法令遵守責任者は決めて、届出も出した。けれども、その後に事業所が増えたり、責任者が異動したりしたとき、届出を出し直したのかどうか、はっきり思い出せない。業務管理体制について、そんな不安を感じている法人本部の方は少なくないのではないでしょうか。
とくに高齢者介護と障がい福祉の両方を運営している社会福祉法人では、もう1つ悩みがあります。「業務管理体制」という同じ名前の制度が、介護保険法と障害者総合支援法のそれぞれに置かれていることです。しかも、届出先の区分の数が違います。介護は6区分、障がい福祉は4区分です。同じ法人なのに、介護の届出先と障がい福祉の届出先が別々になることがあります。
検索すると、介護だけ、あるいは障がい福祉だけを説明したページは見つかります。一方で、両方の条文を並べて、法人としてどう整理すればよいかを示したものは多くありません。
この記事は、次の4つの条文の原文だけを根拠に、両制度を並べて読み解きます。
- 介護保険法 第115条の32〜第115条の34
- 介護保険法施行規則 第140条の39・第140条の40
- 障害者総合支援法 第51条の2〜第51条の4
- 障害者総合支援法施行規則 第34条の27・第34条の28
扱うのは次の点です。
- 整備しなければならない中身は、何で決まるのか
- 届出先は、介護と障がい福祉でどう違うのか
- 届出書に何を書くのか
- 出し直しが要るのは、どんな場面か
- 届出のあとに、国や自治体は何ができると条文に書かれているのか
なお、届出の様式、提出部数、電子申請の手順、検査の頻度、罰則は、この記事の根拠にした条文には書かれていないため扱いません。様式や提出方法は、届出先ごとに案内されています。届出先の窓口で確認してください。
まず結論:同じ制度でも、届出先の区分は介護6・障がい4
先に答えを示します。
- 業務管理体制の根拠は、介護が介護保険法第115条の32、障がい福祉が障害者総合支援法第51条の2
- 整備する中身は、指定を受けている事業所・施設の数で3段階に分かれる(1以上20未満/20以上100未満/100以上)。この刻みは、介護と障がい福祉で同じ
- 数えるのは事業所・施設の数であり、職員数や売上ではない。20に達すると規程の整備が加わる
- 「法令遵守責任者」は、法律ではなく省令(施行規則)の用語
- 届出先は、介護保険法が6区分、障害者総合支援法が4区分。同じ法人でも届出先が分かれうる
- 届出事項に変更があれば遅滞なく届け出る。届出先の区分が変わるときは、変更後と変更前の双方に届け出る
整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 介護保険法 | 障害者総合支援法 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 第115条の32 | 第51条の2 |
| 整備の基準を定めた省令 | 施行規則第140条の39 | 施行規則第34条の27 |
| 届出の手続を定めた省令 | 施行規則第140条の40 | 施行規則第34条の28 |
| 報告・検査の条文 | 第115条の33 | 第51条の3 |
| 勧告・命令の条文 | 第115条の34 | 第51条の4 |
| 届出先の区分 | 6区分 | 4区分 |
ここからは、この結論を条文に沿って確かめます。
整備する中身は「事業所の数」で3段階に分かれる
根拠は法律、基準は省令
業務管理体制の整備義務は、法律の第1項に書かれています。介護保険法第115条の32第1項は、介護サービス事業者に、法律の別の条文(第74条第6項など)に規定する義務の履行が確保されるよう、厚生労働省令で定める基準に従い、業務管理体制を整備しなければならないと定めています。障害者総合支援法第51条の2第1項も同じ形で、第42条第3項に規定する義務の履行が確保されるよう、主務省令で定める基準に従い、業務管理体制を整備することを指定事業者等に求めています。
つまり、法律は「整備しなさい」と定めるだけで、何をどこまで整備するかは省令に委ねられています。その省令が、介護は施行規則第140条の39、障がい福祉は施行規則第34条の27です。
20と100が壁になる
どちらの省令も、指定又は許可(障がい福祉は指定)を受けている事業所・施設の数に応じて、3つの区分を置いています。
| 事業所・施設の数 | 整備すること |
|---|---|
| 1以上20未満 | 法令遵守責任者の選任 |
| 20以上100未満 | 法令遵守責任者の選任 と 業務が法令に適合することを確保するための規程の整備 |
| 100以上 | 上の2つ と 業務執行の状況の監査を定期的に行うこと |
ポイントは3つです。
