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介護の事故報告書の書き方と報告先|令和6年改訂の標準様式を解説

「事故報告書の様式、うちのはいつのものだろう」

介護現場の書類のなかで、事故報告書ほど「なんとなく前からあるものを使い続けている」ものはありません。私たちが施設様に伺うと、Excelの様式ファイルが共有フォルダに何世代も並んでいて、どれが最新か分からなくなっている、という場面によく出会います。

実は、国が示す標準様式は令和6年11月29日に改訂されています。 そして同じ日付で、それまで使われていた令和3年の通知は廃止されました。ところがインターネット上の解説記事の多くは、いまも令和3年版を前提に書かれています。

この記事では、現行の通知を一次情報として、何を・いつまでに・どこへ・どの様式で報告するのかを整理します。あわせて、報告書を「書く手間」ではなく「探す手間」を減らすための、記録の持ち方についても触れます。

いま有効なのはどの通知か

現行は次の通知です。

  • 「介護保険施設等における事故の報告様式等について」
  • 令和6年11月29日付 老高発1129第1号・老認発1129第1号・老老発1129第1号
  • 厚生労働省老健局 高齢者支援課長/認知症施策・地域介護推進課長/老人保健課長
  • 周知媒体:介護保険最新情報Vol.1332

そして、この通知のなかで旧通知の廃止が明記されています。

これに伴い、「介護保険施設等における事故の報告様式等について」(令和3年3月19日付け厚生労働省老健局高齢者支援課長・認知症施策・地域介護推進課長・老人保健課長通知)については、本日付けで廃止する。

令和3年3月19日付の通知(介護保険最新情報Vol.943)は、すでに廃止されています。 手元の様式が令和3年版であれば、差し替えの対象です。

何が変わったのか

改訂の趣旨は、通知の「1.目的」に書かれています。

分析等を行うためには、事故報告の標準化が必要であること、また、事業所及び市町村の負担軽減を図る観点から、電子的な報告及び受付を想定し、「介護保険施設等における事故の報告様式等について」(令和3年3月 19 日付け厚生労働省老健局高齢者支援課長・認知症施策・地域介護推進課長・老人保健課長通知)により示していた標準報告様式を改訂し、周知するもの。

具体的な変更点も、続けて明示されています。

具体的には、選択式の項目については、容易にデータ化できるよう、チェックボックス形式に修正したほか、市町村が独自に収集したい情報を追加できるよう、独自項目追加欄・独自選択肢欄を作成した。

つまり改訂の中心は、「紙に書く前提」から「データとして集める前提」への転換です。自由記述を減らしてチェックボックスにし、自治体ごとの独自項目を様式のなかに収めることで、様式の乱立を防ごうとしています。

この方向性は、この先も続きます。通知は、報告事項や対象範囲の見直し、データベースの設計などを検討中であるとしたうえで、次のように述べています。

検討の結果を踏まえ、事故報告様式について更なる見直しを行った場合には、改めて周知する。

様式は今後も変わる前提で持っておくのが正解ということになります。

報告する事故はどれか

通知の「2.報告対象について」が定めています。

○ 下記の事故については、原則として全て報告すること。
①死亡に至った事故
②医師(施設の勤務医、配置医を含む。)の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故
○ その他の事故の報告については、各自治体の取扱いによるものとすること。

ここは実務で最も迷うところなので、切り分けを整理します。

事故の内容国の通知での扱い
死亡に至った事故原則としてすべて報告
医師の診断を受け、投薬・処置等の治療が必要になった事故原則としてすべて報告
上記以外の事故(打撲のみ・受診なしなど)各自治体の取扱いによる

「その他の事故」は国が一律に決めていません。 ここが、自治体によって運用が違う理由です。所轄の市町村が独自に基準を設けている場合は、そちらに従います。

なお、②の「医師」には施設の勤務医・配置医が含まれます。外部の医療機関を受診した場合だけが対象ではありません。配置医に診てもらって処置をした事案は、報告対象に入ります。

期限は「5日以内」。ただし第1報の話

通知の「5.報告期限について」です。

○ 第1報は、少なくとも別紙様式の1から6の項目までについて可能な限り記載し、事故発生後速やかに、遅くとも5日以内を目安に提出すること。
○ その後、状況の変化等必要に応じて、追加の報告を行い、事故の原因分析や再発防止策等については、作成次第報告すること。

読み違えられやすいのですが、5日以内に出すのは「第1報」であって、完成した報告書ではありません。

  • 第1報 … 様式の1〜6の項目を可能な限り記載。事故発生後速やかに、遅くとも5日以内が目安
  • 続報 … 状況の変化に応じて追加
  • 原因分析(7)と再発防止策(8)は「作成次第」。5日以内に間に合わせる必要はない

現場で「5日以内に再発防止策まで書かなければ」と抱え込んでしまうケースがありますが、通知はそう求めていません。事実関係を早く伝え、分析はあとから丁寧に出すという二段構えです。

報告方法は「原則、電子的方法」になった

令和6年改訂で新しく独立した項目が「4.報告方法について」です。

○ 原則、電子メール等の電磁的方法により行うものとすること。

令和3年版では「電子メールによる提出が望ましい」という表現でしたが、改訂版では「原則」と強められています。 紙に印刷して持参・郵送する運用を続けている場合は、市町村側の受付方法を確認しておく価値があります。

