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障害支援区分の認定調査80項目|当日までに事業所が準備すること

「認定調査の日、こちらは何を用意しておけばいいのでしょうか」

サービス管理責任者の方から、この質問をいただくことがあります。認定調査は市町村の側が行うものなので、事業所には手続き上の役割がありません。それでも、調査の場に立ち会う支援者の答え方ひとつで結果が変わりうる、という感覚を現場は持っています。

その感覚は正しいものです。ただし「うまく答える」という話ではありません。認定調査には全国共通の判断基準があり、その基準に沿って答えるには、日頃の記録が要るというだけのことです。

この記事では、厚生労働省の「障害者総合支援法における障害支援区分 認定調査員マニュアル」と、判定基準を定めた省令の条文に戻って、調査で何がどう見られているのか、そして事業所と支援者が当日までに何を用意しておくべきかを整理します。

認定調査は誰が、何のために行うのか

障害支援区分の認定調査は、支給決定を受けようとする方が市町村に申請したことを受けて行われます。根拠は障害者総合支援法第20条第2項です。

市町村は、前項の申請があったときは、次条第一項及び第二十二条第一項の規定により障害支援区分の認定及び同項に規定する支給要否決定を行うため、主務省令で定めるところにより、当該職員をして、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者に面接をさせ、その心身の状況、その置かれている環境その他主務省令で定める事項について調査をさせるものとする。

条文の後段で、市町村はこの調査を指定一般相談支援事業者等に委託することができるとされています。委託を受けた事業者は、専門的知識と技術を有する者に調査を行わせます(同条第3項)。実際に自宅や事業所を訪れるのが市町村職員のこともあれば、委託を受けた相談支援専門員のこともあるのは、この規定によります。

なお、委託を受けた側の職員には守秘義務が課され(同条第4項)、罰則の適用については公務に従事する職員とみなされます(同条第5項)。相談支援専門員の要件や研修体系については相談支援専門員の要件の記事で整理しています。

調査を担当できるのは、都道府県が行う障害支援区分認定調査員研修を修了した者に限られます。マニュアルは、その位置づけをこう書いています。

認定調査の結果が障害支援区分の最も基本的な資料であることから、認定調査は全国一律の方法によって、公平公正で客観的かつ正確に行われる必要がある。

一次判定と二次判定 ― 結果は2段階で決まる

障害支援区分は、一次判定と二次判定の2つのプロセスを経て決まります。

 一次判定二次判定
誰がコンピュータ(障害支援区分判定ソフト2014)市町村審査会
何を使うか認定調査項目80項目+医師意見書の一部24項目一次判定の結果を原案とし、特記事項と医師意見書(一次判定で評価した項目を除く)を総合的に勘案

判定の基準は「障害支援区分に係る市町村審査会による審査及び判定の基準等に関する命令」(平成26年厚生労働省令第5号。マニュアルでは「区分省令」と呼ばれます)が定めています。

ここで、実務上とても重要な点があります。区分省令は、各区分に該当する支援の度合いを「イ」と「ロ」の2つ書いています。「イ」が合計点数(つまり一次判定)による該当ですが、それに続けて「ロ」が置かれています。

障害支援区分認定調査の結果及び医師意見書を総合的に勘案して、当該支援の度合に相当すると認められる支援の度合(イに該当するものを除く。)

つまり、点数がその区分に届いていなくても、調査結果と医師意見書を総合的に勘案してその区分に相当すると認められれば、その区分になるという道が省令上ちゃんと開かれています。二次判定で区分が動くのは例外的な救済ではなく、制度が最初から想定している経路です。

