「計画書は作った。同意ももらった気がする。でも、その記録がどこにあるかと聞かれると、少し困る」
リハビリテーション計画書について、通所・訪問の現場でよく出会う状態です。検索すると医療保険の「リハビリテーション総合実施計画書」の解説は数多く見つかりますが、介護保険のリハビリテーション計画書を、様式のどの欄に何を書き、説明・同意・交付をどう積み残さずに回すかという運営実務の目線で扱った情報は、意外と多くありません。
この記事では、リハビリテーション計画書について、誰が何を書くための書類なのか、様式の記載欄ごとに何を記入するのか、そして説明・同意・交付という3点セットをどう抜け漏れなく回すかを、省令と通知の原文から整理します。
なお本記事では単位数には触れません。リハビリテーション会議の構成員・欠席時の対応・オンライン開催については、リハビリテーション会議の記事で扱っています。あわせてご覧ください。
リハビリテーション計画書は、誰が何のために作る書類か
リハビリテーション計画書の作成義務は、指定居宅サービス等の運営基準(省令)に定められています。通所リハビリテーションについては、次のように定められています。
医師及び理学療法士、作業療法士その他専ら指定通所リハビリテーションの提供に当たる通所リハビリテーション従業者(以下「医師等の従業者」という。)は、診療又は運動機能検査、作業能力検査等を基に、共同して、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、リハビリテーションの目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した通所リハビリテーション計画を作成しなければならない。
読み方のポイントは2つあります。
1つめ。「共同して」作成する書類だということです。 医師の診療、あるいは運動機能検査・作業能力検査等の結果をもとに、医師と理学療法士・作業療法士等が共同で作成します。専門職の一人が単独で仕上げる書類ではありません。
2つめ。訪問リハビリテーションにも、同じ構造の規定があります。 訪問リハビリテーションについては「医師及び理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士は、当該医師の診療に基づき、利用者の病状、心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて」計画を作成する、という定め方になっており、起点が医師の診療である点は共通しています。
さらに、両方の規定に共通して次の一文があります。
通所リハビリテーション計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければならない。
リハビリテーション計画書は、ケアプランと切り離して作る書類ではありません。 居宅サービス計画が先にある場合は、その内容に沿って作成する必要があります。
様式の全体像。興味・関心チェックシートとプロセス管理票との関係
リハビリテーション計画書は、単体で完結する書類ではなく、いくつかの様式のつながりの中に位置づけられています。
| 様式 | 名称 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 別紙様式2-1 | 興味・関心チェックシート | 利用者の生活・興味に関する情報収集 |
| 別紙様式2-2-1・別紙様式2-2-2 | リハビリテーション計画書 | 本記事で扱う様式本体 |
| 別紙様式2-4 | リハビリテーションマネジメントにおけるプロセス管理票 | 工程管理に活用できる |
興味・関心チェックシート(2-1)は、次のように作成することとされています。
利用者が日常生活上実際にしていること、実際にしてはいないがしてみたいと思っていること、してみたいとまでは思わないものの興味があることに関して、利用者の記入又は聞き取りにより作成する。
この様式が、計画書の「本人・家族等の希望」欄を書くための土台になります。先に興味・関心チェックシートで聞き取りを済ませておくと、計画書の希望欄が本人の言葉で埋まりやすくなります。
計画書づくり全体は、通知が示すSPDCAという考え方の中に位置づけられています。
リハビリテーションマネジメントは、調査(Survey)、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)(以下「SPDCA」という。)のサイクルの構築を通じて、質の高いリハビリテーションの提供を目指すものである。
このうち、計画書の作成は「計画(Plan)」にあたります。
リハビリテーションマネジメントにおける計画(Plan)とは、リハビリテーションに関する目標の設定、解決すべき課題の把握(アセスメント)及び、それを基にした具体的な対応の決定を含むリハビリテーション計画の作成のことをいう。
計画書は、目標を立てて終わりではなく、課題の把握(アセスメント)とセットで作るものだと定義されています。
様式の記載欄ごとに、何を書くか
別紙様式2-2-1・2-2-2の主な記載欄と、記載要領を表にまとめます。
| 欄 | 記載する内容(記載要領の要旨) |
|---|---|
| ⑴ 本人・家族等の希望 | 利用者本人からの聞き取りにより、利用者がしたい又はできるようになりたい生活の希望等を記載。本人の希望に沿って家族が支援できることがあれば、あわせて記載する |
