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雇入れ時教育|作業内容の変更にも必要で第35条に記録の定めは無い

新しい職員が入る。ユニットや事業所を異動する職員がいる。介護から送迎へ、特養からデイサービスへと、持ち場が変わる。福祉の現場では、人の入れ替わりが日常です。そのたびに「安全衛生の教育は、どこまでが義務なのか」と問われて、条文で答えられる状態でしょうか。

雇入れ時の安全衛生教育は、労務の解説が多い話題です。ただ、多くの解説は「雇入れ時の教育は義務です」で終わります。この記事は、労働安全衛生法の第59条から第60条の2までと、労働安全衛生規則(以下「安衛則」)の第35条から第38条まで、労働安全衛生法施行令(以下「令」)の第19条、そして罰則の第119条・第120条を、条文の順に読みます。そのうえで、採用も異動も多い福祉の事業場で、何を決め、何を台帳に残しておくと困りにくいのかを整理します。

なお、労働安全衛生法は以下「安衛法」と書きます。条文は、2026年10月20日にe-Gov法令検索から取得したものを読んでいます。

先に、条文を読んで確かめられたことを並べます。

  • 雇入れ時の教育の義務は、安衛法第59条第1項にある。第2項が「労働者の作業内容を変更したとき」に準用するので、採用のときだけの話ではない
  • 教育の事項は、安衛則第35条第1項に8つ並んでいる。条文は、そのうち「当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項」について教育を行うと書いている
  • 省略の定めは、同条の第2項にある。条件は「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」。この条文には、業種を条件にした省略の文言は見当たらない
  • 特別教育(安衛法第59条第3項)の記録は、安衛則第38条が三年間の保存を定めている。一方、安衛則第35条にも安衛法第59条にも、雇入れ時教育の記録の作成や保存を定める文言は見当たらない
  • 罰則は、第59条の項によって条が分かれる。第1項(第2項で準用する場合を含む)は第120条(五十万円以下の罰金)、第3項は第119条(六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)
  • 職長等の教育(安衛法第60条)は、令第19条に挙がった6つの業種に限られる。条文には福祉や介護を指す語が出てこない。一方、第60条の2の教育は努力義務で、条文に業種の限定は書かれていない

特別教育の対象になる個々の業務の判定、教育時間や科目の細目、行政の運用や指針の中身は、条文だけでは読めない、またはこの記事で確認していない論点です。後ろの「この記事で書いていないこと」にまとめています。

条文の地図:どの論点がどこに書かれているか

話が行ったり来たりしやすいので、先に地図を置きます。

論点置かれている条文
雇入れ時の教育の義務安衛法 第59条第1項
作業内容を変更したときの教育安衛法 第59条第2項(準用)、安衛則 第35条第1項
教育の事項(8つ)と、省略の定め安衛則 第35条第1項・第2項
特別教育安衛法 第59条第3項、安衛則 第36条・第37条・第38条
職長等の教育安衛法 第60条、令 第19条
危険又は有害な業務に現に就いている者への教育(努力義務)安衛法 第60条の2
罰則安衛法 第119条、第120条

安衛法第59条第1項を、一文ずつ読む

雇入れ時の教育の根拠は、安衛法第59条第1項です。条文は次のとおりです。

事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

短い条文なので、4つの部品に分けます。

部品条文の言葉読み取れること
誰が「事業者」義務を負うのは事業者
いつ「労働者を雇い入れたとき」雇い入れたときが起点。正規・非正規といった区別は、第1項には書かれていない
何を「その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育」全員に同じ内容ではなく、その労働者が従事する業務に関する教育
どうやって「厚生労働省令で定めるところにより」細かい定めは省令に委ねられている。その省令が安衛則第35条

第1項には、教育を行う期限の日数や、教育の時間は書かれていません。期限にあたる言葉は、次に読む安衛則第35条の「遅滞なく」です。

安衛則第35条第1項:8つの事項と「業務に必要な事項」

安衛則第35条の第1項は、次のとおりです。

事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。

読み取れることは3つです。

  • 「遅滞なく」:日数の数字は書かれていません。雇い入れたとき、または作業内容を変更したときから、遅れずに行う、という書き方です
  • 「次の事項のうち…必要な事項について」:8つの事項を全員に毎回すべて行う、という書き方ではありません。その労働者が従事する業務に関して必要な事項について行います
  • 「雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したとき」:省令の側にも、作業内容の変更が入っています(後ほど読みます)