- 数えるのは事業所・施設の数です。法人の職員数や事業収益ではありません。社会福祉法人は、サービスの種類ごと、拠点ごとに事業所が増えやすいので、気づかないうちに20に近づくことがあります
- 20に達すると、規程の整備が加わります。 責任者を選ぶだけでは足りなくなる境目です
- 100以上では、規程に加えて、業務執行の状況の監査を定期的に行うことが求められます
数え方には、条文上の小さな違いがあります。介護保険法施行規則は「指定又は許可を受けている事業所又は施設の数」と書いています。介護老人保健施設や介護医療院のように、指定ではなく許可を受ける施設があるためだと考えられます。障害者総合支援法施行規則は「指定を受けている事業所及び施設の数」と書いています。
また、介護の事業所と障がい福祉の事業所を合算して数えるのか、それぞれの法律の中で数えるのかは、この記事の根拠にした条文からは読み取れません。同じ事業所で複数のサービスの指定を受けている場合の数え方も、同様に条文には書かれていません。20や100に近い法人は、届出先の窓口に数え方を確認しておくと安心です。
なお、障害者総合支援法施行規則の第三号は、100以上の指定事業者等と「のぞみの園の設置者」を同じ区分にしています。社会福祉法人の一般的な事業所数の話とは別なので、ここでは触れるにとどめます。
「法令遵守責任者」は省令の言葉
「法令遵守責任者」という言葉は、介護保険法・障害者総合支援法の第115条の32〜第115条の34、第51条の2〜第51条の4には出てきません。この言葉を定義しているのは、省令です。介護保険法施行規則第140条の39第一号は、次のように書いています。
法令を遵守するための体制の確保に係る責任者(以下「法令遵守責任者」という。)の選任をすること。
障害者総合支援法施行規則第34条の27第一号も、同じ言葉を同じ形で定義しています。
条文が求めているのは、責任者を選任することと、届出書にその氏名及び生年月日を書くことです。どんな資格や役職の人を選ぶのか、法人の中でどの部署に置くのかは、この記事の根拠にした条文には書かれていません。
ここから先は、条文が定めていることではなく、実務上の提案です。
- 介護と障がい福祉の両方を運営する法人では、法人本部の管理者クラスから1人を選び、両方の制度の責任者を兼ねる形にするのか、別々に置くのかを、法人として決めておく。届出書には責任者の氏名と生年月日を書くため、誰がどの届出の責任者なのかを一覧にしておくと、異動のときに漏れにくくなります
- 責任者が異動・退職するときの引継ぎ先を決めておく。理由は、後述のとおり、責任者が替われば届出事項の変更として届け出る必要があるためです
届出先は介護が6区分、障がい福祉が4区分
条文の基本形
届出先は、法律の第2項が区分ごとに定めています。介護保険法第115条の32第2項の柱書は、次のとおりです。
介護サービス事業者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、業務管理体制の整備に関する事項を届け出なければならない。
障害者総合支援法第51条の2第2項の柱書も、同じ形です。
指定事業者等は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者に対し、主務省令で定めるところにより、業務管理体制の整備に関する事項を届け出なければならない。
どちらも、「各号の区分に応じて、各号に定める者に届け出る」という書き方です。違いは、各号の数と中身です。
介護保険法の6区分
介護保険法第115条の32第2項の各号を、自分の言葉でまとめます。
| 号 | 区分(要点) | 届出先 |
|---|---|---|
| 第一号 | 次号から第六号までに当たる事業者以外 | 都道府県知事 |
| 第二号 | 事業所・施設が2以上の都道府県の区域に所在し、かつ、2以下の地方厚生局の管轄区域に所在する事業者 | 主たる事務所の所在地の都道府県知事 |
| 第三号 | 指定又は許可に係る全ての事業所・施設が、1つの指定都市の区域に所在する事業者 | 指定都市の長 |
| 第四号 | 指定又は許可に係る全ての事業所・施設が、1つの中核市の区域に所在する事業者 | 中核市の長 |
| 第五号 | 地域密着型サービス事業又は地域密着型介護予防サービス事業のみを行い、指定に係る全ての事業所が1つの市町村の区域に所在する事業者 | 市町村長 |
| 第六号 | 事業所・施設が3以上の地方厚生局の管轄区域に所在する事業者 | 厚生労働大臣 |
第一号は「それ以外」を受ける区分です。第二号から第四号は、条文の中で「第五号に掲げる事業者以外」などと、より特定的な号に当たるものを除く書き方がされています。自法人がどの号に当たるかを判断するときは、この表の要約ではなく条文で確認してください。