| ⑵ 健康状態、経過 | リハビリテーションが必要となった原因疾病、発症日・受傷日、直近の入院日・退院日、手術がある場合は手術日と術式等の治療経過、合併疾患の有無とそのコントロールの状況を記載する |
| ⑶ 心身機能・構造 | 移動能力は六分間歩行試験又はTUG(Timed up & Go Test)を選択し客観的測定値を記載。認知機能はMMSE又はHDS-R(改定長谷川式簡易知能評価スケール)を選択し、その得点を記載する |
| ⑷ 活動の状況 | 現在「している」状況をチェックし、計画の見直しごとに各活動の状況を評価して記載する。活動(ADL)の評価にはBarthel Indexを活用する |
| ⑸ 目標・方針 | 医師の指示に基づき記載する。目標は長期目標と、今後三か月を目安とした短期目標を、方針は今後三か月の方針を記載する |
いくつか、実務で迷いやすい欄を補足します。
⑵ 健康状態、経過。 発症日・受傷日だけでなく、直近の入院日・退院日、手術がある場合の手術日と術式まで求められています。医療機関からの情報提供がなければ埋まらない欄です(この点は次の章で詳しく扱います)。
⑶ 心身機能・構造。 移動能力・認知機能とも「どちらの検査方法を選ぶか」という選択式です。事業所として測定方法を統一しておかないと、利用者ごとに異なる検査を使ってしまい、時系列での比較ができなくなります。
⑸ 目標・方針。 「本項目は医師の指示に基づき記載する」とされています。理学療法士・作業療法士等が単独で決める欄ではありません。長期目標と、今後三か月を目安とした短期目標を分けて書く点も、記載要領で明確にされています。
説明・同意・交付は3つで1セット
計画書は、作成して終わりではありません。省令は、作成・説明・同意・交付を一連のものとして定めています。通所リハビリテーションの規定を見てみます。
医師等の従業者は、通所リハビリテーション計画の作成に当たっては、その内容について利用者又はその家族に対して説明し、利用者の同意を得なければならない。
医師等の従業者は、通所リハビリテーション計画を作成した際には、当該通所リハビリテーション計画を利用者に交付しなければならない。
説明する、同意を得る、交付する。この3つが、それぞれ独立した義務として書かれています。 訪問リハビリテーションについても、同じ構造の規定が置かれています。
通知にも、同じ趣旨の記載があります。
リハビリテーションを提供する際には、利用者のニーズを踏まえ、利用者本人による選択を基本とし、利用者やその家族にサービス内容についてわかりやすく説明し、その同意を得なければならない。
「わかりやすく説明する」ことが求められている点も見落とせません。 専門用語を並べた説明では、この要件を満たしたとは言い切れません。
介護老人保健施設等の施設系サービスでも、考え方は同じです。通知は、施設系サービスの手順の中に「説明・同意」を含めることを求めた上で、次のように定めています。
リハビリテーション計画の内容については利用者又はその家族に分かりやすく説明を行い、同意を得る。その際、リハビリテーション計画書の写しを交付することとする。
在宅サービスでは「計画書を交付する」、施設系サービスでは「計画書の写しを交付する」という違いはありますが、説明・同意・交付という骨組みは共通しています。
そして、初回の作成にあたっては、この「説明・同意・交付」の前段階として、多職種が関わる場が必要になります。会議の構成員・欠席時の情報共有・テレビ電話での開催の可否といった詳細は、リハビリテーション会議の記事にまとめていますので、あわせてご確認ください。
医療機関から退院した利用者は、実施計画書等から情報を把握する
初回の計画書づくりで、特に注意したいのがここです。省令は、次のように定めています。
医師等の従業者は、リハビリテーションを受けていた医療機関から退院した利用者に係る通所リハビリテーション計画の作成に当たっては、当該医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書等により、当該利用者に係るリハビリテーションの情報を把握しなければならない。
医療機関を退院してきた利用者について、白紙の状態から聞き取りだけで計画書を作ることは想定されていません。 医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書等から、リハビリテーションの情報をあらかじめ把握しておくことが義務づけられています。
前章の記載欄でいえば、⑵健康状態・経過の「直近の入院日・退院日、手術日と術式」は、まさにこの情報把握の結果を書き込む欄にあたります。医療機関からの情報が手元にない状態で⑵の欄を埋めようとすると、聞き取りだけに頼った不正確な記載になりかねません。 退院時に医療機関からリハビリテーション実施計画書等を受け取る流れを、事業所として決めておく必要があります。
加算を算定しない場合でも、適切なマネジメントを
リハビリテーション計画書の作成・説明・同意・交付は、特定の加算を算定する事業所だけに求められるものではありません。通知は次のように定めています。
(介護予防)訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメントについては、基本報酬の要件及び各種加算の要件として定められていることから、各種加算を算定しない場合においても、全利用者に適切なリハビリテーションマネジメントが実施されるよう努める必要がある。