8つの事項

第1項の各号は、次のとおりです。条文の言葉は左の2列で、右の列は、福祉の現場に当てはめた弊社の見立てです。条文が例として挙げているものではありません。

号条文の事項福祉の現場での当てはめの例(弊社の見立て)
一機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。入浴や移乗に使う機器、厨房の調理機器、洗剤や消毒薬の取扱い
二安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。手袋・マスク・エプロンなどの保護具の使い方
三作業手順に関すること。移乗・入浴・排泄などの介助手順、調理や清掃の手順
四作業開始時の点検に関すること。リフト、ベッド、車いす、送迎車両などの始業前の点検
五当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。腰痛の予防、感染症の予防
六整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。廊下や居室の物品の置き方、床が濡れたときの対応
七事故時等における応急措置及び退避に関すること。転倒や急変時の初動、火災や災害時の避難
八前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項その事業所・その業務に固有の注意事項

第八号は、第一号から第七号に当てはまらないものを受ける「その他」の号です。法人としての教育の資料をつくるときは、この8つを見出しにして並べておくと、条文との対応が後から確かめやすくなります。これは条文が求める形ではなく、運用の提案です。

省略の定めは、第35条第2項にある

「安全衛生教育は省略できるのか」という問いに、条文は第35条の第2項で答えています。

事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

読み取れることを整理します。

見るところ条文の書き方
省略の単位「前項各号に掲げる事項の全部又は一部」。8つの事項のうち、事項ごとに省略できる
省略の条件「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」
語尾「省略することができる」。省略しなければならない、ではない

条文に書かれていないものも、並べておきます。

  • 業種を条件にした省略の文言は、第35条の第1項にも第2項にも見当たりません
  • 「十分な知識及び技能」を、経験年数や資格などで判断する目安は書かれていません
  • 誰がどう「認める」のかは書かれていません
  • 認めた根拠を記録するかどうかも書かれていません

もし「業種によっては、一部の事項を省略できる」と書かれた資料を目にしたら、資料と条文が食い違っていることになります。省略の可否を決める前に、現行の条文で確かめてください。なぜ食い違うのか、その資料がいつの時点の条文によるものかは、この記事では確認していません。

実務で使うなら、省略は「この人は、この事項について十分な知識及び技能を有していると認めた」と法人として判断し、その理由を残しておく運用が考えられます。たとえば、同じ業務を別の事業所で長く経験した職員が入職した場合に、第三号の作業手順は省かず、第一号の機器の取扱いだけを省く、といった事項ごとの判断です。ただし、条文は「十分」の基準を示していません。判断は事業者の責任で行うことになるため、迷う場面では省略せずに実施する側に倒すほうが、後から説明しやすくなります。これは条文が求めることではなく、弊社の見立てです。

第59条第2項:作業内容を変更したときにも、同じ教育が要る

福祉の事業場で、採用以上に影響が大きいのが第2項です。

前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。

「準用する」とは、第1項の教育の義務を、作業内容を変更したときにも同じように当てはめる、という意味です。安衛則の側でも、第35条の第1項に「労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは」と並べて書かれています。

事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、

条文から読み取れる構造は次のとおりです。

  1. 採用のときだけでなく、作業内容を変更したときにも、教育の義務がかかる
  2. 教育の事項は、その労働者が従事する業務に必要な事項。変更後の業務に必要な事項を考えることになる
  3. 「遅滞なく」の考え方も、雇い入れたときと同じ

「作業内容の変更」に当たるかを考える場面

福祉の法人では、次のような場面が日常的に起きます。条文は、どこからが「作業内容の変更」かを定義していません。そこで、どう考えるかの見立てを表にします。

場面見立て
特養からデイサービスへの異動利用者の状態、使う機器、介助の手順が変わる。第一号から第八号の各事項を、変更後の業務に照らして見直す
介護職から送迎の担当に加わる車両の始業前点検、乗降の介助、事故時の初動など、これまでと違う事項が出る。第四号・第七号などが関わりうる
日勤から夜勤専従になる夜間の事故時の応急措置・連絡の流れなど、第七号が関わりうる
同じ事業所の中でユニットだけが変わる設備や利用者像が大きく違えば検討する。同じ手順・同じ機器なら、省略(第35条第2項)の判断を考える余地がある
介護から厨房の補助に変わる調理機器や洗剤の取扱いなど、第一号・第二号が変わる

