自主製品を作っても売り先が広がらない。受託作業の話を役所からいただけたことがない。「障害者優先調達推進法」という法律があることは知っているけれど、うちの事業所にとって何が変わる法律なのか、そもそも自分たちは何かをしなければならないのか、よく分からない。就労支援の現場では、こんな声をよく耳にします。
検索して出てくるのは、自治体や厚生労働省のページが中心です。ところが、それらの多くは「調達する側」、つまり国や自治体の職員に向けた案内です。受注する側の事業所が、この法律をどう読めばよいのかを、条文から順に整理したものは多くありません。
この記事は、法律の本則(全11条)の原文だけを根拠に、受注する側の目線で読み直します。扱うのは次の点です。
- この法律は、誰に何を求めているのか(就労施設に義務を課す法律なのか)
- 自法人の事業所は「障害者就労施設」に当たるのか(生活介護も入るのか)
- 国や自治体は、毎年度どんな流れで方針を作り、公表するのか
- 公契約での配慮は義務なのか
- 就労施設の側に向けて書かれた条文は、何を求めているのか
- 検索で一緒に出てくる「随意契約」は、この法律に書かれているのか
なお、国の基本方針や各省庁・自治体の調達方針の具体的な中身、調達実績の金額、自治体ごとの様式や窓口は、この記事の根拠にした条文の外にあるため、扱いません。
まず結論:国や自治体の側に求める法律で、就労施設に向けた条文は1つだけ
先に答えを示します。
- 本則は全11条の短い法律。方針の作成・公表や調達の推進といった事項の名宛人は、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人の側
- 「障害者就労施設」の定義には、生活介護・就労移行支援・就労継続支援を行う事業所、障害者支援施設、地域活動支援センターが条文に書かれている。つまり就労支援事業所だけの話ではない
- 国の側は、毎年度、調達方針を作成し、目標を定め、公表する。年度の終了後には、調達実績の概要を取りまとめて公表する。都道府県・市町村・地方独立行政法人も同じ型の仕組み
- 第10条(公契約での配慮)は「努めるものとする」。義務とは書かれていない
- 障害者就労施設等の側に向けて書かれた条文は第11条だけ。内容は、情報の提供と、質の向上・供給の円滑化に努めること(努力義務)
- 本則11条に「随意契約」という語は1回も出てこない
つまり、この法律は「就労施設が何かをしなければ罰せられる法律」ではありません。国や自治体の側に動きを求める法律なので、受注する側から見ると、毎年度どこで何が公表されるのかを知るための地図として読めます。
ここからは、この結論を条文に沿って確かめます。
全11条の名宛人を一覧にする
まず、11条それぞれが誰に向けて書かれているかを並べます。語尾の「しなければならない」と「努めなければならない」「努めるものとする」は重さが違うので、書き分けています。
| 条 | 見出し | 名宛人 | 書かれていること(語尾) |
|---|---|---|---|
| 第1条 | 目的 | (目的規定) | 国等の責務を明らかにし、基本方針・調達方針の策定などを定めることで、障害者就労施設等が供給する物品・役務への需要の増進等を図る |
| 第2条 | 定義 | (定義規定) | 「障害者就労施設」「障害者就労施設等」などの意味 |
| 第3条 | 国及び独立行政法人等の責務 | 国・独立行政法人等 | 優先的に障害者就労施設等から物品等を調達するよう努めなければならない |
| 第4条 | 地方公共団体及び地方独立行政法人の責務 | 地方公共団体・地方独立行政法人 | 受注の機会の増大を図るための措置を講ずるよう努めなければならない |
| 第5条 | 基本方針 | 国(厚生労働大臣が案を作成) | 基本方針を定めなければならない。決定後は遅滞なく公表しなければならない |
| 第6条 | 調達方針 | 各省各庁の長・独立行政法人等の長 | 毎年度、方針を作成しなければならない。作成したら遅滞なく公表しなければならない。方針に基づき調達を行うものとする |
| 第7条 | 調達実績の概要の公表等 | 各省各庁の長・独立行政法人等の長 | 年度の終了後、遅滞なく実績の概要を取りまとめ、公表し、厚生労働大臣に通知するものとする |
| 第8条 | 厚生労働大臣及び内閣総理大臣の要請 | 厚生労働大臣・内閣総理大臣 | 各省各庁の長等に、特に必要があると認められる措置をとるべきことを要請することができる |
