「地域の方から10万円のご寄附をいただいたのですが、どの科目で受ければいいですか」
年度末や周年行事の時期になると、こうしたご相談が増えます。金額の大小にかかわらず、社会福祉法人が寄附金を受け入れるときには、会計処理と、書類の残し方と、寄附者側の税制の3つが同時に動きます。どれか1つでも抜けると、後から遡って直すのが難しくなります。
この記事では、「社会福祉法人会計基準の運用上の留意事項」と、厚生労働省の「税額控除に係る証明事務 ~申請の手引き~」に戻って、寄附を受けたときに法人が何をすべきかを整理します。
まず押さえる ― 寄附金は「目的」で受け入れ先が決まる
会計処理の出発点は、運用上の留意事項の「9 寄附金の扱い」です。
金銭の寄附は、寄附目的により拠点区分の帰属を決定し、当該拠点区分の資金収支計算書の経常経費寄附金収入又は施設整備等寄附金収入として計上し、併せて事業活動計算書の経常経費寄附金収益又は施設整備等寄附金収益として計上するものとする。
ここに3つの判断が入っています。
- どの拠点区分に帰属させるか ― 寄附の「目的」で決まる。法人が後から都合で決めるものではない
- 経常経費か、施設整備等か ― これも寄附の目的で決まる
- 資金収支計算書と事業活動計算書の両方に計上する
資金収支計算書と事業活動計算書がそれぞれ何を測っているかについては、社会福祉法人の資金収支計算書の記事で整理しています。
目的が判断のすべてを決めるので、「目的が書かれた書類」が最初に必要になります。 それが次の寄附申込書です。
寄附申込書と寄附金収益明細書 ― これがないと後から困る
運用上の留意事項は、書類についてはっきり書いています。
なお、寄附金及び寄附物品を収受した場合においては、寄附者から寄附申込書を受けることとし、寄附金収益明細書(運用上の取り扱い別紙3(②))を作成し、寄附者、寄附目的、寄附金額等を記載することとする。
つまり、寄附者から寄附申込書を受けることと、寄附金収益明細書を作成することの2つが求められています。
実務では、「その場で現金をいただいたので申込書はもらっていない」という場面が起きます。しかし、寄附申込書がないと寄附目的が記録に残らず、拠点区分の帰属と科目の選択の根拠が示せません。 後述する税額控除の要件判定も、法人で作成・保存している寄附金の明細を基に行われます。
寄附申込書の様式は法人が定めてかまいませんが、寄附者の氏名・住所、寄附金額、寄附の目的、受領年月日が入っていることが実質的な要件です。領収書にもこれらが必要になるため、申込書と領収書はセットで設計しておくと二度手間になりません。
寄附物品(現物寄附)の扱い
金銭ではなく物をいただいた場合の扱いも定められています。
寄附物品については、取得時の時価により、経常経費に対する寄附物品であれば経常経費寄附金収入及び経常経費寄附金収益として計上する。土地などの支払資金の増減に影響しない寄附物品については、事業活動計算書の固定資産受贈額として計上するものとし、資金収支計算書には計上しないものとする。
ポイントは3つです。
- 評価は取得時の時価
- 消耗品などの経常経費に対する寄附物品は、金銭と同じく経常経費寄附金で受ける
- 土地など支払資金の増減に影響しないものは「固定資産受贈額」で、資金収支計算書には計上しない
ただし、飲食物等で即日消費されるものや、社会通念上受取寄附金として扱うことが不適当なものはこの限りではない、とされています。地域の方が持ってきてくださったお菓子まで計上する必要はない、ということです。
【間違えやすい】共同募金会からの配分金は、全部が寄附金ではない
ここが、実務でいちばん取り違えられているところです。共同募金会からの配分金は、受配者指定寄附金かどうかで科目が変わります。
共同募金会からの受配者指定寄附金のうち、施設整備及び設備整備に係る配分金(資産の取得等に係る借入金の償還に充てるものを含む。)は、施設整備等寄附金収入として計上し、併せて施設整備等寄附金収益として計上する。
一方、受配者指定寄附金でない配分金は次のように扱います。
また、受配者指定寄附金以外の配分金のうち、施設整備及び設備整備に係る配分金は、施設整備等補助金収入及び施設整備等補助金収益に計上し、国庫補助金等特別積立金を積立てることとする。
整理すると、次のようになります。
| 配分金の種類 | 使途 | 計上する科目 | 追加の処理 |
|---|---|---|---|
| 受配者指定寄附金 | 施設整備・設備整備 | 施設整備等寄附金収入/収益 | 基本金として組入れすべきものは基本金に組み入れる |