そして、二次判定で市町村審査会が読むのが「特記事項」です。特記事項に書かれていないことは、審査会には伝わりません。

認定調査項目80項目の内訳

認定調査項目は5つのまとまりに分かれ、合計80項目です。

分類項目数内容の例
1. 移動や動作等に関連する項目12項目寝返り、起き上がり、座位保持、移乗、移動など
2. 身の回りの世話や日常生活等に関連する項目16項目食事、排尿、排便、入浴、洗顔、金銭の管理、危険の認識、健康・栄養管理など
3. 意思疎通等に関連する項目6項目視力、聴力、コミュニケーション、説明の理解など
4. 行動障害に関連する項目34項目被害的・拒否的、作話、感情が不安定、昼夜逆転、大声・奇声を出す、多飲水・過飲水など
5. 特別な医療に関連する項目12項目点滴の管理、中心静脈栄養、透析、ストーマの処置、疼痛の看護、カテーテルなど

行動障害に関連する項目が34項目と、全体の4割強を占めます。 障害程度区分から障害支援区分に改められた際、知的障がい・精神障がい・発達障がいの特性をより反映させるために項目が追加された経緯があり、この構成はその表れです。

5番目の「特別な医療に関連する項目」だけは選択肢が「1. ない/2. ある」の2択で、過去14日間に実施された医療行為の有無を確認するものです。医師の指示の下で介護職員等が行う喀痰吸引・経管栄養も含まれます。

【最重要】「できたりできなかったりする場合」は「できない状況」で判断する

ここが、事業所側が最も取りこぼしやすいところです。マニュアルは、多くの調査項目の留意点に共通して次の文を置いています。

「できたりできなかったりする場合」は、「できない状況」に基づき判断する。

日常の感覚では、「調子がいい日は自分でできます」と答えたくなります。しかしそれは、基準に照らすと誤った回答になります。 支援の度合いを測る調査なので、できない日があるならその状況で判断するのが正しい選択です。

さらにマニュアルは、「できない状況」の範囲を運動機能の低下だけに限定していません。

・「知的障害、精神障害や発達障害による行動上の障害(意欲低下や多動等)」や「内部障害や難病等の筋力低下や易疲労感」等によって「できない場合」
・「慣れていない状況や初めての場所」等では「できない場合」を含めて判断する。

「初めての場所ではできない」も「できない」に含まれるという点は、知っているかどうかで答えが変わります。

また、補装具等の福祉用具を使っている場合は「使用している状況」に基づいて判断します。そして「できたりできなかったりする場合」は、その頻度と支援の詳細な状況を特記事項に記載するとされています。

頻度を書くには、頻度が分かる記録が要ります。 ここが、事業所の日頃の記録が効いてくる場面です。

調査の進め方に関するルール(知っておくと当日が変わる)

マニュアルは、調査の実施方法についても細かく定めています。事業所・ご家族が知っておくと役に立つものを挙げます。

調査は原則1回。ただし例外がある

原則として、1名の調査対象者につき、1名の認定調査員が1回で認定調査を終了することとしているが、1回目の認定調査の際に、調査対象者が急病等によってその状況が一時的に変化している場合等で、適切な認定調査が行えないと判断した時には、その場では認定調査は行わず、状況が安定した後に再度調査日を設定し認定調査を行う。

体調が普段と違う日に調査を受けてしまうと、それが基準になってしまいます。「今日はいつもと違う」と感じたら、その場で伝えてよいということです。

調査場所は「日頃の状況を把握できる場所」

マニュアルは、調査の実施場所を原則として日頃の状況を把握できる場所とし、施設等で実施する場合は通常過ごしている居室等を確認して調整するとしています。

支援者が不在の日は避ける

在宅の方については、家族等の支援者が不在の日は避けるようにするとされ、やむを得ず不在で調査を行った場合は特記事項に記載することになっています。日程調整の段階で、日頃の様子を最もよく知る職員が立ち会える日を提案してよいということです。

実際にやってもらえなかった動作は、根拠を特記事項に書く

実際に行為を行ってもらえなかった場合については、選択をした根拠について、具体的な内容を「特記事項」に必ず記載する。

認定調査と医師意見書が食い違っても、それだけで修正はされない

認定調査項目と医師意見書の記載内容とでは選択基準が異なるものもあるため、類似の設問であっても、両者の結果が一致しないこともあり得る。したがって、両者の単純な差異のみを理由に市町村審査会で一次判定の修正が行われることはない。

