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社会福祉

個別支援計画の5領域とは|記載の必須ルールと支援プログラムの関係

「5領域を全部書かないといけないと言われたので、計画書に欄を5つ足しました」

児童発達支援や放課後等デイサービスのご支援に入ると、こういうお話をよく伺います。そして、その多くが必要のない作業です。国の通知は「5つの欄を設ける必要はない」と明記しているからです。

5領域は、令和6年度の報酬改定で急に持ち出された概念ではありません。以前からガイドラインにあった考え方が、令和6年度改定で「個別支援計画に必ず書くこと」「事業所全体の計画として公表すること」という形で運営基準に組み込まれた、というのが正確なところです。

この記事では、こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)と、「個別支援計画の記載のポイント」(令和6年5月17日こども家庭庁支援局障害児支援課事務連絡・別紙1)を根拠に、5領域を計画書のどこに、どう書くのかを整理します。あわせて、令和7年4月から実際に減算が始まった支援プログラムとの関係も押さえます。

5領域とは何か

5領域は、「本人支援」を発達の側面から5つに整理したものです。児童発達支援ガイドラインの原文は次のとおりです。

「本人支援」は、障害のあるこどもの発達の側面から、心身の健康や生活に関する領域「健康・生活」、運動や感覚に関する領域「運動・感覚」、認知と行動に関する領域「認知・行動」、言語・コミュニケーションの獲得に関する領域「言語・コミュニケーション」、人との関わりに関する領域「人間関係・社会性」の5領域にまとめられる

整理すると次の5つです。

領域何に関する領域かガイドラインが示す「ねらい」
健康・生活心身の健康や生活健康状態の維持・改善/生活習慣や生活リズムの形成/基本的生活スキルの獲得
運動・感覚運動や感覚姿勢と運動・動作の基本的技能の向上/姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用/身体の移動能力の向上/保有する感覚の活用/感覚の補助及び代行手段の活用/感覚の特性への対応
認知・行動認知と行動認知の特性についての理解と対応/対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得/行動障害への予防及び対応
言語・コミュニケーション言語・コミュニケーションの獲得コミュニケーションの基礎的能力の向上/言語の受容と表出/言語の形成と活用/人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得/コミュニケーション手段の選択と活用/状況に応じたコミュニケーション/読み書き能力の向上
人間関係・社会性人との関わりアタッチメント(愛着)の形成と安定/遊びを通じた社会性の発達/自己の理解と行動の調整/仲間づくりと集団への参加

※「ねらい」の文言は児童発達支援ガイドラインの記載に沿っています(「行動障害」は同ガイドラインの用語)。

ここで押さえておきたいのは、5領域は「本人支援」の中の区分だということです。個別支援計画には「本人支援」以外に「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」という項目がありますが、5領域との関連性を書くのは本人支援だけです。この点はあとで詳しく触れます。

令和6年度改定で何が変わったのか

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で、次の2つが運営基準(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準/平成24年厚生労働省令第15号)に組み込まれました。

  1. 個別支援計画において、5領域とのつながりを明確化したうえで支援を提供すること
  2. 支援プログラム(5領域との関連性を明確にした事業所全体の支援の実施に関する計画)を作成し、公表すること

つまり、「一人ひとりの計画」と「事業所全体の計画」の両方で5領域を明示することが求められるようになった、という構造です。ここを分けて理解しておくと、あとの実務が整理しやすくなります。

個別支援計画のどこに、どう書くのか

いちばん誤解が多いところです。国の「個別支援計画の記載のポイント」は、こう書いています。

5領域との関連性については、5つの領域全てが関連付けられるよう記載すること。相互に関連する部分、重なる部分もあると考えられるため、5つの欄を設けて、個々に異なる目標を設定する必要はないが、各領域との関連性についての記載は必ず行うこと。

読み解くと、求められているのは次の2点です。

  • 5つの領域すべてが、どこかで関連付けられていること
  • 一方で、領域ごとに欄を分けて別々の目標を立てる必要はないこと

たとえば「順番を待って遊具を使う」という支援内容ひとつに、「人間関係・社会性」と「認知・行動」の2つを関連付ける、という書き方で構いません。国の通知も、支援内容と関連する領域が複数にまたがる場合には「関連する領域を全て記載する」としています。