| 第9条 | 地方公共団体等の調達の推進等 | 都道府県・市町村・地方独立行政法人 | 毎年度、方針を作成しなければならない。作成したら遅滞なく公表しなければならない。年度の終了後、遅滞なく実績の概要を取りまとめ、公表するものとする |
| 第10条 | 公契約における措置等 | 国・独立行政法人等(第2項は都道府県・市町村・地方独立行政法人) | 必要な措置を講ずるよう努めるものとする |
| 第11条 | 情報の提供等 | 障害者就労施設等 | 情報を提供するよう努めるとともに、質の向上と供給の円滑化に努めるものとする |
この表から、3つのことが読み取れます。
- 第3条から第10条までの名宛人は、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人(と大臣)の側です。障害者就労施設等が名宛人になっているのは第11条だけです
- その第11条の語尾も「努める」「努めるものとする」で、義務ではなく努力を求める書き方です
- 一方、国の側でも、方針の作成と公表は「しなければならない」、調達そのものは「努めなければならない」と書き分けられています。優先調達は、予算の範囲で努力するという建て付けです
第1条は、この法律の目的を次のように書いています。
この法律は、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人による障害者就労施設等からの物品及び役務の調達の推進等に関し、国等の責務を明らかにするとともに、基本方針及び調達方針の策定その他障害者就労施設等の受注の機会を確保するために必要な事項等を定めることにより、障害者就労施設等が供給する物品及び役務に対する需要の増進等を図り、もって障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立の促進に資することを目的とする。
目的に書かれているのは「国等の責務を明らかにする」ことと、「受注の機会を確保するために必要な事項を定める」ことです。ここでも主役は、調達する側です。
自法人は「障害者就労施設」に当たるのか
受注する側として、最初に確かめたいのは、自分たちがこの法律でいう「障害者就労施設」に当たるのかどうかです。定義は第2条第2項にあります。第2項は、次に掲げる施設を障害者就労施設とし、第一号から第三号までの3つを挙げています。
第一号:障害者総合支援法の施設・事業
第一号は、次のとおりです。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十一項に規定する障害者支援施設、同条第二十八項に規定する地域活動支援センター又は同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第七項に規定する生活介護、同条第十四項に規定する就労移行支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
読み方のポイントは2つあります。
1つ目は、就労支援事業所だけではないこと。 括弧の中に、「生活介護」「就労移行支援」「就労継続支援」の3つが並んでいます。生活介護を行う事業所も、条文の文言のうえでは障害者就労施設に含まれます。「就労」と名前がつくので、就労継続支援や就労移行支援だけの話だと思われがちですが、生活介護で自主製品づくりや軽作業に取り組んでいる事業所も、この定義の範囲に入ります。さらに、障害者支援施設と地域活動支援センターも、括弧の外に独立して書かれています。
2つ目は、条文の文言は「就労継続支援」であること。 A型・B型の区別は、この定義には書かれていません。また、障害者総合支援法の各項(第5条第7項・第14項・第15項など)の中身は、この記事の根拠にした条文には含まれていません。自事業所の指定がこの定義に当たるかどうかを個別に確かめたいときは、法律の原文や所管の自治体で確認してください。
第二号・第三号:もう2つの類型
第二号は、障害者の地域における作業活動の場として、障害者基本法第18条第3項の規定により必要な費用の助成を受けている施設です。第三号は、重度身体障害者・知的障害者・精神障害者であって労働者であるものを多数雇用する事業所として政令で定めるものです。第三号は政令に委ねられていて、その政令の中身はこの記事の根拠にした条文には含まれていないので、どの事業所が当たるのかは書きません。
整理すると、次のとおりです。
| 類型 | 条文上の書かれ方 |
|---|---|
| 第一号 | 障害者支援施設、地域活動支援センター、生活介護・就労移行支援・就労継続支援を行う障害福祉サービス事業を行う施設 |
| 第二号 | 障害者基本法第18条第3項の規定により、作業活動の場として必要な費用の助成を受けている施設 |