医師意見書と違うことを言ってしまった、と心配される方がいますが、選択基準がそもそも別なので、食い違い自体は問題になりません。

事業所と支援者が当日までに用意しておくもの

以上を踏まえると、準備すべきものは「うまい答え方」ではなく「事実を頻度つきで言える材料」です。

  1. 直近3か月程度の支援記録。とくに「できた日・できなかった日」が分かるもの。「週に何回」「月に何回」が言える状態にしておく
  2. 行動面の記録。行動障害に関連する項目は34項目あります。大声・奇声、こだわり、パニック、昼夜逆転などについて、いつ・どのくらいの頻度で・どんな支援をしたかを記録から拾えるようにしておく
  3. ヒヤリハット・事故の記録。「危険の認識」「安全」に関わる項目の裏づけになります。記録の残し方は介護のヒヤリハットの記事で整理しています
  4. 医療的ケアの実施記録。特別な医療の12項目は「過去14日間」が判断の範囲です。直近2週間の実施状況が即答できる状態にしておく
  5. 立ち会う職員の選定。その方の日常を最もよく知っている職員が入る。難しければ、当日答える職員に記録を渡して事前に目を通してもらう

そして当日は、普段の様子をそのまま伝えることに徹してください。 「できない状況」で判断するというルールは、悪く見せるためのものではなく、必要な支援の量を測るための基準です。

なお、正当な理由なく認定調査に応じない場合は「申請却下」の処分となることがある、ともマニュアルは記しています。日程が合わないときは、断るのではなく市町村の担当者に相談するのが正解です。

認定調査でよくある取りこぼし

現場でご一緒していて多いのは、次の3つです。

  1. 記録が「その日にあったこと」しか書いていない。 支援記録は日単位で残っていても、「この行動が月に何回あるか」を聞かれると誰も即答できない、という状態がよくあります。項目ごとに頻度を数えられる形になっているかが分かれ目です
  2. 記録が紙とExcelと個人のメモに分散している。 調査の前日に3か所を探し回ることになります
  3. 特記事項に何が書かれたかを事業所が知らない。 二次判定を左右するのは特記事項ですが、事業所側にはその写しが残らないのが通常です。調査の場で自分たちが何を伝えたのかを、事業所側の記録として残しておくと、次回の区分変更申請や、区分に納得がいかない場合の相談の材料になります

いずれも「答え方」ではなく「どこに何が置いてあるか」の問題です。日々の記録をどう残すかについては、個別支援計画のモニタリングの記事もあわせてご覧ください。

まとめ

  • 認定調査は障害者総合支援法第20条第2項に基づく市町村の調査で、指定一般相談支援事業者等への委託が認められている(同項後段)。担当者は都道府県の認定調査員研修修了者に限られる
  • 区分は一次判定(80項目+医師意見書24項目のコンピュータ判定)と二次判定(市町村審査会)の2段階で決まる
  • 区分省令は、点数によらず「総合的に勘案して相当すると認められる」場合の該当を明記している。 二次判定で区分が動く経路は制度に組み込まれている
  • 80項目の内訳は、移動や動作等12・身の回りの世話や日常生活等16・意思疎通等6・行動障害34・特別な医療12
  • 「できたりできなかったりする場合」は「できない状況」に基づき判断する。 「初めての場所ではできない」も含む
  • 「できたりできなかったり」する場合は、頻度と支援の詳細を特記事項に記載するとされている。頻度を言うには日頃の記録が要る
  • 調査は原則1回。体調が一時的に変化している日は、日を改めることになっている
  • 認定調査と医師意見書の単純な差異のみを理由に一次判定が修正されることはない

参考にした一次情報

※認定調査員マニュアルは平成26年4月版です。各項目の判断基準の詳細、および都道府県・市町村独自の運用については、申請先の市町村にご確認ください。


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