「うちの施設は、敷地内を全面禁煙にしなければならないのか」「屋内に喫煙室を置いてよいのか」。法人本部で施設管理を担当していると、事業所からこうした問い合わせが届くことがあります。
背景にあるのは、健康増進法の受動喫煙防止のルールです。このルールは、施設を「第一種施設」と「第二種施設」に分けて、禁煙の範囲を変えています。ところが、介護や障がい福祉の施設がどちらに当たるのかは、サービスの名前だけでは決まりません。病院や介護老人保健施設のように条文に名前が挙がっているものもあれば、挙がっていないものもあるからです。
この記事では、健康増進法の第28条から第30条、第33条、第40条と、健康増進法施行令の第3条、施行規則の第15条から第17条を読みます。あわせて、職員の受動喫煙防止について、労働安全衛生法の第68条の2も確かめます。条文から決まることと、決まらないことは分けて書きます。
先に結論
- 施設は、健康増進法第28条で「第一種施設」「第二種施設」などに分けられています。第一種施設は、学校、病院、児童福祉施設など、受動喫煙で健康を損なうおそれが高い人が主として利用する施設として政令で定めたものと、行政機関の庁舎です。
- 第一種施設では、特定屋外喫煙場所と喫煙関連研究場所以外の場所で、喫煙が禁止されます。屋外の場所も含まれます。第二種施設で禁止されるのは屋内の場所で、喫煙専用室などは例外です。
- 政令(施行令第3条)の列挙には、福祉に関係するものとして、病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院、障害児通所支援事業、児童福祉施設などが挙がっています。
- 特別養護老人ホーム、障害者支援施設、グループホーム、通所介護、法人本部の事務所は、施行令第3条の列挙に名前がありません。この読み方は、条文の構造から説明できます。
- 条文からは決まらない点もあります。「多数の者が利用する施設」の人数の基準や、入所施設の居室が適用除外の「人の居住の用に供する場所」に当たるかどうかです。この記事では断定しません。
施設の区分は、第28条で決まる
最初に、条文の定義を確認します。第28条は、この章で使う言葉を定めています。第5号が第一種施設の定義です。
第5号の柱書は、「多数の者が利用する施設のうち、次に掲げるものをいう。」と書いています。そのうえで、次の2つを挙げています。1つ目のイは、次のとおりです。
学校、病院、児童福祉施設その他の受動喫煙により健康を損なうおそれが高い者が主として利用する施設として政令で定めるもの
2つ目のロは、国及び地方公共団体の行政機関の庁舎(行政機関がその事務を処理するために使用する施設に限る。)です。
ここで押さえたいのは、イの末尾が「政令で定めるもの」となっていることです。学校、病院、児童福祉施設は例として書かれていますが、第一種施設に当たる施設の全体は、政令で決まります。その政令が、次に読む施行令第3条です。
第6号の第二種施設は、次のように定められています。
多数の者が利用する施設のうち、第一種施設及び喫煙目的施設以外の施設をいう。
つまり第二種施設は、「多数の者が利用する施設」のうち、第一種施設でも喫煙目的施設でもないものです。喫煙目的施設は、喫煙をする場所を提供することを主たる目的とする施設として、政令で定める要件を満たすものを指します(第7号)。福祉の施設とは関係が薄いので、この記事では詳しく扱いません。
施行令第3条の列挙を、福祉に関係するものに絞って読む
施行令第3条は、次のように始まります。
法第二十八条第五号イの政令で定める施設は、次に掲げる施設とする。
この後に、第1号から第17号までの施設が並びます。学校、大学校、医療機関、薬局、児童福祉関係、認定こども園、少年院などです。そのうち、福祉の事業所に関わりそうなものを抜き出します。
| 号 | 条文に挙がる施設・事業 |
|---|---|
| 第10号 | 病院、診療所、助産所、オンライン診療受診施設 |
| 第12号 | 介護老人保健施設、介護医療院 |
| 第15号 | 障害児通所支援事業(括弧書きの例外あり) |
| 第15号 | 児童福祉法第7条第1項の児童福祉施設 |
第12号は、次のとおりです。
介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第八条第二十八項に規定する介護老人保健施設及び同条第二十九項に規定する介護医療院
第15号は非常に長い号で、児童福祉法に基づく多くの事業と施設が並んでいます。この記事では、障がい福祉に関係する「障害児通所支援事業」と、「児童福祉施設」だけを取り上げます。障害児通所支援事業には括弧書きがあり、居宅訪問型児童発達支援、または保育所等訪問支援のみを行う事業は除かれています。