障害者総合支援法の4区分
次に、障害者総合支援法第51条の2第2項の各号です。
| 号 | 区分(要点) | 届出先 |
|---|---|---|
| 第一号 | 次号から第四号までに当たる指定事業者等以外 | 都道府県知事 |
| 第二号 | 指定に係る事業所又は施設が、1つの指定都市の区域に所在する指定事業者等 | 指定都市の長 |
| 第三号 | 指定に係る事業所又は施設が、1つの中核市の区域に所在する指定事業者等 | 中核市の長 |
| 第四号 | 事業所若しくは施設が2以上の都道府県の区域に所在する指定事業者等(のぞみの園の設置者を除く)、又はのぞみの園の設置者 | 主務大臣 |
介護保険法に比べて、区分が少なくなっています。介護にある「市町村長」の区分(地域密着型のみの事業者)は、障害者総合支援法の第2項には書かれていません。
また、障害者総合支援法施行規則第34条の28第1項は、届出書の宛先を「厚生労働大臣若しくはこども家庭庁長官及び厚生労働大臣、都道府県知事又は指定都市若しくは中核市の市長」と書いています。国への届出先は、厚生労働大臣のみの場合と、こども家庭庁長官及び厚生労働大臣の場合があると読めます。どちらに当たるかは、条文のこの記載からは判断できないため、届出先の窓口で確認してください。
6区分と4区分を並べて比べる
2つの制度を、法人の目線で比べます。
| 比べる点 | 介護保険法 | 障害者総合支援法 |
|---|---|---|
| 区分の数 | 6 | 4 |
| 1つの指定都市の中だけに事業所がある場合 | 指定都市の長(第三号) | 指定都市の長(第二号) |
| 1つの中核市の中だけに事業所がある場合 | 中核市の長(第四号) | 中核市の長(第三号) |
| 市町村長への届出 | 地域密着型のみで、全事業所が1つの市町村にある場合に区分がある(第五号) | 区分なし |
| 2以上の都道府県にまたがる場合 | 2以下の地方厚生局の管轄区域なら、主たる事務所の所在地の都道府県知事(第二号) | 主務大臣(第四号) |
| 国(厚生労働大臣)が届出先になる場合 | 3以上の地方厚生局の管轄区域に所在(第六号) | 2以上の都道府県の区域に所在(第四号) |
比べると、違いがはっきりします。たとえば、事業所が2つの都道府県にまたがる場合、介護保険法では、2以下の地方厚生局の管轄区域に収まっていれば都道府県知事への届出(第二号)ですが、障害者総合支援法では、都道府県をまたいだ時点で主務大臣への届出(第四号)になります。
同じ法人で届出先が分かれる例
仮の例で考えます。条文の区分に当てはめたものであり、実在の法人ではありません。
- 介護の事業所が、すべて1つの指定都市の区域にある
- 障がい福祉の事業所は、同じ指定都市の事業所に加えて、隣の県にも事業所がある
この場合、介護保険法では、全ての事業所が1つの指定都市の区域に所在するので、第三号により届出先は指定都市の長です。一方、障害者総合支援法では、事業所が2以上の都道府県の区域に所在するので、第四号により届出先は主務大臣です。同じ法人でも、届出先が分かれます。
もう1つの例です。介護の事業所が、1つの中核市の区域の中の地域密着型サービスだけで、障がい福祉の事業所が同じ中核市の中だけにある場合を考えます。介護保険法の第四号は「次号に掲げる介護サービス事業者以外」と書いているので、第五号(地域密着型のみで、全事業所が1つの市町村の区域)に当たる事業者は、第四号ではなく第五号になり、届出先は市町村長です。一方、障がい福祉は第三号により中核市の長です。同じ中核市の中だけに事業所がある法人でも、介護は市町村長、障がい福祉は中核市の長と、届出先の窓口が分かれます。このように、介護側の判断のほうが複雑になりやすいといえます。
どの号に当たるかは、事業所の所在地、サービスの種類、事業所の数で決まります。法人本部で「事業所一覧に、所在地・サービス種別・指定又は許可の別を並べた台帳」を持っておくと、届出先の確認が速くなります。
届出書に書く4項目と、出し直しが要る2つの場面
届出書に書く項目
届出書の記載事項は、省令に書かれています。介護保険法施行規則第140条の40第1項と、障害者総合支援法施行規則第34条の28第1項が、同じ4項目を定めています。
| 項目 | 内容 | 書くのは |
|---|---|---|
| 第一号 | 事業者の名称又は氏名、主たる事務所の所在地、代表者の氏名・生年月日・住所・職名 | すべての事業者 |
| 第二号 | 法令遵守責任者の氏名及び生年月日 | すべての事業者 |