| 第三号 | 重度身体障害者・知的障害者・精神障害者である労働者を多数雇用する事業所として政令で定めるもの |
条文は施設や事業所の類型で定義していて、運営する法人の種類(社会福祉法人かどうか)についての限定は書かれていません。
「障害者就労施設等」は3つの総称
もう1つ、言葉の使い分けを押さえておきます。この法律の多くの条文は、「障害者就労施設」ではなく「障害者就労施設等」と書いています。第2条第4項は、次のとおりです。
この法律において「障害者就労施設等」とは、障害者就労施設、在宅就業障害者及び障害者の雇用の促進等に関する法律第七十四条の三第一項に規定する在宅就業支援団体をいう。
障害者就労施設等は、障害者就労施設・在宅就業障害者・在宅就業支援団体の3つの総称です。在宅就業障害者と在宅就業支援団体は、障害者の雇用の促進等に関する法律で定義されたもので、その中身はこの記事の根拠にした条文には含まれていません。施設としての事業所は「障害者就労施設」、第11条などの名宛人は「障害者就労施設等」という整理になります。
毎年度、国や自治体の側で何が起きるのか
次に、国や自治体の側の動きを時系列に並べます。受注する側から見ると、これが「毎年度どこに何が出てくるか」の骨組みです。
国と独立行政法人等の場合(第5条〜第7条)
まず、国が基本方針を定めます(第5条)。基本方針は、国及び独立行政法人等による調達の推進に関する基本的方向や、優先的に障害者就労施設等から調達すべき物品等の種類などを定めるものとされています。基本方針の項目には、受注する側にとって気になる次の事項もあります。
障害者就労施設等に対する国及び独立行政法人等による物品等の調達に関する情報の提供に関する基本的事項
そのうえで、各省各庁の長と独立行政法人等の長が、毎年度の調達方針を作ります(第6条)。第6条第1項は、次のとおりです。
各省各庁の長及び独立行政法人等の長(当該独立行政法人等が特殊法人である場合にあっては、その代表者。以下同じ。)は、毎年度、基本方針に即して、物品等の調達に関し、当該年度の予算及び事務又は事業の予定等を勘案して、障害者就労施設等からの物品等の調達の推進を図るための方針を作成しなければならない。
方針に定める事項は、第2項で、当該年度における障害者就労施設等からの物品等の調達の目標と、その他の推進に関する事項とされています。作成したあとの扱いは、第3項と第4項に書かれています。
各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、第一項の方針を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、第一項の方針に基づき、当該年度における物品等の調達を行うものとする。
年度が終わると、実績の概要の取りまとめと公表です(第7条第1項)。
各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、毎会計年度又は毎事業年度の終了後、遅滞なく、障害者就労施設等からの物品等の調達の実績の概要を取りまとめ、公表するとともに、厚生労働大臣に通知するものとする。
都道府県・市町村・地方独立行政法人の場合(第9条)
都道府県・市町村・地方独立行政法人にも、同じ型の仕組みが置かれています。第9条は、方針の作成、目標、公表、方針に基づく調達、年度終了後の実績の公表を、1つの条にまとめて書いています。
受注する側にとって重要なのは、第9条第2項です。
前項の方針は、都道府県及び市町村にあっては当該都道府県及び市町村の区域の障害者就労施設における障害者の就労又は在宅就業障害者の就業の実態に応じて、地方独立行政法人にあっては当該地方独立行政法人の事務及び事業に応じて、当該年度に調達を推進する障害者就労施設等が供給する物品等及びその調達の目標について定めるものとする。
都道府県と市町村の方針は、その区域の障害者就労施設における障害者の就労の実態に応じて、当該年度に調達を推進する物品等と、その調達の目標を定める、と書かれています。つまり、方針は国が全国一律で決めるのではなく、地域の実態を反映して作る建て付けです。
公表と実績の扱いは、第3項と第5項です。
都道府県、市町村及び地方独立行政法人は、第一項の方針を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
都道府県、市町村及び地方独立行政法人は、毎会計年度又は毎事業年度の終了後、遅滞なく、障害者就労施設等からの物品等の調達の実績の概要を取りまとめ、公表するものとする。
