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社福

宿直と夜勤の違い|許可は2種類。様式第十号と第十四号で分かれる

グループホームや障がい者支援施設で夜間の体制を組むとき、シフト表には「夜勤」と「宿直」が並びます。現場では「寝ていてよい夜が宿直、起きて対応する夜が夜勤」くらいの感覚で使われていることも多いのではないでしょうか。

ところが、労働基準法の側から見ると、宿直と夜勤は呼び方の違いではなく、扱いがまったく別です。しかも、夜間の勤務を労働時間の規制から外す許可には2種類あり、この2つが混ざって語られることが少なくありません。

この記事では、労働基準法と労働基準法施行規則の条文だけを根拠に、次の3点を切り分けます。

  • 宿直・日直の許可は、どの条文に基づき、何が外れるのか
  • 監視・断続的労働の許可は、別の条文でどう決まっているのか
  • 許可を受けていない夜間の勤務は、条文上どう扱われるのか

なお、許可を受けるための具体的な判断基準は、規則の条文には書かれていません。この記事でもその点は書かず、最後の節で整理します。

「宿直」の語が出てくる条文は、施行規則第23条

今回読んだ条文のうち、「宿直」の語が出てくるのは労働基準法施行規則(以下「則」)第23条です。この条には条見出しが付いていません。見出しで探すと見つからないので、条番号で確認してください。

使用者は、宿直又は日直の勤務で断続的な業務について、様式第十号によつて、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は、これに従事する労働者を、法第三十二条の規定にかかわらず、使用することができる。

読み取れることは次の4つです。

  1. 対象は「宿直又は日直の勤務で断続的な業務」
  2. 手続きは様式第十号で、所轄労働基準監督署長の許可を受ける
  3. 許可を受けた場合に外れるのは「法第三十二条の規定」
  4. 許可の効果は、条文の言葉では「使用することができる」

ここで大事なのは3つ目です。外れるのは労働基準法第32条、つまり労働時間の規制だと、条文に明記されています。

第32条は、次のように労働時間の上限を定めています。

使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

第2項には、1日8時間の上限もあります(休憩時間を除き一日について八時間)。宿直・日直の許可は、この1週40時間・1日8時間の枠にかかわらず使用できるようにする仕組みだ、と則第23条は書いています。

条文に出てくる宿直・日直の許可と「夜勤」は、同じ土俵にありません。「夜勤」という語は、今回読んだ労働基準法・施行規則の条文には出てきません。 夜勤は法律用語ではなく、事業所が夜間の勤務を呼ぶ名前だと考えると整理しやすくなります。

許可はもう1つある。第41条第三号と則第34条

宿直・日直とは別に、もう1つ許可の条文があります。労働基準法第41条です。条見出しは「労働時間等に関する規定の適用除外」で、柱書は次のとおりです。

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

そして第三号が、次の労働者を挙げています。

監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

この第三号の許可の手続きを決めているのが、則第34条です。この条にも条見出しはありません。

法第四十一条第三号の規定による許可は、従事する労働の態様及び員数について、様式第十四号によつて、所轄労働基準監督署長より、これを受けなければならない。

つまり、許可は2種類です。

 宿直・日直の許可監視・断続的労働の許可
根拠則第23条法第41条第三号、手続きは則第34条
対象の言い方宿直又は日直の勤務で断続的な業務監視又は断続的労働に従事する者
様式様式第十号様式第十四号
許可する者所轄労働基準監督署長所轄労働基準監督署長
外れるもの法第32条の規定(労働時間)労働時間、休憩及び休日に関する規定(法第41条柱書)
申請で示すもの条文には書かれていない従事する労働の態様及び員数

どちらも「断続的」という語が出てきて、許可権者も同じ所轄労働基準監督署長のため、混同しやすい組み合わせです。ただし、根拠の条文も、様式の番号も、外れる規定の範囲も別です。

見分け方のポイントは、外れる規定の広さです。則第23条は「法第三十二条の規定にかかわらず」と、第32条だけを名指ししています。これに対して第41条の柱書は「労働時間、休憩及び休日に関する規定」と、より広い言い方です。

許可を取れば何でも外れる、わけではない

次に確認したいのは、第37条との関係です。第37条は「時間外、休日及び深夜の割増賃金」の条で、第4項が深夜の割増賃金を定めています。

使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ここで、先ほど見た第41条の柱書をもう一度読みます。適用しないとされているのは「労働時間、休憩及び休日に関する規定」です。第37条の深夜の割増賃金の規定は、この文言には入っていません。

これは条文の言葉を並べた読み方です。「第41条が適用除外にしているのは『労働時間、休憩及び休日に関する規定』であり、第37条の深夜の割増賃金はその文言に入っていない」という点までは、条文から確かめられます。

一方で、「だから、許可を受けた夜間の勤務でも深夜の割増賃金を必ず支払う必要がある」とまでは、この記事は言いません。 今回の一次情報の抜粋だけでは断定できないためです。宿直勤務の賃金の扱いは、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士にご確認ください。

許可を受けていない夜間の勤務は、通常の労働時間

では、許可を受けていない夜間の勤務はどうなるでしょうか。

則第23条の例外が使えるのは、様式第十号で許可を受けた場合です。第41条第三号の例外が使えるのは、行政官庁の許可を受けた者です(手続きは則第34条の様式第十四号)。どちらの許可も受けていなければ、どちらの例外も使えません。

