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社会福祉法人の消費税|非課税の範囲と特定収入5%判定の考え方

「社会福祉法人は消費税がかからない」——そう理解されていることがあります。実際にはそうではありません。

社会福祉法人の消費税には、ほかの法人には出てこない論点が2つあります。ひとつはどの収入が非課税になるのか、もうひとつは補助金や寄附金を受けたときに仕入税額控除がどう調整されるのかです。後者は「特定収入に係る仕入税額控除の特例」と呼ばれるもので、社会福祉法人が対象に含まれているために毎年の判定が必要になります。

この記事では、申告書の書き方や具体的な計算例は扱わず、条文上どういう構造になっているのか、経理として何を区分して持っておけばよいのかに絞って整理します。実際の申告は必ず顧問税理士とご確認ください。

論点1:社会福祉事業は非課税。ただし「生産活動」は別扱い

まず売上側です。消費税法は非課税となる取引を別表第二に列挙しています。社会福祉法人に効くのは第七号ロです。

ロ 社会福祉法第二条(定義)に規定する社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)第二条第一項(定義)に規定する更生保護事業として行われる資産の譲渡等(社会福祉法第二条第二項第四号若しくは第七号に規定する障害者支援施設若しくは授産施設を経営する事業、同条第三項第一号の二に規定する認定生活困窮者就労訓練事業、同項第四号の二に規定する地域活動支援センターを経営する事業又は同号に規定する障害福祉サービス事業(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五条第七項又は第十三項から第十五項まで(定義)に規定する生活介護、就労選択支援、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)において生産活動としての作業に基づき行われるもの及び政令で定めるものを除く。)

長い条文ですが、構造は単純です。

区分消費税の扱い
社会福祉法第2条の社会福祉事業として行われる資産の譲渡等非課税
そのうち、障害者支援施設・授産施設・認定生活困窮者就労訓練事業・地域活動支援センター・生活介護・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援において生産活動としての作業に基づき行われるもの括弧書きで除かれる=課税

つまり、就労支援事業の授産製品の売上やパンやお弁当の販売代金、受託作業の請負代金は、社会福祉事業の枠の中にありながら課税取引になります。ここは実務で最も事故が起きるところです。同じ事業所の中に、非課税の給付費収入と課税の生産活動収入が同居するからです。

生産活動収入と工賃の関係については、就労継続支援B型の工賃でも触れています。

介護保険サービスについては同じ第七号のイが、居宅サービス・施設サービスなどを非課税としています。一方で、利用者から実費で受け取る日用品費や、職員向けの給食費、駐車場の貸付け、自動販売機の設置手数料などは、社会福祉事業として行われる資産の譲渡等にあたらないため課税取引になります。

「うちは社会福祉法人だから消費税は関係ない」という前提でスタートしてしまうと、そもそも課税売上の集計が始まりません。 最初にやるべきことは、収入の科目を一つずつ「非課税・課税・不課税」に仕分けることです。

論点2:補助金や寄附金は「不課税」で終わらない

ここからが社会福祉法人に固有の話です。

補助金、寄附金、会費、国庫補助金——これらは対価性がないので消費税の課税対象になりません(不課税)。普通の会社であれば、それで話は終わります。

ところが、消費税法第60条第4項という条文があります。非常に長い条文なので、前半部分を引用します。

4 国若しくは地方公共団体(特別会計を設けて事業を行う場合に限る。)、別表第三に掲げる法人、第十四条第一項ただし書に規定する公益信託に係る第十五条第三項に規定する受託事業者(第八項において「公益信託受託事業者」という。)又は人格のない社団等(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。)が課税仕入れを行い、又は課税貨物を保税地域から引き取る場合において、当該課税仕入れの日又は課税貨物の保税地域からの引取りの日(当該課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、当該特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)の属する課税期間において資産の譲渡等の対価以外の収入(政令で定める収入を除く。以下この項において「特定収入」という。)があり、

この後ろに、特定収入の合計額が「僅少でない場合として政令で定める場合」に当たるときは、控除できる課税仕入れ等の税額から、特定収入に係る課税仕入れ等の税額として政令で計算した金額を控除する、という趣旨が続きます。

そして、消費税法の別表第三には次の行があります。

名称根拠法
社会福祉法人社会福祉法

社会福祉法人は、この特例の対象法人として名指しされています。

考え方はこうです。補助金で備品を買えば、その備品の仕入れには消費税が含まれています。しかし補助金そのものには消費税がかかっていません。税の負担をしていない財源で行った課税仕入れについて、そのまま仕入税額控除を認めると控除が過大になる——だから調整する、という仕組みです。

特定収入かどうかは「除外リスト」で決まる

条文は特定収入を「資産の譲渡等の対価以外の収入(政令で定める収入を除く)」と定義しています。まず対価以外の収入を全部拾い、そこから政令の除外リストを引くという順序です。

除外されるのは消費税法施行令第75条第1項に並ぶ収入です。

一 借入金及び債券の発行に係る収入で、法令においてその返済又は償還のため補助金、負担金その他これらに類するものの交付を受けることが規定されているもの以外のもの(第六号及び次項において「借入金等」という。)
二 出資金
三 預金、貯金及び預り金
四 貸付回収金
五 返還金及び還付金