| 受配者指定寄附金 | 経常的経費 | 経常経費寄附金収入/収益 | ― |
| 受配者指定寄附金以外 | 経常的経費 | 補助金事業収入/収益 | ― |
| 受配者指定寄附金以外 | 施設整備・設備整備 | 施設整備等補助金収入/収益 | 国庫補助金等特別積立金を積み立てる |
同じ「共同募金会からの入金」でも、寄附金になったり補助金になったり、積立金の処理が発生したりします。 入金通知の書面で受配者指定寄附金かどうかを確認するところから始めてください。
基本金に組み入れるものと、組み入れないもの
施設整備等寄附金を受け入れたら、次は基本金への組入れを検討します。運用上の留意事項の「14 基本金について」は、基本金として計上する額を、土地、施設の創設、増築における増築分、拡張における面積増加分、施設の創設・増築時等における初度設備整備等の基本財産等の取得に係る寄附金の額としています。
そのうえで、こう釘を刺しています。
なお、設備の更新、改築等に当たっての寄附金は基本金に含めないものとする。
「創設・増築」は基本金、「更新・改築」は基本金ではないという線引きです。ここを取り違えると、純資産の区分が誤ったまま何年も引き継がれることになります。
なお、基本金を取り崩す場合には、基本財産の取崩しと同様に、事前に所轄庁に協議して内容の審査を受けなければならないとされています。組み入れは慎重に判断すべき、ということでもあります。
計算書類の附属明細書として作成する財産目録については、社会福祉法人の財産目録の記事をご覧ください。
寄附者側の税制 ― 所得控除と税額控除は「選択」
個人の寄附者にとって、社会福祉法人への寄附は税制上2つの道があります。
(1)所得控除(寄附金控除)
所得税法第78条に基づくもので、その年に支出した特定寄附金の合計額(総所得金額等の合計額の40%相当額が上限)から2,000円を差し引いた額を、所得から控除します。社会福祉法人は、同条第2項第3号が定める「政令で定める法人」として所得税法施行令第217条第5号に列挙されているため、所轄庁の証明の有無にかかわらずこの控除の対象になります。
(2)税額控除(公益社団法人等寄附金特別控除)
租税特別措置法第41条の18の3に基づくもので、寄附金の額(同じく総所得金額等の40%相当額が上限)から2,000円を差し引いた額の40%を、所得税額から直接控除します。
その超える金額の百分の四十に相当する金額(当該金額に百円未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を控除する
控除額には限度があり、同条は「当該個人のその年分の所得税の額の百分の二十五に相当する金額」を限度としています。
厚生労働省の手引きは、税額控除制度の意義をこう説明しています。所得控除制度に比べて特に小口の寄附金支出者への減税効果が高いことが特徴であり、その結果として法人の寄附金収入の拡大が見込まれる、というものです。
ただし、税額控除の対象になるのは、所轄庁の証明を受けた法人への寄附に限られます。 ここが法人側の仕事になります。
税額控除対象法人になるための証明手続き
要件は2つのうちどちらか一方を満たせばよい
実績判定期間において、次のいずれかを満たす必要があります。
| 要件 | |
|---|---|
| 要件1 | 3,000円以上の寄附金を支出した者が、平均して年に100人以上いること |
| 要件2 | 経常収入金額に占める寄附金等収入の割合が、1/5以上であること |
両方を満たす必要はありません。 手引きも「<要件1>・<要件2>は、両方満たす必要はなく、どちらかを満たしていれば証明を受けられます」としています。
実績判定期間は原則5年
直前に終了した事業年度終了日以前の5年内に終了した各事業年度のうち、最も古い事業年度開始の日から、直前に終了した事業年度終了日までです。設立後間もなく活動実績が5年に満たない法人は、設立の日からとなります。
「100人以上」の数え方に細かいルールがある
要件1を狙う法人が取りこぼしやすいのが、この数え方です。
- 5事業年度すべてで100人を満たす必要はなく、5事業年度の平均値が100人以上であればよい
- 法人からの寄附も、法人1者につき1人としてカウントする
- 1回の寄附が3,000円未満でも、同一事業年度の合計が3,000円以上であれば1人としてカウントできる
- 寄附者本人と生計を一にする者は、合算して1人として判定する
