シフト制で夜勤もある施設では、休みの入れ替えが日常的に起こります。急な欠勤の穴を埋めるために休日に出勤してもらい、別の日に休んでもらう。シフト表には「振休」「代休」と書き分けているのに、給与計算の担当者と施設の管理者とで、割増賃金が要るのか要らないのかの認識がそろっていない、というご相談は少なくありません。
この2語には、先に押さえておきたい事実があります。労働基準法の条文には、「振替休日」も「代休」も出てきません。 今回、第32条・第33条・第35条・第36条・第37条・第89条・第90条・第106条・第119条と、労働基準法施行規則第19条の2、割増賃金の率を定める政令の原文を確認しましたが、どの条文にもこの2語はありませんでした。「法定休日」という語も、確認した条文には出てきません。
条文にあるのは、第35条の「休日」と、第37条の「休日に労働させた場合」の割増賃金です。振替休日と代休は、この2つの条文を現場で運用するときの呼び分けにすぎません。この記事では、条文に書かれていることと、書かれていないことを分けて整理します。
先に結論
- 振替休日も代休も、条文上の用語ではなく、実務上の呼び分けです。
- 一般には、休日に働く前に休日を他の日と入れ替えるのが「振替」、休日に働いたあとで別の日に休みを与えるのが「代休」と整理されます。ただし、この区別は条文には書かれていません。 行政解釈や実務の運用に基づく整理です。
- 割増賃金の率は、政令で、延長した労働時間が2割5分、休日の労働が3割5分と定められています。どちらの率になるかは、その日の労働が「休日の労働」にあたるかで分かれます。
- 休みを入れ替える日が週をまたぐと、週40時間(第32条)の枠を超えて時間外労働になる場合があります。月またぎでは、月単位の上限(第36条)や月60時間超の割増(第37条)の数え方が関わります。
- 条文から決まらない点は、無理に断定せず、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
「振替休日」と「代休」は条文に出てこない
まず、条文に何が書かれているかを確認します。
第35条は、休日について次のように定めています。
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
(いずれも労働基準法 第35条)
つまり、使用者は「毎週少なくとも1回」か「4週間を通じて4日以上」の休日を与える必要があります。この条文の休日を、実務では一般に「法定休日」と呼びます。それ以外の休み(週休2日制のもう1日など)は、所定休日などと呼ばれます。ただし、この呼び方も条文の用語ではありません。
次に、その休日に働かせるときの条文です。第36条第1項は、労使協定(いわゆる36協定)を書面で結び、行政官庁に届け出た場合に限って、休日に働かせることができると定めています。
その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
(労働基準法 第36条第1項)
そして第37条第1項が、そのときの割増賃金を定めます。
その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(労働基準法 第37条第1項。前段は「使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、」)
ここまでを、条文にあることと、ないことに分けて表にします。
| 条文に書かれていること | 条文に書かれていないこと |
|---|---|
| 第35条:毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上の休日 | 「振替休日」「代休」「法定休日」という語 |
| 第36条:協定を結んで届け出れば、休日に労働させることができる | 事前に振り替えれば休日労働にならない、という整理 |
| 第37条:休日に労働させた場合の割増賃金(率は政令で定める) | 代休を与えた場合の賃金の精算の方法 |
| 第32条:1週間について40時間を超えて労働させてはならない | 1週間の起算日、休日の長さ(暦日か24時間か)の数え方 |
右の列は、現場で迷いやすい点そのものです。条文を読むだけでは答えが出ないため、就業規則の書き方や、所轄の労働基準監督署への確認が必要になります。
一般的な整理:振替と代休の違い
では、実務では2語をどう使い分けているのでしょうか。一般には次のように整理されるのが通例ですが、条文にはこの区別は書かれていません。 行政の解釈や、実務の運用として定着した考え方です。具体的な通達の番号は、今回確認した一次情報には含まれないため、ここでは挙げません。