どの場面も、「異動の辞令を出したら、変更後の業務に必要な事項を一度見直す」という手順にしておけば、条文のとおりに動けます。「採用のときだけ行う」運用になっていると、異動のたびに条文の義務が積み残されます。

なお、条文の主語は「事業者」です。法人が事業者に当たるか、事業所ごとに事業者を考えるのかは、この記事では確認していません。

特別教育との違い:第59条第3項、安衛則第36条・第37条・第38条

「雇入れ時教育」と混同されやすいのが、特別教育です。第59条の第3項は、次のとおりです。

事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

どの業務が対象かは、安衛則第36条が定めています。

法第五十九条第三項の厚生労働省令で定める危険又は有害な業務は、次のとおりとする。

この後に、各号で業務が並びます。たとえば「小型ボイラー」の取扱いの業務や、「最大荷重一トン未満のフオークリフト」の運転の業務といった、機械や設備の操作に関するものが多く、条文に挙がった各号に、介護や福祉の業務を名指しするものは見当たりません。ただし、各号は多く、福祉の事業場でも調理室、ボイラー、フォークリフトのある倉庫などがあれば、該当する号がないかを確かめる必要があります。個々の業務の判定は、この記事では行いません。

第37条は、特別教育の科目の省略を定めています。

事業者は、法第五十九条第三項の特別の教育(以下「特別教育」という。)の科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該科目についての特別教育を省略することができる。

そして第38条が、記録の保存を定めています。

事業者は、特別教育を行なつたときは、当該特別教育の受講者、科目等の記録を作成して、これを三年間保存しておかなければならない。

比較すると

ここまでを、表で並べます。

 雇入れ時等の教育特別教育
根拠安衛法 第59条第1項・第2項、安衛則 第35条安衛法 第59条第3項、安衛則 第36条・第37条・第38条
教育が要る場面労働者を雇い入れたとき、作業内容を変更したとき第36条に挙がった業務に労働者をつかせるとき
教育の中身の決め方8つの事項のうち、従事する業務に必要な事項業務に関する安全又は衛生のための特別の教育(科目などは省令で定める)
省略第35条第2項:事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者第37条:科目の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者
記録第35条にも第59条にも、作成や保存を定める文言は見当たらない第38条:受講者、科目等の記録を作成し、三年間保存
罰則の条第120条第1号(五十万円以下の罰金)第119条第1号(六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)

省略の書き方は、雇入れ時等の教育と特別教育で似ています。違いが出るのは、記録と罰則の条です。

雇入れ時教育には、条文上の記録の保存義務が見当たらない

第38条には、特別教育を行ったときに受講者と科目等の記録を作成し、三年間保存すると書かれています。一方、雇入れ時教育の根拠である第59条(第1項・第2項)と、安衛則第35条を読んだ範囲では、記録を作る、保存する、年数を定める、といった文言は見当たりません。

ここで、条文が求めていることと、残しておくと困りにくいことを分けます。

  • 条文が求めていること:雇い入れたとき、作業内容を変更したときに、従事する業務に必要な事項の教育を、遅滞なく行うこと
  • 条文は求めていないが、残しておくと困りにくいこと(弊社の見立て):実施した日、対象の職員、教育した事項、担当者。後から「いつ、誰に、何を行ったのか」を説明する必要が出たときに、答えられる根拠になる

保存の年数も条文にはありません。第38条の「三年間」に合わせる考え方もありますが、それは雇入れ時教育に条文が定めた年数ではなく、法人が自分で決める運用上の目安です。決めるときは、法人としての保存規程と一緒に定めておくと、事業所ごとの扱いのばらつきが出にくくなります。

職長教育:福祉の事業場には、条文上の義務がかからない

安全衛生教育には、職長等の教育もあります。第60条は、次のとおりです。

事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者(作業主任者を除く。)に対し、

この後に、教育する事項と、省令の定めに従うことが続きます。ポイントは書き出しの「その事業場の業種が政令で定めるものに該当するとき」です。業種で限られた義務です。

その「政令で定める業種」は、令第19条が定めています。

法第六十条の政令で定める業種は、次のとおりとする。

挙がっている業種は、次の6つです。

号業種補足(条文のただし書)
一建設業 
二製造業ただし書で、たばこ製造業、繊維工業(紡績業及び染色整理業を除く。)、衣服その他の繊維製品製造業、紙加工品製造業(セロファン製造業を除く。)が除かれている
三電気業 
四ガス業 
五自動車整備業 
六機械修理業 