冒頭の「欄を5つ足しました」というケースは、まさにこの逆をやってしまっています。欄を5つ作ると、埋めるために無理な目標を捻り出すことになり、次に述べる「当てはめ」に陥りやすくなります。

5領域との関連性を書くのは「本人支援」だけ

記載のポイントは、項目ごとの扱いを明確に分けています。

項目記載の要否5領域との関連性優先順位
本人支援必ず記載必要設定する
家族支援必ず記載不要記載不要
移行支援必ず記載不要記載不要
地域支援・地域連携必要に応じて記載(積極的な取組が望ましい)不要記載不要

「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」について5領域との関連性の記載は不要であること、優先順位の記載も不要であることは、通知に明記されています。ここを知らずに全項目へ領域を振っている事業所は少なくありません。書かなくてよいものを書いていないか、一度見直す価値があります。

なお、移行支援の視点を持った本人支援や家族支援を行う場合は、項目欄を切り分けず「本人支援」と「移行支援」を併記して差し支えない、という運用も認められています。

やってはいけないのは「当てはめ」

もうひとつ、通知がはっきり牽制している書き方があります。

単に5領域に対応する課題や支援への当てはめを行うだけのアセスメント・計画作成にならないよう留意すること

さらに、次の2つも「想定されない」と書かれています。

  • 支援目標や支援内容が、それぞれのこどもについて同一のものとなること
  • 支援目標や支援内容の記載が、長期にわたり同一であること

ここは運営指導で見られやすいポイントです。テンプレートを使うこと自体が悪いわけではありませんが、全員分を並べたときに文言がほぼ同じ、あるいは去年の計画と今年の計画が同じ、という状態は避けたいところです。

期間のルールは3つの数字で覚える

計画書の期間について、通知は具体的な数字を示しています。

期間
総合的な支援の方針1年間を目途に(それ以上の期間も可)
長期目標概ね1年程度で目指す目標
短期目標概ね6か月程度で目指す目標
達成時期最長6か月後まで(1〜3か月で達成する目標も積極的に検討)

達成時期の上限が6か月になっているのは、個別支援計画そのものに6か月に1回以上の見直しが求められているためです。逆に言えば、達成時期を「1年後」と書いた計画は、見直しの周期と噛み合っていないことになります。

支援プログラムと未公表減算

個別支援計画と並んで、事業所全体の計画である支援プログラムの整備も必要です。こちらは減算が実際に効いているため、より緊急度が高い論点です。

こども家庭庁の「児童発達支援等における支援プログラムの作成及び公表の手引き」によれば、対象は児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援です。作成にあたっては、次の12項目を網羅する必要があります。

事業所における基本情報
① 事業所名/② 作成年月日/③ 法人(事業所)理念/④ 支援方針/⑤ 営業時間/⑥ 送迎実施の有無

支援内容
⑦ 本人支援の内容と5領域の関連性/⑧ 家族支援(きょうだいへの支援も含む)の内容/⑨ 移行支援の内容/⑩ 地域支援・地域連携の内容/⑪ 職員の質の向上に資する取組/⑫ 主な行事等

作成上の留意点として、手引きは「管理者や児童発達支援管理責任者のみで作成するのではなく、直接支援に従事する職員等の意見も聴きながら作成すること」を求めています。また、多機能型事業所の場合はそれぞれの事業ごとに作成する必要があります。児童発達支援と放課後等デイサービスを一体的に運営していても、支援プログラムは1本では足りないということです。

減算は所定単位数の100分の85

国の留意事項通知は、支援プログラムを公表していない場合の取扱いを次のように定めています。

  • 対象:児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、共生型障害児通所支援、基準該当通所支援
  • 算定される単位数:所定単位数の100分の85