年度の流れを1枚にする
国の側と自治体の側を、1つの表にまとめます。
| 順 | 国・独立行政法人等(第6条・第7条) | 都道府県・市町村・地方独立行政法人(第9条) |
|---|---|---|
| 1 | 毎年度、基本方針に即して調達方針を作成する(作成しなければならない) | 毎年度、調達方針を作成する(作成しなければならない) |
| 2 | 方針に、当該年度の調達の目標を定める | 方針に、当該年度に調達を推進する物品等と調達の目標を定める(地域の実態に応じる) |
| 3 | 作成したら遅滞なく公表する(公表しなければならない) | 作成したら遅滞なく公表する(公表しなければならない) |
| 4 | 方針に基づき、当該年度の調達を行う | 方針に基づき、当該年度の調達を行う |
| 5 | 年度の終了後、遅滞なく実績の概要を取りまとめて公表し、厚生労働大臣に通知する | 年度の終了後、遅滞なく実績の概要を取りまとめて公表する |
表のとおり、毎年度、方針→目標→公表→調達→実績の概要の公表という一巡が、国にも自治体にも置かれています。なお、条文は「毎年度」「遅滞なく」と書くだけで、何月に方針が出るのか、どこで公表されるのかは書かれていません。公表の時期や場所は、国の機関や自治体ごとに確かめる必要があります。
受注する側の最初の一歩:自分の地域の方針を読む
ここから言える実務上の提案は、シンプルです。事業所の所在する都道府県・市町村が、今年度の方針を公表しているかを探して、1度読んでみることです。
- 方針は、作成したら遅滞なく公表しなければならないものとされているので、探して読む価値のあるものです
- 都道府県と市町村の方針は、区域の障害者就労施設の実態に応じて、当該年度に調達を推進する物品等と目標を定めることになっています。自分たちが作れるもの、できる作業が、方針の中でどう扱われているかを確かめられます
- 年度が終われば、実績の概要も公表されます。前年度にどんな物品等が調達されたのかを知る手がかりになります
方針の具体的な書きぶり、実績の金額、問い合わせ先や提出書類は自治体ごとに異なり、この記事の根拠にした条文には書かれていません。実際の方針は、ご自身の地域のものを読んでください。
また、国の基本方針の項目には、前に引用したとおり、調達に関する情報の提供に関する基本的事項が含まれています。国が、障害者就労施設等への情報提供のあり方を基本方針で定める、という建て付けです。
第8条にも触れておきます。厚生労働大臣と内閣総理大臣は、各省各庁の長等に対し、障害者就労施設等からの物品等の調達の推進を図るため特に必要があると認められる措置をとるべきことを要請することができます。要請の相手は「各省各庁の長等」で、第5条第3項の括弧書きにより、国は各省各庁の長、独立行政法人等はその主務大臣を指します。これも国の側の仕組みの一部です。
公契約での配慮は努力義務:第10条
「優先調達」と聞くと、国や自治体が発注する工事や物品の入札で、就労施設が有利になる仕組みを想像する方もいるかもしれません。それに近い内容が書かれているのが第10条ですが、書き方に注意が必要です。
第10条第1項は、国及び独立行政法人等が当事者となる契約(条文では「公契約」と定義されています)について、競争に参加する者に必要な資格を定めるに当たって、一定の事項に配慮するなどの措置を講ずるよう努めるものとする、と書いています。配慮の対象として書かれているのは、障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第1項の規定に違反していないこと、または次の事項です。
障害者就労施設等から相当程度の物品等を調達していること
この事項に配慮するなどして、障害者の就業を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする、と書かれています。第2項は、都道府県・市町村・地方独立行政法人についてです。
都道府県、市町村及び地方独立行政法人は、前項の規定に基づく国及び独立行政法人等の措置に準じて必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
ここで確認したいのは、語尾です。第10条は第1項も第2項も「努めるものとする」です。義務とは書かれていません。また、配慮する対象は「競争に参加する者に必要な資格を定める」場面で、公契約を受注する事業者側が、障害者就労施設等から調達しているかどうかが配慮事項に入っている、という書き方です。第10条から、就労施設が直接有利になるとまでは読み取れません。どのような措置がとられているかは、国や自治体ごとの運用で、条文からは分かりません。
