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継続雇用制度|65歳までの義務と70歳までの努力義務を条文で読む

60歳で定年を迎えた介護職員が、嘱託として働き続けている。送迎のドライバーや調理員も、定年後は1年契約で更新している。社会福祉法人では、60代以上の職員が現場を支えている場面は珍しくありません。

そこで法人本部の人事・総務の担当者から出てくるのが、次のような戸惑いです。「定年後に再雇用していれば、法律上の義務は果たしていることになるのか」「65歳を過ぎても働いてもらうために、何か決めておくことはあるのか」「対象者を絞る基準を置いている就業規則が、まだ残っているが大丈夫か」。

この記事では、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」)の第8条から第11条と、同法施行規則の関係条文を読みます。条文から決まることと、条文だけでは決まらないことは分けて書きます。

先に結論

  • 定年を定める場合、その年齢は六十歳を下回れません(第8条)。
  • 定年が六十五歳未満の事業主は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかを講じなければなりません(第9条第1項。これを高年齢者雇用確保措置と呼びます)。これは義務です。
  • 継続雇用制度は「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」と定義されています。
  • 対象者を限定する基準に関する経過措置は、令和7年3月31日で終わっています。年齢の段階(61歳から64歳)は、附則に書かれています。
  • 六十五歳から七十歳までの就業確保(高年齢者就業確保措置)は、努力義務です(第10条の2)。義務とは書かれていません。
  • 第9条第1項に違反している事業主には、指導・助言、勧告、公表という段階が用意されています(第10条)。

定年は六十歳を下回れない(第8条)

まず、定年そのものの下限です。第8条の本文は次のとおりです。

事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、六十歳を下回ることができない。

定年を定めるなら六十歳が下限です。第8条には、ただし書があり、高年齢者が従事することが困難と認められる業務として厚生労働省令で定める業務は例外とされています。その業務を定めた施行規則第4条の2は、鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務としています。介護や障がい福祉の事業所の業務は、この記載には当たりません。

六十五歳未満の定年がある場合:3つの措置から選ぶ(第9条第1項)

第9条第1項は、次のとおり定めています。

定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

ここから読み取れる点は3つです。

  • 対象は、定年が六十五歳未満の事業主です。六十五歳以上の定年を定めている事業主は、この項の対象に入りません。
  • 目的は、六十五歳までの安定した雇用の確保です。
  • 「いずれかを講じなければならない」と書かれているので、義務です。3つのうち1つを選びます。

3つの措置は、次のとおりです。

号措置
第一号当該定年の引上げ
第二号継続雇用制度の導入
第三号当該定年の定めの廃止

社会福祉法人で多いのは、定年を六十歳に置いたまま、第二号の継続雇用制度で再雇用する形でしょう。次に、この継続雇用制度の定義を見ます。

継続雇用制度とは何か

第二号は、継続雇用制度を括弧書きで定義しています。

継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入

定義の文言から読み取れる点は、次のとおりです。

  • 対象は「現に雇用している高年齢者」です。
  • 「希望するとき」に、定年後も引き続いて雇用する制度です。
  • 「引き続いて雇用する」とあり、雇用が続くことが前提です。

一方で、この定義には書かれていないこともあります。嘱託やパートといった雇用形態、賃金の水準、1日の勤務時間などは、定義の文言からは決まりません。定年後に有期契約で再雇用することは、現場でよくある運用ですが、その場合の賃金や労働条件が適切かどうかは、この記事で確かめた条文だけでは判断できません。第9条第3項は、厚生労働大臣が高年齢者雇用確保措置の実施と運用に関する指針を定めるとしています。指針の中身は、この記事では確かめていません。

対象者を限定する基準の経過措置は、終わっている

以前の高年齢者雇用安定法には、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定める旧第9条第2項の仕組みがありました。平成24年の改正(平成24年法律第78号)の附則第3項は、その経過措置を定めています。条文の骨子は次のとおりです。

同条第二項の規定は、令和七年三月三十一日までの間は、なおその効力を有する。

この経過措置の期限は、令和7年3月31日です。2026年10月の時点では、すでに期限を過ぎています。

附則第3項は、その期間中、旧第2項の「係る基準」を、年齢の段階を設けて読み替えるとしています。年齢の段階は、次のとおりです。

期間基準の対象とできる年齢
施行日から平成28年3月31日まで61歳以上
平成28年4月1日から平成31年3月31日まで62歳以上
平成31年4月1日から令和4年3月31日まで63歳以上
令和4年4月1日から令和7年3月31日まで64歳以上

施行日は、附則第1項により平成25年4月1日です。

この記事で確かめた一次情報には、旧第9条第2項の本文そのものは含まれていません。そのため、基準の中身は書きません。ただし、附則が令和7年3月31日までとしている以上、就業規則や再雇用の規程に、対象者を絞る基準が残っている場合は、見直しの対象になります。この点は弊社の見立てです。具体的な書き換えは、社会保険労務士などの専門家に確認してください。

グループ法人での継続雇用も含まれる(第9条第2項)