その場合、夜間の勤務も、日中の勤務と同じく第32条の枠のなかにあります。1週40時間・1日8時間を超えて働かせるには、第36条の時間外労働の協定(いわゆる36協定)が根拠になります。第36条第1項は、協定の効果を次のように書いています。

その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

この協定は、過半数組合または過半数代表者との書面による協定で、行政官庁への届出が必要です(第36条第1項)。

比べてみましょう。

 許可あり許可なし
宿直・日直の許可(様式第十号)法第32条の規定にかかわらず使用できる(則第23条)第32条の枠のなかの労働時間
監視・断続的労働の許可(様式第十四号)労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されない(法第41条第三号と柱書)同上
超えたときの根拠許可の範囲の話時間外になれば第36条の協定の世界
深夜の割増賃金(第37条第4項)条文の読みとしては、第41条柱書の文言に入っていない(断定はしない)条文どおり(午後十時から午前五時)

つまり、「うちは夜勤ではなく宿直だから」と呼び方だけを変えても、許可がなければ労働時間の扱いは変わりません。 逆に、許可の範囲を超える働き方(たとえば常に起きて対応する夜)を宿直と呼んでも、条文の上で外れるのは、許可を受けた「断続的な業務」の範囲だけです。

許可の具体的な判断基準は、規則の条文に書かれていない

ここまで読んで、「では、どんな夜間の勤務なら許可がもらえるのか」と疑問に思われた方も多いと思います。

結論として、許可の具体的な判断基準は、則第23条・第34条の条文には書かれていません。 則第23条は「断続的な業務」とだけ書き、則第34条は申請で示す内容として「従事する労働の態様及び員数」を挙げているだけです。

「どんな状態なら断続的といえるのか」「夜間に何人までなら許可の対象になるのか」といった具体的な運用は、条文の外にあります。 この記事では書きません。

実務では、次の手順で確認するのが確実です。

  1. 夜間に実際にどんな業務が発生しているかを、記録から整理する
  2. その夜間の勤務を、宿直・日直(則第23条)と、監視・断続的労働(第41条第三号)のどちらの許可の対象として考えるのかを決める
  3. 判断基準については、所轄の労働基準監督署に直接確認する

許可の種類を決めてから相談すると、話が早く進みます。

夜間に職員を置く事業所が、手元で整理しておくこと

条文の構造から、法人本部や管理者が最低限そろえておくとよい整理は次の3つです。

1. 夜間の勤務を「許可あり」と「許可なし」に仕分ける。
事業所ごと・夜間の勤務ごとに、許可を受けているものと受けていないものを分けます。許可は事業所単位ではなく、従事する労働の態様に対して出される(則第34条)ので、同じ事業所のなかに両方がありえます。

2. 許可ありの場合は、許可の種類を記録する。
様式第十号なのか、様式第十四号なのかを、控えておきます。2つは根拠も外れる規定も違うので、混ぜて管理しない方が安全です。

3. 許可なしの夜間は、通常の労働時間として集計する。
許可を受けていない夜間の勤務は第32条の枠のなかなので、日中の勤務と合算して週40時間・1日8時間を超えるかを見ます。超える場合は、第36条の協定の範囲で収まっているかを確かめます。

勤務形態一覧表で夜間の職員の勤務をどう記録するかは、勤務形態一覧表の書き方でも整理しています。夜間の勤務を種類ごとに分けて持っておくと、一覧表の作成も楽になります。

この記事で書いていないこと

次のことは、今回確認した条文には書かれていません。この記事でも書きません。

  • 許可の具体的な判断基準:条文には書かれていません。所轄の労働基準監督署にご確認ください
  • 宿直勤務の回数や1回の人数に関する決まり:条文には書かれていません
  • 睡眠設備など、宿直の環境についての要件:条文には書かれていません
  • 許可を受けた宿直・日直の賃金の扱い、深夜の割増賃金を支払う必要があるかどうか:抜粋した条文だけでは断定できません。第37条が第41条柱書の文言に入っていない、という読みにとどめています
  • 夜間支援体制加算など、報酬の算定の話:根拠が告示であり、今回の一次情報に入っていません
  • 個別の事業所の夜間体制が、許可の対象になるかどうかの判断:本記事は条文の構造の整理です

まとめ

  • 「宿直」の語が出てくるのは則第23条。様式第十号で所轄労働基準監督署長の許可を受けると、法第32条(労働時間)の規定にかかわらず使用できる
  • 「夜勤」は、今回読んだ条文には出てこない。法律用語ではなく、事業所での呼び名
  • 許可は2種類。宿直・日直は様式第十号(則第23条)、監視・断続的労働は様式第十四号(則第34条、根拠は法第41条第三号)
  • 第41条柱書が適用除外にするのは「労働時間、休憩及び休日に関する規定」。第37条の深夜の割増賃金は、その文言に入っていない(条文の読みであり、断定はしない)
  • 許可を受けていない夜間の勤務は通常の労働時間。超えるなら第36条の協定の世界
  • 許可の具体的な判断基準は条文にない。所轄の労働基準監督署に確認する

参考にした一次情報

いずれもe-Govから取得した条文によります。本記事は条文の構造を整理したもので、個別の事業所の夜間体制が許可の対象になるか、賃金をどう扱うかを示すものではありません。具体的な判断は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。


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