様式は9項目でできている

別紙様式の構成は次のとおりです。第1報で埋めるのは1〜6です。

項目内容第1報
1事故状況(程度・死亡年月日・報告の回数)
2事業所の概要(法人名、事業所名、事業所番号、サービス種別、所在地)
3対象者(氏名・年齢・性別、サービス提供開始日、保険者、住所、要介護度、認知症高齢者の日常生活自立度)
4事故の概要(発生日時、発生場所、事故の種別、発生時の状況と詳細)
5事故発生時の対応(受診方法、受診先、診断名、検査・処置等の概要)
6事故発生後の状況(家族等への報告、報告した続柄と年月日、連絡した関係機関、追加対応予定)
7事故の原因分析(本人要因・職員要因・環境要因)作成次第
8再発防止策(手順変更・環境変更・評価時期および結果)作成次第
9その他(特記すべき事項)

7の原因分析は「本人要因、職員要因、環境要因」の3つの観点で書くことが様式に明記されています。 「見守りを強化する」だけで終わらせず、どの要因に対する対策なのかを分けて書くと、8の再発防止策も具体的になります。

また、8には「再発防止策の評価時期および結果等」という記載欄があります。対策を立てて終わりではなく、いつ効果を確かめるかまで書く様式になっている点は、意外と見落とされています。

対象になるサービスの範囲

「6.対象サービスについて」です。

○ 別紙様式は、介護保険施設、認知症対応型共同生活介護事業者(介護予防を含む。)、特定施設入居者生活介護事業者(地域密着型及び介護予防を含む。)、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム及び軽費老人ホームにおける事故が発生した場合の報告を対象として作成したものであるが、その他の居宅等の介護サービスにおける事故報告においても可能な限り活用いただきたい。

令和3年版では「介護保険施設における事故の報告を対象」とし、グループホームや有料老人ホーム等は「積極的に活用いただきたい」という位置づけでした。改訂版では、これらが対象として本文に列挙されています。

報告義務そのものの根拠は運営基準にある

通知は「様式」を示すものであって、報告義務そのものは運営基準(省令)が定めています。特別養護老人ホームであれば、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第35条第2項です。

指定介護老人福祉施設は、入所者に対する指定介護福祉施設サービスの提供により事故が発生した場合は、速やかに市町村、入所者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。

そして第3項が記録を義務づけています。

指定介護老人福祉施設は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。

「連絡」と「記録」は別の義務です。 市町村に報告したから記録はしなくてよい、ということにはなりません。

障がい福祉サービスは連絡先が1つ多い

同じ「事故が起きたときの連絡」でも、障がい福祉サービスは介護保険と条文が違います。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第40条第1項です。

指定居宅介護事業者は、利用者に対する指定居宅介護の提供により事故が発生した場合は、都道府県、市町村、当該利用者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。

連絡先に「都道府県」が入っています。 介護保険側(省令第39号第35条第2項)は「市町村、入所者の家族等」で、都道府県は挙げられていません。介護と障がい福祉を両方運営している法人では、ここを取り違えると連絡漏れになります。

なお、この省令第171号第40条は居宅介護について定めたもので、他のサービスにも準用されています。国の標準様式は介護保険側の通知に基づくものなので、障がい福祉サービスの事故報告様式は都道府県・市町村が定めるものを確認してください。

「書く手間」より「探す手間」が効いている

事故報告書について私たちがご相談をいただくとき、実際に時間を奪っているのは書式そのものではないことがほとんどです。

  1. 1〜3の項目を毎回転記している。 法人名・事業所番号・サービス種別は固定値で、対象者の氏名・生年月日・要介護度・保険者は既にどこかに入っています。それを毎回手で書き写しているなら、そこが最初に削れる部分です
  2. 第1報を出したあと、続報の版が分からなくなる。 「第1報」「第◯報」「最終報告」を1枚の様式で使い分ける構造なので、ファイル名の付け方を決めていないと、どれが最新か追えなくなります
  3. 再発防止策の評価時期が誰の手元にもない。 様式に「評価時期および結果等」の欄がある以上、そこは後日に見返される前提です。提出して終わりのファイルに書いたままだと、思い出す仕組みがありません
  4. 過去の事故を種別で数えられない。 改訂版がチェックボックス形式になった意図は集計です。事業所側でも同じ形でデータとして持っておくと、事故発生の防止のための委員会での検討材料になります

いずれも「新しく何かを作る」話ではなく、すでにある情報の置き場所を決めれば済む話です。事故が起きた直後という最も余裕のない場面で、探しものをしなくて済むようにしておくことに意味があります。

なお、事故に至らなかった事例(ヒヤリハット)の扱いは、事故報告書とは別の規定に基づきます。詳しくは介護のヒヤリハットの書き方の記事で整理しています。

事故発生の防止のための委員会と、虐待防止委員会・感染対策委員会などを合同開催する場合の考え方は虐待防止委員会の開催回数と議事録の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

  • 現行の国の標準様式は令和6年11月29日付通知(介護保険最新情報Vol.1332)。令和3年3月19日付通知は廃止済み
  • 報告対象は①死亡に至った事故、②医師の診断を受け投薬・処置等の治療が必要となった事故。それ以外は各自治体の取扱いによる
  • 5日以内が目安なのは第1報(様式の1〜6)。原因分析(7)と再発防止策(8)は「作成次第」
  • 報告方法は原則、電子メール等の電磁的方法
  • 改訂の中心はチェックボックス形式化と独自項目追加欄・独自選択肢欄。データとして集める前提の様式になった
  • 報告義務そのものの根拠は運営基準。障がい福祉サービスは連絡先に「都道府県」が入る(省令第171号第40条第1項)

参考にした一次情報

※「その他の事故」の報告基準、および報告先の受付方法(電子メールのアドレス・システム)は自治体ごとに異なります。最終的な取扱いは所轄の市町村にご確認ください。


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