| 第三号 | 業務が法令に適合することを確保するための規程の概要 | 事業所・施設の数が20以上の場合に限る(障がい福祉は、前条第二号及び第三号に掲げる者の場合に限る) |
| 第四号 | 業務執行の状況の監査の方法の概要 | 事業所・施設の数が100以上の場合に限る(障がい福祉は、前条第三号に掲げる者の場合に限る) |
整備する中身の3段階と、届出書に書く項目が、きれいに対応しています。20に達したら規程の概要、100に達したら監査の方法の概要が、届出書に加わります。
出し直しの場面1:届け出た事項に変更があったとき
届け出たあとに、届出事項に変更があったときは、遅滞なく届け出なければなりません。根拠は、介護が法第115条の32第3項と規則第140条の40第2項、障がい福祉が法第51条の2第3項と規則第34条の28第2項です。
実務で起きやすい変更は、次のようなものです。
- 法令遵守責任者の異動・退職(第二号の事項の変更)
- 代表者の交代(第一号の事項の変更)
- 主たる事務所の所在地の変更(第一号の事項の変更)
事業所が増えて20に達すると、届出書には規程の概要(第三号)を書くことになります。この場合に、すでに出した届出をどう更新するのかは、条文の言葉だけでは判断しにくい面があります。事業所数の増加で整備の段階が変わるときは、届出先の窓口に確認してください。
障害者総合支援法施行規則第34条の28第2項には、ただし書があります。変更に係る事項が第1項第一号の事項(事業者の名称、所在地、代表者の氏名など)である場合で、都道府県知事または指定都市・中核市の市長が、指定障害福祉サービス事業者としての別の届出(サービスの種類ごとに条文が列挙されています)を受けていることにより、事実の確認に支障がないと認めるときは、その届出又は届出書の記載を要しないものとすることができる、という内容です。
ここは、条件つきの規定です。「障がい福祉では、名称や代表者が変わっても届出が不要になる」と単純にとらえてはいけません。条文が書いているのは、変更の内容が第一号の事項で、かつ、知事・市長が支障がないと認めたときに、届出などを要しないものとすることが「できる」という点です。認めるかどうかは、届出先の判断になります。要るか要らないかは、届出先に確認するのが確実です。
出し直しの場面2:届出先の区分が変わったとき
見落とされやすいのが、こちらです。届出先の区分が変わって、届出先が替わるときの手続が、別に定められています。介護保険法第115条の32第4項は、次のように書いています。
第二項の規定による届出を行った介護サービス事業者は、同項各号に掲げる区分の変更により、同項の規定により当該届出を行った厚生労働大臣等以外の厚生労働大臣等に届出を行うときは、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を当該届出を行った厚生労働大臣等にも届け出なければならない。
つまり、新しい届出先に届出を行うだけでなく、それまでの届出先にも届け出ることが求められています。この手続の中身は、介護保険法施行規則第140条の40第3項に書かれています。
介護サービス事業者は、法第百十五条の三十二第二項各号に掲げる区分に変更があったときは、変更後の届出書を、変更後の区分により届け出るべき厚生労働大臣等及び変更前の区分により届け出るべき厚生労働大臣等の双方に届け出なければならない。
障害者総合支援法も同じ構造です。法第51条の2第4項と、規則第34条の28第3項が、変更後の届出書を、変更後の区分の届出先と変更前の区分の届出先の双方に届け出ることを定めています。
どんなときに区分が変わるのか、先ほどの表で確かめます。
- 介護の事業所がすべて1つの指定都市の区域にあった法人が、別の市に事業所を1つ開設すると、第三号に当たらなくなります。届出先は、指定都市の長から都道府県知事(第一号など)へ変わりえます
- 障がい福祉の事業所が1つの中核市の区域にだけあった法人が、他県に事業所を開設すると、第三号から第四号に変わり、届出先は中核市の長から主務大臣へ変わります
事業所を1つ増やすだけで、届出先が変わることがあります。「事業所の開設の準備」と「業務管理体制の届出先の確認」を、セットにしておくのが、出し忘れを防ぐ近道です。
なお、条文には、区分の変更で届出を受けた変更前の届出先について、次の括弧書きがあります。介護保険法第115条の33第1項と、障害者総合支援法第51条の3第1項は、報告や検査の権限を行う対象から、区分変更の届出(第4項)を受けた大臣等にとっての、その届出をした事業者を除いています。変更前の届出先への届出は、変更を知らせるためのものとして位置づけられている、という読み方ができます。ただし、これ以上の細かい運用は、条文からは分かりません。
届出のあとに条文が定めていること:報告・検査・勧告