- 申請する法人の役員、および役員と生計を一にする者は、寄附者としてカウントできない
役員が個人的に寄附しても人数には入らない、という点は事前に知っておく必要があります。
証明の有効期間は5年
所轄庁から証明を受けた日から5年間有効で、その間に税額控除に係る新たな書類の提出は必要ありません。寄附者は、法人が交付する領収書と証明書の写しを確定申告書に添付して税額控除を受けます。
つまり法人側の実務としては、証明を受けた後は「領収書と証明書の写しをセットで手交する」運用を窓口に定着させることが要点になります。
証明を受けた後に備え付ける書類
証明を受けた法人は、次の書類を主たる事務所に備え付け、閲覧の請求があった場合には閲覧に供する必要があります。
- 法人の定款、役員名簿、事業報告書、財産目録、貸借対照表及び収支計算書
- 役員報酬規程、従業員給与支給規程
- 役員、役員と親族関係にある者又は役員と特殊の関係にある者からの一事業年度における受入寄附金の合計額が20万円以上である場合の、寄附金支出者の氏名・寄附金の額・受領年月日を記載した書類
- 支出した寄附金の額、相手先及び支出年月日を記載した書類
- 寄附金を充当する予定の具体的な事業を記載した書類
該当する項目がなく書類を作成していない場合は、閲覧に供する必要はないとされています。
実務でよくある取りこぼし
現場でご一緒していて多いのは、次の3つです。
- 寄附申込書を受けていない。 現金でその場でいただいたケースに集中します。目的が残らないため、拠点区分と科目の判断根拠が示せず、監査で説明できません
- 寄附者の名簿が経理と現場でずれている。 領収書は施設が発行し、明細は本部が作る、という分担になっていると、同一の寄附者の年間合計が誰にも分からなくなります。税額控除の要件1は「同一の者からの合計3,000円以上」で数えるため、この分断がそのまま要件判定の精度に響きます
- 共同募金会からの配分金を一律に寄附金で受けている。 受配者指定かどうかで科目も積立金の処理も変わります
いずれも「会計の知識」ではなく「どこに何が置いてあるか」の問題です。寄附の受付から領収書の発行、明細の集計までを1か所でつないでおくと、決算期にまとめて追いかける作業がなくなります。経理規程に何を書いておくべきかについては社会福祉法人の経理規程モデルの記事で整理しています。
まとめ
- 金銭の寄附は、寄附目的により拠点区分の帰属を決定し、経常経費寄附金/施設整備等寄附金として資金収支計算書と事業活動計算書の両方に計上する
- 寄附者から寄附申込書を受け、寄附金収益明細書を作成する。 寄附者・寄附目的・寄附金額等を記載する
- 寄附物品は取得時の時価で評価。土地など支払資金の増減に影響しないものは固定資産受贈額として、資金収支計算書には計上しない
- 共同募金会からの配分金は、受配者指定寄附金かどうかで寄附金か補助金かが変わる。 受配者指定以外の施設整備等の配分金は国庫補助金等特別積立金を積み立てる
- 基本金は創設・増築等に係る寄附金。設備の更新・改築等の寄附金は基本金に含めない
- 寄附者は所得控除(所得税法第78条)と税額控除(租税特別措置法第41条の18の3)を選択できる。税額控除は40%、所得税額の25%が限度
- 税額控除対象法人になるには、年平均100人以上(3,000円以上の寄附者)または経常収入の1/5以上のいずれかを満たして所轄庁の証明を受ける。証明の有効期間は5年
- 役員および役員と生計を一にする者は、100人の寄附者としてカウントできない
参考にした一次情報
- 社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について(平成28年3月31日)(厚生労働省法令等データベース)
- 税額控除に係る証明事務 ~申請の手引き~(厚生労働省社会・援護局福祉基盤課)
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)
- 所得税法(e-Gov法令検索)
- 所得税法施行令(e-Gov法令検索)
- No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき(国税庁)
※証明申請の様式・提出先・添付書類は所轄庁により異なります。個別の判断は所轄庁および顧問の会計専門家・税理士にご確認ください。
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