| 観点 | 振替(一般的な整理) | 代休(一般的な整理) |
|---|---|---|
| 休みを決める時期 | 休日に働く前に、あらかじめ休日と労働日を入れ替える | 休日に働いたあとで、別の日に休みを与える |
| 元の休日の位置づけ | 入れ替えにより労働日になり、代わりの日が休日になる | 休日のまま。その日に働いたという事実が残る |
| 休日労働の割増(3割5分) | 元の休日が労働日になるため、休日労働にならないと整理されるのが一般的 | 休日に労働させたことになり、第37条の割増賃金の対象と整理されるのが一般的 |
| 週をまたぐ場合 | 労働日にした週の労働時間が40時間を超えれば、時間外労働の問題が出る | 同じく週40時間の枠は別に見る必要がある |
ここで大切なのは、この表の「整理」はあくまで一般的な考え方であって、条文が直接定めた区別ではない、という点です。施設として運用するなら、次の2点を押さえておくと、後で迷いません。
- 決めるタイミングを記録に残す。 振替なのか代休なのかは、休みを決めたのが働く前か後かで分かれます。シフト表や勤怠の記録に、決めた日を残しておくことが出発点です。
- どちらの扱いにするかを、就業規則に書いておく。 条文が区別を定めていない以上、施設の中で扱いを揃えるのは就業規則の役割になります(後述します)。
休日の最低ラインと、夜勤のあるシフトでの考え方
第35条の休日は、毎週1回が原則です。4週間を通じて4日以上与える場合は、毎週1回の規定は適用されません。シフト制の施設では、勤務を4週間単位で組む運用が多いため、この第2項が関わる場面があります。
夜勤のある施設で特に迷うのは、次の2点です。
- 週休2日のうち、どちらの日が第35条の休日か。 条文は「毎週少くとも一回の休日」としか書いておらず、2日のうちどちらを第35条の休日として扱うかは、抜粋した条文からは決まりません。この扱いは、休日労働の割増(3割5分)が出るかどうかに直結します。
- 夜勤が日をまたぐとき、休日をどう数えるか。 条文には「休日」とあるだけで、休日の長さ(暦日で数えるのか、連続24時間で数えるのか)は書かれていません。条文からは決まりません。所轄の労働基準監督署にご確認ください。
夜勤そのものの扱い(宿直との違いなど)は、別の記事で整理しています。あわせてご覧ください。
割増賃金の条文:3割5分と2割5分
割増賃金の率は、第37条第1項が「政令で定める率以上」としており、その政令が下限を定めています。
労働基準法第三十七条第一項の政令で定める率は、同法第三十三条又は第三十六条第一項の規定により延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。
(労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)
整理すると、延長した労働時間の労働は2割5分以上、休日の労働は3割5分以上です。ここでいう「休日」は、第35条の休日を指します。
振替と代休の違いが賃金に表れるのは、この2つの率のどちらが関わるか、という点です。一般的な整理では、次のようになります。
- 振替の場合。 元の休日が労働日になるため、その日の労働は「休日の労働」ではないと整理されるのが一般的です。ただし、入れ替えた結果、その週の労働時間が週40時間を超えるなら、超えた時間は延長した労働時間として2割5分以上の割増の対象になります。
- 代休の場合。 休日に労働させたことに変わりはないため、休日の労働として3割5分以上の割増賃金の対象になる、と整理されるのが一般的です。
一方で、次の点は条文からは決まりません。
- 代休を与えた場合に、割増分とは別の「通常の賃金」の部分をどう精算するか。条文は割増賃金の率を定めていますが、代休との精算の方法は書いていません。賃金規程の定めや、所轄の労働基準監督署の考え方を確認してください。
- 夜勤で休日労働や時間外労働が深夜(午後10時から午前5時)に重なったときの率の組み合わせ。深夜の労働には、第37条第4項により2割5分以上の割増賃金が必要ですが、重なった場合の計算は、抜粋した条文からは決まりません。
なお、第32条・第35条・第37条に違反した場合は、第119条第1号により、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています。条文上のリスクとして、押さえておいてください。
週をまたぐ場合の見方
