定しないという定めが置かれています(報酬告示 別表 第14の2 注9)。減算ではなく、その月は算定しないという強い書き方です。
報告書の提供先は、利用者と、その方を雇用している事業主等の両方です。本人にだけ渡して企業側に渡していない、という運用は算定の要件を満たしません。
結果として、現場で毎月確実に回さなければならないのは「報告書を作って、本人と企業の双方に渡す」という手続きのほうになります。支援そのものの頻度は努力義務、報酬に直結するのは報告書、という二層構造として理解しておくと、優先順位を間違えません。
指定を受けられる事業者は限られている
新規に就労定着支援を始めたいというご相談に対して、最初に確認するのがここです。
指定就労定着支援事業者は、生活介護等に係る指定障害福祉サービス事業者であって、過去三年以内に当該事業者の事業所の三人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用されたもの又は障害者就業・生活支援センターでなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第206条の7)
過去3年以内に3人以上の一般就労の実績が前提です。実績のない事業所や、障害者就業・生活支援センターでない法人は、原則として指定を受けられません。
「就労定着支援を新しい柱にしたい」という構想があるなら、まず送り出しの実績を作るところから逆算する必要があります。
人員基準:就労定着支援員は40:1、サビ管は60人まで1人
指定就労定着支援の事業を行う者(以下「指定就労定着支援事業者」という。)が当該事業を行う事業所(以下「指定就労定着支援事業所」という。)に置くべき就労定着支援員の数は、指定就労定着支援事業所ごとに、常勤換算方法で、利用者の数を四十で除した数以上とする。
(指定障害福祉サービス基準第206条の3第1項)
サービス管理責任者は第2項で、利用者60人以下なら1以上、61人以上なら40またはその端数を増すごとに1を加えた数以上とされ、そのうち1人以上は常勤でなければなりません(第5項)。
見落とされやすいのが第2項の長い括弧書きです。生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援A型/B型と併せて指定を受け、同一の事業所で一体的に運営している場合、サービス管理責任者の配置を判断する「利用者の数」は、それらのサービスの利用者との合計数になります。就労定着支援だけの利用者数で数えると、配置が足りなくなります。
常勤換算の数え方そのものに不安がある場合は、勤務形態一覧表の書き方と常勤換算・兼務の数え方もあわせてご覧ください。サービス管理責任者の要件についてはサービス管理責任者の資格要件と研修の期限管理で扱っています。
利用中に離職しても、支援は終わらない
意外と知られていないのが第206条の9です。
指定就労定着支援事業者は、指定就労定着支援の提供期間中に雇用された通常の事業所を離職する利用者であって、当該離職後も他の通常の事業所への就職等を希望するものに対し、指定特定相談支援事業者その他の関係者と連携し、他の指定障害福祉サービス事業者その他の関係者との連絡調整その他の便宜の提供を行わなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第206条の9)
語尾は「行わなければならない」=義務です。「就職先を辞めたので支援終了」という運用は条文に反します。次の就労を希望されている限り、相談支援事業者等と連携して連絡調整を行う責任が残ります。
記録は5年。何を残すかも条文に列挙されている
指定就労定着支援事業者は、利用者に対する指定就労定着支援の提供に関する次に掲げる記録を整備し、当該指定就労定着支援を提供した日から五年間保存しなければならない。
(指定障害福祉サービス基準第206条の11第2項)
続く各号で、保存すべき記録が列挙されています。
| 号 | 記録の内容 |
|---|---|
| 一 | 提供した指定就労定着支援に係る必要な記録事項 |
| 二 | 就労定着支援計画 |
| 三 | 市町村への通知に係る記録 |
| 四 | 苦情の内容等の記録 |
| 五 | 事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録 |
起算点は「提供した日から」です。計画の完結日でも年度末でもありません。
なお、指定基準は都道府県・市の条例に委ねられているため、自治体によって「その完結の日から5年間」といった上乗せが置かれていることがあります。実際の保存年限は、指定を受けている自治体の条例でご確認ください。
就労定着支援計画の条文は「読み替え準用」で書かれている
就労定着支援計画には専用の条文がありません。第206条の12で療養介護の第58条を読み替えて準用する、という形になっています。
そのため、計画に関する規律——アセスメントを利用者に面接して行うこと、計画作成に係る会議を開くこと、文書による同意を得ること、利用者および指定特定相談支援事業者等に交付すること、少なくとも6か月に1回以上見直すこと——は、すべて第58条を読み替えて適用されます。
実務で抜けやすいのは相談支援事業所への交付です。本人に渡して終わりにしている事業所は少なくありません。計画のモニタリング周期の考え方は個別支援計画のモニタリングの頻度と記録と共通の整理になります。
事業所として押さえておきたいこと
- 「就労後6か月」は就労定着支援の要件ではなく、送り出した事業所の支援義務の期間(就労移行支援は義務、生活介護・就労継続支援A型は努力義務。B型・自立訓練には同様の条文がない)
- 前提サービスは生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援の4つ(施行規則第6条の10の2)
- 3年は施行規則第6条の10の3、1年ごとの更新は施行規則第15条第1号。根拠が別物なので、管理する日付も2種類ある
- 月1回の対面と企業訪問は努力義務。オンラインでの代替が条文上認められている(第206条の8第2項)
- 毎月確実に回すべきは支援内容を記載した報告書を本人と事業主等の双方に提供すること。行わないとその月は算定できない
- 指定の前提は過去3年以内に3人以上の一般就労の実績(第206条の7)
- 一体的運営の場合、サビ管の配置判断に使う利用者数は他サービスと合算(第206条の3第2項の括弧書き)
- 利用中に離職しても、次の就労を希望する方への連絡調整は義務(第206条の9)
- 記録は提供した日から5年。就労定着支援計画は本人と相談支援事業所の両方に交付する
記録と期限を一元管理したい事業所様へ
パレットテクノロジーズでは、社会福祉法人・障がい福祉サービス事業所向けに、支援記録・計画・期限管理をkintoneで一元化するご支援をしています。就労定着支援であれば、支給決定の有効期間と3年の終了日を別々に管理し、毎月の報告書の提供済み/未提供を一覧で見られるようにするところから始められます。報告書の提供漏れがそのまま算定できない月になる仕組みなので、月末にまとめて確認するのではなく、動いているうちに気づける状態にしておくことが効きます。
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- ご相談・お問い合わせ:お問い合わせフォーム
参考にした一次情報
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第16項(e-Gov法令検索)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第6条の10の2、第6条の10の3、第15条(e-Gov法令検索)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第85条の2、第182条、第195条、第206条の3、第206条の7、第206条の8、第206条の9、第206条の11、第206条の12(e-Gov法令検索)
- 指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表 第14の2(厚生労働省法令等データベース)
※指定基準は都道府県・指定都市・中核市の条例に委任されています。記録の保存年限をはじめ、条例で上乗せされている項目があるため、実際の運用は指定を受けている自治体の条例と手引でご確認ください。