届出をしたあとのことも、条文に書かれています。ここでは、書かれている範囲だけを整理します。
報告の徴収・立入検査(第115条の33・第51条の3)
届出を受けた大臣・知事・市長等は、業務管理体制の整備に関して必要があると認めるときは、次のことができます。
- 報告や帳簿書類の提出・提示を命じる
- 事業者や従業者に出頭を求める
- 職員に関係者へ質問させる
- 事業所・施設・事務所などに立ち入り、設備や帳簿書類その他の物件を検査させる
条文が書いているのは、「必要があると認めるとき」にこれらの権限を行使できる、という点です。何年に1回行うのか、どんな場合に実施するのかは、この記事の根拠にした条文には書かれていません。検査の頻度や種類については、届出先の自治体などが公表している案内を確認してください。
また、第115条の33第3項と第51条の3第3項は、都道府県知事(介護では市町村長も)が、自らが指定等を行った事業者について、別の届出先に対して、権限を行うよう求めることができると定めています。届出先と、指定を行った自治体が分かれている場合の連携の仕組みです。
勧告・公表・命令(第115条の34・第51条の4)
届出を受けた大臣等は、事業者が省令の基準に従った適正な業務管理体制の整備をしていないと認めるときは、期限を定めて、適正な体制を整備すべきことを勧告できます(それぞれ第1項)。そのあとの流れは、次の表のとおりです。
| 段階 | 内容 | 条文(介護/障がい福祉) |
|---|---|---|
| 勧告 | 期限を定めて、省令の基準に従った適正な体制を整備すべきことを勧告できる | 第115条の34第1項/第51条の4第1項 |
| 公表 | 期限内に従わなかったときは、その旨を公表できる | 第115条の34第2項/第51条の4第2項 |
| 命令 | 正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは、期限を定めて、措置をとるべきことを命じられる | 第115条の34第3項/第51条の4第3項 |
| 公示 | 命令をしたときは、その旨を公示しなければならない | 第115条の34第4項/第51条の4第4項 |
勧告に従わなかった場合の公表は、介護保険法第115条の34第2項が次のように定めています。
厚生労働大臣等は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた介護サービス事業者が同項の期限内にこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。
この流れで大切なのは、いきなり重い措置になるのではなく、勧告から始まる段階が条文に置かれていることです。なお、命令に違反したときは、違反の内容を関係する自治体へ通知することが、それぞれ第5項に書かれています。通知を受けたあとの扱いは、この記事の根拠にした条文には書かれていません。
法人としての備え方:更新の「起点」を決めておく
ここまでが条文から言えることです。ここから先は、条文が求めていることではなく、実務上の提案です。
業務管理体制の届出は、出して終わりではなく、事業所や人が動くたびに見直しが要る制度です。見直しのきっかけを、法人の業務の流れに組み込んでおくと、出し忘れを防げます。
台帳を1つ持つ
法人本部で、次の項目を1つの台帳にまとめておきます。
| 項目 | 何のために使うか |
|---|---|
| 事業所名・所在地・所在する市区町村 | 届出先の区分(指定都市・中核市・都道府県のまたぎ)の判断 |
| サービス種別と、指定又は許可の別 | 介護か障がい福祉か、地域密着型かの判断と、事業所数の把握 |
| 介護の事業所数・障がい福祉の事業所数 | 20・100の壁との距離を確認する |
| 届出先と届出日 | 介護・障がい福祉それぞれの届出状況の把握 |
| 法令遵守責任者の氏名・生年月日 | 届出書の第二号の記載事項との突き合わせ |
| 規程・監査の有無と、保管場所 | 20以上・100以上のときの整備状況の確認 |
更新の起点を3つ決める
- 事業所の開設・廃止・移転を決める会議や起案に、「業務管理体制の届出先は変わるか」「事業所数は20・100を超えるか」の確認欄を設ける
- 人事異動・退職の手続に、「法令遵守責任者に該当しないか」の確認欄を設ける
- 代表者の交代や主たる事務所の移転のときに、届出事項の変更を確認する
規程と監査をどこに位置づけるか
事業所数が20以上になると、業務が法令に適合することを確保するための規程の整備が加わります。条文は、この規程の名称や中身を指定していません。法人の中では、既存の規程体系のどこに位置づけるのかを決めておくと、新しい規程を作るときも迷いません。社会福祉法人の規程の全体像は、社会福祉法人の規程一覧の記事で整理しています。