振替で休みを入れ替える日が同じ週内なら、週の労働時間は変わりません。問題になるのは、入れ替え先が別の週になるときです。見るべき条文は第32条です。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
(労働基準法 第32条第1項)
具体例で考えます。所定労働時間が1日8時間、週5日(週40時間)の職員で、週の区切りを月曜から日曜と仮置きします。条文は1週間の起算日を定めていないため、あくまで説明のための仮置きです。
- 同じ週内で入れ替える場合。 日曜に出勤し、同じ週の水曜を休みにします。この週の労働は5日のまま、合計40時間です。第32条の枠を超えません。
- 週をまたいで入れ替える場合。 ある週の日曜に出勤し、休みを翌週の水曜に取るとします。出勤した週は、月曜から土曜の5日に日曜の1日が加わり、合計48時間です。翌週は4日で32時間です。この場合、出勤した週は40時間を8時間超えます。
後者は、出勤した週に第35条の休日(たとえば土曜)が別に確保されていれば、「週1回の休日」の面では問題がありません。しかし、週40時間の枠は別に超えます。 超えた8時間は、延長した労働時間として、第36条第1項の協定と、第37条第1項の割増賃金(2割5分以上)の問題になります。翌週に労働が32時間に減っても、第32条は「一週間について」の枠を定めており、週をまたいだ相殺を認める書き方にはなっていません。
なお、第36条第1項には「第三十二条から第三十二条の五まで」の労働時間への言及があり、第32条の原則とは別の労働時間の枠が定められている場合があることがうかがえます。変形労働時間制を採っている施設では、上の計算例のとおりにならないことがあります。この記事は第32条の原則で整理しており、変形労働時間制の条文は取り上げていません。該当する施設は、別途ご確認ください。
月またぎの場合の見方
月末に休日出勤をして、休みを翌月に取るのが「月またぎ」です。月単位の数え方が関わる条文は、次の3つです。
- 第36条第4項。 36協定で定める時間外労働の限度時間は、原則として1箇月について45時間、1年について360時間です。
- 第36条第6項第2号・第3号。 労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間は、1箇月について100時間未満でなければなりません。また、一定期間の平均が1箇月当たり80時間を超えてはなりません。休日に働いた時間は、時間外労働と合わせて、この上限に数えられる書き方です。
- 第37条第1項ただし書。 延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合、その超えた時間の割増賃金は5割以上になります。
月またぎで特に注意したいのは、次の点です。代休で休みを与えても、休日に労働させた時間が、上の月単位の枠から除かれるという規定は、抜粋した条文にはありません。休みを翌月に取ったからといって、働いた月の集計から外れるとは言えない、ということです。
また、休みを翌月に取るときの賃金の精算を、どの月の給与で行うかは条文から決まりません。賃金の締切りと支払の時期は、第89条第2号により就業規則に書く事項とされているため、施設の賃金規程の定めを確認することになります。
ここまでを、週と月のケース別にまとめます。
| ケース | 見る条文 | 条文から言えること | 条文から決まらないこと |
|---|---|---|---|
| 同じ週内で入れ替え | 第32条 | 週の労働時間が40時間以内なら、第32条の枠を超えない | 1週間の起算日 |
| 週をまたいで入れ替え | 第32条・第36条・第37条 | 労働日にした週が40時間を超えれば、超えた時間は延長した労働時間になる | 後の週の労働時間の減少分と相殺できるか(相殺を認める書き方はない) |
| 月またぎ | 第36条第4項・第6項、第37条第1項ただし書 | 休日労働の時間も、月100時間未満の枠に数えられる書き方 | 翌月の代休分を、どの月の給与で精算するか(賃金規程の定めを確認) |
「代休」と「代替休暇」は別物
名前が似ていて混同しやすいのが、第37条第3項の「代替休暇」です。
これは、1箇月について60時間を超えた時間外労働の割増賃金(5割以上)の支払に代えて、通常の賃金が支払われる休暇を与える制度です。労使協定を書面で結ぶことが前提で、取得した休暇に対応する時間については、5割以上の割増賃金の支払が不要になります。
労働基準法施行規則第19条の2によれば、協定で定める事項は次のとおりです。
- 代替休暇として与えることができる時間数の算定方法
- 代替休暇の単位(1日または半日)