リハビリテーションマネジメント加算を算定していないから計画書は簡略でよい、という理屈は成り立ちません。 基本報酬の要件でもあるため、全利用者に対して適切なマネジメントが求められています。
計画は作って終わりではなく、見直しにつながっていきます。通知は「評価(Check)」を次のように定義しています。
リハビリテーションマネジメントにおける評価(Check)とは、医師の指示及びリハビリテーション計画に基づいて実際に行われたサービス提供の結果、利用者の心身機能、活動、参加の状態の変化や、課題の解決及び目標の達成状況について評価し、それによって計画の見直しを行うことをいう。
評価の結果は、計画書の見直しだけでなく、記録として蓄積されていきます。 この記録の扱い方は、LIFEへのデータ提出とも関係してきます。LIFE関連加算の全体像はLIFE関連加算のデータ提出の記事で扱っていますので、あわせてご覧ください。
記録の保存年限は「完結の日から二年間」
作成した計画書は、一定期間の保存義務があります。訪問リハビリテーションについては、次のように定められています。
指定訪問リハビリテーション事業者は、利用者に対する指定訪問リハビリテーションの提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。一訪問リハビリテーション計画
通所リハビリテーションについても、同じ構造の規定が置かれており、「その完結の日から二年間保存しなければならない。一通所リハビリテーション計画」となっています。
起点は「完結の日」です。 作成した日ではなく、その計画が完結した(見直され、あるいはサービスが終了した)日から二年間、という数え方になります。計画書を作成日だけで管理していると、保存すべき期間の起点を取り違えるおそれがあります。
期限と説明・同意の抜け漏れを、仕組みで防ぐ
ここまでを実務の言葉にまとめると、リハビリテーション計画書まわりで法人が持つべき情報は、次のとおりです。
| 持つべき情報 | 用途 |
|---|---|
| 利用者ごとの初回作成日と直近の見直し日 | 保存年限の起点、次の見直し時期の管理 |
| 興味・関心チェックシートの実施状況 | ⑴本人・家族等の希望欄を埋める土台があるかの確認 |
| 医療機関から受け取った実施計画書等の有無 | 退院した利用者について、情報把握の義務を満たしているかの確認 |
| 説明・同意・交付を行った日の記録 | 3点セットのうち、どれかが抜けていないかの確認 |
ある社会福祉法人様では、計画書そのものは各事業所で作成されていたものの、「いつ説明し、いつ同意を得て、いつ交付したか」という記録が計画書の作成日としか紐づいておらず、実際に3つの手続きを行った日付が事業所ごとにばらばらの管理になっていました。利用者一人ひとりについて、初回作成日・説明日・同意日・交付日を1つの一覧にまとめたところ、どの利用者の、どの手続きが終わっていないかが、事業所をまたいで一目で分かるようになりました。特別なシステムを入れずとも、まずは一覧をつくるところから始められます。
計画書は「作った」だけでは要件を満たしません。 説明し、同意を得て、交付する。この3つがそろって初めて、一連の義務を果たしたことになります。
まとめ
- 通所リハビリテーション計画は、医師及び理学療法士等が「共同して」作成する。訪問も、医師の診療に基づき作成する構造は同じ
- 様式は別紙様式2-2-1・2-2-2。興味・関心チェックシート(2-1)、プロセス管理票(2-4)とつながっている
- 記載欄は、本人・家族等の希望/健康状態・経過/心身機能・構造(六分間歩行試験又はTUG、MMSE又はHDS-R)/活動の状況(Barthel Index)/目標・方針(医師の指示に基づく長期目標・短期目標)の5つ
- 説明・同意・交付は3点セット。 どれか1つでも欠けると義務を果たしたことにならない
- 医療機関を退院した利用者は、医療機関のリハビリテーション実施計画書等から情報を把握してから計画書を作成する
- 加算を算定しない場合でも、全利用者に適切なリハビリテーションマネジメントを行う努力義務がある
- 記録の保存年限は、訪問・通所ともその完結の日から二年間
計画書の作成・説明・同意・交付を、抜け漏れなく回したい事業所様へ
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。利用者ごとの初回作成日・見直し日・説明と同意と交付の実施記録を1か所に集め、どの利用者の、どの手続きが終わっていないかがその場で分かる状態に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。
参考にした一次情報
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)/e-Gov法令検索
- リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について(令和6年3月15日 老高発0315第2号・老認発0315第2号・老老発0315第2号/介護保険最新情報Vol.1217)
※本記事は介護保険のリハビリテーション計画書を対象としています。医療保険の「リハビリテーション総合実施計画書」は対象外です。様式・記載の細目は自治体・保険者の運用によって異なる場合がありますので、実際の運用にあたっては必ず所轄の都道府県・保険者にご確認ください。本記事では単位数には触れていません。