なお、ある事業所が障害児通所支援事業に当たるか、児童福祉施設に当たるかは、児童福祉法の定義によって決まります。その中身は、この記事では確かめていません。
列挙に名前がない施設は、どう読むのか
ここからが、福祉の現場にとって大事な部分です。施行令第3条の第1号から第17号を通して読むと、次の施設の名前は挙がっていません。
| 施設・事業所の種類 | 施行令第3条の列挙 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 名前が挙がっていない |
| 障害者支援施設 | 名前が挙がっていない |
| グループホーム | 名前が挙がっていない |
| 通所介護 | 名前が挙がっていない |
| 法人本部の事務所 | 名前が挙がっていない |
第12号に挙がっているのは、介護保険法の介護老人保健施設と介護医療院だけです。特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は書かれていません。障がい福祉の側でも、第15号に挙がっているのは児童福祉法に基づく事業と施設で、障害者支援施設は書かれていません。
条文の構造から読むと、次のようになります。
- 第一種施設は、第28条第5号のイ(政令で定めるもの)とロ(行政機関の庁舎)に限られます。
- イの政令は、施行令第3条です。そこに名前が無く、行政機関の庁舎でもない施設は、第一種施設には当たらない、と読めます。
- そのうえで、「多数の者が利用する施設」に当たるのであれば、第6号により第二種施設になります。
ただし、2つの留意点があります。
1つ目は、この記事で確かめたのが、令和8年10月29日に取得した施行令第3条の本文だということです。政令は改正されることがあるので、実際に判断するときは、最新の条文で列挙を確かめてください。
2つ目は、「多数の者が利用する施設」の基準です。何人以上が利用すれば多数の者に当たるのかは、この記事で確かめた条文には書かれていません。特別養護老人ホームや法人本部の事務所が第二種施設に当たるのかどうかは、この点が条文からは決まらないため、断定しません。
第29条:第一種施設は屋外も、第二種施設は屋内が禁煙
次に、喫煙が禁止される場所を読みます。第29条第1項は、禁煙の大きな枠組みを定めています。
何人も、正当な理由がなくて、特定施設等においては、次の各号に掲げる特定施設等の区分に応じ、当該特定施設等の当該各号に定める場所(以下この節において「喫煙禁止場所」という。)で喫煙をしてはならない。
「特定施設等」の区分ごとに、禁止の場所が決まっています。第一種施設と第二種施設を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 第一種施設 | 第二種施設 |
|---|---|---|
| 根拠の条文 | 法第29条第1項第1号 | 法第29条第1項第2号 |
| 禁止の範囲 | 次に掲げる場所以外の場所 | 次に掲げる場所以外の屋内の場所 |
| 喫煙できる場所 | 特定屋外喫煙場所、喫煙関連研究場所 | 喫煙専用室の場所、喫煙関連研究場所 |
第一種施設の第1号は「次に掲げる場所以外の場所」と書いていて、「屋内」とは限定していません。喫煙できる場所として挙がっているのは、特定屋外喫煙場所と喫煙関連研究場所だけです。つまり、第一種施設では、施設の屋外も含めて、この2つ以外では喫煙ができません。
第二種施設の第2号は、「次に掲げる場所以外の屋内の場所」です。禁止されるのは屋内の場所です。例外として、第33条に定める喫煙専用室の場所と、喫煙関連研究場所が挙がっています。
第29条第2項は、都道府県知事が、第1項に違反して喫煙している人に、喫煙の中止、または喫煙禁止場所からの退出を命ずることができる、と書いています。退出を命ずることができるのは、第1項の第1号から第3号までに掲げる特定施設(第一種施設、第二種施設、喫煙目的施設)の喫煙禁止場所についてです。罰則や過料の金額は、この記事で確かめた条文の範囲に含まれないので、書きません。
特定屋外喫煙場所:第一種施設で、屋外に設けられる例外
第一種施設の例外となる「特定屋外喫煙場所」は、第28条第13号が定義しています。
第一種施設の屋外の場所の一部の場所のうち、当該第一種施設の管理権原者によって区画され、厚生労働省令で定めるところにより、喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識の掲示その他の厚生労働省令で定める受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所をいう。