100以上の事業者は、業務執行の状況の監査を定期的に行うことが求められます。条文は、何を、どのくらいの頻度で、誰が行うかまでは書いていません。届出書には監査の方法の概要を書くため、誰が、何を見て、どの記録を残すかを、先に決めておくことになります。
事業所単位の指導とは別の制度
事業所単位の運営指導は、別の制度です。障がい福祉サービスの運営指導については、障害福祉サービスの運営指導の記事で整理しています。業務管理体制は、事業所ではなく事業者(法人)の体制を対象にした届出と整備義務です。
この記事で書いていないこと
この記事は、4つの条文の原文として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、根拠にした条文に含まれていないため、扱っていません。
- 届出の様式、提出部数、電子申請の手順(届出先ごとに案内されています)
- 検査の頻度、検査の種類、実施率
- 罰則
- 事業所数の数え方の細かい運用(同じ事業所で複数のサービスの指定を受ける場合など)
- 介護と障がい福祉の事業所数を合算するかどうか
- 障害者総合支援法の相談支援事業者の業務管理体制(同法施行規則の別の条文に書かれていますが、その根拠の法律の条文を、この記事では扱っていません)
- 介護保険法第115条の32第1項、障害者総合支援法第51条の2第1項が引く、各条文の義務の中身
判断に迷うときは、届出先の窓口(都道府県・指定都市・中核市など)に確認してください。
まとめ
- 業務管理体制の根拠は、介護が介護保険法第115条の32、障がい福祉が障害者総合支援法第51条の2。基準や手続は省令(施行規則)に定められている
- 整備する中身は、指定を受けている事業所・施設の数で3段階。20以上で規程の整備、100以上で監査が加わる。介護と障がい福祉で、この刻みは同じ
- 「法令遵守責任者」は省令の用語。責任者の氏名・生年月日は届出書に書く事項で、責任者が替われば変更の届出が要る
- 届出先の区分は、介護が6区分、障がい福祉が4区分。同じ法人でも届出先が分かれうる。とくに、都道府県をまたぐ場合の扱いが違う
- 届出事項に変更があれば遅滞なく届け出る。区分が変わって届出先が変わるときは、変更後と変更前の双方に届け出る。事業所を1つ増やすだけで、届出先が変わることがある
- 届出のあとは、必要があると認めるときの報告・立入検査、そして勧告・公表・命令の段階が条文に置かれている
- 実務では、事業所・責任者・届出先の台帳を1つ持ち、事業所の開設や人事異動の手続に確認欄を設けるところから始められる
業務管理体制は、一度届け出れば終わりの制度ではありません。事業所が増え、人が替わるたびに、届出先と届出事項を見直す制度です。介護と障がい福祉の両方を運営している法人ほど、2つの条文を並べて、自法人の届出先と、更新の起点を確かめておくことが、出し忘れを防ぐ近道です。
事業所の台帳や届出の管理を、法人全体で整えたい法人様へ
複数の事業所を運営していると、事業所の一覧、届出先、責任者の氏名といった情報が、担当者ごとの表計算ソフトに分かれてしまい、法人全体で見渡せない、というご相談をいただくことがあります。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。事業所の台帳や、届出・更新の管理を、システム側で軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。
参考にした一次情報
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の32(業務管理体制の整備等)・第115条の33(報告等)・第115条の34(勧告、命令等)|e-Gov法令検索
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第140条の39(法第115条の32第1項の厚生労働省令で定める基準)・第140条の40(業務管理体制の整備に関する事項の届出)|e-Gov法令検索
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第51条の2(業務管理体制の整備等)・第51条の3(報告等)・第51条の4(勧告、命令等)|e-Gov法令検索
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)第34条の27(法第51条の2第1項の主務省令で定める基準)・第34条の28(業務管理体制の整備に関する事項の届出)|e-Gov法令検索