第9条第2項は、継続雇用制度の範囲を広げています。

継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項及び第十条の二第一項において同じ。)との間で、

この引用は文の途中までです。続きは、事業主が特殊関係事業主との間で、定年後の雇用を約する契約を締結し、その契約に基づいて雇用を確保する制度も、継続雇用制度に含まれる、という内容です。

特殊関係事業主の範囲は、施行規則第4条の3が定めています。

区分内容
第一号当該事業主の子法人等
第二号当該事業主を子法人等とする親法人等
第三号親法人等の子法人等(当該事業主等を除く)
第四号当該事業主の関連法人等
第五号親法人等の関連法人等(第四号を除く)

「親法人等」「子法人等」「関連法人等」は、第4条の3の第2項以下で定義されています。その定義は、議決権の所有割合を基にしています。たとえば、親法人等の第2項第一号は、次のとおりです。

議決権の過半数を自己の計算において所有している法人等

社会福祉法人は、株式会社のような株主総会と議決権の仕組みを持ちません。このため、同じ法人グループの別の社会福祉法人や関連会社が、第4条の3の特殊関係事業主に当たるかどうかは、条文の文言だけでは決まりません。グループで再雇用を考える場合は、所管の公共職業安定所などに確認してください。

違反した場合:指導・助言、勧告、公表(第10条)

第9条第1項の高年齢者雇用確保措置を講じていない場合の流れは、第10条が定めています。3つの段階があります。

第1項は、指導と助言です。

厚生労働大臣は、前条第一項の規定に違反している事業主に対し、必要な指導及び助言をすることができる。

第2項は、その後の勧告です。指導または助言をしても、なお第9条第1項に違反していると認めるときは、高年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告できます。

第3項は、公表です。

その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

整理すると、次のようになります。

段階条文内容
1第10条第1項必要な指導及び助言
2第10条第2項高年齢者雇用確保措置を講ずべき旨の勧告
3第10条第3項勧告に従わないときの公表

いずれも「することができる」と書かれた権限です。条文が示しているのは、指導・助言から始まり、勧告、公表へと進む段階までです。

六十五歳から七十歳までは努力義務(第10条の2)

六十五歳を超えた就業の確保は、第10条の2が定めています。ここを「義務」と書いている説明を見かけることがありますが、条文の文言は義務ではありません。

次に掲げる措置を講ずることにより、六十五歳から七十歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならない。

「努めなければならない」と書かれています。第9条第1項の「講じなければならない」とは、書き分けられています。

第1項の対象は、次の事業主です。

  • 定年が六十五歳以上七十歳未満の定めをしている事業主
  • 継続雇用制度(高年齢者を七十歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く)を導入している事業主

この記事では、第9条第1項の高年齢者雇用確保措置のほかに、この第10条の2の措置をまとめて「高年齢者就業確保措置」と呼びます。第4項が、その名称を定めています。

講じる措置は、第1項の各号に3つ、ただし書に1つあります。

区分内容
第一号当該定年の引上げ
第二号六十五歳以上継続雇用制度の導入
第三号当該定年の定めの廃止
ただし書過半数組合等の同意を得た創業支援等措置

第二号の六十五歳以上継続雇用制度は、希望するときは定年後等も引き続いて雇用する制度です。第3項により、他の事業主との契約に基づく雇用の確保も含まれます。

創業支援等措置:雇用ではない形での就業確保

ただし書は、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の同意を得た創業支援等措置を講ずる場合は、第1項各号の措置によらなくてもよいとしています。第2項は、創業支援等措置を2種類に分けています。

区分概要
第二項第一号新たに事業を開始する高年齢者との委託契約等
第二項第二号社会貢献事業に従事する高年齢者との委託契約等

いずれも、労働契約を除く契約で、事業主または事業を実施する者が金銭を支払うものに限られます。つまり、雇用ではない形で就業を確保する措置です。第二号の社会貢献事業には、事業主が実施するもの、委託を受けた法人等が実施するもの、事業主が資金の提供などの援助を行っているものの3種類があります。

創業支援等措置を選ぶ場合は、手続きが多くなります。施行規則第4条の5の第1項は、次のように定めています。

事業主は、法第十条の二第二項の創業支援等措置(以下「創業支援等措置」という。)に関する計画を作成し、

この引用は文の途中までです。続きは、その計画について過半数組合等の同意を得る、という内容です。計画に記載する事項は、第2項に12号にわたって列挙されています。創業支援等措置を講ずる理由、業務の内容、金銭に関する事項、契約の変更・終了、安全衛生、災害補償などです。同意を得た計画は、各事業所の労働者に周知するものとされ、周知の方法は、見やすい場所への掲示、書面の交付、電子的な記録と常時確認できる機器の設置のいずれかです(第3項)。

同意を行う過半数代表者の要件は、施行規則第4条の6が定めています。

  • 労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
  • 同意を行う過半数代表者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続で選出され、事業主の意向に基づき選出されたものでないこと

計画作成の勧告と提出(第10条の3)