- 代替休暇を与えることができる期間(60時間を超えた1箇月の末日の翌日から2か月以内)
つまり代替休暇は、月60時間を超える時間外労働に限った、協定による制度です。休日に働いたあとに別の日に休む「代休」とは、対象も根拠も異なります。第37条第3項は、代替休暇から第39条の有給休暇(年次有給休暇)を除くとも書いており、年次有給休暇とも別の仕組みです。年次有給休暇の時季指定については、別の記事で整理しています。
就業規則・協定・周知で整える
条文が振替と代休を区別していない以上、施設の中で扱いを揃える手段は、就業規則や協定になります。条文から書けるのは次の点です。
| 事項 | 条文 | ポイント |
|---|---|---|
| 就業規則への記載 | 第89条第1号 | 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替で就業させる場合の就業時転換に関する事項を、就業規則に定めて届け出る |
| 賃金に関する記載 | 第89条第2号 | 賃金の決定、計算、支払の方法、締切りと支払の時期に関する事項も記載する。代休分の精算の月はここに関わる |
| 意見聴取 | 第90条 | 作成や変更の際は、過半数労働組合、なければ過半数代表者の意見を聴き、意見を記した書面を添付する |
| 周知 | 第106条 | 就業規則や、第36条第1項の協定などを、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付などで労働者に周知する |
| 休日労働の協定 | 第36条第1項 | 休日に労働させるには、書面の協定を結び、行政官庁に届け出る |
条文は「休日に関する事項」を記載するよう求めていますが、振替や代休の扱いを個別に書くよう求める文言は、抜粋した条文にはありません。そのうえで、弊社の見立てとして、振替をする場合の決め方、代休を与える場合の扱い、賃金の精算の月を就業規則に書いておくと、現場の説明が揃い、給与計算での食い違いも減ります。
施設で見直すときの順番
最後に、法人本部や施設の事務担当の方が、現状を点検する順番を整理します。
- シフト表の記載を確認する。 「振休」「代休」「公休」を、どんな基準で書き分けているかを洗い出します。休みを決めた日が記録に残っているかも見ます。
- 就業規則の休日の条文を読む。 第35条の休日を、どの日として扱うと定めているか、振替と代休の扱いが書かれているかを確認します。
- 週をまたぐ入れ替えを拾う。 直近数か月分で、休日と労働日を別の週に入れ替えた例を抜き出し、出勤した週の労働時間が40時間を超えていないかを見ます。
- 月またぎの精算を確認する。 月末の休日出勤と翌月の休みについて、賃金をどの月で精算しているかを確認します。
- 決まらない点を書き出す。 休日の長さの数え方、深夜と休日の重なりなど、条文から決まらない点は一覧にして、所轄の労働基準監督署に確認します。
まとめ
- 振替休日と代休は、条文上の用語ではなく、実務上の呼び分けです。条文にあるのは、第35条の休日と、第37条の割増賃金です。
- 一般には、事前に入れ替えるのが振替、事後に別の日に休むのが代休と整理されますが、この区別は条文には書かれていません。 断定せず、就業規則で扱いを定めておくことが現実的な対応です。
- 割増賃金の率は、延長した労働時間が2割5分、休日の労働が3割5分です。週をまたぐ入れ替えでは、週40時間を超えた時間が時間外労働になります。
- 月またぎでは、休日労働の時間も月の上限に数えられる書き方です。精算の月は、賃金規程の定めを確認します。
- 条文から決まらない点は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
参考にした一次情報
- 労働基準法|e-Gov法令検索:第三十二条、第三十三条、第三十五条、第三十六条、第三十七条、第八十九条、第九十条、第百六条、第百十九条
- 労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号):第十九条の二
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成六年政令第五号)
いずれも条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業場への適用や、行政の運用を示すものではありません。
休日の入れ替えや代休の記録が、施設ごとにばらばらになっていませんか
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