ポイントは3つです。屋外の場所の一部であること、管理権原者が区画していること、省令で定める措置がとられていることです。省令の措置は、施行規則第15条第2項が定めています。
- 第1号:「喫煙をすることができる場所である旨を記載した標識を掲示すること。」
- 第2号:「第一種施設を利用する者が通常立ち入らない場所に設置すること。」
標識の掲示は、第15条第1項により、標識に表示すべき事項を容易に識別できるようにするものとされています。標識の様式や大きさは、この記事で確かめた条文には書かれていません。
喫煙専用室:第二種施設で、屋内に設けられる例外
第二種施設の例外となる喫煙専用室は、第33条が定めています。第二種施設の管理権原者は、屋内の場所の一部で、たばこの煙の流出を防ぐ技術的基準に適合した室を、専ら喫煙できる場所として定めることができます(第33条第1項)。第一種施設には、この仕組みはありません。
技術的基準は、施行規則第16条第1項が定めています。3つのうち、第1号は次のとおりです。
- 第1号:「出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、〇・二メートル毎秒以上であること。」
第2号は、たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていることです。第3号は、たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されていることです。
標識も必要です。第33条第2項は、喫煙専用室の出入口の見やすい箇所に、次の事項を記載した標識を掲示するよう求めています。喫煙専用室であること、二十歳未満の者の立入りが禁止されていること、その他の省令で定める事項です。第3項は、施設の主たる出入口にも、喫煙専用室が設置されている旨の標識を掲示するよう求めています。
立入りの禁止は、標識だけではなく、管理権原者等の義務でもあります。
喫煙専用室設置施設等の管理権原者等は、二十歳未満の者を当該喫煙専用室設置施設等の喫煙専用室に立ち入らせてはならない。
喫煙専用室の基準の維持は第4項、標識の除去は第6項・第7項が定めています。喫煙専用室を設ける場合は、設置したあとの維持管理まで、管理権原者の義務になります。
第30条:管理権原者等の責務
施設の管理者側に求められることは、第30条にまとまっています。第1項は、喫煙禁止場所に、専ら喫煙の用に供させるための器具や設備を、喫煙の用に供することができる状態で設置してはならない、と定めています。灰皿などを置いたままにしないことを、義務としています。
第2項は、喫煙をしている人、またはしようとしている人への対応です。
特定施設の管理権原者等は、当該特定施設の喫煙禁止場所において、喫煙をし、又は喫煙をしようとする者に対し、喫煙の中止又は当該喫煙禁止場所からの退出を求めるよう努めなければならない。
こちらは「努めなければならない」という努力義務です。第4項も、受動喫煙を防止するために必要な措置をとるよう努めることを定めています。
「管理権原者等」は、管理権原者と、施設の管理者をいいます(第30条第1項の括弧書き)。法人が運営する施設なら、施設の管理者のほか、法人側の管理権原者も該当しうる、という読み方になります。ただし、誰が管理権原者に当たるかは、この記事で確かめた条文からは決まりません。
入所施設の居室は、適用除外に当たるのか(第40条)
入所施設の担当者が気にするのは、利用者の居室です。第40条は、適用除外を定めています。
次に掲げる場所については、この節の規定(第三十条第四項及びこの条の規定を除く。以下この条において同じ。)は、適用しない。
第1号が「人の居住の用に供する場所」(次号に掲げる場所を除く)、第2号が旅館業法の旅館業の施設の客室の場所(一部を除く)です。第2項は、特定施設等の場所に第1項各号の場所がある場合は、その場所についてこの節の規定は適用しない、と書いています。
ここで確かめたいのは、特別養護老人ホームなどの入所施設の居室が、第1号の「人の居住の用に供する場所」に当たるのかどうかです。条文の抜粋には、この言葉の定義も、入所施設への当てはめも書かれていません。そのため、居室が適用除外になるかどうかは、この記事では断定しません。居室の喫煙の扱いを決めるときは、所管の行政機関に確認してください。
職員の受動喫煙は、労働安全衛生法でも求められる
ここまでは、健康増進法の話でした。職員の受動喫煙防止には、労働安全衛生法の定めもあります。第68条の2は、次のとおりです。