ここで実務上重要な注意書きが付いています。

当該所定単位数は、各種加算がなされる前の単位数とし、各種加算を含めた単位数の合計数の100分の85となるものではないことに留意すること

つまり、基本報酬部分に15%の減算がかかるという意味です。

適用のタイミングと範囲についても、通知は具体的です。

  • 令和7年3月31日までの間は減算されない(同日までは努力義務として扱われていた)
  • 減算は都道府県への届出がされていない場合に適用される。具体的には「届出がされていない月から届出がされていない状態が解消されるに至った月まで、障害児全員について減算する」
  • 都道府県知事は遵守を指導し、指導に従わない場合には、特別な事情がある場合を除き、指定の取消しを検討する

見落としがちなのは、公表しただけでは足りず、公表方法と公表内容を都道府県に届け出る必要があるという点です。ホームページに掲載して安心してしまい、届出をしていない——これが減算の典型パターンです。また、支援プログラムの内容に変更があった場合は、速やかに変更後の内容を公表することが求められます。

自法人の状況をチェックするなら、次の3つを順に確認するのが早いです。

  1. 支援プログラムを事業ごとに作成しているか(多機能型は事業ごと)
  2. インターネット等で公表しているか
  3. 公表方法と公表内容を都道府県に届け出ているか

実務のボトルネックは「書き方」ではなく「材料の集め方」

ここまで制度の話をしてきましたが、私たちが現場で伺う困りごとは、たいてい制度理解の手前にあります。

5領域の関連性を書けないのは、日々の記録がその形で残っていないからです。連絡帳や支援記録が自由記述だけで積み上がっていると、モニタリングのときに半年分を読み返して「この子の運動・感覚の変化はどうだったか」を思い出す作業から始まります。児童発達支援管理責任者1人が、担当する全員分についてこれをやる。だから計画作成の時期に残業が集中します。

現場の負担を下げる方向は、おおむね3つです。

  1. 日々の記録の入口に、5領域のタグを持たせる。 記録を書くときに「今日の場面はどの領域に関わったか」を選べるようにしておくと、モニタリング時に領域ごとの材料が自動的に集まります。あとから分類し直すより、入力時に1タップ増やすほうが圧倒的に軽いです
  2. 前回計画の目標を、記録画面から見えるようにする。 目標が紙のファイルの中にあると、記録は目標と無関係に書かれます。目標と記録が同じ画面にあるだけで、PDCAが回り始めます
  3. 達成時期の期限を一覧で持つ。 6か月に1回以上の見直しは、児童ごとに期限がずれます。誰の計画がいつ切れるのかを一覧で見られる状態にしておくと、「気づいたら期限が過ぎていた」を防げます

いずれも大がかりなシステムが必要な話ではありません。いま使っている記録の形を少し変えるだけで効く部分が、かなりあります。

なお、事業所を対象とする運営指導と、法人そのものを対象とする指導監査は別の制度です。混同しやすいので、法人側の監査については社会福祉法人の指導監査とは|周期・指摘基準・準備の進め方も参考にしてください。

まとめ

  • 5領域は「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つ。「本人支援」の中の区分である
  • 個別支援計画では、5つの領域すべてを関連付ける必要がある。一方で5つの欄を設けて別々の目標を立てる必要はない
  • 5領域との関連性を書くのは本人支援だけ。家族支援・移行支援・地域支援は関連性の記載も優先順位の記載も不要
  • 「5領域への当てはめ」だけのアセスメント、全員同一・年をまたいで同一の記載は、通知が明確に牽制している
  • 期間は、長期目標が概ね1年、短期目標が概ね6か月、達成時期は最長6か月後まで
  • 支援プログラムは12項目を網羅し、多機能型は事業ごとに作成令和7年4月1日以降、公表と都道府県への届出がなければ所定単位数の100分の85(基本報酬部分に15%の減算)
  • 現場のボトルネックは書き方ではなく、5領域の材料が日々の記録に残っていないこと

参考(一次情報)

※支援プログラムの届出様式・提出先は都道府県ごとに定められています。提出前に、自事業所の指定権者が公表している最新の様式と手順をご確認ください。


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