就労施設の側に向けて書かれた唯一の条文:第11条
第3条から第10条までが、国や自治体の側の条文であるのに対し、障害者就労施設等が名宛人になっているのは第11条だけです。全文を引用します。
障害者就労施設等は、単独で又は相互に連携して若しくは共同して、その供給する物品等の購入者等に対し、当該物品等に関する情報を提供するよう努めるとともに、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めるものとする。
分解すると、求められていることは3つです。
| 求められていること | 条文の文言 |
|---|---|
| 情報の提供 | その供給する物品等の購入者等に対し、当該物品等に関する情報を提供するよう努める |
| 質の向上 | 当該物品等の質の向上に努める |
| 供給の円滑化 | 当該物品等の供給の円滑化に努める |
ポイントは次の3つです。
- 語尾は「努める」「努めるものとする」で、義務ではない。 第11条を守っていないからといって、直ちに何かの責任が生じる、とは書かれていません
- 情報を提供する相手は「購入者等」。 国や自治体に限らず、物品等を購入する者全般に向けた書き方です
- 「単独で又は相互に連携して若しくは共同して」と書かれている。 1つの事業所だけで取り組むほか、複数の事業所が連携したり共同したりする形も、条文の文言として想定されています。1事業所では数量や品目をそろえにくい場合に、事業所どうしで連携する余地がある、という読み方ができます
ただし、情報をどんな形式で、いつ、誰に提供するのか、質の向上や供給の円滑化とは具体的に何をすることなのかは、条文には書かれていません。したがって、第11条は「こうしなければならない」という手順書ではなく、受注の機会を実際につかむために、就労施設の側にも期待されている取り組みの方向を示した条文だと位置づけるのが妥当です。
「随意契約」はこの法律に出てくるか
優先調達推進法を検索すると、候補に「随意契約」が並びます。「優先調達なら随意契約で発注できるのか」「随意契約の根拠はこの法律なのか」という疑問が多いのだと思います。
ここで事実だけを確認します。この法律の本則11条に「随意契約」という語は、1回も出てきません。 調達に関する条文(第3条・第6条・第9条)が書いているのは、優先的に調達するよう努めること、調達方針を作ること、方針に基づき調達を行うことです。どの契約方式で調達するのか、随意契約を使えるのか、という点は、この法律の条文からは読み取れません。
したがって、随意契約を使えるかどうか、どんな条件で使えるかは、この法律とは別の法令で確かめる必要があります。どの法令を見るべきかは、この記事の根拠にした条文には含まれていないので、ここでは扱いません。国や自治体の契約の担当部署に確認するのが確実です。
社会福祉法人の「収益事業」とは別の話
もう1つ、混同しやすい点を整理しておきます。社会福祉法人の方が「障害者就労施設等の受注」と聞くと、法人が行う公益事業や収益事業の区分のことを連想されるかもしれません。
この法律の条文が扱っているのは、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人が、障害者就労施設等から物品や役務を調達することです。本則11条に「収益事業」という語は出てきません。社会福祉法人の事業の区分(社会福祉事業・公益事業・収益事業)の整理は、社会福祉法の話として別にあります。区分について知りたい場合は、社会福祉法人の公益事業と収益事業の記事を参照してください。
この法律の「調達」の仕組みと、社会福祉法人の事業区分は別の論点です。自主製品の販売や受託作業を行うときは、どちらの話をしているのかを分けて考えると混乱しません。
実務の打ち手:記録と集計の準備
ここまでが条文から言えることです。ここから先は、条文が求めていることではなく、第11条が期待している取り組みの方向を、現場でどう形にするかについての提案です。条文に書かれた義務ではありませんので、できるところから進めてください。
打ち手1:自法人の品目・納期・数量・単価を一覧にしておく
第11条は、物品等に関する情報を、購入者等に提供するよう努めることを求めています。情報提供を求められてから慌てて集めるのではなく、次の項目を一覧にしておくと、問い合わせに答えやすくなります。
| 整理する項目 | 例 |
|---|---|
| 品目・作業の内容 | 自主製品の名称、受託できる作業の種類 |
| 納期の目安 | 注文から納品までに必要な日数 |