高年齢者就業確保措置については、第10条の3が、指導・助言から計画の作成までの流れを定めています。

第1項で、厚生労働大臣が必要があると認めるときに、事業主に対し、高年齢者就業確保措置の実施について必要な指導及び助言をすることができるとされています。第2項は、その後の勧告です。指導または助言をしても、実施状況が改善していないと認めるときは、高年齢者就業確保措置の実施に関する計画の作成を勧告できます。

勧告を受けて計画を作成した場合の義務は、第3項に書かれています。

事業主は、前項の計画を作成したときは、厚生労働省令で定めるところにより、これを厚生労働大臣に提出するものとする。

計画に含める事項は、施行規則第4条の8第1項が3つ挙げています。

  • 計画の始期及び終期
  • 計画の期間中に実施する措置及びその実施時期
  • 計画の期間中及び終期における定年又は高年齢者就業確保措置の対象となる年齢の上限

第3項は、計画を作成したときに、遅滞なく、主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長へ提出すると定めています。第10条の2は努力義務ですが、第10条の3には、計画の作成の勧告という手続きが置かれています。第4項は、計画が著しく不適当であると認めるときに、その変更を勧告できるとも定めています。この条に、第10条第3項のような公表の規定は書かれていません。

高年齢者雇用等推進者の選任も努力義務(第11条)

第11条は、高年齢者雇用等推進者の選任を定めています。

事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、高年齢者雇用確保措置等を推進するため、作業施設の改善その他の諸条件の整備を図るための業務を担当する者を選任するように努めなければならない。

これも「努めなければならない」です。選任の方法は、施行規則第5条が、この業務を遂行するために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから選任するものとしています。

法人本部で確認しておきたいこと

条文の読み方を踏まえて、法人本部で確認したい点を整理します。これは条文から導いた、弊社の整理です。

  • 就業規則と再雇用の規程で、定年の年齢が何歳になっているかを確認する。六十歳を下回る定めがあれば、第8条の問題になります。
  • 定年が六十五歳未満なら、第9条第1項の3つの措置のどれを講じているかを確認する。継続雇用制度を選んでいる場合は、希望する職員を定年後も引き続いて雇用する制度になっているかを確認します。
  • 対象者を絞る基準が就業規則や規程に残っていないかを確認する。経過措置の期限は令和7年3月31日で終わっています。
  • 六十五歳以降の就業をどう扱うかを、法人として決めておく。第10条の2は努力義務ですが、定年後の職員が六十五歳を迎えたときに、何をするのかは法人の判断になります。
  • 創業支援等措置を考える場合は、過半数組合等の同意、計画の作成、周知の手続きが必要になる点を踏まえる。
  • 高年齢者雇用等推進者を選任しているかを確認する。

定年後に有期契約で再雇用している職員がいる場合は、無期転換ルールとの関係も別に確認しておく必要があります。有期契約の通算が五年を超えたときの扱いと、定年後に引き続き雇用される期間の特例は、無期転換ルールの記事で整理しています。その記事では、特例が働くのは、第二種計画の認定を受けた事業主の話で、再雇用をしていれば自動的に適用される書き方にはなっていないことを書いています。この記事では詳しく書きません。

この記事で書いていないこと

この記事で確かめた条文の範囲で、次の点は断定しません。

論点書かなかった理由
再雇用後の賃金水準第9条の条文に水準の定めがない
同一労働同一賃金との関係この記事の一次情報に含まれない
指針(第9条第3項・第10条の2第4項)の中身指針そのものを確かめていない
助成金この記事の一次情報に含まれない
就業規則のひな形一次情報に含まれない
無期転換の特例の申請手続き別の記事で扱い、この記事では確かめていない
社会福祉法人が特殊関係事業主に当たるか定義が議決権を基にしており、条文からは決まらない
旧第9条第2項の本文この記事の一次情報に含まれない

実際に個別の職員の扱いを判断するときは、これらの点を、所管の行政機関や専門家に確認してください。

まとめ

  • 定年の下限は六十歳です(第8条)。定年が六十五歳未満の事業主は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかを講じなければなりません(第9条第1項)。
  • 継続雇用制度は、現に雇用している高年齢者が希望するときは、その定年後も引き続いて雇用する制度です。特殊関係事業主での継続雇用も含まれますが、社会福祉法人が特殊関係事業主に当たるかは、条文からは決まりません。
  • 対象者を限定する基準に関する経過措置は、令和7年3月31日で終わっています。
  • 第9条第1項に違反している場合は、指導・助言、勧告、公表の順に手続きが用意されています(第10条)。
  • 六十五歳から七十歳までの就業確保(高年齢者就業確保措置)と、高年齢者雇用等推進者の選任は、どちらも努力義務です。創業支援等措置を選ぶ場合は、過半数組合等の同意と計画の作成が要ります。

参考にした一次情報


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阪本翔太

阪本翔太

奈良県の中小企業診断士 & ITストラテジスト。 公的機関や大学などで講師もしています。 地方でがんばる人をITで後押ししたい。

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