この一覧に、福祉や介護を指す語は出てきません。したがって、介護・福祉の事業場は、列挙された業種に当たらない限り、第60条の職長等の教育の義務はかからない、と読めます。なお、事業場の業種をどのように判定するのかは、この記事で読んだ条文には書かれていません。たとえば、法人が運営する事業所の中で製造に当たる作業を行っている場合などは、個別の判断になります。

第60条の2は、努力義務

一方で、第60条の2は性格が違います。

事業者は、前二条に定めるもののほか、その事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行うように努めなければならない。

語尾は「努めなければならない」で、努力義務です。第60条にあった「政令で定める業種」という限定は、この条文には書かれていません。ただし、対象は「危険又は有害な業務に現に就いている者」で、どの業務がこれに当たるかは、この条文からは読めません。第2項には、厚生労働大臣が教育の指針を公表する、と書かれていますが、指針の中身はこの記事では確認していません。

整理すると、次のとおりです。

条性格対象
第59条第1項・第2項義務(「行なわなければならない」)雇い入れたとき、作業内容を変更したとき
第59条第3項義務危険又は有害な業務で省令が定めるものに労働者をつかせるとき
第60条義務事業場の業種が令第19条の6業種に該当するときの職長等
第60条の2努力義務(「努めなければならない」)危険又は有害な業務に現に就いている者

厚生労働省は、高齢者介護施設向けの雇入れ時の安全衛生教育のマニュアル(中央労働災害防止協会の作成)を案内している、と把握しています。福祉の現場に即した公的な資料があるということです。ただし、この記事ではマニュアルの中身を読んでいないため、引用や要約はしません。教育の資料をつくるときは、条文と併せて、厚生労働省のサイトで最新の案内を確認してください。

罰則:第59条の項によって、条が分かれる

罰則は、条文の置かれ方に特徴があります。まず第119条です。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

この第1号の列挙に、「第五十九条第三項」(特別教育)が入っています。一方、第120条は次のとおりです。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

この第1号の列挙に、「第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)」(雇入れ時、作業内容の変更時)が入っています。

条法定刑第59条の扱い
第119条六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金第1号に「第五十九条第三項」
第120条五十万円以下の罰金第1号に「第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)」

つまり、雇入れ時と作業内容の変更時の教育を怠ったときの法定刑は罰金のみで、特別教育を怠ったときの法定刑には拘禁刑が入っています。罰金の上限は、どちらも五十万円です。

注意したい点が2つあります。

  • 第119条の列挙には、「第三十五条」が出てきます。これは、安衛法の中の第35条のことで、安衛則第35条(雇入れ時等の教育)とは別の条です。名前が同じなので、取り違えないでください。この記事では、安衛法第35条の内容は扱っていません
  • 第60条と第60条の2は、第119条・第120条の各号の列挙には出てきません。ほかの条に罰則の定めがあるかどうかは、この記事では確認していません。実際の罰金の運用や、是正の流れも、条文だけでは読めないので扱いません

福祉の事業場で、どう運用するか

ここまでの条文を、法人の運用に落とします。以下は、条文が書いていることではなく、条文の構造から考えた提案です。

1. 「採用時」と「異動時」を、同じ手順にする

条文は、雇い入れたときと、作業内容を変更したときを並べて扱っています。法人の運用でも、人事の手続のなかに「教育の実施」を組み込むことを考えます。たとえば、採用の手続と異動の辞令に、「安全衛生教育の実施日を確認する」という1行を足しておく形です。

2. 教育の事項は、配属先の業務ごとに組み立てる

第35条第1項は、従事する業務に必要な事項について教育を行うと書いています。法人に複数の事業所があり、入所系、通所系、訪問系、事務系と業務が違えば、必要な事項も変わります。配属先の業務ごとに、先ほどの8つの事項を見出しにしたチェックリストを持っておくと、条文との対応を示しやすくなります。

