DX

【DX事例#1】ヒモトク!NHKのAIを利用した「手話CG生成システム」

1.DXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語です。
Transformationは「変革」という意味であり、デジタル技術を用いて新たなビジネスモデルへ変革すること新たな顧客体験をもたらすことを指します。

昨今、DXという言葉が先走って、単なるIT化のことや、AI・クラウド・5G・IoT・Web3・SaaSなど、先進技術を利用することを指すと誤解されがちですが、DXの本来の意味は上述するようなものです。

もちろん、ビジネスモデルに変革をもたらす際に、今までに無かったような新しい先進技術を利用することで、新しい顧客体験が得られることが多いのも真実です。

自社のDXを行うにあたって、他社のDX事例は非常に参考になることが多いです。どういった経緯でDXに至ったのか、ITコンサルの目線から解説していきます。

2.事例紹介

今回は、NHKの手話ニュースにおいて、AIを利用して日本語を自動で手話に変換するという事例をご紹介します。

2-1.概要

NHK放送技術研究所は、入力した日本語の文章に応じ、キャラクターが手話CG(コンピューターグラフィックス)を披露する「手話CG生成システム」を26~29日開催の「技研公開2022」で一般公開した。

日経クロステックより引用【https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC271AU0X20C22A5000000/?n_cid=kobetsu

2-2.解説

①なぜ手話のCG化に至ったか

既にNHKの放送チャネルがある状態であり、手話ニュースに関しては一定のニーズがある状態です。現状は手話に関して人手で放送を行っているような状態です。

お抱えの手話担当者が居る中で、なぜ手話のCG化の選択をとったのか。

単純な人手不足の解消や、コストダウンの為だけではないと思います。

自動化できることにより、今まで手話と同時に放送されていた手話ニュースだけでなく、低コストで他の番組に関しても手話と同時に見れるようにするという将来像があるのかもしれません。

また、今後AIを利用した新たな取り組みを始める為に、AIを利用するノウハウを社内に蓄積させるといった狙いもあるかもしれません。

「何人もが同時に話しているような番組ではどうするんだ」とか、「そもそもニュースと違って会話がメインの番組の文字起こしはどうするんだ」とか、色んな課題があると思いますが、ひとまずはお試しでやってみたのかもしれませんね。

②技術的な観点から

技術的には、下記のような記載がありました。

文章を入力すると、翻訳AIが手話単語に置き換え、手話単語に応じた動作をデータベースから取り出してCGとして出力する。

日経クロステックより引用【https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC271AU0X20C22A5000000/?n_cid=kobetsu

AIがどこに使われているかというと、文章を手話用の手話単語に置き換える部分とのことです。

手話は単語ごとに手で動作するので、文章がどこで区切られて単語になっているのかを認識する為に使っているようですね。

以前、私は音声認識AIを試験導入するプロジェクトリーダーをしていた時期があるのですが、文章を「意味のある単語」としてAIに認識させることは非常に難しいと感じたことがあります。特に日本語は英語よりも文章のつなぎ目が分かりにくいのと、日本語を使っている人口が世界で少ない為、ビッグデータが集まりにくいという2つの面で難しいと感じました。

③組織的な観点から

手話担当者の雇用を奪いかねないのではないかという懸念もありますが、まだ手話担当者の雇用を奪われる段階ではないと私は思います。

その理由は、AIは育てていく必要が有るからです。

作りたてのAIは、子供のようなもので、返して欲しい答えが返ってこない場合も多々あります。

日々、正解と不正解のデータをAIに学習させることによって、AIが導き出す答え(今回であれば手話単語に変換)をどんどん正解に近づけていくことが出来ます。

そこで、何が正解で何が不正解だったかを判別する人(親のようなもの)が必要になります。それを、もともと手話担当者だった人が行うと思われます。

手話の番組が増えれば増えるほど、確認する量が増えていきますので、手話の確認を行う人材が増えていくと思われます。

④ついでに

あと、手話について知らなかったことの記載がありました。

「口元の表現」にもこだわった。手話は手元だけでなく、口元の動きと合わせてコミュニケーションを取る。例えば「福島県」という言葉は、「幸せ」「島」「省」という3つの手話単語の連なりで表現する。しかし口元が「しあわせ」「しま」「しょう」のままだと意味が伝わりにくいため、言葉を登録しておくことで、口元の表現も「ふくしまけん」に置き換わるようにしている。

日経クロステックより引用【https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC271AU0X20C22A5000000/?n_cid=kobetsu

私たちが日常的に使っている言葉を手話単語にする場合、全く異なった言葉を複数組み合わせて実現することがあるんですね。

これは知らなかったです。ここまで再現しようとするとかなりの手間が予想されますね…。

手話で会話をするのはとても難しいと感じた一節でした。

3.おわりに

今回はNHKのDX事例について、ご紹介させて頂きました。

どういった将来像を見通してこの取り組みを行ったのか、NHKの今後については要チェックですね。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!

阪本翔太

阪本翔太

その地域でがんばる人をITで後押ししたい

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