さらに第六号が、使途が特定されている収入を除外しています。法令や交付要綱等で、課税仕入れに係る支出以外の支出(人件費など)のためにのみ使うことが定められている収入は、特定収入から外れます。

実務上の意味はこうです。

収入の例特定収入になるか
借入金(返済のための補助金交付が法令で規定されていないもの)ならない(施行令第75条第1項第1号)
預り金・敷金ならない(同第3号)
人件費にのみ使うことが交付要綱で定められた補助金ならない(同第6号イ)
使途が特定されていない一般寄附金なる
使途が特定されていない補助金・助成金なる

「交付要綱に使途が書かれているか」で結論が変わるため、補助金は交付決定通知や交付要綱を保存しておく必要があります。決算のときに探し回ることになりがちな書類です。

5%を超えるかどうかで、調整計算の要否が決まる

条文の「僅少でない場合として政令で定める場合」がどこで決まるかというと、消費税法施行令第75条第3項です。

3 法第六十条第四項に規定する政令で定める場合は、当該課税期間における資産の譲渡等の対価の額(法第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。次項及び第六項において同じ。)の合計額に当該課税期間における法第六十条第四項に規定する特定収入(以下この条において「特定収入」という。)の合計額を加算した金額のうちに当該特定収入の合計額の占める割合が百分の五を超える場合とする。

式にすると、

特定収入の合計額 ÷(資産の譲渡等の対価の額の合計額 + 特定収入の合計額)> 5%

これが特定収入割合です。5%を超えていれば調整計算が必要、超えていなければ不要になります。

ここで注意したいのは、分母が「課税売上」ではなく「資産の譲渡等の対価の額」であることです。非課税売上も含まれます。社会福祉法人の場合、給付費収入という大きな非課税売上が分母に入るため、補助金がそれなりの額でも5%を超えないことがある一方、給付費収入が小さく補助金の比重が大きい法人では超えてきます。法人ごと・年度ごとに結論が変わると考えてください。

なお、条文の冒頭に「第三十七条の規定の適用を受ける場合を除き」とあるとおり、簡易課税制度を選択している課税期間には、この調整の適用がありません。

判定の順序を1枚にする

ここまでを実務の順序に直すと、次の4ステップになります。

  1. 免税事業者か課税事業者かを確認する(基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として免税)
  2. 課税事業者なら、簡易課税を選択しているかを確認する(選択していれば特定収入の調整はない)
  3. 原則課税なら、収入を「課税・非課税・不課税」に仕分ける
  4. 不課税の収入から施行令第75条第1項の除外分を引いて特定収入を出し、5%を超えるかを判定する

多くの法人様でつまずくのは3番です。 収入の仕分けが会計システムの中で固定されていないと、毎年ゼロから集計することになります。

経理として持っておきたい4つの区分

1. 収入科目ごとの課税区分を、勘定科目の属性として固定する

「介護保険事業収益=非課税」「就労支援事業収益(生産活動)=課税」「利用者等外給食収益=課税」のように、科目レベルで課税区分を決めて会計システムに登録しておくのが最短です。毎年の判断を仕訳の都度やらないで済みます。

2. 補助金は交付要綱の使途区分とセットで保存する

特定収入から除外されるかどうかは交付要綱の文言で決まります。 補助金の台帳に「交付元・金額・交付決定日・使途の特定の有無・根拠となる要綱の条項」まで持たせておけば、決算時の判定がその場で終わります。

3. 生産活動の収入を、事業所単位ではなく収入単位で見分けられるようにする

同じ就労継続支援B型の事業所に、非課税の訓練等給付費と課税の生産活動収入が同居します。事業所で切らず、収入の性質で切るのが正しい持ち方です。

4. 前年度の特定収入割合を残す

5%の判定は毎年変わります。前年度の割合と、その年の分子・分母の内訳を残しておけば、当年度に何が動いたのかがすぐ分かります。

経理規程の整備そのものについては、社会福祉法人の経理規程モデルもあわせてご覧ください。

まとめ

  • 社会福祉法人の消費税は「かからない」のではなく、非課税になる範囲が広いだけ
  • 社会福祉事業として行われる資産の譲渡等は消費税法別表第二第七号ロで非課税。ただし就労支援等の生産活動としての作業に基づくものは括弧書きで除かれ、課税
  • 社会福祉法人は消費税法別表第三に掲げられ、第60条第4項の特定収入に係る仕入税額控除の特例の対象
  • 特定収入は「対価以外の収入」から施行令第75条第1項の除外リストを引いて求める。使途が特定された補助金は除外される
  • 調整計算が要るのは特定収入割合が5%を超える場合(施行令第75条第3項)。分母には非課税売上も入る
  • 簡易課税を選択している課税期間には、この調整の適用がない

参考(一次情報)

※本記事は条文の構造を整理したもので、個別の申告判断を示すものではありません。特定収入に係る調整税額の具体的な計算方法、課税売上割合が95%未満の場合の取扱い、インボイス制度に関する取扱いは、顧問税理士および国税庁の最新の公表資料をご確認ください。


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