3. 省略するなら、理由を残す

第35条第2項は、省略できるのは「十分な知識及び技能を有していると認められる労働者」の「全部又は一部の事項」です。省略した事項と、その職員を「十分」と認めた理由(前職の経験、同じ業務の経験など)を、台帳に1行残しておくと、後から判断の過程を確かめられます。省略する場合でも、教育の対象から外れているわけではないので、「省略した」という事実を残します。

4. 台帳に持つ項目

条文が求めるものと、運用上持っておくと便利なものを、分けて整理します。

項目条文が求めるか持っておく理由
教育を行うこと自体求める(第59条第1項・第2項、安衛則第35条)条文の義務そのもの
実施日条文は求めていない(提案)「遅滞なく」行ったかを後から確かめる
対象の職員と配属先条文は求めていない(提案)誰に、どの業務について行ったか
教育した事項(8つのうちどれか)条文は求めていない(提案)従事する業務に必要な事項を行った根拠
省略した事項と理由条文は求めていない(提案)第35条第2項の判断を後から示す
教育を行った担当者条文は求めていない(提案)実施の責任の所在
特別教育の受講者・科目等求める(安衛則第38条。三年間保存)特別教育の記録は条文に保存義務がある

特別教育に当たる業務がある事業所では、特別教育の記録(保存義務あり)と、雇入れ時等の教育の記録(条文上の保存義務は見当たらない)を、台帳の中で区別しておくと整理しやすくなります。

人の入れ替わりの場面では、教育のほかに、健康診断の確認も必要になります。特定業務従事者の健康診断については、別の記事(特定業務従事者の健康診断)で扱っています。また、法人の安全衛生の体制づくりについては、衛生推進者の選任の記事で扱っています。教育の台帳を持つことは、体制の整理とあわせて考えると、抜けが出にくくなります。

この記事で書いていないこと

条文の範囲では、次のことは書かれていない、またはこの記事で確認していません。

  • 教育の時間や方法:第35条は「遅滞なく」と書くだけで、時間数や形式(座学か実地か)は書かれていません
  • 「作業内容の変更」の範囲:どこからが変更に当たるかの定義は、読んだ条文にありません
  • 特別教育の対象となる個々の業務の判定:第36条は各号が多く、この記事では福祉の事業場に該当する号を個別には確認していません
  • 特別教育の科目や時間:「厚生労働省令で定めるところにより」とあり、この記事では確認していません
  • 第60条の2の「危険又は有害な業務」の範囲と、公表される指針の中身:この記事では確認していません
  • 事業場の業種をどう判定するか:第60条は「事業場の業種」で決めますが、判定の方法は読んだ条文に書かれていません
  • 事業者が法人に当たるか、事業所ごとに考えるのか:条文の主語は「事業者」で、定義はこの記事では確認していません
  • 第119条・第120条以外の罰則、実際の罰金の運用、是正の流れ:条文からは読めません
  • 安衛法第35条の内容:第119条の列挙に出てくる条ですが、扱っていません
  • 厚生労働省が案内している介護施設向けマニュアルの中身:この記事では読んでいません
  • 古い資料と条文が食い違う理由:資料が書かれた時点の条文は、この記事では確認していません
  • 個別の職員や事業所への適用の判断:この記事は条文の構造の整理で、個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士などにご確認ください

まとめ

  • 雇入れ時の教育の義務は安衛法第59条第1項。第2項が作業内容を変更したときに準用する。異動の多い福祉の事業場では、採用時だけでなく異動時も手順に入れる
  • 教育の事項は安衛則第35条第1項の8つ。そのうち「当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項」について、遅滞なく行う
  • 省略は安衛則第35条第2項。事項の全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者。第35条に業種を条件にした省略の文言は見当たらないので、古い資料と食い違ったら条文で確かめる
  • 特別教育の記録は安衛則第38条で三年間保存。雇入れ時等の教育には、第35条にも第59条にも記録や保存の文言は見当たらない。残すかどうかと年数は、法人の運用で決める
  • 罰則は、第59条第1項(第2項の準用を含む)が第120条の五十万円以下の罰金、第3項(特別教育)が第119条の六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金
  • 職長等の教育(第60条)は、令第19条の6業種に限られ、福祉や介護を指す語は出てこない。第60条の2は努力義務で、条文に業種の限定は書かれていない

参考にした一次情報

いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の職員や事業所への適用、行政の運用を示すものではありません。


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