事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十八条第三号に規定する受動喫煙をいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
主語は事業者で、「努めるものとする」という努力義務です。対象は「室内又はこれに準ずる環境」で、労働者の受動喫煙です。利用者の受動喫煙を扱う健康増進法とは、守る対象が違います。条文が求めるのは、事業者と事業場の実情に応じた適切な措置です。具体的な措置の中身は、この条文には書かれていません。
職員の健康や安全衛生を事業場ごとに組織で扱う仕組みは、衛生委員会の記事で整理しています。
法人本部で確認しておきたいこと
条文の読み方を踏まえて、法人本部で押さえたい点を整理します。これは条文から導いた弊社の整理で、実際の判断は、所管の行政機関や専門家に確認してください。
- 施設・事業所の一覧を作り、施行令第3条の列挙に名前があるかを確かめる。病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院、障害児通所支援事業、児童福祉施設は挙がっています。
- 列挙にない施設は、第二種施設に当たるかどうかを確認する。「多数の者が利用する施設」の基準は条文から決まらないので、判断が分かれる場合は所管に確認します。
- 第一種施設は、屋外の喫煙場所が特定屋外喫煙場所の要件(区画・標識・利用者が通常立ち入らない場所)を満たしているかを確かめる。
- 第二種施設で喫煙専用室を置いている場合は、技術的基準、標識、二十歳未満の立入りの禁止が維持されているかを確かめる。
- 喫煙禁止場所に、灰皿などが置かれたままになっていないかを確かめる(第30条第1項)。
- 入所施設の居室の扱いは、第40条の適用除外の当てはめが条文から決まらないため、所管に確認したうえで法人の方針を決める。
- 職員の受動喫煙防止は、労働安全衛生法第68条の2の努力義務を踏まえ、事業場の実情に応じた措置として整理する。
この記事で書いていないこと
条文の抜粋に書かれていない論点は、断定しません。
| 論点 | 書かなかった理由 |
|---|---|
| 「多数の者」の人数の基準 | 抜粋した条文に基準が無い |
| 特別養護老人ホームの居室の扱い | 第40条の当てはめは条文から決まらない |
| 罰則・過料の金額 | 抜粋の範囲に含まれない |
| 自治体の条例 | 抜粋の対象外 |
| 標識の様式・大きさ | 抜粋に様式の定めが無い |
| 加熱式たばこの経過措置 | 該当する条文を抜粋していない |
| 複合施設の区分の考え方 | 抜粋に定めが無い |
| 児童福祉施設の具体的な範囲 | 児童福祉法の定義は確認していない |
制度の細部は、条文の原文や所管の行政機関の案内で確かめてください。
まとめ
- 健康増進法は、施設を第一種施設と第二種施設などに分けています。第一種施設は、学校、病院、児童福祉施設など、政令で定めるものと行政機関の庁舎です。
- 第一種施設では、特定屋外喫煙場所と喫煙関連研究場所以外の場所で喫煙が禁止され、屋外も含まれます。第二種施設で禁止されるのは屋内の場所で、喫煙専用室などが例外です。
- 施行令第3条には、病院・診療所、介護老人保健施設、介護医療院、障害児通所支援事業、児童福祉施設などが挙がっています。特別養護老人ホーム、障害者支援施設、グループホーム、通所介護、法人本部の事務所は、列挙に名前がありません。
- 管理権原者等には、灰皿などを置かない義務(第30条第1項)と、中止や退出を求める努力義務(第2項)があります。職員の受動喫煙防止は、労働安全衛生法第68条の2の努力義務です。
- 「多数の者が利用する施設」の基準と、入所施設の居室が適用除外に当たるかどうかは、条文からは決まりません。
参考にした一次情報
- 健康増進法|e-Gov法令検索:第28条、第29条、第30条、第33条、第40条
- 健康増進法施行令|e-Gov法令検索:第3条
- 健康増進法施行規則|e-Gov法令検索:第15条から第17条
- 労働安全衛生法|e-Gov法令検索:第68条の2
事業所ごとの施設の区分と、喫煙場所の状況を、法人本部で確かめられる形になっていますか?
パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。事業所ごとの施設の種類、喫煙場所の有無、標識や設備の確認状況を、法人本部で一覧できる形に整えるところからご一緒します。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。