| 数量の目安 | 1回に対応できる数量、月間の上限 |
| 単価 | 品目ごとの単価、数量による違い |
| 担当と連絡先 | 問い合わせを受ける担当者 |
数量や納期の目安を事前に整理しておくことは、「供給の円滑化」にも直結します。
打ち手2:受注の実績を、事業種別ごとに集計できるようにしておく
国や自治体は、年度が終わると調達実績の概要を取りまとめて公表します(第7条・第9条)。受注する側でも、自分たちの実績を集計しておけば、次のような場面で役に立ちます。
- 自治体が公表した調達方針と、自事業所の品目を突き合わせて、どこに提案できそうかを考える
- 法人内で、生活介護・就労移行支援・就労継続支援といった事業種別ごとの受注状況を比べる
- 連携や共同受注を考えるときに、事業所ごとにどれだけ対応できているかを示す
「どの事業所が、どの品目を、いつ、いくらで受注したか」を事業種別ごとに分けて残しておくだけで、後から集計できる幅が広がります。表計算ソフトで管理している場合は、事業所名・事業種別・取引先・品目・金額・納品日を1行1件で記録しておくと、集計が楽になります。
打ち手3:複数事業所で、受注の窓口と品目を共有する
第11条には「相互に連携して若しくは共同して」と書かれています。複数の事業所を運営している法人であれば、法人内の事業所どうしで品目を共有したり、問い合わせの窓口を一本化したりすることも、第11条の文言と方向の合う取り組みです(条文が法人内の事業所どうしの連携まで想定しているかは、書かれていません)。受注が増えた先に工賃の話が出てくる法人は、就労継続支援B型の工賃の記事も参考にしてください。
この記事で書いていないこと
この記事は、法律の本則(全11条)の原文として確認できた範囲だけを書いています。次の点は、根拠にした条文に含まれていないため、扱っていません。
- 基本方針や、各省庁・自治体の調達方針の具体的な中身(どんな物品等が優先対象になっているか、など)
- 調達実績の金額や件数
- 随意契約を使えるかどうかの根拠(この法律の条文には出てきません)
- 第2条第2項第三号の「政令で定めるもの」の中身
- 在宅就業障害者・在宅就業支援団体の定義の中身(障害者の雇用の促進等に関する法律側の規定)
- 障害者総合支援法の各項(生活介護・就労移行支援・就労継続支援の定義)の中身
- 自治体ごとの様式・窓口・提出期限
判断に迷うときは、所在する都道府県・市町村の担当部署に確認してください。
まとめ
- 障害者優先調達推進法は、本則全11条。第3条から第10条までの名宛人は、国・独立行政法人等・地方公共団体・地方独立行政法人(と大臣)の側で、就労施設に義務を課す法律ではない
- 「障害者就労施設」には、生活介護・就労移行支援・就労継続支援を行う事業所、障害者支援施設、地域活動支援センターが条文に書かれている(第2条第2項第一号)。就労支援事業所だけの話ではない
- 国も自治体も、毎年度、方針の作成→目標→公表→調達→実績の概要の公表という流れ。自治体の方針は区域の障害者就労施設の実態に応じて定められる。時期や公表の場所は条文には書かれていない
- 公契約での配慮(第10条)は「努めるものとする」。義務とは書かれていない
- 第11条が、就労施設の側に向けた唯一の条文。情報の提供と、質の向上・供給の円滑化の努力義務で、「単独で又は相互に連携して若しくは共同して」と書かれている
- 「随意契約」の語は、この法律の本則に1回も出てこない。随意契約の根拠はこの法律からは読み取れない
- 実務では、自分の地域の方針を1度読む、品目・納期・数量・単価を一覧にする、受注実績を事業種別ごとに集計できるようにするところから始められる
優先調達推進法は、「受けなければならない義務」の法律ではなく、国や自治体が毎年度、方針を作って公表することを通じて、受注する側にも道を開く法律です。条文を受注する側の目線で読み直すと、毎年度、どこで何が公表されるのかを知り、自分たちの品目や実績を整えておくという、やるべきことが見えてきます。
参考(一次情報)
受注の記録や実績の集計に手間がかかっている法人様へ
自主製品や受託作業の受注は、事業所ごと・担当者ごとに表計算ソフトで管理されていて、法人全体で「どの品目をいくら受注したか」を集計するのに時間がかかる、というご相談をいただくことがあります。パレットテクノロジーズは、社会福祉法人様のデジタル化を「現地現物」で伴走支援しています。品目・納期・数量・単価の一覧や、事業種別ごとの受注実績の記録と集計を、システム側で軽くするお手伝いをしています。ITに詳しい職員がいらっしゃらなくても大丈夫です。